この1年の「学生生活」を振り返って

去年の春から通い始めた学校も、間もなく1年次を終えます。
4月からのお試し履修を終えて正式にスタートしたのは5月の連休明け。途中夏休み・冬休みもありましたから、受講した期間としては実質丸1年にはなっていませんが、後期の課題レポートも終え、あとは補講がいくつかと3月のコンサートに向けたリハーサルのみ。1年って早いですね。


いまさら「学生」になることへの抵抗感

この年齢になってから「学生」になることに最初はちょっと抵抗もありましたが、一昨年度は聴講生としてお邪魔していたこともあって、10代・20代の若者と机を並べることにもまったく抵抗感なく入り込めました。それに音楽療法科はさまざまな年齢層の方もいらして、いくつかの講義でご一緒する友達もできました。

学内のエレベーターなどでは、おそらく「先生」と間違えられて挨拶されたことも(笑)。こんなオジサンでも、毎日カバンの中に五線のノートと資料を入れるクリアファイルを持ち歩き、若い人たちと机を並べ、あらためて和声などの楽理を学び…
 
仕事は朝の出勤が早いのでちょっと大変ですが、大道具系で割と規則的な業務で夕方は早く上がれる部署。夕方退勤して、学校までの移動中に軽く何か食べておき(焼き鳥の匂いに誘われてのれんをくぐることもありますが、決してアルコールは飲みません!)、21時に授業が終わってから家に帰って食べる、あるいはどこかで誰かと軽く飲んで帰る…という生活にも慣れました。
 
週に3~4日はせめて子どもの起きている時間帯に帰るようにしていますが、そのあともできれば復習したりレポートを書いたり…そんな生活に身体のリズムもちゃんとついてきてくれるようになりました。


心から音楽が好きな方たち

この1年間を通じて強く思ったのは、人間いくつになっても学びたい気持ちさえあれば学べるんだということ。そして教えてくださる講師陣も、本当に音楽の世界が好きなんだな、ということです。

あるジャズピアノの先生は、ご自身が長年ピアノと向き合って発見されたコードに関するさまざまなことが授業中も次々と泉のごとく溢れ出てきます。名曲が生まれた陰にこんなミュージシャンがいた、コルトレーンはこう弾いていたということが分かった、このコードにはこんなスケールもこんなスケールもいける…といったことがどんどん湧き出してきて、ピアノで即実演!
でも素人の私としては「ぽかん」の連続!

個人レッスンでも、このままじゃ何も見えないまま終わってしまうと思い、「すみません、それはどういう意味ですか?」「今の音、右手のどの音をどう変えたんですか?」とたびたび一時停止ボタンを押させていただきました。

私なりに書きとめたことを帰ってからリライトし、夜でも小さな音でピアノで確かめたりして、ブログにも記事をまとめたり、それを先生に見ていただいてアドヴァイスいただいたり…
おかげで最近は先生のお話もだいぶ「理解」だけはできるようになりました(→実際そのように弾けるかどうかはまったく別の話ですが…笑)。

そしてその先生は授業の終わりなどに「面白いよね~」「音楽って数学だよね~」「宇宙の法則がここにあるね~」などとしみじみおっしゃるのです。

ご自身が長年ピアノに向き合ってきて発見された理論と同じことがジャズの理論書にも書いてあると。そう、先人がつくった「教科書」を見て理解して覚えるのではなく、自分なりに苦労して発見してみてはじめて教科書に書かれていることの意味が分かるのかもしれません。
でも、そうおっしゃる時の先生の顔は、決して自慢しているのではなく、音楽の世界を賛美しているんですね。 心の底から音楽を愛しておられるんだな、と。

それは他の先生たち皆さんに言えることです。

教会旋法や16世紀の対位法を研究されている先生も、ピアノでさまざまな曲を弾いたり和声学やリーディングを研究されてきたことと理論とが結びついていて実に幅広い知識をお持ちです。
でも決して小難しい話を難しい顔をして語ることなく、「この時代の人はまだ今のような~~もなかったので、おそらくこういう音楽をこんな風に感じて弾いて(聴いて)いたんでしょうね」とか、「これは禁止、これも禁止、といった対位法のルールに『やってられないよ』というようなお顔をされてますが、大丈夫ですか?」などと、さりげなく可笑しなことをおっしゃるんです。
 
ひとこま前にジャズコードで9thや11thといった不協和音のテンションコードに『ズージャな音』を発見した直後にこの「対位法」の講義だったこともあり、ギャップはたしかにありましたが…(笑)

