さようなら、こどもの城!

10月6日

渋谷の「こどもの城」が、開館から27年目にして「閉館」することに決まった。

→ (「みんなの経済新聞ネットワーク 9月28日配信)

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閉館の理由としてまず「建物の老朽化」が挙げられている。

「こどもの城」は、1979(昭和54)年の国際児童年を記念して、厚生省(当時)が構想・建設。財団法人児童育成協会が運営してきた。しかし最近は子供の数も減少し、子供の遊びも多様化したことも閉館の理由として挙げられている。

たしかにこれだけの規模の建物を定期的にメンテナンスして耐震・安全面を確保していくにはそれなりの維持費がかかるだろう。
かつて厚生年金で建てられた施設のように、まったく利用されていない施設ならば「税金のムダ使い」として閉鎖されるのは当然だ。実態のない公益法人と同じく「仕分け」の対象となって当然だろう。

しかし、渋谷駅から徒歩10分・表参道から徒歩5分という立地にあって、年間85万人もの利用客が訪れ、もともと民間ではできないユニークな企画内容でスタートしたはずの「こどもの城」が、はたして「ムダな施設」なのだろうか? 
併設されている青山劇場と青山円形劇場の2つの劇場はどうなるのだろうか?

27年前「こどもの城」が完成する少し前に、私はすぐ真向かいの大学を卒業した。27年というと長いようでもあるが、公共施設の寿命としては決して長いとは言えない。
スカイツリーができた今でもなお“東京のシンボル”として親しまれている東京タワーは昭和33年に建てられているから今年で54年目になる。
27年といえば東京タワーのちょうど半分の年齢。ちゃんとした目的と運営方針をもって、民間ボランティアに任せられるところは任せ、本当の意味での無駄を削ってやるべきメンテナンスをきちんとやれば、まだまだ充分に利用価値のある施設ではないだろうか?

2年後に閉館した後、この施設・土地をどう展開して活用するかはまだ決まっていないという。



意味不明な運営方針、 ことなかれ主義?

「こどもの城」には私もけっこうお世話になってきた。上の娘(現・中学2年)が幼い頃、また下の娘(現・小学1年)がまだよちよち歩きを始めた頃から、近所の人たちと一緒に誘い合わせて、雨の休日でも半日ゆっくり過ごせる楽しい場所だった。
だがここ数年、運営方針に「なんで?」と首をかしげたくなることが色々あった。

屋上の広場には、車輪が楕円形をしていて体重移動させながら走るユニークな自転車などが色々あった。だがそれが数年前に行ってみたらなくなっていた!
また子どもたちがキャーキャー喜んで入っていたボールプールも消えた!
ユニークで楽しいコーナーが次々と消えていき、「実験コーナー」や「パソコン教室」など、正直申し上げて“まったく面白くない形ばかりのコーナー”が、巨大なジャングルジムのあるフロアの一角に残っただけだった。

ナイフで木を削ったこともない、空き地で遊んだこともない、ロープにぶら下がったり小屋をよじ登ったこともない、火をおこしたこともない…etc. そんな子どもたちに、ボランティアの指導員の下で正しい使い方を学びながら、自己責任で自由に遊ばせる「プレイパーク」が各地にできている。多少汚れても怪我をしてもいい。今はやりの「ワイルドだろ?」よろしく、自己責任で「経験」を積む大切さも見直されている。

一方、「こどもの城」は国(厚生労働省)の施設。
「怪我をさせてはいけない」「怪我をした子の保護者からクレームが来たら誰が責任を持つ?」といった、いかにも役所らしい「ことなかれ主義」が、中身をつまらないものにしていったとしか思えず、非常に残念だった。



また「こどもの城」ならではのユニークな企画の一例として「邦楽教室」があった。締太鼓や三味線など日本の伝統楽器に触れてもらい、奏法を教える教室がかつてあった。
そこで教えておられたのは私の知人である。本業は別にお持ちで、洋楽器も和楽器も心得のある素晴らしい方がボランティアで教えておられたのだ。

洋楽器を演奏する人は増えたが、日本人でありながら日本古来の楽器について知らない人は多い。次世代を担う子どもたちやその親たちに、個人の教室に高い月謝を払わなくても誰でも気軽に参加でき、日本の楽器に実際に触れてもらって習得できる場はとても貴重な存在だった。

ところが、その素晴らしい教室が数年前に閉鎖されてしまったのだ。そこで使われていた邦楽器たちは今はどこへ行ったのだろうか?どこかの省庁の倉庫に、誰にも使われることなく眠っているのか(楽器は使わなければどんどん傷んでいく)?、それともどこかに競売にでも出されてしまったのか? 可哀想に…


なぜ素晴らしい「中身」を真っ先に斬り捨てる? ムダはそっちか?

国や自治体などが直営で運営する施設にも、本来は素晴らしい設立趣旨があったはずである。こと、民間の利益追及ではできないようなことこそ「公」が続ける義務がある。

ところが、そうした本来の素晴らしい企画趣旨によって誕生したカリキュラムやプログラム(運営の中身)が、近年の「仕分け」に代表される「効率化」の名のもとにどんどん切り捨てられ削られていく。「本末転倒」 とはまさにこのことだ!

もし民間だったら、それこそ無駄を極限まで抑えながら、本来の設立目的である「本業」は続けよう(=会社を維持しよう)と努力するはずだ。

だが役所の運営する施設の多くはまったく逆で、いかにもムダとしか思えない事務的な膨大な仕事と公務員の「居場所」だけは確保し、本当の基幹業務・設立趣旨にかなう「中身」の方から真っ先に斬り捨てるのだ。
実際に必要な手続き業務にいったいどれだけの人員が必要だろうか? それに対して、実際にそこに席を置いている公務員はどのぐらいいて、年間どのくらの給与がわれわれの税金から支払われているのだろうか?

それに対して、たとえば先ほどの邦楽器の体験教室などは、場所さえ提供してもらえれば、公務員給与を払う必要のない、限りなく無料奉仕に近いボランティアの先生に定期的に指導してもらえれば充分続けていける内容。…「なんでそっちを真っ先に斬るんだ!」

かつて小泉さんがおっしゃった「民間にできることは民間に」「改革」という美しい言葉はいったいどこでどう化けてしまったのだろうか…?
 
また閉館の理由に「子どもの数が減り、子どもたちの遊びも多様化したため」とおっしゃるが、それこそゲーム機のようなモノで個人で遊ぶこと、民間の競争の原理で次々に生み出される遊びによって多様化は進んだのではないか?
ならば「公」の立場としては、昔からの伝統文化に触れられる遊びや、考える力を養う遊び、創造力を育む遊びなどを伝える場がますます大切になっていくとも言えるのではないだろうか? 

私がいつも言っている「何が本質か?」から見て、役所はどうも全く逆の方向を向いている感じがしてならない。
これは「こどもの城」に限った話ではなく、他の省庁の所轄するさまざまな団体・施設・事業にもまったく同じことが言える。仕事を通じて知り得た情報にも触れるのでここでは書かないが、類似の事例を挙げはじめたら「本末転倒」は数限りなくあるのだ!



私が下の娘を連れて「こどもの城」を最後に訪れたのは、たしか昨年の11月頃だったと思う。
あまりにも魅力のない施設になり下がってしまった「こどもの城」に小学校にあがる前の娘も「ぜんぜん面白くないよ」とさんざん愛想をつかし「もう二度と来るまい!」と思いつつ、私の気持ちはそのままでは収まらなかったので、事務担当の主任クラスの職員を訪ね、ここまで綴ったような思いをぶつけた。

応対されたその主任クラスの方は、決して悪い人ではなかった。だがいかにも公務員らしい「温厚で人当たりのよさそう」な、しかし別の見方をすれば「当たり障りのない」「なんともつかみ所のない」応対ぶりで、「貴重なご意見をありがとうございます」とおっしゃった。
「公の立場」も当然あるのだろうが、一人の「人」として、またこれまで何年も自分の子どもを連れてきて楽しみにしてきた一利用者としての気持ちを、はたしてどの程度本気で受け止められたのだろうか…?

それから1年たたずして知った「閉館」のニュース。「やはり」「そうだったのか」…

さようなら! 素晴らしいボランティアに支えられて楽しかったころの「こどもの城」!


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No title

こどもの城は行ったことないけれど、近年の経費削減方法ってどーなのよっ?!
って首をかしげるどころか、目ぇ見開いて文句いいたくなることばっかりねぇ
文楽の予算を削減するって聞いたけれど、その理由がアタマにくるぢゃないっ!!
つまり『お前たちは税金もらって、のうのうとやってるから、
これからは自分たちで努力して歌舞伎のように自立しろ』
だったとおもうんだけれど・・・
歌舞伎は、そりゃ、努力していると思うわよ 松竹がついてるし
でもあっちは、踊りの家元だったり世襲だったり、世界が違うっつーのっ!!
だいたい文楽とか邦楽系って子供に教えない、あんたらが悪いんだろっ!!
あんたらがのたまったこの言葉、そのまんま、お前らに熨斗付けて返してやるーっ!!
・・・・って、某おえらいさんに言いたいわっ

はーぁ、つかれた・・・(笑)

Re: しかと

姫様の怒りのことば、しかと受け止めました!
お届け先は大阪市の某お偉いさんですよね。去年の12月に彼が就任する前からきな臭いとは思ってたけど、大阪はもうあきまへんわ。大阪では文化・芸術なんかやってられまへんな。クラシック界の人たちも戦々恐々としたはりますが、ほんなら「大阪」と頭につけんのやめて、ほかの理解ある自治体やスポンサーの名前つければよろしゅうおます。大阪から芸術は出て行った、と大阪の歴史に汚点残したらよろしい。

こちらは東京都民だからとやかく言う資格はないと思ってました。大阪では75万人もの人がそういう人を選んだんだから。でも「維新の会」とやら称して国政まで睨みながら全国展開してくるとなれば、私も黙っちゃいられません! 
父親がどんな前歴をもっていようと本人が努力すれば弁護士にもなれるし、政治家にもなれる。それは結構。
でも人気だけでやりたい放題に政治を仕切ってもらっては困ります。市民の前に出る職員が刺青をするのは禁止、新人研修でいねむりはいけない…など正しいことを言うときもあります。でも彼は弱きものの敵なんです。障害者福祉を切り捨て、在日を踏みにじり、芸術文化を理解しない。
なんとなく議論(けんか)に強そうな人物に惹かれる、「改革」とか「維新」とか新しい言葉になんとなく期待して彼を支持した市民も多いようですが、ものごとの本質をちゃんと見ましょう!
 
また、今の腐敗した政治からの脱却を目指してかなんだか知りませんが、まだ総選挙にもなってないうちから現職の国会議員たちが「維新の会」に鞍替えする意思を表明している。民主主義の原則はいったいどうなっているんでしょうか? 
「あなたがどの政党にくら替えしようと私たちは支持します」と言って有権者は投票したんですか? 比例代表などは支持政党によってその地区の代表が選ばれたはず。政党がマニュフェスとを破り、自分のポリシーを貫く上でどうしても離党せざるを得ないというなら分かります。でも、こともあろうにあんな「維新の会」に鞍替えするとは! バカの面々をよ~く覚えておいてやってくださいまし。

そういえばこの記事をリンクさせたフェイスブックにも、大阪市長や石原東京都政を批判する声が寄せられてます。「こどもの城」は東京都政の話ではないんですけどね。でも近くにある東京都児童館もなくなってしまうし、東京も大阪も国も、無駄の斬り方を間違っている、庶民の敵、という意味では同じですけどね。
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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