またしても弱者いじめ?…派遣法改正(悪)案!

派遣法の改正案

安倍内閣が今の国会で成立させようとしている法案の中に、派遣法の改定(悪)があります。

派遣で3年を超えてもそのまま継続可能に

改正案では「派遣先は、同一の組織単位(職場)において3年を超えて継続して同一の派遣労働者を受け入れてはならないものとする」 とされているようです。

この改正法案の解釈は微妙です。今まで派遣で働いていたAさんを継続して(派遣として)働かせてはならない、ということですが、会社側としては、「3年たったらAさんをBさんに、また3年たったらCさんに…と、どんどん人をチェンジして派遣の人を採り続ければ良い」とも解釈できます。

働く側(Aさん)の立場としては、3年派遣で働いたらそれ以降は「派遣」という形で継続してはならない、つまり「もし私を必要とするなら、ちゃんと正社員に登用してくださいよ」と解釈したいですよね。それならば、現行法と基本的に変わらないことになります。
ただ、この改正案では、同一部署でなければ、つまり「職場変更」をすればずっと派遣のまま雇い続けてもよい、という風にも解釈できてしまいます。

会社の都合のいいように、同一部署では3年たったら別の人を派遣として雇い、それまで働いてきた派遣の人は他の部署に異動させてひきつづき派遣契約のまま…という道を開くことになります。
長い目での人材育成にも反する、その場しのぎの、企業にとってますます都合のよい方向へと向かわせる法案とはいえないでしょうか?

派遣法改悪 


そもそも私がこの「豊かさとは…?」というカテゴリを立ち上げるきっかけともなったのが、まだブログを立ち上げる前の2009年正月の「年越し派遣村」でした。

リーマンショックを受けて企業の経営も大変だったでしょうが、真っ先に派遣社員を一方的に解雇しただけでなく、次の就職が決まるまでせめて寮に継続して住む権利も奪い、年末の寒空の下に放り出したのです。

あまりに露骨な企業のご都合主義に、家でニュースを見ていても腹が立つばかりなので、私は元旦に初詣に行くよりも日比谷公園にカンパを持って向かおうと思い立ちました。
かみさんが家にあった大きな蜂蜜のビンを「炊き出しの役に立つなら」と出してくれ、娘が「私も行く」と言い出し…けっきょく娘もかみさんも一緒に日比谷公園へ…そんなお正月を過ごしたのでした。

→ 「続・豊かさとは…?(1)~(3)」



働く側への思いやり

きのう(4月13日)、NHKアナウンサー・解説委員を経て参議院議員となり、厚生労働大臣を務められた小宮山洋子さんの講演にお邪魔してきました。

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* ご本人および主宰者の承諾を得て撮影・掲載させていただいております


子育てをしながら放送現場で働くという、当時としてはまだ一般に認知されていなかった道を歩まれた経験から、女性をはじめ「働く立場」を守る政策論も数々展開されてこられた中で、「同一労働・同一賃金」というのも一つのテーマだったそうです。

能力の差による評価とは全く違う意味で、正社員でも派遣でもパートでも、労働の内容・質が同じであるなら、同じ賃金が払われなくてはいけない、ということです。



この記事は、必ずしも小宮山洋子さんの講演会の内容をレポートするものではありません。
以下、私がこの「豊かさとは…?」にこれまでつづってきたこととも重複しますが、働く弱い立場にとって今の政権は決してやさしい方向に向いていない、という点について書きます。

本来「派遣」とは、専門的な能力を要する限られた業種ではじまった制度で、働く側も特定の会社の社員となって長時間拘束されることなく、自分の専門性を活かして好きな時に好きなだけ働けて、会社としても業務の必要な時だけ専門的能力をもった人を使えるという、労使双方にとって便利な制度だったはずです。

会社としては終身雇用の「正社員」をたくさん雇うよりも、当面の仕事に応じて必要な人材を確保したい場面もあるでしょう。
「アルバイト」だと学生などほんの一時的な雇用しかできず、専門的な能力を磨いてもらうこともあまり期待できませんし、責任にも限度があり、補助的な業務に限られます。

