「はと時計」の鳴き声は?

◆「はと時計」はなんと鳴きますか?

木でできた山小屋風の形をしていて、鎖には長細い松ぼっくりのような重りがぶら下がり、正時になると小さな扉が開いて、白い鳥が顔を出して…

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 「パッポウ、パッポウ…」    
    …ん?、これってハトの声じゃないですよね…?


<ハトの鳴き声>

よく朝早く木の上や電柱で鳴いてるのは、茶色いまだら模様のヤマバト(キジバトとも呼ぶ)。

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鳴き声は「クークーポッポー、クークーポッポー…」
最初の「クークー」は半音ほど下がりぎみに、そのあとの「ポッポー」は同じ高さで鳴きます。

公園に群れになっていて、豆やパンを撒くと寄ってくる、グレーっぽい体に艶のある青・緑が混じっているのはデンショバト。自分の小屋に帰るように訓練され、足に手紙を付けて「伝書鳩」として人間に使われました。
その鳴き声は、「クククルルルル…、クククルルルル…」

いずれも「パッポウ」とは鳴きません。時計の鳴き声、あれは明らかにカッコウです!
なのになぜ「はと時計」なのか?=鳩がなぜ「パッポウ」と鳴くのか?

ハトの声を機械仕掛けで再現するのは難しかったからカッコウの鳴き声で代用した?
あるいは、時計を作った人があの声をハトだと思いこんでいた?
鳥名としてのブッポウソウと、声のブッポウソウ(=コノハズク)がいるように、鳴いてる声の主が別の鳥だと勘違いしていつの間にかすり替わってしまった…?


発祥はドイツから

スイスとの国境に近いドイツのシュヴァウツヴァルトという街で、1780年代に作られたのが最初と言われています。 時計の名前はドイツ語で「Kuckucksuhr」、英語では「Cuckoo Clock」、いずれも「カッコウ時計」なんです!

時報の鳴き声は、高低差のある2本の笛に小さな吹子(ふいご=鍛冶屋さんが火を強めるために風を送るのに使った、アコーディオンのジャバラのような道具)で空気を送ります。小さなパイプオルガンのような機械仕掛けが内蔵され、正時になると時刻の数だけ「パッポー」と鳴きます。

扉から鳥が顔を出して鳴くだけでなく、なかには鐘を叩いたり薪を割る動きをするものもあるとか。松ぼっくりのような形をした重りの重力で、さまざまなメカニズムを動かすからくり時計!
まさに遊び心を職人の技が形にしたんですね。



日本でこれを真似て本格的に作り始めたのは昭和になってから。とくに戦後さかんに作られるようになったといいますから、日本での歴史は案外まだ短いんですね。

それがなぜ日本では「はと時計」となったのか、には諸説あるようです。

「カッコウ」は漢字では「郭公」と書きますが、もうひとつ「閑古鳥(かんこどり)」という別名もあります。「カッコ → 閑古」と結びついたのかもしれませんが、商売をやる人にとってはあまり嬉しくない呼び名ですね。 
お客さんが来てくれなくて暇をもてあましているところへ、ちょっと人を馬鹿にしたような「パッポウ」の声…あまりイメージがよくありません。

そういえば「トムとジェリー」で、ねずみを追いかけてはいつも失敗ばかりして痛い目に合うトムが、頭に落ちてきた時計をかぶってしまい、口から鳥が出て「パッポウ、パッポウ…」なんてシーンもあったような…。聴きようによってはマヌケな声ですね!

そこでカッコウともちょっと似た姿のハト(←時計から顔を出すあの白い鳥はハトにも見える)にしたのではなないか、という説もあるようです。
あと、戦後は鳩が「平和の象徴」とされた時代だったので「はと時計」という名で売れた、とも。



いろんな説がある中で、私が注目したいのはやはり「発音」です。 
もともと鳥の名前も「クックー」という鳴き声からつけれたようですね。

2音の高低差をまったく無視して、単純にあの鳴き声・鳥の名前をカタカナで書くと「クックー」。 「鳩」という字からもお分かりのように「九」、「クックー」とか「ポッポー」といえば「ハト」が真っ先に浮かびます! それで「ハト時計」になったのではないかと。

そこにプラスアルファとして、先ほどの「閑古鳥じゃ嫌だ!」とか「ハトは平和の象徴だからいいね!」ということも加わって、日本では「はと時計」の名前で広く愛されるようになったのではないでしょうか?


カッコウ

さて前後になりましたが、鳥のカッコウについても触れておきましょう。

カッコウは、ユーラシア大陸~アフリカ大陸・アメリカ大陸に広く生息する鳥で、日本へは5月ごろ渡ってきて高原や森などで鳴きます。

都会で聴くことはまずないので、あの声を生で聴くと「ああ、高原の森に来たんだな~」と実感がわき、ちょっと贅沢な気分になります。滝の音とカッコウの声はじつによく似合い、深山幽谷へと心を誘ってくれます。
ちょっとマヌケな、人を馬鹿にしたような「閑古鳥」なんてとんでもありません!

