歌は世につれ 世は歌につれ ~歌詞が聞き取れない~

歌詞が聞き取れない最近の歌

ずっとクラシック音楽を中心に書いてきた私ですが、音楽はジャンルを超えて「いいものはいい」主義、歌謡曲もけっこう好きなんですよ。

ただ最近、TVから流れてくる歌、街で耳にする歌の「ことば」が聞き取れない!
ところどころフレーズとしては聞き取れても、曲全体で何を言っているのか分からないものが多いように思います。

私も歳をとってきて耳が悪くなったか?…でもオーケストラの生音の中にいても、まだまだ各楽器の音はちゃんと聴き取れてるぞ!

若者の感覚や若者言葉についていけなくなってきたか?…
いちおう毎日渋谷まで通勤しているので、たまには若い人たちと飲んで勃発してるぞ!きゃりーぱみゅぱみゅだってAKBだって、同年代のオジサンの中では割と知ってる方だぞ(自称)!

ただ、耳から入ってくる音声だけでは歌詞がまったく聞き取れない歌が最近けっこう多いように思います。紅白歌合戦を観ていても、たしかに街でよく聞いてる曲だったり、CMなどでサビの部分はよく知ってる曲であっても、前後で何を言っているのか、曲全体でどういうメッセージを込めているのか、字幕スーパーを見てようやく「あ~、そういう歌詞だったのか~」と初めて分かることも珍しくありません。

今年はテレビ放送が始まってから60周年。私が生まれた時にはすでにテレビが普及していて、テレビとともに育ってきた年代の私は、幼いころからとくに歌番組が大好きでよく見ていました。
とくに昭和40~50年代は歌謡曲の全盛期で、ヒット曲はお茶の間に連日流れ、子供からお年寄りまで世代を超えて同じ曲を覚えていたものです。

「歌は世につれ 世は歌につれ」と言います。テレビから流れてくる歌のいま・むかしについてちょっと考えてみたくなりました。
これから書く事は、決して特定のアーティストへの批判でも好き嫌いでもありません。あくまで「歌のいま・むかし」の比較論として見て下さいね。


