「12」と「5」 不思議な音の世界

「12」という数字を聞いて、皆さんはまず何を思い浮かべますか?

1年の月の数、時計の文字盤の数、干支の十二支、オリンポスの12神、誕生月の星座、1ダース…etc.
なぜ人は12という数字で物事をとらえるのでしょうか? 数えやすいのは両手の指の数「10」かと思いますが、宇宙の営みや時間、古代からの信仰に関するものには「12」で構成されるものが非常に多いように思います。

そして、音楽の好きな方ならすぐピンと来るのが、1オクターブを均等に割りふった平均律の音の数も「12」、今日の音楽は「12音階」(クロマティックスケール)でできています。なぜ12なのか?


その非常に難しいお話をごくごく大雑把に言うと…

人の耳にきれいに調和して聞こえる5度の響き(「ド」と「ソ」の関係)を最初に発見したのはピタゴラスだと言われています。

ピタゴラスは、たまたま通りかかった鍛冶屋で鉄を打つハンマーの重さの比率によって音の高さが異なる、という発見をしました。現代風に考えれば「重さ」の違いではなく、ものが振動する振動数(=周波数)によって音の高さは変わりますが、「音程は比率で決まる」ということをピタゴラスは最初に発見したのです。


ちなみに音を現代の周波数で見てみると、オクターブ上の音というのは、振動数が1:2の関係(真ん中のラが440Hzで、オクターブ上のラは880Hz)。もっとも調和して響きあう「完全8度」がオクターブです。

次によく調和するのが、ピタゴラス先生が発見した「完全5度」(ド~ソ)の周波数の比率は「2:3」です。

ある音から4度上にある音(ドから4度上=ファ)は、1オクターブ下にもっていくと5ド下です。このド~ファの関係は「完全4度」で、周波数は「3:4」。
「完全」とつくのは、同一の音「完全1度」、オクターブ上の「完全8度」、あと「完全4度」と「完全5度」しかありません。周波数の比率が整数倍率になっているのが「完全」です。


◆5度の関係で12の音が生まれる

ある音から完全5度の関係にある音を次々に設定していくと、12回目でもとの音に戻ってきます。つまり、1オクターブ内が12の音で刻まれるのです。これが12音階(クロマティックスケール)です。

もうかなり以前に「12の音を作る」という記事に、その仕組みを少し詳しくご紹介し、ピタゴラス音律・純正律・平均律についても私なりに理解する範囲でなるべく分かりやすく書いたので、興味のある方は、まずこの記事を読んだ後にご参照ください。
(→ 
「12の音を作る」


◆「5度時計」で見る12音の相関関係

以前、誕生日の星座を音に対応させた
「音占い」というのをご紹介しましたが、今回は占いのお話しではなく、「音」についてのお話しです。

先ほどのピタゴラス音律の基礎ともなっている「完全5度」の関係で、時計のように円形に「12の音」を並べてみましょう。

もともと時間も1時~12時、音も12個(ピアノの1オクターブ内にある白鍵・黒鍵すべての音)。
形は時計のようになるのは間違いありません。 12の音を「5度」の関係で円形に並べ直してみると、あらためて意外な発見があります!

音の十二支

一番上の12時の位置に「ド(C)」、ドから5度下(=オクターブ上では4度上)にある「ファ(F)」を1時の位置に、ファから5度下の「シ♭(B♭)」を2時の位置に…

「G♭」=「F♯」は6時の位置に来ます。さらに5度下(=4度上)の「シ(ドイツ語ではH=英語ではB)」は7時、「ミ」は8時…と進んで12時で元の「ド」に戻ってきます。べつに「ド」から始めなくても、何の音からでも5度下5度下…と続けていくと12回目で元の音に戻ってきます。面白いですね。

文字盤の円周の外側に、その音をベースとする調性調号(♯や♭の数)と、その調の基本となるⅠの和音(トニック)を記しました。何かお気づきになりませんか?

時計周りに1時・2時・3時…と時計回りに進むごとに、♭の数が一つずつ増えています!
そして6時の位置はG♭(変ト長調)ですが、G♭=F♯です。♭でも♯でも6つつく調号です。
 
そこから7時・8時・9時…と進むと、今度は♯の数が一つずつ減っていき、一番上のハ長調では♯も♭も付かない「ド」に戻ります。

#や♭の記号を見ると、真上が「0」で真下が「6」、不思議だと思いませんか?

さらに…


基本3和音のⅠ・Ⅳ・Ⅴが隣同士に!