またポピュラー音楽療法の先生は、古い時代のシャンソンやタンゴなどを、古い蓄音機の時代のレコードからコピーした音源で聴かせてくださいましたが、「この曲、私が子供の頃に家にあった蓄音機で何度も聞いて『いいな~』と思ったんですよね~」などとしみじみおっしゃるんです。
その先生、じつは私よりも年齢的にはお若いんですが、家に蓄音機があったという家庭環境もさることながら、いったいどういう少年だったんだろう…と想像すると思わず可笑しくて…(失礼)。


音楽にもさまざまな時代・ジャンル・理論がありますが、とにかくどの先生もみなその世界を本当に心から愛しておられ、人生を楽しんでらっしゃるな、ということが非常に強く伝わってくるんですね。

決して「〇〇大学教授」といった固定されたステイタスでこの学校にいらしているのではなく、専門学校の「講師」として、毎年度どういう講義を何時間受け持つかで契約され、それぞれの分野で現役で活躍されている素晴らしい講師陣ばかりです。

こちらも1年間、ほぼすべての授業とも最前列もしくは2列目で『かぶりつき』で受けてきたこともあり、仕事帰りにも関わらず眠くなることはほとんどなく楽しい時間を過ごさせていただきました。
 

◆「大学」という肩書ではなく、いくつになっても「学びたい」と思うこと 

「高校を出たら何がなんでも大学に行かなきゃいけない」「大学ぐらい出ておかないと社会に出てから恥ずかしい」…といった社会風潮もまだ一部には根強くあります。
でも、医学や一部の理工系のように大学で学んだことが国家資格へ、そして仕事へと直結している一部の分野を除けば、いまの総合大学の文科系で学んだことが実際に社会人となるためにどう結びついているのでしょうか?

ようやく高校進学が決まった上の娘が、「あえて大学に行きたいとは思わない、もっと他にやりたい世界がある」と言うのであれば、私はあえて大学受験なんかしなくてもいいと思ってきましたが、あらためてそれを確信しました。

私自身、予備校生活を経て大学の法学部に進んだわけですが、総合大学の文科系ではほとんど「勉強したい」という意欲にあふれた学園内のムードはなかったように思います。
ゼミの飲み会の席や合宿でさえ、法律や社会に関する話題を出すとみなさんシラけ、一瞬固まって「まあまあまあ、は~い、カンパーイ!」とはぐらかされたことを今でも覚えています(ずっとそのことを恨みつらみ生きてきたわけではありませんが、最近フェイスブックでもちょっと真面目な社会的テーマを書くとスルーされる、社会全体の風潮からよみがえった記憶です…笑)。

単位をクリアして卒業しても、社会に出てから「〇〇大学の〇〇学部を卒業しました」ということが、仕事上に直接役立ったと思えることがどれほどあるでしょうか?
毎年職場内で自己申告書、今年の目標を書かされ、その冒頭に経歴として「〇〇年、〇〇大学卒業」と記入するたびに、大学時代のゼミでやったことと今の仕事がどう結びついているのか、つくづく不思議に思うのです(笑)。

しいて言えば、法律的なものの見方・感覚、ひいては社会常識のようなものを養う機会にはなったかな、という程度。それも仕事上でというより、社会の出来事を見て自分なりに考えたりしてる中で、思考の核になる部分が学生時代に考えていたこととつながってるかな、という程度。

ですから、社会問題などについて「考える」ということがなかったら、ただ大学で学んだだけの「知識」は忘れ去られ、なんの役にも立たないのではないでしょうか?

そうしてみると、いまの日本の大学生活というのは、受験地獄の熾烈な戦いを終えて晴れて「大学生」となり、サークルやバイトを通じて青春を謳歌し、どんな道に進みたいのかをゆっくり考える時間だったのかな、と。

まあそれでも、しばし自分と向き合って見つめる期間としては無駄ではないのでしょうが…



「学生は知識を詰め込まれる袋ではない。火を灯されるランプである」

昨年もレポート記事の中にこの言葉を紹介しましたが、18世紀ごろのアメリカのアレキサンダーという人の言葉です。

「授業は授業、勉強は勉強」…出席をとる授業か?、レポート提出があるか?
「資格認定はどうすれば受かるか」、そして卒業して資格認定を受けたとして、いざ仕事(就職)はどうなるの…?
こういう思考回路では、おそらく私の学生生活も1年もたなかったと思います。

音大を出たわけでもない私が、長年趣味でピアノを弾いたり、アマチュアなりに長年オーケストラで打楽器をやってきましたが、長年疑問に思っていたことが『目からうろこ!』ということがこの1年だけでもたくさんありました。

