コードでみるショパン

12月10日(火)


やさしい曲に、基本の3和音以外のお洒落なコードをつける「リハーモナイズ」に関連して、さっそく私なりの課題から…
 
ピアノの詩人、ショパンの移ろいゆく響きの色変わりをコード進行で見てみます。

クラシック音楽の楽譜、とりわけショパンならばしっかりと完成した音符が記されているところに、わざわざコード名を赤で書き込むなんてバカバカしいことを…と思われるでしょう?

やさしいメロディにアドリブで伴奏をつけたい、そのためにはコード進行に慣れること。
映画音楽やポピュラーにコードを付ける訓練もいいですが、クラシックの名曲、ことにショパンはとてもいい教材になると思うのです。

まずは…

♪ バラード1番(作品23)ト短調

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バラードC入り

明るいイントロに続いてCmからGm(ト短調の基本和音)でいったん落着き、もの悲しく始まる4分の6拍子のテーマは「D7」から始まります。ト短調の中では第5番目の和音「D」ですが、意外なことにマイナーではなくファ♯が入った明るい「D7」の響きなんですね。そこから「Gm」へ戻り、「A ハーフディミニッシュ7」から再び「D7」を経て「G」へ。「G」を1とすると2→5→1という循環コードです。

すぐ後で同じことを繰り返しますが、2回目は「A」ディミニッシュではなく明るい「A7」から「D」→「G」へ。 同じ2→5→1でもこういう微妙な色合いが変化するあたり、さすがピアノの詩人・ショパンですね。

この出だしの1段目のコード進行、ポピュラー音楽でもどこかで聞いたことがあるような…

そう、「黒いオルフェ」「夜霧のしのび逢い」など映画音楽でもよく用いられている同じコード進行だったんですね。またぴったり同じではありませんが映画音楽「ひまわり」のテーマも色彩は似ています。不朽の名画といわれる映画音楽とショパン、じつはとても近い存在だったんですね。


ついでにもう一曲、スケートの浅田真央さんがフリー演技で用いた名曲…

ノクターン(作品9-2)

ノクターンC入り 

ピアノを子供の頃から習ってきた方なら、早ければ中学生ぐらいでこのノクターンを弾かれるのではないかと思いますが、あらためてこうして響きの変化とともに味わってみるといかがですか?

頭からの4小節と次の4小節は同じコード進行の繰り返して、右手のメロディが変化するだけです。そして次の4小節が第二テーマ。ここまでの12小節が繰り返されて右手が変化していきます。

1小節目の1拍目は「E♭」、2拍目も下のベース音はE♭ですが上に乗っかる和音は「A♭dim7」、そして3拍目で再び「E♭」に戻り、4拍目でメジャー7が加わります。
2小節目、「C」→「C7」の次に最低音は「F」を響かせつつも上には「B♭dim」、そして「F」へ。

2段目の2小節目、文字がつぶれて見づらいでしょうが、この1拍目は「B♭sus4」(←ここは分からなくて先生に尋ねました)。sus4から「B♭7」そして「E♭」へ。

同じコードが4小節繰り返されたあと、第二テーマは「C7」から「F」へ、2小節目で「A♭」~「A♭m」とちょっと暗くなって「E♭」へ、3小節目から4小節目にかけては「Edim」→「F」→「G」→「C」、そして4小節目の後半では8分音符ひとつごとにコードが変っていきます。
「B♭」→「B7」→「E」→「C7」→「Fm7」→「B♭7」、そしてつぎの「E♭」で最初のテーマに戻る。見事な色変わりではありませんか!

やさしくゆったりしたメロディラインの下で和声がこれだけ豊かな色変わりを見せ、右手のメロディラインもどんんどん変化していく…やはり何百年も愛され続ける名曲ですね。



私も子供のころから母の手ほどきでピアノを習い始めた(やらされた?)ので、「そこに楽譜があるから弾く」という習慣が染みついていました。

でも、耳覚えのあるやさしいメロディラインにどんなコードが合うのか、アドリブでちょこっとお洒落なコードをつけて弾けたらいいな、とずっと思ってきました。いい曲だな、と人生の中で出会った曲は、たとえ手元に楽譜がなくてもちょこっとつまみ弾きぐらいできたらいいな、と。

また、このノクターン程度の曲でも、毎日弾いてれば指も覚えててくれるでしょうが、何か月も、あるいは何年も弾いてない曲は、出だしの何小節かはかろうじて覚えていても、途中で「あれ、何の音だっけ?」と行き詰った瞬間、その先は弾けなくなってしまいます。たいてい分らなくなるのは右手のメロディではなく、左手の伴奏(コード)。
もし、コードで曲の流をつかんでいれば、一字一句オタマジャクシ通りでなくても、曲の流れを追うことはできます。

音符で書かれている通りに弾ければ、たしかに作曲家の意図した響きが再現できますが、完璧にすべての音を覚えていなくても、先人が残したあの響き、あの移ろいがどういうコードでできているのか…?

曲を覚えるのに、目で見てフォトコピーを焼き付ける(→私はこれが苦手です)、耳で覚える・手の動きで覚える…いろんな方法があると思いますが、そこにもうひとつ「コード進行で覚える」が加わるのです。

コード名をあらためて書いてみると「なるほど」という発見があります。
作曲家は、こういう和声の響きを頭の中に泉のごとく描き出してそれを書き留めていくのでしょうか?
それとも先に浮かんだメロディラインに合う響きをつけていくのでしょうか?

ほとんどがアドリブでできているジャズも、緻密な楽譜で組み立てられたクラシックも、歌謡曲やポップスも…音楽をジャンルで分け隔てることはなんとつまらないことでしょう。楽譜があってもなくても、音の流れにはなにか語りかけてくるような共通言語があるのではないでしょうか?

ピアノの曲でもオーケストラの曲でも、たまにはこんな風にコード進行で響きをとらえてみると、分散和音や中声部の中にさりげなくある音の重要さが見えてきたり…またトライしたいと思います。

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ヤマハ音楽教室で、

授業でソナチネに同じように和音付けをやりました。ソナチネはドッペルドミナントの山ですね。

Re: ヤマハ音楽教室で、

とある卒業生さま

今はソナチネでもコードでとらえる教え方をしているんですか?素晴らしいと思います。コードをおさえる手の形で和音進行をとらえたらきっと暗譜も早くできるでしょうね。
私はひと昔前の音楽教育で、クラシックをやってきた人の多くはコードが読めない(音符とコードをまったく別ものと考えている)人も多い前提で書いてしまいました。失礼しました。

ドッペルドミナント、いいですね。またの名をダブルドミナント。
ハ長調でいうと2度の「レファラ」のファに♯をつけた「レファ♯ラ」ですね。でも、主音のひとつ上の長三和音と考えるより、その名の通り属音(ある調の根音から5番目の音)から見てさらに5番目の音。ハ長調ならば5度上の「ソ」からさらに5度上にある「レ」と考えた方がいいですね。バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなど古典派の作曲家はよく用いています。
そう、ショパンのワルツ(Op.64-2)では、弱拍でスタートする頭の小節もカウントして3小節目(左手が入る2小節目)がドッペルドミナントですね。Ⅰ→ドッペルドミナント→Ⅴという動きですね。
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

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