木綿のハンカチーフ

5月5日(火)

深夜に模型を作りながら、よくFMを聴いています。
今年は放送70周年ということもあり、昭和の懐かしい歌謡曲が流れます。

年代ごとの代表的な歌謡曲をあらためて聴き直してみると、自分が何歳ごろだったか、その頃どんなことがあったか…音楽って当時のことを鮮明に蘇らせてくれますね。

ところで、懐かしい歌をあらためて聴いてみると、いろいろ気づくこともあるものです。


♪「木綿のハンカチーフ」

1975年12月に太田裕美さんの4枚目のアルバムとして発売され、最大のヒットとなった代表作です。高校を卒業して予備校生活(浪人)を送っていた時によくFMから流れているのを聴いていました。

♪「恋人よ、僕は旅立つ、東へと向かう列車で」

当時はまだ東北・上越新幹線はありませんから、東へ向かう列車といえば東海道・山陽新幹線を思い浮かべます。どこか地方から、東京か名古屋か大阪あたりに出てくる…そんなシチュエーションですね。

私も、父の転勤で関西・名古屋で小中学生時代を過ごし、高校受験を翌年に控えた中学3年のとき、父の赴任先・広島を離れて、東京の祖母の家に出てきました。
実際の「ふるさと」ではありませんが、「東へと向かう列車」に乗るときの希望に胸を膨らませてわくわく、ちょっとドキドキする気持ちはよく分かります。

さて…

1番、2番、3番と、彼は都会での華やいだ生活に心はずませながらも、故郷にいる彼女のことを思い出しています。今のようにネットもメールもありませんから、おそらく手紙か、せいぜい電話でしょう。

1.「華やいだ街で、君への贈り物、探すつもりだ」
2.「都会で流行りの 指輪を送るよ、君に似合うはずだ」
3.「見間違うようなスーツきた僕の写真を見てくれ」

2番は「半年が過ぎ、会えないが泣かないでくれ」、3番では「今も素顔で、口紅もつけないままか」と、彼が都会の生活に馴染むにつれ、彼女への想いに少し変化が起きていることに気づきます。
それが4番では決定的になり、「恋人よ、君を忘れて 変わっていく僕を許して 毎日愉快に過ごす街角 僕は僕はもう帰れない」…と。
そこで、彼女は最後の贈り物に、涙ふく「木綿のハンカチーフ」をねだるのですね。

このストーリー、何度聴いても彼女が可哀想に思えますね。都会での華やいだ生活に染まって彼女から離れていってしまう…明るいメロディでリズミカルなんですけど、それがよけい哀しさをそそりますね。

華やかだけど、空気も人も冷たく、競争の激しい都会よりも、自然豊かな田舎暮らしも捨てたもんじゃないのに…高度成長への反省も込めて聞けば聞くほど、彼女が可哀想に思え、都会に染まって離れていく彼が許せない…そんな気持ちでずっと聴いてきました。



でもあらためて1番から3番まで、後半の彼女からの返事の部分を見てみると…

1.「いいえ、あなた、私は欲しいものはないのよ、ただ都会の絵の具に染まらないで帰って」
2.「いいえ、星のダイヤも海に眠る真珠も、あなたのキスほど輝くはずないもの」
3.「いいえ、草に寝転ぶあなたが好きだったの (ただ木枯らしのビル街 身体に気をつけてね)」

彼女の言うことはけなげで純粋なんですが、すべて「いいえ」で始まっていますね。
曲は、前半明るい調子で進みますが、ここでちょっとマイナーコードになります。

彼はともかく都会に出て、新しいことにもチャレンジもしたいし、夢もあるのでしょう。それを彼女に伝えたい、認めて欲しいのです。なのに、彼女の答えはいつも「いいえ」の否定形の答えばかり。

2番なんか「あなたのキスより輝くはずないもの」なんてかなりドキッとするような内容ですし、3番も彼の健康を思いやる彼女の優しさが出ていますが、彼が伝えたいのはそっちじゃなくて、都会で元気に楽しく過ごしている自分の姿を認めて欲しい、少しは褒めて欲しいんですね。



せっかくの彼からのプレゼンテーションをすべて否定して、ただひたすら帰ってきて欲しい、でも身体には気を付けてね…

自然ゆたかな田舎暮らしで、草に寝転んで、素顔のままで、ずっと仲良くしていたい、もういちど帰ってきてほしい…そんな彼女の純粋で切ない気持ちはもちろん分かります。
でも、ずっと昔のままの彼でいて欲しい、ただただ帰ってきて欲しいと願うだけで、彼の夢を認めたり、自分もちょっとそこに近づいて見よう、追いかけてみよう、覗いてみよう、というところがないのです。

極端な解釈をすれば、彼からすれば「今」も「未来」も否定され、ただ「過去」に戻ってきてくれることだけを待たれている…自分はどんどん変化しているのに、彼女はまったく変わろうとしない…彼の心がだんだん離れていくのも無理ないでしょう。

彼女だけが一方的に悲劇の主人公なのではなく、そんな彼女から次第に心が離れていってしまう自分がもどかしく、哀しかったに違いありません。

たまには、都会の話を聞かせて欲しいとか、一度遊びに行こうかなとか、いまなら東京スカイツリーに連れてってとか、大人の雰囲気のお店に連れてってとか…それができる彼女だったら、きっと木綿のハンカチーフは要らなかったんじゃないかと…

ちょっと大人になって、男女が理解し合うのは本当に難しいものだな、相手がいま望んでいることを少しは分かろうとしなくては…なんてつい思ってしまうオジサンからの余計なお世話でした(笑)






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思い出しました...

太田裕美の甘く切ない歌声と共に、
純粋だったあの頃の自分が蘇えりました。
そうかぁ~ 男の側の解釈ってそうだったのね、
考えてもみなかったけど、懇切丁寧な解説(笑)の
お蔭で、いろいろと思い出してしまったオバサンでした。

Re: 思い出しました...

サイコさん

そう、懐かしくて昔が蘇りますよね!太田裕美さんのキャラにぴったりあった純粋で可愛くてちょっと悲しい曲です。
今回の解釈、「男の側の立場からの見方」というよりも、時間を経て(多少人生経験を積んで)あらためて男女お互いの関係を見る目で気づいたことです。

当時は私も彼女が可哀想だな、と思って聴いてましたし、彼氏が必ずしも悪くはないとしても、運命というか成り行き上の悲劇として。でもフェイスブック上でも、やはり時間(時代)を経てあらためて見て、この女性はまったく自分から動こうともせず、彼の今を認めてないな、と私とまったく同じ感想を持っていた方がいましたよ。

今回は音楽面の話をほとんど入れませんでしたが(笑)、テンポは速めですし、ギター・ストリングス・管などいろんな楽器が入っているので、ピアノでちょこっと弾くにはけっこう難しいですよね。なのにさらっと聴ける。いい曲だと思います。
イントロの上昇系のストリングスに「世界ふしぎ発見」を連想してしまうのは私だけでしょうか?(笑)
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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