自分なりに考え、調べてみて、やってみて、分からないこと、どうしても知りたいと思うことがあればあるほど、教わりたい、覚えたいと思うエネルギーも大きくなります。

社会に出て仕事に就いてからでも、それも私ぐらいの年齢に達してからでも、本当に自分が学びたいと思うこと(仕事に直接関係あることでも、まったく仕事とは別の世界でも)があれば、いつでも学ぼうと思えば学べるんだ、ということです。

ただ、私ぐらいの年齢だと、やってみればできること、上達することもありますが、どうしても衰えていくこともあります。そこは相対性理論のようなものですが、やってみなくては分かりません。今できないことが来年にはできるという保証はどこにもありません。だから今やるしかないのです。

「やってごらん」と言われたことを躊躇したり、「まだ勉強してないんでよく分かりません」などと逃げていてはいけません。どんどんやってみなくては。

謙虚であることと、引っ込み思案で逃げてることとは全く違います!

こういう思いは、漠然と「学生」をやっていた若いころにはなかった感覚です。「学びたい」「知りたい」と思うモチベーションは強くなっていると思います。 どんなに仕事で疲れていても、学校へ行ってレッスン室からピアノの音が聞えてくると元気になってしまうんです。

昨年の暮れに、学校で発行している不定期誌に私のことが取り上げられました。去年学生になって間もないころに書いた記事を原文どおり掲載していただきました。
「音楽療法って何?」

社会人で私のような年齢の「学生」もいるんだということを学校側も歓迎してくださっているようで、とてもありがたく光栄に思います。

学校側としては学生募集のPRの一環になるかもしれませんし、私は私で、せっかく仕事帰りに毎日通わせていただいているなら、ただ講義を受けて「分かった」「面白かった」だけで終わるのではなく、自分が学んだことを興味のある方たちにも広く知って頂けて、ゆくゆくは音楽療法の世界について少しでも広く知っていただけるきっかけにもなれば、という思いです。


◆より広い音楽の世界へ

昨年も書いたように、音楽療法は単にパーキンソン病など身体機能にハンディのある高齢者だけでなく、知的障がいやメンタルケアを必要とする方など、もっとさまざまな場面に生かされてもよい可能性を秘めたものだと思っています。

まだ私はサラリーマン生活をしながら夜だけ学校に通う身なので、現場への実習経験ができるようになるにはまだ最低2~3年はかかるだろうと思いますが、それでも今年度中にMT(ミュージックセラピー)オーケストラを通じて、病院や特別支援学級への訪問演奏の機会を与えられました。 

われわれの音楽を通じて、現場の人たちの喜ぶ活き活きとした顔を目の当たりにして、あらためて音楽の力、楽しさ、感動の数々をいただきました。さらに、単に音楽だけを「出前」で届ければよいのではなく、その施設と学校との長年築かれた信頼関係があってこそという点も実感しました。

つまり「勉強は勉強」「資格は資格」「仕事は仕事」…と切り離された別のものではなく、いま学んでいることと社会とはつながっている、つながらなくてはいけない、ということ。
こういうことは、10代・20代にふつうの大学に通っていた頃には思いもよらなかったな、と今あらためて思います。

学内・学外を問わず人と人との出会い、先生や教務課のスタッフのみなさんとも「人」としての温かいつながりがとても大切だと思います。

クラシックだけでなくジャズ・ポップス・民族音楽・舞踊など、あらゆるジャンルを超えて時間の都合のつく限りなるべく多くのコンサートやライヴにもお邪魔したいと思っています(どんどんご案内よろしく!)。

さて、3月には来年度の時間割が決まるようです。私のように夜間しか通えない者でも、今年取れなかった基本的な講座が受講できるかどうか…?
「~~のために必要なこと」ばかりでなく、興味のあるテーマの講座も受講できるかどうか…?

4月以降の生活スケジュールが見えるのはもう少し先になりそうですが、引き続き楽しい学生生活を続けるつもりです。



<告知>
♪ MTオーケストラの演奏会が、来る3月16日(日)夜7時半から渋谷区さくらホールであります。無料ご招待も可能ですので、ご興味のある方、ご都合のつく方はコメント欄へメッセージにてお知らせください。


コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
このすぐ下の「カテゴリ」から興味のあるテーマごとにクリックして覗いてみてください。
一部パスワードをご存じのメンバーの方のみ閲覧できるページを含みます。

カテゴリ
カウント開始 2011.1.14~
リンク
最新記事
最新コメント
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR