7つの白鍵と5つの黒鍵 鍵盤には宇宙がある!

10月22日(火)


きのう、ジャズピアノコードの授業で先生が、
「音は7つでできている。チャーチモードも7つ。本来は6が基本だが、もう1つ足して7。世界の万物も月・火・水・木・金・土と6つでできていて、最後に安息日として“日”が加わって7。ピアノの鍵盤は宇宙と同じである。もしかすると『ラッキー7』もここから来たのかもしれないね」
…といったことを熱く語ってくださいました。

こういう話に興味を感じる方と、「だから何?」と感じる方、それぞれでしょうが、私はこういう話に「非常に面白い!」と惹かれてしまいます。
以前にもこれに似たようなことを思いながら、つくづく不思議だな~と思ったことがあったからかもしれません。

和音の基本は、黒鍵は、白鍵は、属七の次に加わる音は
考えてみたら仏教の世界でも、三重の塔、釈迦三尊、五重の塔、七重の塔、九輪と水煙、九品仏… 奇数の数字というのには何か意味があるようですね。
 
そして「12」という数字も。時間、月…すべて12でひと巡りします。
占星術でも選び出された星座は12、オリンポスにも12の神様がいました。

私もまだまだ勉強途上ですが、なぜ白鍵は「ド」から「シ」まで7つなのか、黒鍵はなぜ5つなのか、なぜ1オクータブは12音なのか、という話を私なりに…

★過去に書いた記事もところどころリンクで貼り込みますが、まずはひととおりこの記事をお読みになって、ご興味のあるところは過去の記事もクリックしてお読みください。すべて関連しているので…


すべての音は5度の積み重ねから生まれる
 ~7つの白鍵と5つの黒鍵~


音の高さは周波数によって決まり、ある音の周波数のちょうど2倍(1:2)がオクターブ上、2:3が5度(ドとソ)の関係であることを最初に発見したのはピタゴラスで、5度の関係でつくっていく「ピタゴラス音律」という話は前にも書きました。

→ ♪「12の音をつくる」 (これは純正律~平均律までちょっと長い話になるので、興味があったら後ほど読んでいただくとして…)


「ド」から完全5度上の音を重ねていくと「ド→ソ→レ→ラ→ミ」となります。上に離れて重なっていく音をオクターブ下に降ろして隣接するように並べ直すと「ドレミソラ」というペンタトニック(=5音階)ができます。演歌でよく言われる「ヨナ抜き」、つまり4番目の「ファ」と7番目の「シ」の抜けた音階ですね。

これをさらに続けて、「ミ」の上には「シ」、その上には「ファ」ができます。これで「ドレミファソラシ」という7つの白鍵の音が揃います。


◆「シ~ファ」の間隔に問題あり!

ただ、ここにひとつひっかかることがあります。「シ~ファ」の間隔です。「シ」から「ファ」まで白鍵だけを見ればたしかに5度上ですが、「シ」と隣の「ド」の間は黒鍵が入らない半音、「ミ」と隣の「ファ」の間も半音。つまり5度の中に2か所も半音が入ってきてしまうため完全5度ではないのです(=減5度)。

減5度 

「シ~ファ」以外、「ド~ソ」「レ~ラ」「ミ~シ」「ファ~ド」「ソ~レ」「ラ~ミ」すべて、間に半音が1箇所だけ入る完全5度です。

かつての対位法でも「シ~ファ」という音程は「悪魔の音程」として忌み嫌われました。
白鍵だけを使ってできるチャーチモード(教会旋法)でも、「シ」からはじまるロクリアン旋法はとっても暗い響きで、かつての6つの教会旋法の中には入っていませんでした。
→ ♪「6つの教会旋法」

もし仮に「シ」が半音下であれば「シ♭~ファ」は完全5度になります。白鍵「ファ」から見て完全5度下は「シ♭」なのです。 逆に「シ」を基準にするとそこから完全5度上は「ファ♯」となります。
このあたりから、白鍵だけでは解決しない問題から5つの黒鍵が生まれてくる話へ、また、なぜドイツ音名では「B」=「シ♭」なのかという話へとつながります。


5つの黒鍵

ナチュラルの「シ」から完全5度上は「ファ」よりも半音高い「ファ♯」でなくてはなりません。
先ほどの「ド→ソ→レ→ラ→ミ→シ」の次にさらに完全5度上の音を並べていくと「ファ♯→ド♯→ソ♯→レ♯→ラ♯」となり、次に来るのは「ミ♯=ファ」(白鍵)、その次に「シ♯=ド」(白鍵)、つまり元の「ド」に戻ってきます。これで12音が循環します。

