3色・7色・12色で遊ぶ

5月31日(土)

5月最後の週末、下の娘の通う小学校では運動会が行われました。
運動会といえばわれわれの年代の感覚では10月(秋)ですが、今は小中学校で一斉に10月に行うと兄弟の運動会が重なってしまうことも考慮して、この時期に行う学校もあるんですね。
関東ではこの時期は梅雨入りも近く雨が心配されますが、運がいいのかだいたい例年いい天気に恵まれて順延にならずに行われます。

それにしても今日は真夏を思わせるような暑い一日となり、子どもたち・親・学校関係者にとっても厳しかったですが、みな全力を出し切ったいい運動会でした。 

いったん家に帰って汗を流したあと、夕方から学校のレッスン室をお借りして鍵盤としばし戯れてきましたが、あらためて思うのは「音の不思議」です。
このブログをご覧になる方で、音楽の詳しい話が苦手な方はどうかスルーしてくださって結構ですが、これまでにも書いた内容とも重ねて、一応どなたにも分かりやすく伝えられるかどうか、書いてみます。

なお、コード(和音)については昨年もいくつか記事に書いていますので、こちらもよかったらご参照ください。
→ 「リハーモナイズ(Ⅰ・Ⅳ・Ⅴからの脱却)」


3色から7色の絵の具へ

一般にどんな曲でも、Ⅰ・Ⅳ・Ⅴの3つの和音だけでたいてい伴奏はできます。
ハ長調でいうと1「ドミソ」、4「ファラド」、5「ソシレ」。
この3つの和音はいずれも、下の2音の間隔が長い3度で、上の2音が短い3度。明るい響きのする和音です(真ん中の音を半音下げると暗い響きになります)。

でも、ハ長調ならば「ドレミファソラシ」という7つの白鍵の音をベース(根音)として3つの音をだんご3兄弟のように重ねると、7つの3和音(ダイアトニックコード)ができます。
以前の記事にもアップしましたが、7つの和音に番号をつけ、それぞれのコードネームを記したのがこちら。 

7つの3和音a 

これはハ長調だからすべて白鍵ですが、どの調でもその調を構成する7つの音を使って7つの3和音を作ると、明るい和音(長3和音)が1・4・5の3つ、暗い和音(短3和音)が2・3・6の3つ、そして最後に減3和音が1つできます。

赤で<印をつけたところが、間に黒鍵が2つ入る広い3度(長3度)で、青で<印をつけたところがそれより半音分狭い3度(短3度)。
長3度の上に短3度が乗っかった和音は明るい響きになり(赤で示した3つ)、逆に短3度の上に長3度が乗っかる(真ん中の音が半音下がる)と暗い響きになります(青でmの文字の入った3つ)。
最後の「シレファ」は、シ~レも短3度、その上に乗っかるレ~ファも短3度。後に書きますが、「dim(ディミニッシュ)」と言われる減3和音です。ちなみにハ長調の「シ」という音は主音の半音下にある音で、主音を導く音(=導音)と呼ばれます。

この7つのコードは、喩えて言うならパレットに7色の絵の具を出したようなものです。これをどういう順序で使っていくか…?

先ほどの「Ⅰ.ドミソ」「Ⅳ.ファラド」「Ⅴ.ソシレ」という明るい3つの和音だけを使った音楽は、いわば光の3原色のように、純粋で明るく、汚れをまだ知らないまぶしい世界です。幼稚園の子供たちにはこれ位がちょうど良いのかもしれません。

ただ大人になると、誰もみな「悲しみ」や若干の「汚れ」「ほろ苦さ」も味わうようになります。7つの絵の具の中には、Ⅰ・Ⅳ・Ⅴの明るい3和音だけでなく、ちょっとさびしい短3和音も3つ(Ⅱ・Ⅲ・Ⅵはマイナーで「m」がついてます)。さらに最後の「シレファ」は、先ほど書いたような減3和音でやや不安定に縮められたような和音ですね。

これら7色を使ってみると、大人のややほろ苦さも含んだ「味」が出てきます。
でも、ただやみくもに使えばいいのではなく、どういうタイミングでどういう順序でこれら7色を使っていくか? その前に…


「ソシレ」→「ドミソ」、なぜ5度下に引っ張られる?

「ソシレ」という響きそのものは永久不滅の響きです。ト長調ではこれが主役のもっとも安定した響き(=トニック)ですが、ハ長調では5番目の音(=属音)をベースとする和音(ドミナント)で、ハ長調であることを意識した中でこの響きを聴くと、早く主音「ド」に戻りたくさせる響きになります。役割が違うと顔(響き)も違って聴こえるから本当に不思議ですね。

バッハやベートーベンの曲の中にも、ある調の中で属音(=主音から5度上の音)がずっと響き続け、さんざんじらされて早く「Ⅰ」(=主音)に戻りたくさせ、「やっと帰ってきた」安心感を与える手法がよく使われます。

さらに、5番目の属音をベースとする和音(=ハ長調では「ソシレ」)の上にもう一つ、4つ目の団子(下のソから7度上にあるファ)が加わったものを「属7」と言います。この属七の響きは、なおいっそう主音に引っ張られる引力が強くなります。それはなぜでしょう…?


属7とは?

音階をつくっている7つの音(ハ長調ではすべて白鍵のドレミファソラシ)には、ひとつひとつ名前(役割名)があります。 全部を覚える必要はありませんが、主音から5度上が「属音」、主音から7つ上(上の主音より半音下、ハ長調では「シ」)の音は「導音」(=主音へと導く音)という名前がついています。

音階の名前

主音から5つ上の「属音」は、「主」に対して「属」、完全5度の開きです。古代ピタゴラスが「音は比率でできている」というこを発見した時から、5度というのは特別な意味をもつ音程(音と音とのインターバル)とされてきました。1オクターブ内にある12の音も、すべてこの5度の倍音律でできています(→後述)。

「ド」から上に5番目の「ソ」は「属音」で、その下にある「ファ」を「下属音」と言いますが、この説明だと誤解を生みます。「属音」のひとつ下にあるから「下属音」ではないのです。
主音「ド」は下と上の両方にあります。「ソ」は下の「ド」から上に5度。「ファ」は上の「ド」から下に5度。だから「主音から下に5度の位置にある属音=下属音」なんです。
つまり「属音=主音と5度の関係にある音」と考えていいでしょう。 

属音・下属音

「ドミソ」を真ん中に挟んで、上に「ソシレ」、下に「ファラド」がまるで釈迦三尊のようにあるのです。
これが先ほどのⅠ・Ⅳ・Ⅴの三原色。いかに5度の響きが重要なキイになっているかが分かります。



さてお待たせしました、「属7」の話に戻しましょう。
ハ長調で5番目の音「ソ」をベース(根音)とする3和音「ソシレ」。その上にもう一つ、ソから数えて7度上にある「ファ」を乗っけた「ソシレファ」という和音、これがハ長調での属7です。

この説明で「属七」という名前はご理解いただけると思いますが、「ソシレ+ファ」=「属・7」という覚え方では、その響きがなぜ「ソ」より5度下にある主音をベースとする「ドミソ」によりいっそう戻りたくさせるのかが理解できないと思います。

(ドミソ)→(ソシレ)→(ドミソ)」といえば、そう、「気をつけ」・「礼」・「なおれ」の真ん中の音。頭を下げた状態がずっと続くと頭に血が上ってきて早く頭を上げたくなる、あのベース音が属音「ソ」ですね。

その属音「ソ」をベースに、ハ長調の7つ目の「シ」(=導音)をベースとする「シレファ」という和音が乗っかっている、つまり 「ソ+シレファ」と見るとどうでしょう?

7番目の「シレファ」(上の図の「7」番目)は、下の2音も上の2音もいずれも短い3度が重なってできていて、シ~ファは不完全な5度(=減5度)です。背伸びをしているのに頭を押さえつけられたような、なんとも収まりの悪い不安定な響きで、早く半音上の主音に戻りたくなる和音ですね。

「ソ+シレファ」→「ド」へ戻るしかない、いわば王手が二重にかかったような響きであることが明らかでしょう。

「ソシレ」は、ト長調では主人としてもっとも安定した和音です。でもその上に「7」の音(=ファ)を加えた瞬間、「俺、じつは5番目の兄弟なんだ」という顔に早変わりし、5度下の本当の主役=「ド」を引っ張り出させるのです。これは響きの移り変わり(=コード進行)にとても有効な原理で、いろんな使い方ができます。

ひとつは、いま流れている調の中では、先ほどから書いてきたように早く主音「ド」の響きに「戻りたくさせる」使い方です。 バッハやベートーヴェンは、この5度の引力をうまく使って、主音に戻りたくなる気持ちを溜めて終結させるような主要をよく用いています。主音を呼び出す5度ですね。

もうひとつは、段々畑を浮遊するかのように、5度下の違う世界へ「色変わり」するような使い方です。
ある安定した長三和音(たとえハ長調の主役である「ドミソ」)に7番目の「シ」の音がつけ加えられた瞬間、安定した主役の和音が「俺ってじつは5番目の兄弟なんだ」という顔をちらっと見せ、5度下から本当の主役(ドより5度下の「ファラド」)が登場するのです!
さらにこのヘ長調の「ファラド」が主役かと思いきや、7つめの「ミ」が加えられて、主役はさらに下へ…と。

7度進行b
 

このように、基本3和音の上に「7」の音が加わることが引き金となって、ベース音が5度下へ、5度下へと移り変わり、まるで段々畑の上を浮遊して違うステージへと展開していくようなコード進行。
これを「5度進行」といいます(7つ目の音がキイになって5度下の世界を誘い出すことから「7度進行」とも言われます)。
シャンソンの「枯葉」、映画音楽の「白い恋人たち」、歌謡曲では竹内まりあの「駅」、来生たかおの「グッバイデイ」、韓国ドラマ「冬のソナタ」のテーマなど広く用いられますが、古典でも用いられてきた手法の応用です。



パレットの7色をどんな順序で使っていくか?

属7や「5度進行」についての説明が長くなりましたが、この原理をうまく使って7色の絵の具を使ってみるのがリハーモナイズです。

たとえば「1→5→1」と動く代わりに「1→6→2→5→1」という動き。

「1→6」は、主音(ド)から6つ目の音「ラ」へ移るのですが、見方を変えれば主音(ド)より3度下。
C(ハ長調の明るい「ドミソ」)と、その3度下にあるAm(イ短調の暗い「ラドミ」)は、ハ長調とは並行調の関係にあって、響きとしては兄弟のような関係。
いや、兄弟というよりも、明るさと暗さを表裏一体で合わせもつ人の内面のようなものかもしれません。「♪上を向いて歩こう」や「♪ムーンリバー」の冒頭でもこの明暗はうまく使われています。
そのあとに続く「6→2→5→1」は、すべて5度下・5度下へ…と行く「5度進行」です。

あと「1→6」へ行く代わりに、「1→2」と行き、その後はやはり5度進行で「2→5→1」で完結。ややジャズっぽい雰囲気で使えるようです。

さらに、「1→2→5」または「1→6→2→5」と行ったあと、「5→1」へとすぐに帰らずにもう少し遊ぶ方法として、「5」の明るい「ソシレ」から3つ下の「ミソシ」に行くこともできます。
先ほどの「ドミソ」→「ラドミ」と同じく、長3和音の3度下にあるのは必ず短3和音ですから、ここでまた「色変わり」が味わえます。そしてそのあとは「3→6→2→5→1」という5度進行。頭からつなげると「1→6→2→5→3→6→2→5→1」…即興ではこんな風に遊べます。

でも、これだとまだ7色すべてを使いきってません。「4」「7」が残ってしまいますね。
そこで、7色すべてをもっとも簡単にスマートに使える方法として、すべて5度進行で連続させる方法があります。


1(主音)→4→7→3→6→2→5→1

ハ長調なら「ド→ファ→シ→ミ→ラ→レ→ソ→ド」、並行調のイ短調なら「ラ→レ→ソ→ド→ファ→シ→ミ→ラ」。いずれも7色に色変わりしていって8回目で元の音に戻ってきます。

「♪枯葉」「♪白い恋人たち」「♪最初から今まで(冬のソナタのテーマ)」「♪駅(竹内まりあ)」など、ワンフレーズが8小節でできていてこのコード進行がぴったりはまる曲は多いです。
クラシックでも、ヘンデル・ヴィヴァルディなどバロック時代からすでに使われていますし、近代ではラフマニノフの交響曲2番の3楽章の出だしもまさにこの5度進行です。


黒い世界も含めて 「12色の世界」へ

その便利な「5度進行」ですが、じつはその中に一か所「いんちき」があるんです。お分かりでしょうか?
ピタゴラスが鍛冶屋の前を通ったとき、ハンマーを打つ2つの音がきれいなハーモニーを奏でていたので、ハンマーの重さを量ってその比率で音が決まるということを発見したのです。エピソードではハンマーの「重さ」と言ってますが、今でいう振動するものの周波数の比率ですね。これが2対3の比率になっているのが完全5度の関係です。