また、「長期契約者」とか「臨時職員」という形だと、会社が個人と個別に労働契約を結ばなくてはならず、人によって待遇の差が出たり、会社の都合で辞めてもらう際にトラブルになることも…

そんな中、「会社」と「派遣会社」とで契約を交わし、働きたい人が派遣会社に登録してそこから現場へ派遣されて行く、という形態が増えてきました。そして制度上も「派遣」できる業種枠も広がり、ますます「派遣」の需要は拡大してきました。

ただ、どちらかというと企業にとって都合のいいように拡大されてきた感は否めません。
企業のトップ(経営)の考えるコスト意識としては、賃金も高く福利厚生もかかる正社員をなるべく減らして、安い賃金でいつでも切れる「派遣」を増やした方が都合がいいでしょう。かくして「同一労働・同一賃金」は破られ、2009年正月の「年越し派遣村」のようなことまで起きたのです。

ふだんの仕事の現場においても、派遣の人たちにしてみれば「同じ仕事をしてるのに、社員ばかり待遇がよくて、なんで私たちは…」という意識になり、士気が低下したり、社員に対する反発意識が芽生えます。
同じ職場で働く社員としても「申し訳ない」という気持ちはあってもどうすることもできず、人を使いづらい空気もできてきます。また何かと「正社員なんだから」と派遣以上の能力が課せられ、少ない正社員に管理的な仕事が集中し、長時間労働を強いられることも。
効率だけを考える経営トップにはそのあたりをお分かり頂けないのでしょうか…?

「人(命)よりも企業の利益が優先」…私がこのカテゴリでもたびたび書いてきた企業中心の構造(=経済の論理)がここでも大きく浮き彫りになっています。


弱者に厳しく企業ばかりを優遇

派遣法のみならず、いまの安倍政権のもとで進められている政策には、庶民を切り捨てて大企業を優遇し、見かけの数字上の「景気」をアップさせようというものが目立ちます。

社会保障制度と消費税との一体改革、その趣旨は分からないわけではありません。
65歳以上の高齢者の割合が20%を超える一方、少子化はますます進み、このままいったら支えられる人と支える人のバランスは逆ピラミッドで崩壊してしまいます。 また、赤ちゃんも含めた日本の国民ひとりあたりの借金が800万円とも言われています。そうした中で、仮にどこが政権を取っても消費税率の引き上げは必至であると。

はい、そこは分かります。消費税の税収はすべて社会保障の充実のために使うということも消費税導入時から言われてきた約束ごとです。

でもここで考えてみたいのは、単なる消費税だけの是非論ではなく、税金の課され方・使われ方をトータルに見て、弱い立場の国民に対して優しい社会と言えるかどうか、という点です。


消費税の逆進性

消費税が導入された時から、いわゆる贅沢品にかけられていた「物品税」(10%)が廃止され、事業主に対してかけられる消費税を個々の消費者に一律に転嫁されるようになりました。

一見「平等」な税負担のように見えますが、じつは弱者にほど厳しいこと(いわゆる逆進性)が指摘され、食料品など日常生活必需品には税率を低く、贅沢なものには高く、という検討も求められてきました。

しかしそうした議論は棚上げにされたまま、3%から5%へ、そして今回はとりあえず8%から近々10%へと、一律の税率引上げばかりが先行しています。

かつての物品税では、例えば銀座の高級クラブでグランドピアノを買う場合は、当然ながら贅沢品として10%の物品税が課せられましたが、音大生が勉強のために買う場合は税金が免除されました。でもいまの消費税では一律にかかります。
伝統工芸作家の見習いが材料を買うにもことごとく消費税がかかります。
儲け主義ではない文化・芸術の担い手をはじめ、弱い立場の人にほど消費税は重い負担となってのしかかります。

一方事業主は、仕入れにも消費税がかかるからと当然のごとく消費税分を上乗せした価格設定をしてきます。消費者は事業主の言うなりの値段を払わなければ商品が買えません。

その事業主も、年間売上の大きな事業主ほど、納税までの1年間に預かっておける消費税分も大きくなります。仮に年間売上が5億円の事業主はその10%分は5千万円。お客さんから支払われる代金に上乗せされた消費税分をストックして、2~3月の納税期まで預かっておけます。
お札に「これは消費税預かり分」などと書いておけるわけではありませんから、その預り金で設備投資をしてもよし、賃金支払いに充てることもできます。つまり5千万円を無利子・無担保で借りているようなものです。 個人がそんなことできますか?

このようにちょっと考えただけでも、消費税は一見平等な税負担のように見えますが、弱い立場の人にほど厳しく、大きな会社に甘い制度なのです。



たとえば同じ飲食費でも、スーパーで買う食材やひとり1回1000円以内の外食費にかかる消費税は低く抑え、1回の飲食で1001円~2000円以内、2001円~3000円以内といったランクに応じてより高い消費税をかけるような仕組み、あるいは会社の領収書を切る「交際費」や「接待費」にはより高額の税負担を求めるといったことも、真剣にやろうと思えば可能なはずです。

ところが今の政策では、消費税は一律に上げ、生活保護や保険は切り下げ、弱い個人には負担ばかりが重くのしかかる一方、法人税は軽くし、さらに「接待費」の半分までを非課税にしようなどという案まで出ているようです。発想がまったく逆でしょう!?

インフレ政策は、お金を眠らせておいても価値が下がる一方だからどんどん投資しなさい、という流れをつくり出し、政府みずから率先してマネーゲームをあおり、見かけの景気は上昇するかもしれません。でもそうした投資ができるのはある程度貯えのある裕福な層であって、毎日の生活にも困る人たちは完全に蚊帳の外、切り捨てられていきます。

すべてにおいて大きな企業にほど甘く、貧しい個人には厳しい、トランプゲームの「大貧民」さながらの格差がますます広がるような政策と言わざるを得ません。


税金の無駄をなくし、弱者を守ってこその「一体改革

さらに、社会保障のための財源を確保するという点でみるならば、まだまだ税金の無駄遣いがあるのではないでしょうか?

年度末に予算を使い切らないと次年度の予算が削られるから…という、あの巨額な無駄を生んでいる特別会計。ある目的のために予算をつけるということは、その予算を勝手にほかの目的に使ってはいけない、ということです。でももし使わずに余ったら、それは一般会計に返納して、ほかに必要なところにお金が回せるようにすべきです。

一般の家計だってそうでしょう。旅行に行こう、子どもを私学に入れようと貯金していたとして、もし事情が変わってそのお金が不要になったら、無駄なことにそのお金を使い切りますか?

消費税の必要性そのものを否定しているのではありません。ただ「必要だからしかたない」だけでは納得できません。よりトータルな目で税金の無駄をなくし、弱きものを助け、必要なところにはちゃんと予算が回っていく仕組みにしていくこと。
弱者を切り捨てるのではなく「ともに生きる社会」を真剣に考えていくこと。そこが大前提での「一体改革」ではないでしょうか?

→ カテゴリ「豊かさとは…?」 
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弱肉強食

いつも様々発信して下さり有難うございます。

>弱者を切り捨てるのではなく「ともに生きる社会」を真剣に考えていくこと。
それでこそ先進国と言えると考えています。

消費税の社会保障に回す財源がどの程度なのか後程もう少し調べて、シェアさせて頂きます。

Re: 弱肉強食

Misa Okumuraさん

コメントならびにフェイスブックでのシェアありがとうございます。
国家予算の配分、社会保障費の出所など、政治の専門的なことは分かりません。
でも少なくともこういう話題に対して「自分には(派遣じゃないから)関係ない」とスルーするのではなく、世の中全体の流れ・仕組みに対して何かを感じること、そして政治にもう少し関心をもつことが「ともに生きる社会」には大切なことではないかと思います。
私の周りだけでは限界もあります。こういう記事をシェアしてくださって、そちらのお友達の輪の中でひとりでも考えてくださる方につながれば幸いです。

プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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