「崩れ落ちる兵士」はウソ?

◆「崩れ落ちる兵士」(Falling Soldier)


capa001.jpg

1936年に写真家(戦場カメラマン)ロバート・キャパがスペインで撮影したもので、彼の名を一躍有名にしたと言われる代表作だ。

しかしこの写真については、以前から「やらせ疑惑」があった。 昨年、NHKでそれを検証した番組があった。

背景に写っている山の稜線から、この写真が撮られた場所(スペインのゴルドバの丘)を特定。
しかしスペイン内戦のあったその場所では、この写真が撮られた当時まで、実際の戦闘はなかったというのだ。

また、この崩れ落ちているように見える兵士が持っている銃は、撃鉄の位置から安全装置がかかった状態(すぐには撃てない状態)であり、もし実際の戦闘場面ならあり得ないという点。

訓練中に走って斜面を下りてきて、たまたま足を滑らせて転ぶ(尻もちをつく)瞬間を捉えた写真であると考えるとつじつまが合う。
 
しかも、この写真フレームのサイズから、この写真を撮ったカメラはキャパが愛用していたライカではなく、彼の恋人でやはり戦場カメラマンであったゲルダが使っていたローライフレックスで撮影されたものであるらしい。
キャパがその直前に撮影した写真が実在し、そこには複数の兵士が走る様子が撮影されていて、この「崩れ落ちる兵士」の姿もある。その写真の撮られた位置と、問題の「崩れ落ちる兵士」の撮影された位置をコンピューターで解析し、その間の時間を計算すると、当時のカメラで次のフィルムに巻き上げてシャッターを準備するためにかかる時間では無理であるとも。
したがってこの写真はキャパとは少しずれた位置からゲルダが撮影したものである可能性が高いというのだ。
 
ではなぜこの写真がキャパの撮った写真として有名になってしまったのか?
キャパはこの写真について殆どなにも語っていないという。この写真がたまたま世に出て脚光を浴びてしまったことで、キャパ自身も悩み、その後どんなカメラマンとしての人生を歩んだのか…?
のちに第二次世界大戦でノルマンディ上陸作戦を捉えたキャパの作品もあるが、彼がもっとも危険な最前線にこだわったのははぜか…?
そんな含みをもった展開で番組は結ばれたように記憶している。


戦場からのメッセージ

戦場にカメラ(スチールおよび活動写真)が入り、生々しい戦闘シーンを一般家庭でも見られるようになったのはいうまでもなく20世紀に入ってからである。それゆえ20世紀は「映像の世紀」とも言われる。

映像には、文章よりはるかに真実を生々しく伝える力があるが、どこのどういう場面をどう切り取るかによって、訴えるメッセージは大きく変わってくる。

先ほどの「崩れ落ちる兵士」も、この画像を見る人のほとんどはどういう状況を捉えた瞬間だと思うであろうか?

実際には敵との銃撃はなく、訓練中に単につまづいて転ぶ瞬間なのだ。しかしそれでもカメラがとらえた一瞬の光景であることにウソはなく、写真のタイトル通り「崩れ落ちる兵士」であることに変わりはない。 銃撃戦のさなかに敵の弾に当って倒れ込む兵士の姿、というのは写真を見る人が勝手に作り出したイメージではないだろうか?
 
しかし、この写真がたとえ兵士が撃たれた瞬間をとらえた写真ではなかったとしても、戦場では実際に敵の弾に当って死んでいく兵士たちが多数いたことは事実であり、どんな姿で一瞬何を思って死んでいったのだろうか、ということがこの1枚の写真から想像されないだろうか?


イスラエルより愛をこめて

いま、イスラエルとパレスチナの関係で、ガザ地区では連日砲撃が繰り返され、幼い子供たちも殺害されている。それは紛れもない事実である。
またイスラエルとパレスチナとの間には、長年にわたる憎しみの連鎖があり、攻撃するイスラエル側の人々の中には、ガザへの攻撃を、まるで花火でも見物するかのようにポップコーン片手に楽しんで見ている人たちもいるという。

しかし、そうした画像や報道がじつは「やらせ」であったり「情報操作」だとも言われている。
われわれは実際にその現場に行って見てきたわけではないから、そのあたりの真相は分からない。

★ガザへ発射する砲弾に「イスラエルより愛を込めて」と書くイスラエルの子供。 
ガザ地区へ発射される砲弾に「イスラエルより愛をこめて」とサインするイスラエルの少女。


今日の映像技術の進歩はめざましく、CGを使えばどんな合成もできてしまう時代になった。
実際にはそこにいない風景の中に人をはめ込んだり、持っているものを全く違うものに変えてしまう技術があることは、映画やCM、さらにさまざまな冗談画像を見ても分かる。

誤解を恐れずに申し上げるなら、私はあえてこんなとらえ方もあり得るのではないかと思う。

サイトで見つけた画像をシェアするとき、その画像が本物かどうか、出所はどこかを見極めることも重要だが、その画像が訴えようとしているもの、その背景にある人々の気持ちや、発信された趣旨をメッセージとしてくみ取ることが重要ではないだろうか?

かつての「崩れ落ちる兵士」も、今日の「イスラエルより愛をこめて」も、戦争とはこういうものだ、こういうことが起こりえるんだという一つのイメージを形にした「作品」として、音楽・絵画・彫刻・小説などと同じように捕らえればなんの問題もないのではないかと、私は思ってしまうのだ。

★この記事は、このひとつ前の記事「イスラエルより愛をこめて」と連動しています。



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これがもし偽造・合成だったら…?

もしかしてこの画像が「合成」によるものだとしたら…
そもそも軍用の砲弾が置かれているこんな場所に一般市民の女の子が近づいて、砲弾に寄せ書きできるものなんだろうか…? 
疑い始めるとまったく違う見え方になり、違う方向へ想像力が働きます。

女の子がペンで書いているのは、本当は弾頭ではなく街の壁かなにかで、そこには日本の七夕の短冊に書くような願い事を書いているのだとしたら?
それを砲弾の画像(少女の後ろにカメラマンもいる)とじつに巧みに合成したとしたら…?
いったい誰が、どこに対して、なんの目的で…?

「イスラエルの子供はこんなひどいことをしている。イスラエルはとんでもない国だ」という歪んだ情報を「ねつ造」してパレスチナ側に流し、さらに恨みの連鎖を煽る結果に…ということになってしまいます。
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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