ここ数ヶ月の景気回復をどう見る?

昨年12月に安倍政権が成立してから、円高は円安に転じ、株価は上昇を続け、一見景気は上向いてきているかのように見える。
政府と日銀が一体となって進めようとしてきたデフレからの脱却、すなわちインフレ政策と金融緩和政策の効果が早くも現れはじめたということか?

しかし私がこの「豊かさとは…?」のカテゴリーにこの1月以降あえて記事を書いてこなかったのには理由がある。
それは一昨年以来私がこのカテゴリに書いてきたことを読んで理解してくださっている方にはお分かりいただけるだろう。

いま言われているアベノミクスの論理、そしてここ数ヶ月で一気に盛り返してきたかのように見える数字上の好景気を、私は決して楽観的には歓迎していない。むしろ私の思う本当の意味での「豊かさ」とは全く逆の流れのようにも見えるからだ。


投機マネーによって変わるものの価値

前の安倍政権時代に、ドイツの首相が「投機マネーを規制しよう」と提唱した。しかしアメリカのブッシュ大統領は「それは資本主義の原理を否定するものだ」と一括。日本は当然のごとくアメリカに同調した。しかしその直後に原油価格が急騰したのである。しかもそれは投機マネーの動きによってだったのだ。

私は経済学の専門ではないが、一般常識として「市場の原理」「需要と供給のバランス」によってものの値段は変動することぐらいは分かる。もし仮に原油が採れなくなる、あるいは産業界で急速に原油の需要が高まったからという理由で原油の値段が上がったのならそれは健全な経済現象だ。しかし「投機マネー」によって同じものの値段が急騰するということは、どういうことを意味するのか?

原油の値段が上がるということは、多くの企業にとって燃料や原料のコストが上がることを意味し、企業としてはマイナス要因となる。それを見込んで一般の投資家たちは危機感を抱いて大手企業の株はどんどん売りに出される。株価は買う人が多く殺到すれば上がり、手放す人が増えれば下がる。極端な話、風評による一喜一憂によっても株価は変動するのだ。

その企業のやっていることを信じて将来に渡って長くお金を援助しようというのが本当の意味での「投資」だろう。それに対して、一喜一憂で危うくなったら売る、儲かりそうなら買う、というのはギャンブルとしての「投機」だ。
そうしたいわば中身のないバブルな現象(=ギャンブルのような投機)によって株価は下落し、市場の景気は冷え込んでいったのではなかろうか?それを今またギャンブルのような発想を焚きつけて好景気の流れに乗せようというのか…?


デフレは本当に不幸なのか?

リーマンショック以来の株価の低迷と急速な円高は、これまで私もこのカテゴリに書いてきたように、決して日本の経済力が弱くなったからではない。日本円が強いということは、海外から安くものが買えるなど日本にとってそれなりのメリットもあったはずだ。
ただ海外への輸出を柱としてきた大手自動車産業などにとってはたしかに痛手であり、大手企業を中心とした悲観的な見方が日本の景気全体を冷え込ませていたようにも見えた。

そうした冷え込み状態が長く続くと、やはり人々は数字としての景気の回復を望む。民主党政権からふたたび自民党政権へと変わり、何かを期待して流れが変わることをみなが潜在的に望んでいたところへ、新政権への期待をきっかけにここに来て反動が出たのでは、という面も否定できないだろう。


インフレ政策は本当に国民を豊かにするのか?

いま政府と日銀が協力し合って進めようとしていることは、

*物価を一定の水準まで上昇させる(=インフレ政策)
*公定歩合を引き下げて金利を下げる(=金融緩和政策)
*お金の発行を増やして流通する貨幣を増やす
*日銀が国債を購入できる枠を広げ、ある程度リスクのあるものも長期的に視野に入れる

皆さんどんどんもの買いましょう、値段を上げましょう、そして見かけの数字に表れるお金の動きを活発にしましょう、という流れだ。

金利を下げるということは「お金を借りて何かに投資するなら今ですよ」という空気を創り出す。ローンを組んで車を買ったりマイホームを建てる人が増えれば、みかけの数字での景気はたしかに上がる。

そして流通するお金の発行数を増やせば、単純に考えてもインフレにつながることは分かるだろう。

さらに、日銀が国債を購入するということは、言葉は悪いが「国を上げてギャンブルをやりましょう」という風に私には見える。先行きを見込んで「伸びる可能性のあるところに投資しましょう」ということ。それを政府や日銀も率先してやるんだから、民間の皆さんもどんどん投資しましょう、と。
 

企業投資が増えても個人は豊かにならない

こうした流れを受けて、株価はここ数ヶ月で日経平均1万3千円台まで回復。企業が設備投資をはじめ、「儲かりまっか?」「ぼちぼちでんな~」と答える企業が増えると日銀は短観を「やや上向き傾向」と修正する。

しかしその一方で、企業の先行きに明るい兆しは見えたものの、そこで働く社員の給与を上げたり新たな雇用を増やすという動きはどうだろうか?