ゆったりした曲でも

たとえばNHK総合TVで月~金の午後1時25分から生放送されている「スタジオパークからこんにちは」のオープニングテーマで使われている歌がこちら。

山崎まさよしさんの『太陽の約束』という曲です。私の耳には…

~~~てるだけで 切なくなるのは
 ながい夜を超えて めぐり会えたから
 太陽が(に?) 選ばれた(て?)
 君と ~~~なく今はじまる
 いっさいの(?) その笑顔も 
 これから僕らが 愛を知るから(?)
 こわれそうな …」 

オープニングテーマはこのあたりでフェードアウトします。
職場の居室には常に放送が流れているので、遅めの昼食をとりながらもう何か月も耳にしているのですが、上に書いた「~~」の部分と「?」マークの部分はいくら注意して耳を傾けてもどうしても聞き取れません。

結局歌い出しからここまでの間で、ちゃんと意味が理解できるフレーズは、「切なくなるのは ながい夜を超えて めぐり会えたから」の部分だけです。



曲名で歌詞を検索してみて、ようやく分かった正解はこちら!

見つめてるだけで 切なくなるのは
 ながい夜を超えて めぐり会えたから
 太陽 選ばれ 
 君と ぎこちなく今はじまる
 息づかいも その笑顔も 
 これから僕らが 愛を知る鍵…」

こうして文字として見て、やっと何を言っていたのか分かってスッキリしました。
ゆったりした曲なのに、アンダーラインを引いた箇所がどうしても聞き取れなかったのはなぜでしょう?


聞き取れない理由は?

山崎まさよしさん自身の作詞・作曲で、こうして文字で見るとなかなかいい詞だと思います。まぶしい素敵な人と出会い、これから築かれていく関係・愛の予感を歌っているのでしょう。
テンポもゆったりしていて、決して早口言葉のようにたくさんの言葉が詰まっているわけでもありません。よく通る声で伸びもよく、歌唱力も優れていると思います。

ただちょっと、「こだわりの発声」でお洒落に歌われているせいか、1音1音にまで声の抑揚がややつき過ぎている感じがします。また言葉の末尾がよく聞こえないのです。
たとえば「太陽に 選ばれた」の部分では、「たいよう」「えらばれ」まではメロデイラインが上昇系ですが、末尾の「に」と「た」の部分でいきなり5度以上低い音に飛んでいます。よく伸びる声で歌いあげられるフレーズと、突然下がる低い1音とのコントラストがつき過ぎているのです。

「が」「の」「に」「を」「へ」「と」といった助詞はキイワードではありませんが、そこが聞き取れないと前後関係が分からなくなります。話し言葉で「語尾がよく聞き取れない!話が見えない!」に近い状態になります。

さらに色々言って申し訳ないですが(笑)、そのあとに続く「ぎこちなく今はじまる」がどうしても聞き取れませんでした。このように文字にして読めば分かりますが。
意味の上では「太陽に選ばれた君と」なんですね。でも歌のフレーズ的には「君と」から次につながって聞こえます。そして「太陽に選ばれた」という素晴らしい言葉のすぐ後に、いきなり「ぎこちなく」というマイナスイメージの単語が出てくるのがちょっと意外で、やや唐突な感じがしませんか?

耳から入ってくる言葉には文字情報はありません。聞こえた音声を頭の中で文字に変換しながら意味を理解し、次にどんな言葉が続くのかをある程度予想しながら聞きます。前後関係がすんなりとつながって入ってくる言葉かどうかがとても重要なのです。

もともと「太陽に選ばれた君」なんて、日常の会話では使わない表現ですね。「太陽に照らされた」なら分かりますが。詩の世界特有のとってもおしゃれな表現だと思います。そんな素晴らしい君との関係が、「ぎこちなくいま始まる」とつながってたんですね。

最近の歌はこのように、お洒落なキイワードが散りばめられた1フレーズ1フレーズがいわば「アート」のように並んでいるものが多いように思います。
CMソングなどでよく聞こえるサビの部分など、あるフレーズだけは印象に残るけれども、前後の繋がり・曲全体で何を言っているのか見えづらいのも、そんなところに理由があるのかもしれません。


ここまで来るともう限界!

さらにもっと早口で極端な例がこちら。
この歌がヒットしたのはもう10年以上前になると思いますが、以前テレビでも「この歌詞を聞き取れますか?」という実験に使われていました。

♪ Mr.Children 「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」


