「美味しんぼ叩き」に思う

5月14日(水)

<5月13日 中日新聞より>

綿密な取材を受けた


小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」の漫画「美味(おい)しんぼ」に「岐阜環境医学研究所長」として実名で登場し、原発事故や震災がれきと鼻血の関連性を指摘している元岐阜大助教授の松井英介医師(76)=岐阜市=は12日、本紙の取材に「すべて事実。実際に異変を感じている人たちがいる」と主張した。福島県や大阪市などの抗議には「〝事実無根〟というのは、その人たちに失礼だ」と反論した。

松井英介医師 松井英介医師

放射線診療が専門。福島県双葉町に依頼されて2012年度から町の放射線アドバイザーとして年間数十日、町内に滞在し、多くの被災者から「鼻血が突然出る」「せきが止まらない」「体がだるい」などの症状を聞き取ったという。
「美味しんぼ」の原作者の雁屋哲さんと昨年末に出会い、4カ月にわたり「綿密な取材を受けた」と強調。問題の漫画を「子どもたちが読んで、自分の体の仕組みや放射線に関心を持ってほしい」と話した。

同氏の関連記事→ 「真実を探すブログ」



私には医学や放射線の専門知識はありませんが、常識的に考えてこの医師の言うことの方が正しいと思います!
チェルノブイリを見ても、ヒロシマ・ナガサキを見ても、放射能が人間に与える影響は確実にあります。

それに、そもそも「美味しんぼ」はフィクションですよね?
それに対して、まるで「名誉棄損」のように騒ぎ立てて抗議する方がおかしいように私には思えてならないんですが…

たしかに根拠のない風評被害はいけません。震災直後からそれを払しょくし、福島にも元気になってほしい…そういう思いはたしかにありました。今でも私は根拠のない不安に振り回されることなく、福島のみなさんにも元気に過ごしてほしいと思っていますし、福島にも足を運んだこともあります。

でも、事故から3年以上過ぎてもいまだに収束していない原発。さらにさまざまな失態を繰り返して汚染水を垂れ流され、放射線も現実にある中で、まったく影響がない方が不思議ではないでしょうか?

それを隠して、根拠もなく「安全だ」と言い切ることの方が、被災地の方に失礼であり、与える不安は計り知れません。むしろ「正しい情報」を求めている福島県民や国民が多いのではないでしょうか?

東電ももちろん、原発政策を進めてきた国も加害者、地元・福島は被害者です。被害を少しでも小さく見せたい加害者と、「風評被害」を恐れる被害者…この場に及んで何を隠したいんでしょうか?さらに国の官房長官まで出てきて「根拠はない」などとどうして言い切れるんでしょうか?この場に及んで見苦しい以外の何物でありません。

大阪のH市長が、小学館側に「明確な根拠を出すように」などとコメントしているようですが、逆に、もし本当に安全だというのなら、国も福島県も「安全であることの根拠」を示す方が話が早いのではないでしょうか…?

また、脳科学者の茂木健一郎氏も…

<5月13日 Yahoo!ニュースより>

小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」の漫画「美味しんぼ」で主人公らが東京電力福島第1原発を訪問後に鼻血を出すなどの描写があった問題について、脳科学者の茂木健一郎氏(51)が13日、ツイッターで持論を展開した。

今回の描写について茂木氏は「『美味しんぼ』は、以前から、作者の方が強い信念を持って描かれている漫画だと認識している。その延長線上で言えば、今回の福島の原発事故被害について、あのような表現をしても、意外ではないし、むしろ、ああ、おやりになるだろうなという印象しか、私は持たなかった」と驚くような内容ではなかったという考えを示した。

統計をもとに調査した科学論文ならともかく、「『美味しんぼ』に述べられているのは、あくまでも一人の表現者の見解である」。それに加え「美味しんぼ」以上に原発事故による被害等を指摘する言説が数多く存在する中で、「さまざまな主張が並立するのが民主主義社会というもので、『美味しんぼ』を特別視する理由が、私にはわからない」と「美味しんぼ」を“叩く”風潮に一石を投じた。

菅義偉官房長官、石原伸晃環境相ら閣僚からも同作への批判が相次いでいるが、それに対し「それ以上にわからないのが、一部の政治家が、今回の『美味しんぼ』の表現を問題視し、対応策をとるなどと発言していると伝えられていること」と指摘。「立法府の構成員として、心を砕くべきは福島の復興支援のための立法措置であり、一つの漫画がどのような表現をしたかということをあたかも魔女狩りのようにわめきたてることではないと私は考える」とバッサリ切り捨てた。




表現も自由、賛否も自由

いずれにしても、「表現の自由」があるからには、その評価も自由だと思います。

今回このような物議をかもし出したことで、被災地に住む人たちを風評被害によって傷つけたとするご意見、また「差別」や「偏見」にもつながりかねない…といったご意見も当然あるでしょう。

ただ、そのような意見に対して私から申し上げたいことが2つあります。

ひとつは、上にも書いた通り、もし本当に危険性がない(=「美味しんぼ」で表現されたようなことは絶対に起こりえない)というのなら、根拠を上げて安全であること言えばいい、という点です。その理由は上記のとおりですが、国なり県が「事実」をちゃんと明らかにすべきだということです。

そしてもうひとつ、「事実」を明らかにすることによって、「差別」や「偏見」につながるのではないか、という心配について。

「事実」を明らかにすることと「差別」とは全く別のことです!
ヒロシマ・ナガサキの被爆者たちも、さまざまな差別や偏見を受けて戦後生きてこられたという話をよく耳にします。原爆だけではありません、難病の患者たちやその家族も同じです。
もし、自分の愛する家族や大切な人が放射能を浴びたり、深刻な病気にかかったら「差別」や「偏見」をもって接しますか? 
感染を防ぐための正しい知識を持つことと「差別」や「偏見」とは根本的に違うということが分かるはずでしょう?

ろくな知識もなく、正しい情報を得ようともせず、「あの人は~~なんだって」という意識を持つ風潮の根底には、「自分さえよければいい」「自分には関係ない」=「関わりを持ちたくない」という意識構造があるのではないでしょうか? なんという思いやりのない、人間性に欠ける、情けない言動でしょうか?

そしてそういう意識を助長してきた背景には「経済第一主義」があるように思えてなりません。
…ん?話にちょっと飛躍がありますか?

はい、私がこれまで「★豊かさとは…?」というカテゴリでたびたび書いてきたことですが、私が最近感じる「経済」という言葉への違和感について、ざっと総括します。


そもそも「経済」って何?

日本で最初に経済という言葉を用いたのは福沢諭吉先生です。
人々の欲求、行動、需要と供給といった社会の動きを「お金の流れ」という視点から分析する学問です。

もともとマルクス経済学やアダム=スミスの「国富論」では、「自由な競争によって素晴らしいものが産み出され、企業が豊かになれば国が栄え、人々が豊かになる」と言われました。
たしかに日本も戦後アメリカを模して自由主義・資本主義によって急激な経済成長を遂げ、モノは豊かになりました。

しかし人々は本当の意味で豊かになったと言えるでしょうか…?

お金があるかどうかで人生の勝ち負けを分けられ、足を引っ張り合って自分がのし上がろうとし、お金のある輩はさらなる欲にかられて必要以上の買い占めや投資に走る。

首相や大統領の発言ひとつで円やドル、株式が売り買いされ、その数字に翻弄されるにわか投資家たち。 自分の本来の仕事、自分に授かった能力を磨いて生業(なりわい)とするのではなく、利鞘(りざや)でバブルな儲けを得ようとするマネーゲーマーたち。

飲み屋でも「俺は客だ。カネを払ってるんだ、偉いんだ」と横柄な態度で、会社でやったらセクハラで訴えられるような醜態をさらしてるバカがいます。
これらはまさに歪んだ資本主義が生んだ金拝主義の成れの果ての姿なのかもしれません。

韓国のフェリー沈没事故も、日本の原発事故も、JR北海道の不祥事も、さらに薬害エイズ問題など過去にさかのぼって思い起こされる重大な事故や事件のほとんどすべてに共通していること、それは「安全よりも、人命よりも、企業の利益が優先される」構造です。

「経済的=お得ですよ」という使われ方に代表されるように、「経済」という言葉には「いかにコストを低く抑え利益を最大にするか」という理念があります。それはちょっと見方を変えれば「いかに自分(だけ)が損をしないで得するか」という、ある意味とても身勝手なニュアンスを含んた言葉とも言えないでしょうか?

これを企業の論理にそのまま置き換えると、いかに必要経費を切り詰めて最大の利益を生むかという「効率主義」となります。 その究極の姿が、さまざまな商品偽装事件から、多くの人命を奪う大事故に至るまで、「安全よりも、人命よりも、企業の利益が優先」という構造へと繋がっていくのです。

さらに国の政治も、弱い国民を切り捨てて企業の利益ばかりを守り育てる政治へ。
ひいては原発の再稼働、武器の輸出まで…企業の利権の絡んだ「経済」を最優先してきた末のおぞましい姿です。
本来の「経済」という学問が意図していたことはそんなことだったんでしょうか…? 


もはや「経済」という言葉そのものが人類の敵?

「美味しんぼ」の表現に顔を曇らせて否定的なコメントを出している多くの閣僚たちがいます。
彼らにとって、政府もメディアも伝えてこなかった放射能による危険の可能性を描いた「美味しんぼ」の表現は、よほど都合が悪いものだったのでしょうね。

福島原発事故の収束の目途も立たないばかりか、現状の安全性についてもきちんと根拠を示せず、いまだに故郷から遠く離れて生活している方たちが大勢いらっしゃるというのに、原発を再稼働させよう、原発を海外に輸出しようなどと言い始めている人たちです。

彼らこそまさに、「安全よりも、人の命よりも、企業の利益を優先」させる企業を優遇し、それを国益につなげてきた人たちではないでしょうか?

国民の命を第一に考え、国民のための政治を実現しようとするならば、いいかげん政治と財界との癒着を断ち切る必要があります。私流の表現でいえば「政財分離」です。

そして国民ひとりひとりも、「経済」という名の「自分さえよければいい」という病いから抜け出す努力をしてみてはどうでしょうか?

民間企業に勤めるサラリーマンも、「経済」と名のつく新聞をただ習慣(惰性?)的に買って朝の電車でドア付近に立ち止まって周りの迷惑も考えずにパリパリめくって無表情に眺める習慣を見直しませんか?
ビジネスマンとして読んでおかなくては、というのであれば、企業・市場・政府の動きを単に知識・情報として表面的に追うだけでなく、「人」として大切なこと、背景にある「ことの本質」を見極めて読みましょう。

そして、新聞やスマホも結構ですが、たまには朝の通勤電車の車窓に季節の移ろいを感じたり、近くに困っている人がいたらひと声かけて手を差し伸べてあげるなど、「人」として大切なことがあるのではないでしょうか?

「経済」という数字を通して影絵のように見える社会ではない、あなたの身の回りにリアルに息づいている現実の社会が、そこにはあるはずです。




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本当の日本、、

始めして。

公権力犯罪の被害者になって訴えてる中、
正義も存在しない、
沢山の官民の人権機構・団体があるにも関わらず、
人権も存在しない、

民主国家でもない、法治国家でもない
独裁・犯罪国家になってる本当の日本を知りました。

長年、政府・言論・不良公務員らとあらゆるところで特恵・恩恵を受けてる人達が一致団結して
独裁・犯罪国家にしてるのをみんなが知ってほしい、、

官民が共謀して、裏で想像もできない事を行ってる事をみんなが知らなければ、
何をやっても何にも変わらない、正せないと思ってます。

陰謀論、スパイ映画に出てくるような事が行ってるのに、

殆どの人達が騙された事さえ気づかず騙され、利用されてる現実を、、、

Re: 本当の日本、、

安さん、FBからようこそ!

安さんは韓国から日本にいらしてるんでしょうか?
私にも、家族ぐるみでもう15年以上お付き合いさせていただいている韓国の友人がいます。また音楽仲間にも、日韓で素晴らしい交流を繰り広げている人たちをたくさん知っています。政府レベル(国対国)では難しい問題があっても、人として信頼し、分かち合うことはできると私は信じています。

本来国民を守るための組織が腐敗していることはしばしば感じるところです。
でもそれらを「国家犯罪」「陰謀」と言ってしまっては、われわれ国民はただ騙されて黙殺されていくだけですね。やはり官も民も(国民ひとりひとりも)、物事の本質をしっかりとらえる目を大切に、政治や社会にもしっかり目を向けていかなくてはいけないと思っています。半径数メートルの娯楽だけで日々を過ごしてないで…

先ごろの韓国フェリー沈没事故には本当に心を痛めました。事故のあと、次々に明らかになる事実に韓国の友人から「恥ずかしい、情けない」というメールをいただいたので、私からもすぐに返信しました。そこで私が強く伝えたかったのは、韓国でも日本でも、「安全よりも人の命よりも企業の利益を優先」した結果だと。
よかったらこちらの記事もお読みください。
http://resolutely.blog6.fc2.com/blog-entry-814.html
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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