父の使っていたNTT回線の解約から

長年なじんだ電話番号とのお別れ

亡き父が自室で使っていた電話は、私が子供のころから「東京のおばあちゃんの家」の番号(回線)でした。学生に下宿を提供していた祖母は、まだ一般家庭に電話が普及しはじめて間もない昭和39年(1964年)にこの番号で電話に加入しました。東海道新幹線が開業し東京オリンピックが開かれた年ですから、今からちょうど50年、半世紀前のことです。

私が高校受験を控えて中学3年の春に父の転勤先・広島から東京に出てきてからは、私にとって「自宅の番号」となりました。高校の合格発表を見て公衆電話から喜びの声を伝えたのもその番号でした。

両親が東京へ移ってから新たに電話回線を引きましたが、祖母のいた母屋では継続してその番号を使用。数百メートル離れたところに今の家を建てて父と同居するようになってからは、父の専用電話としてその番号をそのまま引き継ぎました。

父が亡くなったのは2008年2月。まだ同窓会など父宛ての電話がかかってくる可能性もあるかと、そのまま電話回線は生かしたままにしていました。

しかし父が亡くなってから早くも6年、もう父宛てにかかってくる電話もなく、思い出の番号を残すためだけに回線を生かしておくと「回線使用料」と称するよくわからない料金が月々1810円もかかるのです。もういいだろうと、解約して長年親しんだ番号とお別れする決心をしたのです。
 
ところが…


◆いかにも役所的なNTTの対応

解約するだけなら簡単だろうと、月曜日午前中の仕事が一区切りついたところで、毎月請求書を送ってくるNTTファイナンスに電話しました。

まずはよくある無機質な音声ガイダンスがお出迎え。いろんな案内が長々と流れたあと「~~に関するお問い合わせは1を、~~に関するお問い合わせは2を…」と読み上げが続きます。音声ガイドの途中でも番号はプッシュできますと言われても、解約に関する手続きはいったいどこに分類されるのか…?
結局最後の「その他のお問い合わせは5を」まで聞いてようやく「5」をプッシュ。
するとコール音に続いて「ただ今回線がたいへん込み合っております。このままお待ちいただくか、しばらくたってからおかけ直しください」…はいはい、もうここまで来たんだから待ちますよ!

ようやくオペレータが出て「解約したいんです」と伝えると、NTTファイナンスではなくNTT東日本へおかけくださいと。はいはい、分かりましたよ!そしてNTT東日本に電話すると、またしても同じような自動音声ガイダンス…

さんざんイライラさせられた挙句、ようやくつながったオペレーターに「解約したいんです」と告げると、まず電話番号を聞かれ、住所、名義人を聞かれ、名義人が私ではなく父の名前になっているので、数年前に死亡したことを告げ…(←この説明が余計だったようです!)

名義人が亡くなった場合、死亡したことを証明する書類(住民票で父の死亡による除籍が記されたもの)の添付が必要になるんだそうです!

「実の息子本人がかけてるのに、ダメなんですか?」「そのために休暇を取って役所へ行かなきゃいけないんで、なんとかなりませんか?」…いろいろ粘ってはみたんですが、本人からの申し出であれば解約の申請書に記入して送り返すだけでできたそうですが、「本人死亡」の旨を伝えてしまったのでダメなんだそうです。電話の音声は「サービス向上に役立てるため」と称して録音されているので、聞かなかったことにはできないと。これが「サービス向上」なんでしょうか、ね…?

実際には父親が生きているのに、息子が勝手に「死亡した」と言って電話を勝手に解約したとして、電話会社にいったい何の責任・不都合があるんでしょうかね? 

★民法でいう表見代理(=代理人であると偽って本人に無断で行為をなし、外見上は代理権があるように見える)によるトラブルの場合、善意の第三者(この場合NTT側)によほど重大な故意または過失がなければ不利益は及ばないはずなんですが…

とにかく「そういう規則になっております」の一点張り。はいはい、分かりましたよ!
長年お世話になった電話回線に感慨深いものがあって、つい余計なひとことを言った私が悪かったんです!
 


次に私のふつふつの矛先は区役所へ。たったひとつ書類を取りに行くにも区役所は夕方5時まで。東京23区内の中には平日夜7時まで窓口を開けてくれているところもようやく出始めたようですが、わが世田谷区は5時に閉まります。もちろん土曜日も開いてません。
働いてる人が、何かに必要な証明を取りに行くためだけに、わざわざ平日に半日休暇を取らなくてはいけないんです!

しかもたった1枚の書類をコピーでプリントアウトしてもらうだけで何百円か取られるんですよね。毎月それなりの住民税も払っているのに… 何かと役所に「証明」してもらわなきゃ生きていけないんですね!


◆人の死亡…役所の手続きあれこれ

そんなこんなで、6年前に父が他界した時のことをあらためて思い出してしまいました。
日曜日の朝自宅で倒れそのまま帰らぬ人となった父。われわれ夫婦・子どもたちと同居していろいろあった日々のこと、たくさんの「ありがとう」や「ごめんね」、最後に交わした言葉…いろいろと思いが重なります。

家族が急逝すれば、仕事を休んで最低限の引き継ぎ事項を伝え、病院の手続きや葬儀の手配など様々なことに追われます。
そんな中、忌引き休暇の限られた時間を有効に使って役所のもろもろの手続きもしなくてはいけません。

まずは戸籍係に行って死亡届けを出します。いまは住民基本台帳のデータベース化も進んでいるのですから、戸籍係に死亡届を出せばあとは役所内の横の連携ですべての手続きが完了できてもいいと思いませんか?
ところが、国民健康保健の解約はどこ、年金支給のストップの窓口はどこ、リハビリや訪問介護の解約手続きはどこ… どれだけ窓口をたらい回しされなきゃならないんでしょうか?

しかも窓口に行くたびに必要書類にいちいち記入しなくてはいけません。1日にいったい何か所で似たような書類を書かされたことか。それも、ひと目見てその欄に何を書いたらいいかが一目瞭然分かりやすければいいんですが、たとえば「本人との続柄」とだけ書いてあって、どっちが「本人」なのか(=私が「本人」で亡き父が「父」なのか、亡き父が「本人」で私が「長男」なのか)非常にわかりづらいんですよね。「長男」と書くと「『子』でいいです」など、いちいちイライラします。

役所の窓口の人がいるところでひとつひとつ口頭で確認しながら書ければいいのですが、たいてい離れた台の上で用紙を記入して持っていかなくてはいけません。私がもっと歳をとって、もっと視力が衰え判断力も鈍ったら、役所に書類ひとつ出すのも大変だろうな…と今から不安になってしまいます。

窓口の担当者は日々淡々と事務処理しているから形式にはそりゃ慣れてるでしょうけど、こっちは一生のうちに何度あるかということなんです。必要事項は記入されていなくてはならないとしても、もう少し分かりやすい書式にできないものでしょうか?

そしてなにより、こっちは大切な家族を失ってまだ間もない悲しみの中、限られた時間に仕方なく窓口に来てるんです。決して安くはない住民税を長年納め続けてきた区民なんです。なのにその応対ですか!何様ですか!と言いたくなるような無神経な応対も多々ありました。

嬉しいことも悲しいこともみな知っている…まさに「大きな古時計」のような役所殿。
こちらもできることなら心穏やかにお世話になりたいんですが、簡単な書類ひとつもらいに役所を訪れるたびにどれだけアドレナリンを分泌させてきたことでしょうか?
それこそ家族を失った感傷をしばし“紛らわしてくれる効果”が役所にはあるのかもしれませんね(笑)。



◆相続税…一定枠まで「非課税」ではなく「免除」

もうひとつ厄介なのがこの相続税です。こちらは国税です。
でも親子同居で生活に最低限必要な規模の家に住んでいたのであれば、莫大な相続税に驚くことはありません。共同名義だった土地・家屋のうち父の持ち分が、公示価格による評価額で6000万円を超えなければ「小規模宅地」と判断されて相続税はかかりません。

それを「非課税」と言ってくれればいいものを、なぜか「免除」なんです。この「非課税」と「免除」の違い、あまりふだん意識したこともないでしょうが、手続き的には大きく異なるので要注意です!

「免除」というのは、本来は払わなきゃいけないんだけど、一定の期間内に一定の手続き(申請)をして、条件を満たしていれば払わなくてもいいですよ、免除してあげますよ、という意味なんですね。
だから、土地や建物の登記簿謄本、亡き父の戸籍謄本(原戸籍)など必要書類をいろいろ整えて、税金が免除される範囲だということをこちらが「証明」しなくてはならないんです!

でも考えてみてください。土地・建物の登記簿にしても原戸籍にしても、すべて「公」に提出してあって「公」がデータ管理しているものばかりなんです。

「こっちは『小規模宅地(税金の対象外)です』とだけ1枚の書類に〇印をつけて出し、それを証明するデータはすべて「公」の側にあるんですから、もし疑わしいならそっち(役所)で調べなさいよ」と思いませんか?

揃えるべき必要書類や申請の手続きは複雑で、とてもわれわれ一般人が半日か1日休みをとって役所に行っても終わるような内容じゃないんです。税理士さんに高い報酬を払ってやってもらわなくてはならない、かなり専門的な知識を要するのです。

なんでこっちが「公」で管理しているデータをわざわざコピーで(有料で)出してもらって、必要書類を揃え、役所好みの複雑な申請書類に記入して、こちらが「小規模宅地(税金の対象外)です」と「証明」して「お願い」しなきゃならないんですか!?

こちらが何か個人的にお願いしたことでもなく、申請することで何か特典をもらえるわけでもなく、役所になにか特別「お願い」する筋のことでもなく、すでに届け出てある規制事実と当然の権利をこちらがわざわざ「証明」しなきゃならないんです!

しかもそれを父の死後1年以内に出さないと、本来は払わなくてもいいはずの相続税がしっかりかかってしまうんです。相続で得るものは「所得」とみなされますからその10%が税金として持って行かれてしまうんです。けっこうな額になります。

そこで取られる税金(申請すれば払わずにすむ税金)っていったい何なんでしょうか?
「免除」という意味を知らなかったこと、あるいは1年以内に役所の求める「申請」を出さなかったことに対する「罰金」でしょうか?…まったく国税って何様のつもりでしょうか?

ともかく、「非課税」ではなく「免除」というのはそういう意味だということを肝に銘じておかなくてはいけません。


◆2015年から新しい相続税制度がスタート

来年2015年1月1日の法改定で、相続税のかかる範囲がさらに広くなります。これまで「免除」だった程度のものにもしっかり相続税がかかってくることになります。
首都圏だけでも今までの1.5倍、対象となる人はおよそ40%にも達すると言われます。

親から子へ、自分たちが生活するのに最小限必要なものを引き継ぐだけで、国はいったい何をしてくれるわけでもなく、ただ税金だけを取り立てるのです。
庶民が一生懸命働いて、家族に残してあげたい最低限の財産に対しても、まるで旧約聖書に出てくるおぞましい取税人のごとく…

生きている間に家族に資産を残そうとすると「贈与(生前贈与)税」がかかってきます。今は一度に50万以内は非課税ですが、これから先どうなってくることでしょうか…?
子どもの名義で銀行口座を作る人もいますが、厳密に言えば違反です。


さらに、聞くとところによると政府与党は「死亡税」なるものを検討しているそうですね。はじめは冗談かと思いましたが…まったく、生きるに税金、死ぬにも税金ですね!

国のために、福祉に役立ててもらうために税金を払うことは大切なことですが、ここまで庶民が一生懸命働いて得たものに対して右を向いても左を向いても税金ばかりむしりとられる世の中になってくると、少しでも無駄な税金は払いたくないのが人情でしょう。

私はあまり好きではありませんが、ビジネス書や生活の知恵に関する書物で、「相続」や「生前贈与」に関する本もこれからたくさん出るようになると思います。

相続税や贈与税なんてお金持ちにしか関係のない話、などと言ってられないのです。
保険への加入、年金型の貯蓄、子どもの学資保険など、家族に残せるさまざまな方法をトータルに見て、少しでも無駄な税金を払わなくて済むように、あくまで違法・脱法ではなく「節税」できるよう、いろいろと調べておく必要がありそうですね。


★注)

私も大学を出て数年間、「まちづくり」の仕事を通じて行政コンサルタントをしていた時期があります。民間ではない、公務員ならではの大切な仕事もたくさんあることは重々理解しているつもりです。
もしこの記事を読まれる方の中にも、住民(=納税者)と接する立場の公務員の方がいらしたら、ぜひ一人の「人」として考えてみていただきたいのです。
たとえ悪気はなく、まじめに淡々と事務処理をされているのであっても、相手は生身の「人」です。いわゆる「役所的」な分かりづらさ、面倒さ、不条理があるということ。また人ひとりの命・大切な家族を送り出した遺族の心情など。その辺りをよく考えて日々の仕事に取り組んでいただきたいと切に願います。


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No title

ほんっと同感です!!
いちいち書類書かされるのって、もっと効率的にできないの?って思いますよね…
住民基本台帳のデータって全然活用されないんですね。
それにしても我が市は土曜日も開庁してる支所がありますが、世田谷ともあろう役所がやってないんですね!
この記事が世の声として役所で働く人に届くことを願ってやみません。

Re: No title

mimiさま

ありがとうございます。
ちなみに土曜日も開庁してくれてるってどこの市でしょう?(「〇〇県N市」などお差し支えのない範囲で)

とにかく役所を「厄所」というぐらい、どうして簡単なことを難しく形式主義でやるんでしょうね…?
また民営化したはずの団体や、もともとれっきとした民間が役所的になるって、「民営化」の流れに逆行してませんかね?

こんばんは

よくぞ代弁してくださいましたの気持ちで読みました。
NTTのくだり、数多く体験しております。
あげくの果てに、音声案内でパスワードなどと言われ、どうにもならない始末になったこともありました。
時間もかかるし(練習できない!)、フリーダイヤルでない時は通話料も結構かかります。
他にも、名義人変更でこの経験が多々あります。
2度、3度手間のうえ、送られた手続き用紙の書き方もよくわからなかったので、そのまま明治41年生まれの契約者のままにしてあります。
このまま放置していたら、顧客名簿に200歳の人がごろごろ存在しそうです!

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Re: こんばんは

レディピア様

土曜日に、出張所だけは開いていることが分かったのの、住民票と印鑑登録の発行しか対応しない…あまり開けてる意味ないですね!
で、住民票でも家族全員記載のものを取れば「〇年〇月〇日死亡により除籍」の一行が入っていて、それで証明になるか、と思いきや、亡くなって5年を経過すると表記が消えるんだそうな…とほほ。
てなわけで、結局まだ区役所に行ってるヒマはなし、郵送での申込みはそれはそれはまた面倒な上、発行までに10日もかかるそうな…

そんなこんなで、除籍謄本を取ったらこの続きをまたブログ記事にアップするつもりです。
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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