ところでカッコウの声はあまりにも有名ですが、鳥の姿を見たことのある人は案外少ないかもしれませんね。ちょっとサイトから画像を拝借して…

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よく鳥の大きさを表すのに
  ① スズメぐらいの大きさ
  ② ハトぐらいの大きさ
  ③ カラスぐらいの大きさ
などと例えられますが、カッコウはもちろん「②ハトぐらいの大きさ」です。
色はグレーがかっていて鳩よりややほっそりした感じ。顔のあたりはハトに似てなくもありません。 でもカッコウは「ハトの仲間」ではなく「ホトトギスの仲間」なんです。

オスが鳴く時は羽をだらしなく下に降ろして、身体を揺するようにして鳴きます。声は美しいですが、あまり「かっこう良く」はないので見ない方がいいかもしれませんね。


音楽の世界では…

カッコウの鳴き声は、昔から音楽の世界にもよく引用されてきました。
ピアノを習い始めた子供がたいてい弾く「かっこう」はダカン作曲ですが、もとはドイツ民謡です。

カッコウそのものを題名に掲げた曲以外にも、自然描写の一部として交響曲や管弦楽曲の中にもしばしば登場します。おそらく音楽の中で、カッコウほどよく登場する野鳥は他にいないのではないでしょうか?

ざっと思いつく範囲でも…

♪ ヨハン・エマヌエル・ヨナーソン 「カッコウワルツ」 

♪ レオポルド・モーツァルト(アマデウスの父) 「おもちゃのシンフォニー」
 
(1・2楽章で登場。 カッコウの描写というより「おもちゃ」の楽器として…)

♪ サン・サーンス  組曲「動物の謝肉祭」の9曲目「森の奥に住むカッコウ」

♪ リヒャルト・シュトラウス 「アルプス交響曲」

♪ ベートーヴェン 交響曲6番「田園」の5楽章(←楽章のモチーフとして)

♪ マーラー 交響曲第1番(1楽章)


…まだまだ探せばあるかもしれません。

ベートーヴェン「田園」交響曲では、嵐(=4楽章)が去った後に静かにはじまる5楽章全体に「ラーファードラーファー」というモチーフがくり返し出てきます。たくさん出てくる「ド・ラー」や「ラ・ファー」はまさにカッコウの声です。曲の一番最後もこのカッコウの声で結ばれています。

カッコウの声が楽曲内で用いられる時はたいてい「ミ・ド」「ソ・ミ」「ラ・ファ」「ド(#)・ラ」といった3度の音程で表現されることが多いようです。おもちゃのシンフォニーで使われるかっこう笛も「ソ・ミ」の2音です。

ところが、マーラーの交響曲1番(1楽章)では「レ・ラ」(←クラリネットですが実音で)、つまり4度の音程で鳴いています!
実際にカッコウの鳴き声をよく聞いてみると、きっちりした4度とは言えませんが、3度よりは広く聴こえませんか? この記事のひとつ下(前)でもご紹介したYouTubeのカッコウの声、私の耳には「ラ・ミ」に近い音に聴こえます。

マーラー1楽章の前半、ホルンのテーマが出てくる直前では、静けさの中で2本のクラリネットが微妙にずれて鳴くあたり、とてもリアルにカッコウの声を再現しています。
また、序奏部分のあとに現れる「さすらう若人の歌」のテーマも、カッコウの鳴く「レラ」の音をそのままを引き継ぐ形で「レラ レミファ# ソラー」と始まっていますね。

自然描写のリアルさと、それを音楽のモチーフとして上手に用いるあたり、ベートーヴェンの影響を強く受け、自然をこよなく愛したマーラーらしいですね。

ところで、1楽章の最後で途切れながらも華々しく炸裂するティンパニ・ソロの強烈な「レラレラレラ!」…あれって、カッコウの勃発!?


みなさんはカッコウの声を聴いてどんな風景・どんな音楽を思い浮かべますか?

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No title

やはりカッコウ時計だったのですね。
鳩よりずっと音楽的ですものね。

ところで小鼓でも、カッコウいけますよ。
4度よりもちょっと広めの音程まで、いけるのです。
音の種類としては「プッポウ、プッポウ」という感じです。

もっとも「♪ポポポ、ハトポッポ」と
youtubeに載せている方もいらっしゃいましたが・・・。

Re: ト音記号さま

先日フェイスブックで、子供向けの音楽・童謡・かっこうの話を交換し、久々に音楽ネタについて調べて書くきっかけができました。ありがとうございます。
鼓でカッコウの声って、「ポンポン」ってどうしても叩くイメージになって難しいのでは?

話は変わりますが、ツツドリってご存知でしょうか? やはり山深いところで初夏から鳴く鳥ですが、ちょうど竹筒を吹くような感じで「ホホ、ホホ、ホホ…」と2つずつ続けて鳴きます。コーラやファンタの瓶(最近ビンで出てくる自販機が少なくなりましたが)を吹くとよく似た音が再現できますよ。 
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

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