逗子のストーカー殺人

<追記> 

11月10日(土)

ストーカーを規制する法律に「メール」という文言が表記されていないことについて、時代の変化に合わせて法改正をする必要性を完全に否定するつもりはない。

ただ、現行法でも、また仮にストーカー規制法がまだなかった12年前の桶川ストーカー殺人事件においても、度重なる「脅迫」(←刑法に触れる違法行為)、およびその内容から充分予見できた凶悪犯罪を未然に防ぐべき手段はありえたはずだ、ということを強調したいのである。
はっきり言って警察の怠慢である。法改正の議論以前にそちらがまず本質的な議論ではないのか?

さらに、きょうまた新たな事実が浮かび上がった。加害者の男性を以前ストーカー規制法で逮捕した際に、既に結婚した被害者の現在の姓名・現住所を加害者に伝えないように懇願されていたにもかかわらず、不用意にも警察は加害者に告げてしまっていたというのだ。

<逗子ストーカー>逮捕後再び住所読む 配慮不足浮き彫り

  <毎日新聞 11月10日(土)21時43分配信>

神奈川県逗子市で元教員の小堤英統(こづつみ・ひでと)容疑者(40)が以前交際していたフリーデザイナーの三好梨絵(りえ)さん(33)を殺害し自殺したとみられる事件で、昨年6月に小堤容疑者を脅迫容疑で逮捕した県警逗子署が弁解を聴く際にも、三好さんの結婚後の姓や住所の一部を読み上げていたことが分かった。逮捕状提示の時に朗読していたことが既に判明。三好さんは嫌がらせメールの被害を相談した際、現姓や住所を小堤容疑者に知られないよう同署に要望しており、ストーカー被害者への配慮不足が浮き彫りになった。

同署によると、署員が昨年6月1日、小堤容疑者を東京都世田谷区の自宅近くに止めた捜査車両内で逮捕した際、三好さんの現姓や住所が書かれた逮捕状の容疑内容を朗読した。更に署へ移送して逮捕容疑に対する言い分を聴く弁解録取の際も、再び容疑内容を読み上げていた。

刑事訴訟法は逮捕時に容疑者に逮捕状を示し、容疑内容の要旨を告げ、弁解の機会を与えなければならないと規定している。捜査関係者によると、逮捕状の表紙を容疑者に見せ、2枚目にある容疑内容を読み上げるのが慣例。容疑を明確にすることで容疑者の権利を確保するのが目的といい、逗子署は規定に従って対応していた。

三好さんは08年に結婚し、逗子市に転居したことを小堤容疑者に隠していた。昨年4月、小堤容疑者から「ぜってー殺す」などのメールを送られたことを逗子署に相談した際、「結婚後の名字や住所を小堤容疑者に言わないでほしい」と要望していた。

逮捕5日後、三好さんの夫は検察とのやり取りで、三好さんの現姓が小堤容疑者に知られたことを聞き、逗子署に抗議。署の担当者は「逮捕の際に名前を知られる可能性があることの説明が足りなかった」と陳謝した。三好さんも、居所を知られたのではと不安そうだったという。

同署によると、勾留中の取り調べや、昨年7月に県警がストーカー規制法に基づいて小堤容疑者に渡した警告書、脅迫罪での起訴状では、三好さんについて旧姓での取り扱いにしていた。

同署の山口雅見副署長は「今回の事案を踏まえ、被害者保護の観点から容疑内容の要旨の告知や記載の仕方について検討したい」と話した。【山田麻未、山下俊輔】



「検討したい」ではない!
逮捕する際に、逮捕状に記載された内容を読み上げて被疑者に告げることは、たしかに一般論としては「適正」かもしれない。

暴走する車を、赤色灯を回してサイレンを鳴らしながらパトカーが延々と追跡(追尾?)し、逃げ続けて「走る凶器」と化した車が赤信号の交差点で他の車輌や歩行者に重大な被害をもたらしても、警察はいつも「追跡は適切だった」とおっしゃる。
警察のいう「適正」とは、「違法なことはやってません」でしかないのか?
善良な市民の安全を図ることが警察の本来の役割ではないのか?


身の危険を察して、今の姓名や住所を加害者に明かさないように懇願していた被害者に対して、あまりにも配慮のない対応だ。重大犯罪に直接結びつく情報を、加害者に対してこともあろうに警察が提供してしまったという事実。

警察には、被害者の身の安全を真剣に守ろうとする意識はないのか!?
「防犯」という役割は警察には存在しないのか!? 


11月9日(金)

またしても、未然に防げなかったストーカー殺人事件!
またしても、本質から外れた議論!

逗子刺殺、ストーカー適用せず 警察「メールは対象外」
   <朝日新聞デジタル 11月8日(木)14時4分配信>

神奈川県逗子市で女性が元交際相手の男に刺殺された事件で、男から約20日間で1千通のメールが届きながら、メールを繰り返す嫌がらせをストーカー規制法違反とする明確な規定がなく、神奈川県警が捜査を終えていたことが、県警への取材でわかった。

逗子署によると、この女性は同市小坪6丁目のフリーデザイナー三好梨絵さん(33)。以前に交際していた元教員の小堤英統(こづつみひでと)容疑者(40)=東京都世田谷区等々力5丁目=が三好さんの自宅に侵入して刺殺し、小堤容疑者はその後に首をつって自殺したとみられる。