この3月のニュースでは、新人の採用や給与アップに積極的な企業はわずか10%にとどまっているという調査データも紹介された。政府も企業に対して「指導」はできても「強制」はできない。
企業にとって有利な政策が出され見かけの景気がよくなっても、まだ先行きは不安で読めないことを理由に働く個人にはなかなか還元されない構造がある。それについてはこれまでもこのカテゴリに書き続けてきた通りである。


景気回復の狙いは消費税率引き上げ

自民党政権から民主党政権へ、そしてふたたび自民党へ、と政権は交代しても、政府が考えている本質は同じ、消費税率の引き上げである。
税金のムダをなくし、政治や行政の改革をやることが真っ先にあってしかるべきなのに、税率を上げる論理がまずはじめにありきで、それを通すための「一体改革」という感じがしてならない。
さらに景気対策をやって消費税引き上げにすんなりもっていきたい、そんなシナリオが明らかに見える。

高齢者や低所得者をはじめとする福祉政策に財政が本当に厳しいというのなら、私たちは税金を払うことを嫌だとは言っていない。しかし、話の順序が逆でしょう、と言いたい。


そもそも弱者に重い 消費税の逆進性

そもそも消費税とは、われわれ個人の消費者が納税義務者ではなく、事業主に対して課される「大型間接税」であって、その分を消費者たちに負担してもらうことを公認しているに過ぎない。
政府は最近、大手企業ではない中小・零細の事業主に対して消費税を払いやすく(=消費税分を価格に上乗せしやすく)するための法案を出した。そこには一般消費者への「消費税還元セールは禁止する」といったことまで盛り込まれていたが、もともと消費税分はお客様(個人)に「感謝」して「還元」するものではなく、事業主の営業努力でやれば良いことであって、政府がこれを禁止するものでもない、と方針を改めたが、消費税の性格について何をかいわんやである。

大小を問わず事業主は、一般の消費者から見れば強い立場である。その事業主(例えば近所の蕎麦屋)が本当に消費税を納めているのかどうか、われわれ一般消費者からは見えづらい。仮に1年分のレシートを取っておいて年度末にお店に対して「商品価格に上乗せしていた消費税(預かり金)を本当に納税したんですか?納税証明書を見せてください」と言っても良いわけだが、実際のところ言えるだろうか?仮にやったらそのお店とはその後仲良くできないだろう(笑)

それに多くの店では「仕入れにもかかっているので」を理由に、あえて外税にはせずに税込の値段を設定しているところも多い。消費税が上がれば当然「値上げ」につながるはずだ。

また事業主は、ひとつひとつの商品ごとにかかる消費税を1年間預かってプールしておくわけで、そのお金を預金したり設備投資に回してもよい。「預かり金」はいわば無利子・無担保で「融資」されているのと同じで、年間売上の多い大事業主ほど有利なはずである。

また消費税は贅沢品にはもちろん食料品や衣料品などの生活必需品にも一律にかかってくる。消費税が出来る前には「物品税」というのがあり、今の消費税より高い10%が課されていた。ピアノや自動車など「贅沢品」とみなされるものを購入する消費者に対して課されていた税金である。しかし、銀座の高級クラブでグランドピアノを購入するのなら贅沢品であり営業のための設備投資だが、まだ稼ぎのない音大生が勉強のために必要なピアノを購入する場合には「免税価格」で買えたのである。

温泉への入湯税などもそうだが、経済的に豊かな人がある程度の「贅沢」をしているとみなされる場合にはそれなりの税金を払う。しかし経済的に弱い人が生活に必要なものを購入する場合は免税もしくは低い税率で買えるように、日常品と贅沢品との税率を分けるなどの配慮が必要である。

いまの消費税は、あらゆるものに皆が一律に税金分を上乗せされるという意味で一見「平等」なように見えるが、弱い人にほど重くのしかかる税制なのである。これが消費税のもつ「逆進性」だ。

消費税制度のもつこれらの「逆進性」については、1989年に竹下内閣が強引に消費税をスタートさせた当初から言われてきたことで、矛盾は見直していくと約束されていたはずだ。
しかしそんな議論はどこへやら、弱い者にほど重くのしかかる逆進性は見直されないまま、税率を上げる道ばかりが先にできていく。今回の景気回復のシナリオもまたしかりである。


あらためて、個人の豊かさとは…?

バブルな数字だけの景気が上がって株価が上がることを喜ぶ投資家もいるだろうが、インフレ政策によって物価が上がり、燃料や電気代もあがり、消費税まで上がる。消費税が上がれば物価もさらに上がるだろう。
投機マネーで見かけの景気を良くして会社ばかりを優遇しても、個人の豊かさにはなかなか届かない。

一方社会制度としての年金は? 医療保険は? 生活保護費は…?
経済的に弱い立場の人はますます苦しくなっていくだろう。
 
「アベノミクスは、お金をただ貯めているだけで努力をしない人にはご利益がない」とも言われる。つまり投資(投機)することを勧めているようなもので、すでにそうしたセミナーもあちこちで開かれているようだ。
しかし、投機できるお金がある人というのはある程度以上の余裕のある人である。毎日の生活に精一杯の人ははじめから対象外ということか?

豊かな立場の人にはますます有利に、弱いものからはさらにむしり取られる、トランプゲームの「大富豪(または大貧民)」のような構造がますます大きくなっていくだろう。

決して景気が低迷して世界恐慌が起こればいいとは申し上げないが、あらためて「そんなにまでしてデフレから脱却しなくてはいけないのか?」と問いかけてもいいのではなかろうか?
私のカテゴリで問いかけてきた本当の意味での「豊かさとは…?」への答えは、政治や企業の論理からは出てこない。政府や企業に期待すること自体が愚かなのかもしれない。


企業を馬に見立てた勝ち馬レースのような情報ばかりを追い求め、目先の現象に一喜一憂するギャンブルのような投機マネーに奔走される発想からいい加減に目を覚まそう。

世の中に必要な仕事を皆が分かち合い(ワークシェアリング)、自分に与えられた仕事を一生懸命やって世の中に奉仕し、それぞれの分に合った見返りが得られる構造にしよう。

そして、自分の分に応じた夢をもち、ものを大切に使い、自分にできる小さなことから身近な人に思いやりの目を向け、世の中に幸せの種をまこう。
 
良識ある人々がそうした視点をもつことこそ、本当の「豊かさ」につながっていくと信じて…


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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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