「愛想なしの君が笑った
 そんな単純なことで
 遂に肝心なものが何かって気づく
 打ち明け話にあった純情を
 捧げたって奴に
 大人気なく嫉妬したりなんかして…」

ミスチルの熱烈なファンの方、どうか怒らないでくださいね。私も決してミスチルが嫌いなわけではないのです。ただ、曲のテンポ・言葉の多さ・メロディと言葉のマッチング…etc.
ここまで来るともう限界です。

書かれた文字を見てもなお、「打ち明け話にあった純情を捧げたって奴に」って、どういう意味でしょう? 純情を捧げた奴のことが打ち明け話に出てきた、と理解するまでに私にはちょっと時間が必要でした。

こうした歌に、さらに途中で英語が、それも本来の母国語として使われる英語ではなく、フレーズに合った「効果音」のように挿入されたら、もはや絶望的になります。

おっかけファンの方のように曲を知り尽くしていればいいんでしょうが、もしこういう歌をいきなりTVで聞いて(耳からの情報だけで)、あるいは歌詞カードもなく音源だけが何十年後・何百年後に発見されたとして、1~2回聞いただけですんなり理解できるでしょうか…?
 

情景が見えた昭和の歌謡曲

さて、ちょっとタイムマシーンにのって、私が子供のころに聞いた昭和の歌謡曲から、思いつくところをほんの数例。

♪ 森進一「港町ブルース」
  背伸びしてみる海峡を 今日も汽笛が遠ざかる 
  あなたにあげた夜を返して
  港、港 函館 通り雨

♪ いしだあゆみ「ブルーライトよこはま」 
  まちの灯りがとてもきれいね よこはま ブルーライトよこはま
  あなたと二人 幸せよ
  足音だけがついて来るのよ よこはま ブルーライトよこはま
  …(後略)

♪ 内山田洋とクールファイブ「長崎は今日も雨だった」
  あなたひとりに かけた恋 愛の言葉を 信じたの
  さがし さがし求めて ひとり ひとりさまよえば
  行けど切ない石畳 あ~~ 長崎は きょうも雨だった

♪ 布施明「霧の摩周湖」
  霧に抱かれて 静かに眠る
  星も見えない 湖にひとり
  ちぎれた 愛の 思い出さえも
  映さぬ水に あふれる涙
  霧に あなたの名前を呼べば
  こだま切ない 摩周湖の夜

さらに昭和も終わり近い歌の代表として…

♪ 石川さゆり「津軽海峡冬景色」
  上野発の夜行列車おりた時から 青森駅は雪の中
  北へ帰る人の群れは誰も無口で 海鳴りだけを聞いている
  私もひとり 連絡船に乗り
  凍えそうなカモメ見つめ泣いていました
  あ~あ 津軽海峡 冬景色

まあこんなところで充分でしょう(笑)

いずれも歌詞を検索することもなく、子どもの頃テレビで聴いた古い歌でもほとんど覚えていました。今もしカラオケで歌えと言われたら、おそらく画面を見ないで歌えますよ(笑)。

もちろん小学生に「あなたにあげた夜を返して」なんてどういう意味か分かるはずありません(笑)。でも「言葉」としてちゃんと聞き取れて、メロディラインともすんなりと馴染んで、何十年たっても消えずに残っているのです。

その理由は、ひとつひとつの言葉が平易で、前後関係が非常にわかりやすく、どの歌も主人公がどんな状況で今どこにいるのかが「見える」のです。
とくに「津軽海峡冬景色」などは、上に書いた1番の歌詞ももちろん、見知らぬ人が龍飛岬を指さしたり、息で曇る窓のガラスを拭いてみる2番の歌詞も、まるで映像を見るようにくっきりと浮かんできませんか?

先ほど見たような最近の歌は、メロディライン・リズム・歌手の個性的な発声といったいろんな要素がとてもアーティスティックに織り成されていて、歌詞(ことば)は飾りのように乗っかっているだけのような印象を受けます。あと言葉の意味の上ではつながって欲しいところで息継ぎが入ったりもします。その点、昭和の歌謡曲は「ことば」を大切に歌われている歌が多かったような気がします。


◆「大人の魅力」から「ヤング」そして「ジュニア」へ

昭和の歌に出てくる主人公たちは、男も女も「大人だな~」とつくづく感じたものです。お酒の味と同じく、子どもには分からない切なさ・辛さ・ほろ苦さも秘めた大人の魅力を「歌」から感じ取った気がします。

それが昭和の終わりごろから「ヤング」の時代へ、そしてさらに「ジュニア」、「チルドレン」の時代へ…歌の年齢層がどんどん低くなりました。