ところが、先ほどの7つの白鍵だけを5度の関係で結んでいく中で、きちんとした完全5度になっていない場所が1か所あります。
それは「ファ」から下の「シ」に降りるところ。「シ~ファ」の間をよく見ると、「シ~ド」と「ミ~ファ」の2か所が半音で、間に黒鍵がありませんね。

鍵盤シ~ファ・黒鍵

他の「ド~ソ」、「レ~ラ」、「ミ~シ」、「ファ~ド」、「ソ~レ」、「ラ~ミ」…完全5度の関係では、間に黒鍵が入らない半音の隣り合わせは1か所しかなく、半音で8コマ分なのですが、「シ~ファ」の間だけは半音で7コマ分しかない、不完全な5度(=減5度)なんですね。
かつて16世紀の対位法でも、「シ~ファ」という音程は「悪魔の音程」と呼ばれ避けられたのです。


5つの黒鍵が加わって12色に

この「シ~ファ」を完全5度にしようと思ったら、「ファ」に♯をつけて半音上げるか、もしくは「シ」に♭をつけて半音下げるか。ここでは「ラ→レ→ソ→ド→ファ」と来た流れから「シ♭」にしましょう。ここで黒鍵の世界へと入っていくのです。

ちなみにドイツ語では「シ♭」のことを「B(ベー)」と言います。「A(アー)=ラ」の次にこの「B(ベー)=シ♭」が来て、「C(ツェー)=ド」、「D(デー)=レ」、「E(エー)=ミ」、「F(エフ)=ファ」、「G(ゲー)=ソ」と続きます。そして白鍵の「シ」は「H(ハー)」。
ドイツ語では「シ♭」がとっても重要な音のようで、白鍵のシは「G(ゲー)=ソ」の後に付け足したような名前です。白鍵の「シ」にも名前がないと不便だから、最後に付け足したような感じですね(笑)

一方英語では「B(ビー)=白鍵のシ」で、「シ♭」のことは「B♭(ビーフラット」と言います。「B」とだけ表記されている場合どっちなのか、紛らわしいですね。

さて、ファの次に「シ♭」がきて、そこから完全5度下にあるのは「ミ♭」、そしてその5度下は「ラ♭」、「レ♭」、「ソ♭」、ここで5つの黒鍵が出そろいました。
つまり、5つの黒鍵は完全5度の関係でできたペンタトニックなんです。ピアノを弾けない子どもでも、右のペダルを踏んですべての音が響く状態にして、黒鍵だけを手で押さえてみると、美しいハーモニーになることが分かります。白鍵を手のひらで押して隣同士の音が混じると汚くなりますが、黒鍵ならば高~低・隣同士、どこをどんな風に重ねても美しい響きに聞こえます。

そして「ソ♭」から5度下は「ド♭(=白鍵のシ)」です。ここからは先ほどの白鍵の世界に戻り、「シ→ミ→ラ」でもとに戻ります。 これで7つの白鍵+5つの黒鍵=合計12色が揃いました。


12単衣を自由自在に着こなす

では、この半音も含めた12色で描く音楽とは…?

すべての音を使おうと頑張るのではなく、先ほどの「1→6→2→5→1」の中で、例えば「Am」の真ん中の「ド」を「ド♯」に変えて明るくしたり、「ドミソ」の根音「ド」を半音上げて「ド♯」に変えたり(=ディミニッシュ)、「ファラド」の真ん中の「ラ」を半音下げて「ラ♭」にしてちょっと陰りを与えたり…

次のコードに移り変わるところでちょっと「色変わり」をやってみるだけでとぐっと色彩感が増します。
また、ベース音や中声部の音が移行する途中に黒鍵を入れたりすると、コード進行に流れが出てきます。
私もまだそのあたりをすべてを書き尽くせるほど勉強していませんので、いろいろと遊びながら「お洒落な音」やちょっと「ズージャな音(ジャズっぽい音)」も含めて探していきたいと思っています。

和声学やハーモニーを学んでも、単に教科書に書かれている文章だけを読んで理解しよう、覚えようと思ってもなかなか身に付くものではありませんし、実際に即興で使えるようにはなりません。
やはり人生そのものと同じで、「遊び」が何よりも大切なんだと実感するのです(笑)
 


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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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