英語でしゃべらないの?

最近、JRでも私鉄でも英語のアナウンスが定着してきました。

「次は〇〇です」に続いて「右(左)側のドアが開きます」
The doors on the right(left) side will open.

そうか~、各車両に何か所もドアがあるから「doors」と複数なんだな。「(車両の)右側のドア」という表現は、壁にくっついているものと同じく「on」なんだな…などとあれこれ考えてしまうのは日本人なんだな~と(笑)
ところが毎日電車に乗っていると、この一連の文章全体が「音」として入ってくるようになります。「語学で大切なのはこれなんだな」とあらためて感じます。

日本では、中学・高校(→大学受験、大学)と英語を学んでいます。いまは小学校にも英語の授業がありますね。単数・複数、過去・現在・未来、前置詞・助動詞、語順…正しい文法はしっかり学んできたはずです。

でも、いざ外人を前にするとまったく喋れない、何かを伝えたくても英語が出てこない、それ以前に何を話していいか分からない、…なぜ?

私も決して英会話が得意とは言えません。でも専門用語は使えなくても、自分なりに思っていること・伝えたいことは、時間をかけて言葉を並べればなんとか伝えられると思います。
では日本人に多い「英語がしゃべれない」原因はどこにあるのでしょうか?


文法ありきで、どうしても「訳そう」としてしまう

試験近い高校生たちが電車の中で友達同士で確認しあっています。
「アット~→そこで~、ヒー→彼は~、ワントゥ~→望んで~」
と、ひとつひとつの単語をカタカナ発音しながら日本語に置き換えています。あれじゃいつまでたっても喋れるようになるはずがないでしょう。 音楽に例えるなら、いちいち「四分音符、ドー」と読んでいるようなものです。

たとえば関西で育った人が、ふだんは標準語で話していても、関西の友達と話すと関西弁になりますね。その時、いちいち「私→わて、いけない→あかん、ありがとう→おおきに…」などと訳しているでしょうか?
耳から入ってくる言葉も発する言葉も、関西弁モードに切り替わっていて、自然に関西弁の言葉が出てくるはず。いちいち訳してなんかいたら喋れません。名古屋弁でも東北弁でも、英語でもほかの言語でも同じことです。

「He wants to make ~」と一かたまりの音でとらえ、いちいち「彼は~を作りたがっている」なんて訳さないで、そのまま英語モードになること。だいたい「make=作る」と覚えるのもいかがなものでしょう? 「~~を~~(状態)にする」といった意味もありますよね。


日本(自分)のことを伝える言葉が見つからない


ちょっと実験してみましょう。

英語で「大統領」は?…「President」!
はい、そうですね!では、「総理大臣」は?…「??」

英語で「教会」は?…「Church」!
はい、そうですね!では、「神社」は?…「??」

 * 総理大臣は「Prime minister」、神社は「Shrine」です。


中学校の英語の教科書を見ると、トム&スージー、あるいはジャック&ベティなど男の子と女の子が登場し、「これはペンですか?」にはじまり、「日曜日には教会に行きます」、「明日はホームパーティがあるのでドレスを着ます」…etc.
そう、英語の教材を通じてアメリカ文化を学んできたようなところがあります。

国際的な感覚を身につけるのに、単に言語だけでなくその背景にある他国の文化を学ぶことはそれ自体悪いことではないのですが、日本人が日本のことを英語で伝える訓練がほとんどできていないのです。

武家屋敷、長屋、江戸の下町、神社のお祭り、屋台、お琴や三味線など日本の楽器・音楽…etc. 外人に日本の文化を伝えることができますか?

では、あなた自身がどんな人で、なにをしている人なのかはどうでしょう?
学生だったら自分が学んでいる専門分野、仕事をしている人だったら自分の職種、やっている仕事の内容ぐらい、英語では何と言うのかぐらい知っておくといいでしょうね。
 
だいたい日本人同士のふだんの会話の中でも、あらたまって「私は~~です」「私はこう思います」といった自分自身を語ることが案外少ないのかもしれません。
初対面の人に、自分はどういう人間で、何をやっているのかを簡潔に自己紹介するのも苦手な人が多いようです。つまり「語りたい自分と向き合う」ということです(→後述)。


語りたいテーマがない

アジアから日本に留学や仕事でやってくる人たちは、わずか2~3か月で驚くほど日本語を覚えます。 しかし、鼻が高くて背の高い、いわゆる「外人さん」は、何年も日本にいるにもかかわらずあまり日本語を覚えない人がいます。
欧米人はプライドが高く、日本語を覚えようとしない、努力が足りない、とばかり責められない面があるように思います。

それは、「外人さん」を見かけるとついつい英語で話しかけ、タダで英会話を勉強したがる日本人がよくいるため、「日本語を使わなきゃ生きていけない」機会を奪っている面も否定できません。

さて、英語で話しかけたい日本人、本当は英語をしゃべりたいと思っている日本人の多くに見受けられる傾向ですが…

「どこから来ましたか?」「日本は好きですか?」「すきやき好きですか?」「お寿司好きですか?」「京都に行きましたか?」…さんざん質問攻めにして、相手が何か喋っても「ふんふん…」と適当に生返事をして、「ナイス トィー ミーチュー」と固い握手をして別れる。
外人さんからみれば「…ん?What?」でしょうね(笑)


「難しい単語を知らないから話せない」という思い込み

先ごろ、東京オリンピック招致に向けて、身体にハンディのあるアスリートが英語でスピーチしました。発音はややジャパニーズ英語ではありましたが、スポーツとの出会い、体のハンディとの闘い、そこを襲った震災、すべてを失った中から見出した生きる勇気…英語でもきちんとした自分の言葉で話していたのに感銘を受けた方も多いでしょう。

ひとつひとつの言葉はさほど難しい専門用語は使っていなかったように思います。せいぜい中学で習う程度の単語でも、語りたい自分・伝えたいメッセージがしっかりあれば、あれだけ説得力のあるスピーチになるということです。

たとえ専門的な用語で「~~する」という言葉を知らなくても、have、give、make、take…といった基本的な動詞には様々なニュアンスがありますから、それらをうまく使えればたいていのことは伝えられます。

たとえば、「お名前を教えていただけますか?」という丁寧な言い方。
「What's your name?」でも意味は通じるし、英語にはもともと「敬語」はありませんが、目上の人にもう少し丁寧にお伺いしたい場合には何と言ったらいいのでしょう? 

「名前=name」、「教える=teach」、「いただけますか?」という丁寧な言い方は何と言ったらいいんだろう?…なんて考えていたら出てきません。

「May I have your name?」はいかがでしょう? 直訳して「私は、あなたの名前を持ってもいいですか?」なんて考えるのではなく、こういうシンプルな表現ながら「have」のもつ幅広いニュアンスを英語として理解し、慣れることです。

「(~は)私を幸せにしてくれる」も、「~makes me happy」でいいんです。
「have=もつ」、「give=与える」、「make=つくる」などと固定して暗記しないことです。


語りたい自分と向き合う

英会話学校に通ってネイティブの発音に慣れる、英語風の言い回しを覚える、基本的な単語(=忘れてしまった単語)を覚えるのは意味のないことではないでしょう (私もふだん英語を使わないので、少しは訓練した方がいいと痛感します)。

でもそれ以上に大切なのは、「私はどういう人」で「何を語りたいか?・伝えたいか?」です。

よく若い学生さんが、「英語をマスターしたい」とか「できれば語学留学したい」とおっしゃいます。でも「英語をマスターする」ってどういうことでしょう?英語をマスターするためにわざわざ海外留学するんですか?

英語は言語のひとつです。言語は人に何かを伝える手段です。英語を使って何を学びたいのか?、海外の人と何を交わしたいのか?、何を伝えたいのか?、ひいてはどんな生き方をしたいのか…?  

ふだんから、自分なりに思うこと、目標、興味、日常の中でみつけた感動、といったことを表現してみる習慣も大切ではないかと私は思います。たとえばこうして何か話題を見つけてブログに書いてみると、自分がふだん何気なく思ってきたことがはっきりして整理されます。 ブログでなく日記でも手紙でもいいと思います。

本や新聞を読んだりTVやインターネットから情報を得るばかりでなく、自分なりに自分のことばで書いてみるということ。それは自分自身と向き合う作業といってもいいかもしれません。
そして記憶だけでなく、「思う」「感じる」「考える」を大切に頭をバランスよく使っているか?

前にもブログに書きましたが、「~~は~~で、~~すると~~で、~~だから、~になっちゃうし…」と、自分をとりまく状況・条件をだらだらと羅列しただけの「自分のない会話」ばかりしている人は、おそらく英語で何かを伝えることは苦手なのではないかと思うのです。
仮にそういうだらだら会話をそのまま英語に訳せたとしても、相手に何かを伝えるメッセージにはなりづらいでしょう。

会話(ことば)には、ふだんの「生き方」そのものが表れるということかもしれませんね。
→ いい会話に大切なこと


<追記>

文章の後ろからさかのぼって訳そうとしない

英語の手遊び歌にこんなのがありました。

♪「農場には農夫がいる、農夫は猫を飼っている、その猫はネズミを捕る、ネズミはチーズを食べる…」
 (↑ メロディは、ブラームスの「大学祝典序曲」のメロディに符点をつけて弾ませたようなテーマです。どなたか歌の題名をご存知の方、コメント欄に入れてください!)

この歌そのものが、いかにも英文的な発想だと思うのです。

主文は「農場には農夫がいる」ですよね。非常にシンプルです。
その農夫は猫を飼ってるんですね。その猫はネズミを捕るんですね。そのネズミはチーズを食べるんですね…という具合に、すべてつながっていきます。

「~を」と目的語だったものが、また次の主語となってつながっていく。文法的には関係代名詞を使って、英文はどんどん後ろに後ろに説明文をつなげていけるんですね。
大統領演説でも、「私はthat~以下のことを信じます」という言い回しが多く出てきます。

学校で習った模範的な訳し方は、文章の終わりの方から前に向かって訳していきなさい、というスタイルでした。
先ほどの手遊び歌を意味の上でつなげていくと、「農場には、チーズを食べるネズミを捕る猫を飼っている農夫がいる」となります。後ろにつづくことはすべて「農夫」を修飾しているのです。

この要領で、「私は」と主語だけを訳したら、that以下に飛んで、そこに登場する人物について関係代名詞があればそれ以下のことを先に説明し、前へさかのぼってきて長々とつなげ、最後に「信じます」と結ぶわけです。たしかにこうすれば1つの文にすることができます。
ただこうして訳された日本語は、最後まで聞かないと「信じます」なのか「決して信じません」なのか、結論が分かりません。

英語では「私は信じます」という結論が文頭にあるのです。 英語ははじめに結論ありき、とても分かりやすい言語。対する日本語は、ごちゃごちゃつながった説明をじっくり聞いていき、最後までいかないと結論が見えない、とてもまどろっこしい言語です(笑) 

英語を聴きながら、そんなまどろっこしい日本語にいちいち訳しながら聞こうとすること自体がとても無謀なことです。ところがわれわれが学校で習ってきた英語ではそれが習慣として染み付いてしまっているのです。 

耳から入ってくる言葉はどんどん消えていきます。相手が一区切り喋り終わるのを待って、その最後の言葉からさかのぼって訳していく暇なんてありません。そんなことをしているうちに相手が次のことを話し始めたらもうお手上げですね。標準語を聴きながら、少なくとも語順が同じ言語である関西弁に同時通訳する方がまだ楽でしょう(笑)

そこで、学校で習った方法とはことごとく逆になりますが…

「私は、信じる、彼が無実であることを」、「その彼は、疑われている、犯人として、窃盗事件の」、「その窃盗事件は、起きた、おととい…」という風に英文は流れてくるはずです。

頭から入ってくる<主語+動詞+目的語>の骨格をひとかたまりにどんどんイメージしていけばいいんです。 もともとそういう順序でしゃべってるんですから、そのままストレートに受け取れば意味は分かりますよね。

「綺麗につながった日本語に翻訳しよう」なんて思わないで、まずは入ってくる言葉をそのままの順で理解することです。飛び込んでくる単語をいちいち日本語に置き換えようとしないで、「belive」はbelieveのまま、「suspected」はsuspectedのまま受け入れるのです。 

その上で最終的にこれを日本語で1文にしなさいと言われたら、「私は、おととい起きた窃盗事件の犯人として疑われている彼は無実であると信じます」となるわけです。

でも、それは違う言語である日本語に「翻訳する」という別の作業。そんな置き換え作業を会話の中で同時進行でやろうとするからいけないんです。流れてくる英文をそのままの順序で受け入れていけば意味はちゃんと分かるはず。それでいいじゃないですか。

そんなことを心がけるだけで、英語を聞く気持ちがぐっと楽になって話が見えてきませんか? 
そして、こういう語順で組み立てていく思考に慣れれば、きっと英語も話しやすくなるのでは…?

 

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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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