また、歌唱力で勝負する歌手としてというより、アイドルとして売り出してデビューさせるための手段として歌を出す、プロモーションの仕方も大きく変わってきました。
それと同時に、言葉によるメッセージの伝達よりも、リズムなどの感覚に訴える要素が増えてきて、言葉に置かれるウエイトが低くなっていったのかもしれません。

若いアイドルだけでなく、ちょっと大人のシンガーの中にも、例えば…
「シュガーシュガーYA YA プチシュー」なんて意味不明の言葉の羅列にしか見えません。

また、「さっきまでオレひとり…(ごちゃごちゃ速口で何か言って)、今何時?ちょっと待ってて、今何時?そうねだいたいね~、今何時?まだ早い、(中略)…胸騒ぎの腰つき」
いったい何が言いたいんでしょうね?(笑)

江ノ島の近くに住んでるナンパな湘南ボーイが女の子を口説いていて、「今何時?」となんど聞かれても曖昧にしか答えない…そんなイメージだけが勝手に膨らみます。
(ファンの方ゴメンなさい!殺さないでね…笑。K氏とは同じ出身校で年代も近く、決して敵意はありません。好きな楽曲もあります。あくまで「歌詞」としての話題ですので誤解なきよう!)

一方、敷居が高いと思われがちなオペラでも、ストーリーとしては男と女がいて、好きになったり騙されたり、三角関係がもつれたり…と俗っぽいテーマで描かれた「娯楽」なんです。声楽家があまりにも素晴らしい歌声で歌われて、ドイツ語で歌ってるのか、イタリア語なのか英語なのか、それとも日本語なのかさえすぐには分からず、「素晴らしい声の響き」としてしか聞こえないのも私はどうも苦手です。

やはり年代や世代を超えて、さらに音楽のジャンルを超えて、「歌」は耳で聴いてすんなり入ってきて理解でき、心を揺さぶるメッセージが欲しいのです。


人間愛とメッセージのある歌

そんな私にとって、去年(2012年)のヒットは、ロンドン五輪のテーマとなった、いきものがかりの「風が吹いている」。アスリートならずとも勇気をいただきました。

そして東北復興に向けたメッセージを歌手以外にも多くの方が歌い継ぎ、盲目のピアニスト・辻井伸行さんがさまざまにアレンジして弾かれている「花は咲く」も心にじーんと響きます。

あとは「アリス」が解散したあとの堀内孝雄さんや谷村新司さん、さだまさしさんの歌などには人生を感じて共感できる歌が多いですね。

冒頭に書いた「歳のせい?」で言うならば、男女の愛・告白・かけひき、寂しさ・傷・欲望などを叫ぶ歌より、もっとスケールの大きな「人間愛」「勇気」「人生」を感じさせてくれるメッセージ性のある歌に惹かれる歳になってしまったようですね。


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No title

確実に殺されますよ(笑)
でも第一楽章さまのおっしゃること、よーくわかるわぁ
わたくしも同じように感じているもん

でも姪っ子なんかに言わせると、ちゃんと日本語として成り立っているんだそうな・・・。
世代間格差なのかしらねぇ

やっぱ、クラシックのがいいってつくづく感じる今日この頃・・・
あ、長唄も、なに言ってるのかわかんないとき多いかも(汗)
びば!! 昭和歌謡!! ですわぁ♪

Re: No title

ひめ様

遅番出勤前の午前中にアップして早々にコメントいただいてたんですね。ありがとうございます。
はい、殺されかねませんね(笑)。でも冒頭にも書いたとおり、個別のアーティストへの批判や好き嫌いを申し上げてるのではなく、あくまで「歌と言葉」についての例として…(本文にもひとこと釈明を加えておきました)

そうですね、長唄などの日本の伝統芸能、こと能などに至っては、逆にゆっくり過ぎて何を言っているのか分からないですね。歌会始めで詠まれる歌も、文字を出されなかったらまずわからないでしょうね。

やはり昭和の歌謡曲は、現代人の心にすんなりと入ってきますね。

No title

確かに言われるとおりだと思いますよ
若い人たちに、物事をこんな風にはっきり言える人はそういません
でも気を付けて下さいね(笑)

情景が浮かぶような詩は、耳から聴こえて来て心にしみますね
「花は咲く」は、今いろんな方が歌っていますが
一番最初の方々が、私は大好きです
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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