ベートーヴェン ある少女への恋心とピアノソナタ

少女への恋心が源?

ベートーヴェンは私にとって気になる作曲家のひとりです。
有名な「第九(合唱付き)」まで9つの交響曲を書いていますが、1番、2番、3番…どれもみな非常に完成度が高く、ベートーヴェンの生涯に深くつながる運命的な糸のようなものを感じます。

最初の交響曲1番を書いたのはベートーヴェンが30歳のとき。作曲家としては交響曲への着手はやや遅かったといえるでしょう。そして、その1番のすぐ前に、ある有名なピアノソナタを書いています。

その頃ベートーヴェンは、なんと16歳の少女に恋をしていたといいます。自分の半分ぐらいの年齢の相手ですね。恋多きベートーヴェンは「エリーゼのために」など好きな女性のための曲をいくつか書いていますが、このピアノソナタはちょっと変わっています。

とくにその1楽章は、少なくとも情熱的に恋心を訴えるような音楽ではありません。
モーツァルトの時代から多くの曲では、1楽章の冒頭はややゆったりした音楽からはじまり、あるところでAllegroの軽快なテンポに変わって主題が登場するスタイルが多かったのですが、このピアノソナタの第一楽章はずっとゆったりしたテンポのまま。淡々と何かを回想するように、ゆったりとした3連符がコード進行に合わせて色変わりするように進んでいきます。

ベートーヴェンはこの曲を「幻想的なソナタ」と名付けました。それを聴いたある人が「まるで湖面に映る月の光のようだ」と評したことから、その曲は後に「月光のソナタ」として有名になりました。


やがてベートーヴェンは耳の聞こえなくなる病に侵されます。その苦悩はピアノソナタ「悲愴」や交響曲5番「運命」に表われますが、いずれもハ短調(=ドから始まる短調)で書かれています。
それに対してこの「月光のソナタ」は、それより半音高い調(=ド#から始まる短調)で書かれています。

ベートーヴェンの作品では他にも、交響曲3番「英雄」とピアノ協奏曲5番「皇帝」はミ♭から始まる変ホ長調で、交響曲6番「田園」や交響曲8番などベートーヴェンにとって安らぎと勇気を与えるモチーフはファから始まるヘ長調で…といった具合に、調にも深い意味があるように感じることがあります。

30歳のベートーヴェンは、これから訪れる苦悩をなにか予感していたのでしょうか?
そして、自分の半分ほどの年齢の少女への恋心は、ベートーヴェンにどんな力を与え、「月光のソナタ」を生み出させたのでしょうか?


◆年齢差ではない

小中学生のころまでは、1~2年の年齢差を非常に大きく感じたものです。
大学に入ると、高校からストレートに入ってくる人・予備校生活を経て入学してくる人・いったん社会人になってから再び学ぼうと学生になる人…、年齢層にやや幅が出てきます。
またサークル活動などで他学年の人とも話す機会もふえ、数年程度の歳の差までは「許容範囲」となりますが、10歳以上離れた人と付き合ったり結婚したとなると「犯罪だ!」と言われますね(笑)。

でも、男女の関係は年齢じゃないと思います。男女の恋愛感情にかかわらず、実際にいろんな方と接する場合、いちいち相手の年齢や自分との歳の差を意識しますか?

いま私は音楽を通じて、小中学生や高校生と接する機会もありますが、いま流行りの歌や芸能人の話題にギャップを感じることはあっても、音楽によって通じ合える世界があったり、相手もきちんと挨拶ができるなどしっかりした方であれば大人と同じ会話がちゃんと通じますし、信頼関係も築けます。 逆に同年代であっても通じない人には通じません(笑)。

若い女性はよく恋の対象も「年齢は関係ない」とおっしゃる方が多いようで、年齢を気にしているのはどちらかといえば男性の方かもしれませんね。


自分の半分ぐらいの年齢とは?

さて、自分の半分ぐらいの年齢の相手に恋心を抱いて「月光のソナタ」を生み出したベートーヴェンは、どんな思いを抱いていたのでしょう?

恋心に限りませんが、自分の半分ぐらいの年齢の人と接し、相手のことをふと思う時、自分が相手と同じぐらいの年齢だった頃、何を考えていたか、何をしていたか、といったことを思い出すのではないでしょうか?
そして、その頃に相手は生まれ、それから今までの時間が、相手にとっての人生の長さなわけです。

人間はひとりで生きているわけではありません。いろんな年齢層の方と接しながら、ときにふと自分を振り返り、今までのこと、これからのことを考えて「今」を生きています。
そんな想像力をちょっと働かせて自分自身と重ね合わせてみることができたら、きっと素晴らしい力の源になるような気がします。


2013年3月

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
このすぐ下の「カテゴリ」から興味のあるテーマごとにクリックして覗いてみてください。
一部パスワードをご存じのメンバーの方のみ閲覧できるページを含みます。

カテゴリ
カウント開始 2011.1.14~
リンク
最新記事
最新コメント
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR