マレットの補修

9月3日(水)

私がお世話になっている国立音楽院には、当然ながらたくさんの楽器があり、それぞれ専門の方たちがメンテナンスしています。「楽器リペア科」というのもあるぐらいです。

ただティンパニ用のマレット補修はたまたまやる人がいなかったので、私が…

楽器庫内にあるマレットケースにはティンパニ用のマレットも多数ありますが、フエルトが擦り切れているものが何組かあり、去年からじつは気になっていて、MT(ミュージックセラピー)オーケストラのメンバーと時間を見つけてやろうかという話もあったのですが、せっかくなら学校としても公式の場で皆さんにも見られるようにと。


<作業工程>

作業工程を記録したので、私のブログでも公開しましょう。
★画像はすべてクリックすると大きな画面でご覧になれます。

古くなってすり減ったマレットたち。だいぶ酷使されたようですね。
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ハサミやカッターで縛ってある糸を切り、フエルトを丁寧にはがします。
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頭の芯の部分はコルクのものや木のものなどさまざま。材質・大きさ・重さによってバランスは変わり、当然ながら音も変わってきます。それぞれのマレットにどんな厚さのフエルトを巻いたら良いかは勘とイメージ。とにかくいろいろ作って、実際の演奏場面で使い分けて試してみることです。

愛用のマレットも巻き直すと音が変わってきますので、本番前夜ではなく、せめて本番までに1~2回練習のあるうちがお奨めです。

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今回用意したフエルトは、メガネ拭きぐらいの厚さ1ミリ程度のもの(赤・緑)と、自由に裂いて使える厚手のフエルト(5ミリ厚)の2種類。いずれも楽器専門店ではなく、街の手芸屋さんで売っているものです。
私が愛用しているのと同じタイプのマレットもあるので、厚手のフエルトを半分に裂いて使用する一般的な方法をご紹介します。

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まず、芯の部分をすっぽり包み込める大きさにフエルトを丸くカットします。糸を通して縛るとフエルトは案外伸びるので、あまり余裕を持たせ過ぎないで「ギリギリかな」と思う位のサイズでちょうどよくなります。だいたいこのようなプリンのカップの大きさが目安でしょうか。

5ミリほどの厚さのフエルトのほぼ真ん中にカッターで切れ目を入れたら、あとは手の感覚で少しずつ裂いていきます。

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両手の力の入れ具合に気を付け、裂けたフエルトの厚さを時々光に透かして見たりして、2枚が同じ厚みになるようにします。 一方向からだけ裂いていくのではなく、回しながら周りから中心に向かって行くようにすると均等になりやすいです。

同じ大きさ・同じ厚みのものが2枚できました。そのエッジ部分に、丈夫なタコ糸を縫い付けます。
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エッジから2~3ミリ内側に5ミリ間隔ぐらいでザクザクっと糸を通していきます。スタートとエンド部分は他の縫い目とほぼ同じ間隔で、相互に引っ張れるようにしておきます。糸は両方とも長め(手で引っ張って縛りやすい長さ)に出しておきます。

裂かれた面(柔らかい方)が表に来るように巻きます。
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マレットのヘッド部分にしっかり固定して糸を双方向から引っ張ります。ただ、いきなり強く引っ張ると糸が切れたりフエルトのエッジを破いてしまいますので注意!
球体によくなじませるようにゆっくりと締め上げていきます。糸を引っ張る方向は、当然ながらヘッドに巻かれたフエルトのエッジと水平の方向です(作業しやすいからと言って間違っても上に向けて縛り上げるとフエルトのエッジが裂けてしまいます。

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しっかりと縛り上げたら固く2重に結びます。せっかくきつく縛ったのに結ぶ段階で緩んでしまわないように、割りばしなどで結び目を押さえながら結ぶといいでしょう。
一人でやるときはバチのヘッド部分を膝に挟んでバチの尻側に顎をのせて押さえながら縛りますが、助手に持っててもらえると作業が楽ですね。
余った糸を切って完成です。

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気持ちよくリニューアルされたマレットたち。
一番奥の赤いヘッドは、薄手のフエルト(こちらは2枚に裂かずに1枚ものとしてそのまま使用)を巻いたもの。やや硬めの軽い音がします。

さらに硬さをいろいろ変えたりヘッド部分の重さを調整したい時は、フエルトを巻く前に芯の部分にちょっと細工をしてからフエルトを巻きます。
薄手のフエルト・布・皮などを芯の周りに帯状に接着剤(合成ゴム系)で貼ったり、少しヘッドを重くしたい場合は銅線か針金を巻いたりします(ただし叩く部分は避けて根本の部分に)。

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本日の打楽器部 手工芸班のメンバーたち。演奏とは対照的に静かなひと時でした。


<その他、色々なタイプのヘッド>

今回はもっともシンプルで万能ともいえる「てるてる坊主巻き」(←正式名称ではありません!)をご紹介しましたが、マレットの作り方には他にもいろいろあります。
演奏家やメーカーが協力し合ったりしてさまざまなものが作られています。

マレットの先端部分が細くなっていて、そこにドーナツ型のヘッドを差し込んでゴム等で固定するタイプもあります。
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ただ、このタイプは演奏中にネジが緩んできてカタカタと変な音がしたり、最悪の場合はネジが緩んでいることに気づかないまま演奏中にヘッドを飛ばしてしまう危険もあるので私はあまり好みません。


薄いベルベッドのような布を何枚もミルフィーユのように重ねて、重なった切片の部分で叩くタイプのものもあります。
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やや軽めで硬い音がして、古典のシンフォニーにはいい音を出してくれるので私も一組愛用していますが、これを自作するのは大変でしょう。


帯状にしたフエルトをぐるっと巻いて合わせ目を縫い合わせ、最後に天地を絞るタイプもあります。
芯の形状にもよりますが、俵のような筒型に近くなり、太鼓の皮(ヘッド)との接触面がやや大きくなることで少しやわらかい音になります。
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ただ、叩く面に一か所、縦に縫い目ができてしまいます(上の写真で上面に見えます)。
縫い目の部分で叩くと、パタパタと異質な音が混じります。オケのメンバーや客席にまでその音の違いは分からないでしょうが、叩く側の意識として嫌ですね。バチを持つ時にいちいち縫い合わせ面がどこにあるかを気にしなくてはなりません。

けっきょく上に紹介したような単純なテルテル坊主方式がもっとも単純でトラブルも少ないように思います。

また、同じ「テルテル坊主巻き」でも、フエルトを丸く切ったあとエッジ部分に山と谷の切り込みを入れて歯車のような形にして、フエルト内に水平に糸を潜らせて通す方法もあります。
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これのメリットは、最後に絞り上げる部分に波打ちが出にくく見た目がすっきりすることですが、フエルト地の中ほどに糸を通しているため、最後にきつく縛り上げる時に糸がフエルトのエッジ部分を裂いてしまう恐れがあります。

そんな理由から、私は今回紹介したように単純に丸く切ったフエルトにジグザグに糸を縫う方法でやってきました。
もし縛った後の浪打ちが気になるようなら(見た目はともかく、叩く面にまで浪打ちが及んでいるような場合には)、山になった部分をハサミで少しせん定してやるとよいでしょう。ただしあまり切りすぎないように。

ほかの打楽器奏者の皆さんも、なにかオリジナルのいい方法があったらぜひ教えてください。 
コメントお待ちしています。


2014.9.3 Akira Takagi 

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こんばんは(^^♪

うわぁ~、こんなふうにメンテナンスするのですね(^^♪
自分の知らない楽器(というより、ピアノしか知りません)、メンテナンスや扱い方、興味深く読ませていただきました。

Re: こんばんは(^^♪

そうなんですよ。学校関係で打楽器の人たちでも、最近はこういう手作りの補修をご存知ない方が多いみたいなんですが、せっかく自分の手に馴染んだマレット、自分なりに色々考えてリニューアルして長く使いたいものですね。
あ、ちなみにこの厚手のフエルトは、ピアノの調律師も愛用されてるみたいですよ。
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

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