2000年に施行されたストーカー規制法は、相手に拒まれたのに連続して電話やファクスをすることを「つきまとい」として禁じているが、メールについての明文規定はない。



前にも書いたが、ストーカー防止法で科せられる刑の上限は限られている。まして初犯ならば執行猶予もつく可能性も高い。
すぐに出てきて、また同じことをくりかえす。さらに執念深く悪質にエスカレートし、ついに「殺すぞ」が現実に…

こうした事件があとを断たない中で、「ストーカー防止法があったにもかかわらず…」ということが必ず議論される。たしかにストーカー行為そのものも大いなる迷惑行為であり、恐怖心を与えるものであるから、それ自体を取り締まる必要はある。
だが、ストーカー行為だけを取り締まるには限界がある。→桶川のストーカー事件に関する記事参照

もっと本質は、さらにエスカレートした異常性格者によってその後起きるかもしれない重大犯罪(殺人など)を監視し、危険を回避し、重大事件を未然に防ぐことだろう。
被害者に何カ月間も「殺される」という恐怖を抱かせていながら、警察は「メールはストーカー行為にはあたらない」と放棄し、予見しえた凶悪事件をまたしても未然に防ぐことができなかった、ということが問題の本質だ!


ストーカー防止法改正の議論の前に

おびただしい数の脅迫・いやがらせメールを送信する行為そのものを「ストーカー」と定義できるかどうか?
警察庁も会見で「たしかにストーカー防止法にはメールに関する記述がない。法改正も含めて検討する」とコメントしているが、法改正の議論が今回の事件の本質ではないと思う。

法律解釈には必ず限定(縮小)解釈・拡大解釈がある。
明文化されている「電話・ファクス」だけに限定して解釈するのか、被害者へのコンタクトをとる手段の一例として「等」を補って解釈すればメールも当然含まれることになる。
仮にストーカー防止法を改正するとしたら、「等」の一文字を入れるだけで良い。
もしそこに新たに「メール」などと具体的に記述を加えようとすると…

では1日に何通以上のメールを同一の相手に送ったらストーカーとみなすのか? 
今回はたまたまメールだったが、そのほかのソーシャルメディア(ミクシー・ツイッター・フェイスブック、さらに新たに出てくるメディアも含めて)だったらどうなのか?
手紙やメモならどうなのか?
口頭でくりかえし言うのはどうなのか?
…といった不毛のいたちごっこになるだろう。じつに馬鹿げた話だ。

「危険運転致死傷罪」についても同様に思うところだが、法律の条文にあまり具体例をあげない方がよい、ということだ。そこに書かれたのはあくまで「例えば」の実例なわけだが、限定解釈では「それとは違うから当たらない」になってしまうのだ。


要は「なんのためにその法律を作ったのか」の趣旨を正しく認識し、状況を正しく判断して適用することだ。では、ストーカー防止法はそもそも何のためにできたのか?

「殺人予告ともとれる脅迫を繰り返しているにもかかわらず、実際に殺人などの重大事件が現実のものとならない限り警察は何もしてくれなかった!」という既成事実の数々。

その警察を動けるようにするために、桶川のストーカー事件の反省を込めて慌てて新設した法律、と私は認識している。

たとえストーカー防止法がなかった時期においても、迷惑行為・脅迫・(心理的な暴力という意味での)暴行、殺人予備罪など、被害者の安全を本気で守ろうと思ったらなにかしらの対策が取れたはずだ。警察には「防犯」という任務もあるはずではないのか? 身の危険を感じる具体的事実がありながら、市民は警察に頼ることはできないのか?


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本当に、未然に防げなかった凶悪事件や未解決事件があまりにも多いですね。
命の危険もかえりみず犯罪に立ち向かう真面目でまともな警察官もたくさんいらっしゃるのでしょうが…
あと、警察官の人手不足という話も聞きますが、どうなんでしょうね?

Re: タイトルなし

コメントありがとうございます。

たしかに、犯罪や交通違反などの件数が警察のキャパを越えている地域もあるかも知れませんね。
処理しきれなかった(忘れて放置した?)書類や証拠を隠滅したどこかの警察署も「多忙だったので」と言い訳してましたね。

でも、少なくとも今年4月に起きたストーカー殺人では、被害届を受理した直後に慰安旅行に行っていたと報じられていますし、千葉・三重・長崎の各県警の連携の悪さが指摘されています。
前にも書いた長崎の銃乱射事件や長崎市長狙撃事件においても、事件前に市民からの通報を受けていたにも関わらず、警察はまともな対応をしたとは思えません。
報道されるのはほんの一部かもしれませんが、一事が万事です。
多忙で他の案件に追われている間に別の事件が起きてしまった、というわけではなく、こと殺人などの重大事件に関して警察は「未然の防止」に対してあまりにも危機意識がないというか怠慢としか見えない事例が多すぎませんか?

一方、「警察24時」などで紹介される大都市の一部の地域では、事件や事故のほか遺失物・酔っ払い対応など本当に「人手不足」「過労」が深刻な所管もあるでしょう。
全国の警察を統括する警察庁は、全国共通の規則に沿った旧来の配置ではなく、各地域の実情をきめ細かく見直し、それに見合った警察署・警察官の配置を早急に検討すべきでしょう。

あと、「改革」と称して現場の公務員を減らしたり賞与カットする議論が出ていますが、ますます本末転倒ですね!本当に「改革」したいなら、国民人口に対して多すぎる国会議員の数と、異様に高い議員報酬を真っ先に斬るべきです!
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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