5度時計の一番上を見ると、「ド」を中心に左隣に「ソ」(5度上)、右隣に「ファ」(5度下=1オクターブ上げてみると4度上)があります。
*「ファ」は、ドから上に見れば4度上ですが、オクターブ下で考えるとドより5度下にあります(下の属音=下属音という)。


隣合うダイアトニック2  

時計の一番上の「ド」をベースとする「ドミソ」。ハ長調のⅠの和音・「トニック」
「ド」のひとつ手前(11時の位置)にあるのは、ドより5度上にある「ソ」をベースとする3和音「ソシレ」Ⅴの和音「ドミナント」
また「ド」の右隣(1時の位置)には、「ファ」をベースとする「ファラド」。これは「ド」から4度上(=オクターブ下では度下)にあるⅣの和音「サブドミナント」。

この3つは、ある調の中でとくに重要な役割を果たしています。
「Ⅰ→Ⅴ→Ⅰ」は「気をつけ→礼→なおれ」の終止形、
「Ⅳ→Ⅰ」は「アーメン」の終止です。



♯ も♭もつかない簡単なハ長調の曲に伴奏をつけるとき、「1.ドミソ」「4.ドファラ(=ファラドの転回形)」「5.シレソ(=ソシレの転回形)」の3つだけでたいていの曲は伴奏できてしまいます。
それは、ドミソ、ファラド、ソシレの中に7つの白鍵がすべてどこかに含まれているからです。

音階は7つの音でできていて、その7つの音すべて3和音を重ねることができるので、決してこの3つの響きだけではありませんが、とくにこの3つの和音は明るい響きの和音です。

詳しい説明は→ 
「リハーモナイズ(Ⅰ・Ⅳ・Ⅴの3色から7色へ」 の前段を参照。


5度時計のどこを見ても、ある音を中心に「Ⅰ=トニック」と見ると、ひとつ右隣には「Ⅳ=サブドミナント」が、ひとつ左隣には「Ⅴ=ドミナント」の関係に並んでいます!
もともと5度下へ、5度下へ…と並べていったのですから、ある音の左隣には5度上の音、右隣には5度下の音があるのは当たり前なんですが…

まるで三位一体の父・子・聖霊ような、あるいは仏教の釈迦三尊や阿弥陀三尊のような形に見えます。
そして全体は、さながら宇宙の相関図か曼荼羅絵図、あるいは転生輪廻の図といったところでしょうか… !



3つの音が重なってできる和音の響き。二つの音でも重ねればハーモニーはできますが、2音だけでは明るい響きとか暗い響きというのがいまひとつはっきりしません。3つの音の並び方で明るい響き、暗い響き…といった色彩感が生まれます。

音階は、12の音の中からいくつかの音を選んで並べたもの。
倍音律で5度の関係でド・ソ・レ・ラ・ミと5つの音を選び出し、低い順に並べ替えると「ドレミソラ」=ペンタトニック ができます(ファとシ、つまり4と7が抜けた「ヨナ抜き」)。

さらにそこにファとシを加えて7つの音でできる長調と短調。そして冒頭に書いたように、度の関係で音を取っていくと12の音が生まれる…

3、5、7、12…音の世界はコスモス(宇宙)のように思えてなりません。


★ご紹介した「5度時計」を文字盤にして、本当の時計を作ってみました(2016年5月)。

ただ、時間が進むにつれ時計まわりに5度ずつ下がって♭の数が一つずつ増えていくよりも、5度ずつ上がって♯の数がひとつずつ増えていく方が、黒鍵が後半に登場するなど、いろんな意味で理に適っていると思い、この図の逆回りに作り直しました。

→ 
「5度時計」を本当の時計に (2016年5月)



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

No title

高校の授業で、音楽の中に摂理とか規則とか言語でいうと文法のようなものがあるということを学びました。ふつ~の高校でしたが、先生がユニークで、楽しかったですね。
それにしても、音の分析、素晴らしいですね。
これを知っているのと知らないのとでは、表現力に差が出ますよね。

Re: No title

星野さま 
さっそくのコメントありがとうございます。
高校の先生、素晴らしいですね。学問・研究は記憶力だけを使って覚えさせられ試される「お勉強」ではなく、自然界や人類の発見への賛美であり、ロマンですね。いい教師に恵まれた生徒は幸せだと思います。

私はもちろん教える立場でもありませんが、自分が知って感動したことは、なるべく分かりやすく皆さんにもお伝えしたいと思ってしまうのです。書いた記事を読み返してみると、分かりづらい表現があったり、前後関係を入れ替えた方が分かりやすいのではないかと、書いては消し書いては修正し…
私のブログ記事は時間とともに変化するのであります(笑)

ド#=レ♭

ある方から、12の音の時計の文字盤に「C(ド)#がない」とお尋ねがありました。

はい、鋭い質問ですね!
#系ではト長調から#がひとつずつ増えていき、最後は#が7つ付くC#(嬰ハ)長調ですね。それがこの文字盤の中にない!

ところがC#=D♭、ドとレの間の黒鍵で同じ音(異名同音)です。時計では5時の所にあります。
#の調号で表せば#7つ、次の6時では#6つ、7時では5つ…とひとつずつ#記号が減っていきます。よくできてますね!
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
このすぐ下の「カテゴリ」から興味のあるテーマごとにクリックして覗いてみてください。
一部パスワードをご存じのメンバーの方のみ閲覧できるページを含みます。

カテゴリ
カウント開始 2011.1.14~
リンク
最新記事
最新コメント
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR