持つことの危うさ、持たざることの強さ

7月15日(水)

多くの民意の反対、野党の反対を押し切って、きょう昼過ぎに「安保法案」が強行採決・可決されてしまいました!
案の定、自民・公明は全員賛成? 民意を無視し、憲法学者の声にも耳を貸さず、民主主義を踏みにじるやり方に、言葉にできない憤りを感じます。

★反則のホイッスルが鳴っても強引にゲームを続け、強引にシュートしたボールがたとえゴールに入っても無効でしょ!?

でも、こういう時だからこそ、あえて冷静に…

「相手が武器を持ってるんだから、何するか分からないんだから、こっちも武器を持たなくてどうするんだ!」…といった議論は私の学生時代からありました。いや、この議論はもっと古く、人類始まって以来のものとも言えるでしょう。

かくして、歴史上のあらゆる戦争も「自国を危機から守るため」「やむを得ず」「最低限の」…といった理屈のもとに繰り返されてきました。
「防衛」によって得られる「安全・安心」と、逆に高まる「危険」はどうなのか?
コスタリカの素晴らしい事案も含めて、ちょっと考えてみたいと思います。



「日本人は忘年会をやるから、前のことはすぐ忘れちゃうんだよ」と言った人がいました(笑)。

まだ今年は忘年会はやってませんよね?
今年の正月明け早々にISILによって殺害された二人の日本人のことは忘れてませんよね?


安倍総理はなにかと「日本人の命と安全を守るため」と言いますが、あの2人の命を助けることはできなかった! というか、何もしなかった!

もちろん危険な地域にわざわざ入ったということへの「自己責任」もあるでしょう。
しかし、前年の秋から二人の日本人が拘束されている事実を政府は把握していながら、総理が年明けにわざわざ中東を訪問し、「イスラム国と戦う国を支援」と宣言し、過激派組織を大いに刺激。ISILは安倍総理を名指しして期限付きの要求を出し、ついに凶行に及んだのです。

当初の身代金要求には「応ずるべきでない」というアメリカの助言に従って何もせず、人質交換などその後の交渉は全て「ヨルダン任せ」。ヨルダンの本部に詰めていた岸田外務大臣はお疲れ様だったが、実際のところ何もできなかった。

そもそもISILとの交渉を、あの時点では中立の立場だった隣国トルコ、あるいはISILと交渉経験もあるフランスではなく、ヨルダンに頼ったのか?ヨルダンはISILに空爆を行うなどISILから見れば敵国です。パイロットとの人質交換などぎりぎりまで努力してくれたヨルダンには感謝するが、ヨルダンを交渉窓口とした判断は正しかったのか?

安倍総理はISILの犯行声明が出て早々に外遊を中断して帰国し、「慎重に対応するように」と指示だけを出して自分は財界人との新年会に出席。
ISILから出される要求や凶行の犯行声明に「言語道断、強い憤りを感じる」と繰り返しただけ。

あの一連の日本政府の判断・対応に問題はなかったのでしょうか?



べつに特殊部隊を潜入させて二人の邦人を救出すべきだったなどと言うつもりはありません。日本は平和国家なんです。そんなことはできないし、やるべきでもないと思っています。

ならばなおさら、「危険回避」という視点で、ISILに対して「日本は敵だ」と確信させてしまったことが問題ではないでしょうか? 
→ 「危険回避」ということ(2015.2.8)

初めから「難民救済のための人道支援」と言えば良かったものを、「イスラム国(ISIL)と戦う国への支援」と宣言したことで相手の敵対心に火をつけたことは否めません!

(国際支援は大切。言語道断なのはISILであって、日本政府を悪く言うことはテロへの同調だ、などという意見も飛び出しましたが、相手をここまで刺激するような発言をわざわざしておいて、後になって「あれは人道支援なんだ」と言ってももう遅いのです。「危険回避」という視点ではやはりあの発言は誤りなのです。)

危険回避

紛争当事国の一方を「支援」することは、他方を敵に回して日本(人)を危険にさらす結果になることがいわば実証されたのです!

中東に駐在する日本人のビジネスマンやNGO活動をする人が、それまでは「JAPAN=平和国」として歓迎を受けて来られたのに、いつ襲われるか分からない危険にさらされ、日の丸を掲げて活動できなくなったと言います。
せっかく平和貢献のために日本人が活動してきたよき環境が、一国の首相の一言の発言で壊されてしまったのです!


集団的自衛権 持つことの危うさ

あれから半年も経たない今年5月から安保法案の議論が本格的に始まりました。

安倍総理はなにかとすぐに「日本の平和と安全を守るため」と口にします。

しかし、肝心の海外の日本人を守ることも、日本の領海内で万一の事があった場合の対応策も、「個別的自衛権」で出来ることです。それらについての具体的な議論はまったくしていません。

「今までどおり専守防衛に変わりない」と言いつつも、「日本と密接な関係にある国が攻撃を受け、我が国の存立が根底から覆されるような事態」において、「他に手段がない」場合に、「最小限度の武力行使」を可能にする(=新3要件)。

そのきわめて曖昧な表現がどういう事案を指すのか、個々のケースがそれに該当するのかどうかは、すべて政府の「総合的な判断」に任せられるというのです。そんな曖昧な規定が「法案」といえるでしょうか?

つまり日本が直接攻撃を受けていなくても、日本に対して敵意のない国に対しても、日本から武力行使することがあり得る、ということです。これを国際的には「先制攻撃」と呼ぶのです。
過去のあらゆる戦争も、自国の権利を守るため、国の存亡のために、最小限の(効率的な)武力行使で、やむを得ず…行われてきました。それを一切放棄したのが平和憲法(9条)なのです。

また自衛隊を海外に派遣して、他国のために「支援」できるようにする。これらは明らかに憲法違反の法案です。それをごまかし通そうと、噛み合わない議論を繰り返してきました。

そしてこの安保法案を通すことによって「日本がより攻撃されにくくなる」と安倍総理は言いますが、実際は日本(人)をますます危険にさらす結果になることは明らかです。

すでに昨年から武器輸出を解禁し、他国の戦争に協力・支援することは始まっています。
→ 「イスラエルより愛をこめて」(2014.7.23)


持たざることの強さ

コスタリカという国は、“米国の裏庭”と言われるほど、世界随一の超大国の影響を強く受けざるを得ない地理的条件にあり、中米地域は、20世紀後半には“世界の火薬庫”と呼ばれる状態だったといいます。

ところがコスタリカは、法的には軍備を持てるが、あえて持たないという選択をしました。いわば「非武装」であることを最大の防衛力としたのです。

コスタリカ

詳しくは…
「集団的自衛権放棄」で逆に「国防力」を増したコスタリカ 逆転の発想"

万が一どこかが攻めてきたとしたら、これはコスタリカに対するというより「平和主義に対する脅威」と捉えられます。
そんな平和主義国家が攻められているのだから、助けないわけにはいかないという論理です。
他国から援軍を出してもらって助けてもらうことはあっても、他国のために援軍を出すことはあり得ない、ということです。

日本の平和憲法も、これに似た発想をもつものだったはずです。

防衛(=国を守ること)は大切です。しかし集団的自衛権を持つべきか、もたざるべきか、どちらを選ぶかは国の選択です。


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難しすぎてよく判らない

国会中継見ていてもよく判らないのです。

今回の安保法案は下記の様な事を解決する為に成立させようと
していますと政府側は答弁で言っているつもりに聞こえますが

竹島や北方領土が日本に帰って来る様になります。

北朝鮮に拉致されている人達が日本に帰って来られます。

もし実現出来るなら、国民に具体的に判る様に説明して、憲法改定
して、必要な法律整えれば、と思うのですが、違うんでしょうか?

Re: 難しすぎてよく判らない

Syu(chan) さん、コメントありがとうございます。

「難しくてよく判らない」というのは、私のこの記事がでしょうか?
このテーマに関してですか?それとも政府の答弁がですか?


本文に書いたように、「日本を守る(=防衛)ため」と言いつつ、「わが国と密接な関係にある国(=同盟国アメリカなど)が攻撃を受け」「日本の存立を根本からくつがえすような事態(具体的にどういうことかは言わない)」に、「他に解決の手段がない場合」に「必要最小限の」武力行使も…

どこをとっても具体的じゃありません。
きわめて曖昧で、「こういう場合は含まれるのか」と質問しても正面から答えない総理。
「日本が直接武力攻撃を受けていなくても、密接な国(アメリカなど)が攻撃を受けて、日本の存立にかかわる事態と判断すれば武力行使することがありうるのか」と言う質問。日本語を正しく解釈すれば、そういうこともあり得ますね。
相手国が必ずしも日本に敵意をもって攻撃をしかけていなくても、同盟国を守るために日本が武力行使を起こす…それを国際的には「先制攻撃」と言うんです!

また「日本の安全が根底から覆される事態」「存立にかかわる事態」というのも、どこまで含むのか?
中東からの石油が入って来なくなれば「日本の存立にかかわる事態」になるのか?
ホルムズ海峡の機雷除去をすることは、軍事行動とみなされるのではないのか?

そんなレベルの議論を延々とやり、野党からの質問・追及に決して正面から答えようとしない安倍総理はじめ政府側。

社民党の福島みずほさんがうまい喩えをされています。


Q「きょうは曇りですか?」という質問に対して、安倍総理の答えは…
●おとといは晴れていたと思う
●曇りの定義は国際的・学術的にも決まっておらず、私がここで断言することは控えたい
●曇りであると断言することは、議論を狭めることになる
●曇りであるか曇りでないかは、総理である私が総合的に判断する

…とまあこんな調子だと。まさにその通り。
答弁を繰り返せば繰り返すほど分からなくなっていき、ごまかし・すり替えによって逆に矛盾点や危険さが露呈していく。

そういう意味で私も「よく判らない」です。
こんな議論に時間だけかけて、なにが「丁寧に説明していく」「国民の理解を深めていきたい」でしょう!?


★いただいたコメントにあるように、竹島や北方領土を日本のものかどうかとか、北朝鮮に拉致された日本人を早く帰還させるといったこととは直接は関係ありません。

★要は、日本の国会でまだ議論もしてないうちに、アメリカの議会で「日本はこれからもっとアメリカに軍事的にも協力できるような体制をつくります」と宣言してしまったんです。一般の常識からすれば背任行為です。

それを、「日本を守るために」と表向きは掲げながら無理やり通そうとしているから、ますます話がごちゃごちゃになって訳分からなくなるのです。この法案が本当に意図するところを正直に国民に提示し、分かりやすく説明し、民主的に議論しよう、などというつもりはもともとないのです。わざと「わけわからなく」して、強引に通そうと…

よく判らないまま、なんとなく「日本を守るための防衛は大事だから」と賛成してくれる人が多ければ助かるんでしょう。

No title

ごていねな、お返事ありがとうございます。
判らないのは主に安倍総理の答弁、説明ですね。

「日本を守るために」なら、
「日本領土を守る」か「日本国民を守る」か、
当然の様に「両方守る」のだろうと思うのですが、
答弁など聞いていてもその様には聞こえて来ないので、
私には「難しすぎてよく判らない」のでしょう。

Re: No title

Syu(chan) さん


そう、答弁を重ねれば重ねるほど判らなくなり、不信感が増す…安倍総理の答弁はそういうものが多いです。
社民党の福島みずほさんが、自らのページでアップされていた動画での喩えが分かりやすいのでご紹介します。

Q.「きょうの天気は曇りでしょうか?」という質問に対して…

●おとといは晴れていたと思う
●曇りの定義は、国際的にも学術的にも定まっていないので、私がここで応えるのは控えたい
●確かでないことをここで申し上げるのは、かえって無責任だろう
●曇りであると断言することは、議論の幅を狭めることになる
●曇りであるか曇りで内科は、総理である私が総合的に判断する

…とまあこんな調子です。

はぐらかし、ごまかし、すり替え…もともときちんと説明しようという気があるのかどうか?
それでいて、なにかと「国民の理解を得られるよう、ひきつづき丁寧に説明していく」と。

なにか重大なことを決めようとするなら、まずきちんと議題をテーブルにのせ、具体的にどういうことを意味するのか、何が必要なのかを説明し、是非を議論してから決めるべき。
説明をきちんとして議論する気があるのかどうか…?

このあたり、さきほどアップしたこちらの記事もご参照ください。
→ http://resolutely.blog6.fc2.com/blog-entry-973.html

プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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