「ファ♯~ラ♯」までを隣接する順序に入れ替えると「ド♯・レ♯・ファ♯・ソ♯・ラ♯」=5つの黒鍵ですね。そしてこれらはすべて5度の関係から成っている5つの音、つまりペンタトニック(=5音階)です。
 ファ♯→(5度上) ド#→(5度上) ソ#→(5度上) レ#→(5度上) ラ♯


PA223403.jpg

ピアノを弾けない方でも、右のペダルを踏んで弦全体が響く状態にして、黒鍵だけをちょっと押してみてください。隣同士を押しても、飛ばして押しても、高音・低音を同時に押しても、黒鍵だけなら心地よい響きに聞こえるはずです。


ドイツ音名の「B(べー)=シ♭」

「シ」という音はとても不思議です。ハ長調の音階では主音=ドの半音下にあって「導音」と呼ばれ、主音を導き出す存在です。それに対して、ドから全音(2度)下にあるのは「シ♭」です。
「C7」という和音(メジャー7ではないふつうの7)で、「ドミソ」の上に乗っかる音は「ソ」から短3度上の「シ♭」です。

ドイツ語の音名は、「ラ=A」から上に「A・B・C・D・E・F・G」と並びます。
ここでAの次は「B(ベー)」=「シ♭」です。そしてナチュラルの「シ」のことは「H(ハー)」といいます。なぜでしょう?

ドイツ風の考え方では「シ」よりも「シ♭」の方がどうやら重要のようで、「A(アー)」の隣に堂々と「B(ベー)」がいるんですね。
管楽器の多くもB(ベー)管、つまり穴をすべてふさいだ状態で出る最低音が「シ♭」でできているものが多いのも何かの偶然でしょうか…?
一方白鍵の「シ」だけ音名がないのは不便だから、「G」の後の「H」という文字を付け足してつけられた名前のように見えます。


それに対して英語で「B(ビー)」は♭のつかない「シ」です。一般にコード名として書かれている「B、Bm、B7」などはすべて♭のつかない「シ」をベース音にしています。
そして「シ♭」のことは「B♭(ビーフラット)」と呼びます。
英語では単純に白鍵だけを並べて「A・B・C…」と名付け、それぞれ半音高いものは♯、半音低いものは♭を付けますから、単純と言えば単純です。

発音されれば分かりますが、文字で「B」と書かれている場合、ドイツ音名の「ベー(=シ♭)」なのか、英語音名の「ビー(=ナチュラルのシ)」なのか、紛らわしいですね。

わが国の音名も、「ラ」の音から上に「イロハニホヘト」と名前がつけられています。
「ロ」は♭のつかない「シ」です。♯は「嬰(えい)」、♭は「変(へん)」をつけますから「シ♭」=「変ロ」ですね。
日本は医学や音楽を主にドイツから学んだと思うのですが、「シ♭」に関してはドイツ式ではなかったんですね。

ドイツ音名では♯には「is」を、♭には「es」とつけて呼びます。「ドのシャープ」「嬰ハ」などというより「Cis(ツィス)」と言えますから歌うには便利です。でも「Cis(ツィス)」なのか「Ces(ツェス)」なのか聞き取りづらかったり、表記をさっと見たときに見間違える危険も…
ティンパニの音を曲の途中で変えなくてはいけない時など、楽譜への書き込みではさっと見て間違えないように、私は「E♭」「B♭」、「C♯」「G♯」などと書いています。ドイツの音楽を演奏する時も音の表記はアメリカ方式ですね(笑)



◆「ABC…」「イロハ…」と「ドレミ…」

ちなみに、ドイツ語・英語・日本語いずれも、音名は「ラ」の音からスタートしています。
ピアノの鍵盤のほぼ中央にある真ん中の「ラ」は、周波数440Hz(=標準。今日の楽器は442Hzでチューニングされることが多い)。
じつはこの周波数は、赤ちゃんが眠りにつくときに聞くお母さんの声の音域のほぼ中心にある音に近いと言われています。いわば人間の耳でもっとも聞きやすい高さの音。
だからチューニングにも「ラ」の音が使われるほど音の基準となっていて、そこを起点に「A」としたのでしょう。

それに対して「ドレミファソラシ」はイタリア語で、グレゴリア聖歌の各旋律ごとに歌われている言葉の頭文字から取ったものです。 → ♪「ドレミの起源」

ではなぜ「ラ」からではなく「ド」(ラよりも3度上)からスタートしているのでしょうか?
それはグレゴリア聖歌などで用いられている教会旋法とも関係がありそうです。

「ラシドレミファソラ」と歌うと暗い短音階(=教会旋法では「エオリア旋法」)ですが、3度上のドから「ドレミファソラシド」と歌うと明るい長音階(=教会旋法では「イオニア旋法」)です。

7つの音の並び順によってどうして明るく聞こえたり暗く聞こえたりするのか?…これも不思議ですね。前にも書きましたが、音階というのは7つの音がどう並んでいるか、いわば階段の形なんです。

「ドレミファソラシド」という長音階の場合、ミとファの間とシとドの間が半音で、それ以外は全音ですね。つまり「全・全・半・全・全・全・半」という形の階段になっています。何の音からはじめても、全音と半音との配置がこのような関係に、つまり同じ階段の形になっていれば明るい長音階に聞こえるのです。 不思議ですね。

それに対して、同じ7つの音でも「ラ」からはじめてみるとどうでしょう?
「ラシドレミファソラ」という短音階(自然的短音階)の場合、シとドの間が半音、ミとファの間が半音ですから「全・半・全・全・半・全・全」という並びになります。こういう形の階段だと暗い短音階に聞こえるんです。不思議ですね。

→ ♪「音の聴こえ方の不思議~音階と和音の話(1)~」 (図解あり)

♪ ミュージカル『サウンドオブミューミュージック』の中に登場する「ドレミの歌」(日本語の訳詩はペギー葉山)は、明るく元気な「はじまりの歌」。やはり明るい長音階でなくてはいけませんよね!
 「ラはラッパのラ、シはしあわせよ~、ドはドーナツのド…」と「ラ」から歌ったからかなり暗~くなるでしょうね(笑)


◆鍵盤は「12音の宇宙」だ!

12の音の成り立ちと鍵盤の配置、つくづく面白いと思いませんか?

「ドとレの間、レとミの間…と白鍵と白鍵の間には黒鍵があるけど、ミとファの間とシとドの間には黒鍵がない。ミ♯=ファ、シ♯=ド…う~ん難しい、なんでわざわざこんな複雑な構造を考えたの?」…なんて思ったことはありませんか?

鍵盤の配置はすべて倍音率からできていたんですね。
また片手の親指と小指を広げればちょうどオクターブが届くようになっています。そしてその1オクターブ内が12等分されていて、ちゃんと理にかなった位置に黒鍵がある…じつにうまく出来てると思います。

でもこの配置は、すべて白鍵で完結するイオニア旋法をはじめとする教会旋法(ダイアトニック)でできていたので、多少調弦によって基準となる音の高さを変えるにせよ白鍵だけで演奏されることを前提に、黒鍵はあくまで臨時記号への対応として使われるような設計だったのでしょう。

このような鍵盤の配置は、まだ平均律のピアノができるよりも前からです。
クラビーチェンバロ(=ハープシコード)の時代は今のピアノとは白鍵と黒鍵の色が逆でしたが(貴婦人の手が白く美しく見えるためという説もある)、鍵盤の配置は今日のピアノと同じ形になっていました。
そしてそれが後のハンマークラビーア(=今日のピアノ)にも、アコーディオンにも、マリンバや鉄琴の仲間もすべて引き継がれ、12音は今日のピアノの鍵盤と同じ配置に並んでいます。

ともかく、12の音はすべて5度の関係で成り立っているという神秘!
ピアノの鍵盤は、まさに集約された宇宙の地図ようなものと言えるでしょう。

現代のピアノは88鍵。管楽器では調によって違う管に持ち替えないと吹きづらかったり、弦楽器では音域によっては他の楽器に譲らなくてはいけなかったりしますが、ピアノの中にはオーケストラのあらゆる楽器の音域がすべて入っています。コントラバスの最低音よりも低く、ピッコロの最高音よりも高い音まで出せます。
1オクターブを片手の親指と小指でおさえられる中に12音が並んでいるので、指の動きさえ訓練すれば、どんな曲でもどの調でも自由自在に曲が弾け…たらいいですね(笑)

たとえ超絶技巧のピアノ曲をプロ並みに人前で弾けなくても、お年寄りや子供の好きな曲を、どの高さでもさっと即興で伴奏をつけられたら…

そこは意欲と実際の練習次第、人生のうちでピアノの鍵盤とどのぐらい触れ合っていられるか、音楽と戯れていられるかでしょうが…

バイエルなどの教則本をやらされて、先生が厳しくて音楽が嫌いになってしまわれた方、「子どものころピアノを習ってました」と過去形でおっしゃる多くの方、
どうか時間を見つけて、もういちどピアノのふたをあけて鍵盤と戯れてみませんか?

→ ♪「12」と「5」不思議な音の世界

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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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