大津の中2自殺から 何を学ぶべきか?

連日報道されている、大津市の元中学2年男子の自殺といじめの事件について。

ハイテンションなお喋りが売りのタレントの中川翔子(しょこたん)さんも、ついにご自身のブログで「いじめ」問題に言及された。

加害者の人権ばかりが尊重される風潮の中で、やられた方の被害者は命を絶ってしまったという事実。失われてからでは遅すぎる。「遊びのつもりだった」なんていう言い訳が通用するはずがない。見て見ぬふり、責任のがれをしてきた学校側の問題…とてもまともな怒りを発しておられる。

タレントさんも一般人も、今回の大津での尊い命が“いじめ”→“自殺”によって失われたことに対して心を痛め、強い思いを表明しているということに共感を覚える。

そんな中、1文だけ私にはひっかかる表現があった。
それは「学校だけがすべてではないのに」という表現だ。
中川さん(しょこたん)としては、人にはそれぞれ素晴らしい能力・活躍できる場が無限に広がっていて、いじめなんかをするようなレベルの低い奴らよりもっともっと素晴らしい世界が待っているのに…ということをおっしゃりたくて書かれていると理解するので、決して言葉尻だけをとらえるつもりはない。

しかし子供をもつ親として、義務教育の真っただ中にある生徒にとっては、学校生活の占めるウエイトはあまりにも大きく、そこでの人間関係に適応できないことはそれこそ死活問題なのである。

それだけに、学校内の問題は学校内で解決しなくてはいけない。現場の教師・親・地域が連携して、どんな生徒も“差別”されたり“いじめ”に合わない環境にしていく義務があると思うのだ。



学校は単に勉強を教える場だけでなく、朝礼・休み時間・給食・掃除・部活など、集団の中で人間関係を磨く場であり、クラス・学校はまさに大人の社会の縮図のような場なのである。

もちろん生徒にとって1日(24時間)すべてを学校で過ごすわけではない。家庭や地域、さらに学校以外の活動などにおける人間関係もある。

しかし少なくとも義務教育の「学校内」で起こる問題は「学校内」でしっかり解決するよう、親や教師も協力しあって真剣に取り組まなくてはいけない!
いじめられている生徒に対して「学校だけがすべてじゃないよ」などとは口が裂けても言ってはならない のだ。

今回の大津の「事件」について、心ある人たちの世論のほとんどは、学校・教育委員会、ひいては警察などの、あまりに無責任で怠慢な対応ぶり、さらにこの場に及んでもなお責任のがれとなすり合いに終始する醜い対応ぶりに対して怒り心頭のはずである。

ではなぜ、このような悪質な“いじめ”があったにもかかわらず、止めることができなかったのか? 隠ぺい体質ができる背景は…?
前に書いた記事とも重複するが、あらためて私なりに整理してみると…


学校側に対して

事件が発覚してすぐにとりあげられた「自殺の練習」をさせられていた事実だけでなく、次々と明らかになる校内での暴力・いじめの数々。生徒本人および親から何度となく発せられたSOSのサイン。

にもかかわらず、担任も校長も「気づかなかった」「いじめとは認識していなかった」「遊びだと思った」…などと今だに責任のがれ、責任のなすり合いをやっている。 被害者の遺族に対しても、全校生徒に対しても、きちんとした事実を報告していない!しようとする姿勢が見えない! いいかげん見苦しい! 恥を知れ!!

もし本当に気づいてなかった、認識していなかったのだとしたら、教師としての資質に著しく問題があったということになる!

なんとなく気づいていながら、きちんと状況を把握しようと努めなかったのだとすれば、それは単なる職務怠慢なのか? それとも…?


教育委員会に対して

そもそも教育委員会はどういう組織で、何のためにあるのだろうか?
都道府県ごと、市町村ごとに教育委員会なるものが設置され、教職員のOBやいわゆる見識者と呼ばれる信頼ある人たちによって構成され、学校がきちんと文部科学省(国)の決めた指導要領にのっとった教育をしているか、学校は健全に機能しているかを、いわば「監視」するような役割をもつ…と私は認識してきた。彼らの報酬は当然ながら税金で支払われているはずである。

しかし、学校で何か問題があったとき、はたして教育委員会という組織、または個別の委員の方が、具体的にどんな対応をしてくれるのだろうか?
 
たとえば「いじめ」があった、またはその疑いがある時、学校の対応が必ずしも十分ではないような場合、被害者の生徒の親が教育委員会に直接話をもっていったら、彼らはちゃんと親身に動いてくれて、学校に対して適切な指導をしてくれるのだろうか?

少なくとも今回の大津の事例を見る限り、教育委員会も学校側から報告を受けていた・受けていない…などと責任のがれに終始しているようにしか見えない。
大津市長が会見で「いじめと自殺にはそれなりの因果関係がある」と明言するまでは、教育長(教育委員会のトップ)が「いじめと自殺との関係については不明」とも言っていたのだ。

まったく何という無責任。いったい何のための教育委員会なんだろう?

私もいま現在2人の娘が中学校・小学校に通っているが、この歳まで学校に関係する事件や問題については、自分に直接関係があるかないかにかかわらず、それなりに関心をもってニュース報道を見てきたつもりである。しかし教育委員会が何か具体的に学校に働きかけて問題を解決してくれたケースといのは記憶にない。

「学校側からいじめの実態について報告を受けた・受けていない」「自殺といじめの間には関連がある・ない」…そんな言い訳ばかりに終始している彼らに、本当に教育現場での問題を解決する力(=能力および権限)があるのか?
それ以前に、本気で問題に向き合って解決しようとする姿勢があるのか? 
…はなはだ疑問に思う。



無能力で機能していないだけではない。もっと「大きな弊害」を生んでいるように思えてならないのだ。

それは、教育委員会が学校を「監視」するような役割をもっているがゆえに、学校側としては「わが校で“いじめ”などという事実があってはならない」という意識がどうしても働くであろうことは容易に推察できる。

つまり、形骸化した「監視」機能をもった上位組織である教育委員会の存在そのものが、“いじめ”の疑いが十分あり得たにもかからわず「認識していなかった」などとする 隠ぺいムードを作り出す温床となっているのではないか?

そこが今回の事件後の報道を見ていていちばん強く考えさせられる点である。

文部科学省の出先機関のように各自治体に置かれ、形骸化した「監視」機能によってかえって現場の対応を鈍らせるような「教育委員会」の位置づけ・役割そのものをあらためて見直し、役割を明確にし、不要な組織ならば解体すべきではないか?

むしろ教育現場の最前線である学校の教師が、自らの職務権限と責任において、子供たちの日々の問題と正面から向き合えるように支援し、学校単独では力の及ばない部分で他機関と連携したり、現場の声をとりあげて国(=文部科学省)に提案するような役割をもたせるべきなのではなかろうか?


警察に対して

今回自殺した生徒の親は、これまでに何度となく警察にも相談し、暴行を受けた事実を告発しているにもかかわらず、警察は「犯罪としての事実を認定することは難しい」として受理を拒んだという。

しかし、生徒が自殺するわずか数日前には、生徒の部屋がぐちゃぐちゃに荒らされ、財布や時計などがなくなっているのに気づいた生徒が加害者の生徒に電話して尋ねたが「知らない」と言われたという。
これはもう立派な住居侵入および窃盗の疑いもある「事件」ではないか?

学校内の「いじめ」は、たしかに生徒同士の「遊び・悪ふざけ」なのか、人を陥れて傷つける「いじめ」なのかの区別は、外見からだけでは判断しづらいものもあり、しかも学校という教育現場の中にいきなり警察が介入するのは不適切だろう。

しかし、たび重なる暴行を受け、被害を訴えても学校(教師)側がまったく取り合ってくれない場合、いったいどこを頼ったらよいのか?
警察も学校も、少なくとも「公共」の機関であり、そこで働く「公務員」は市民の安全を守ることが最大の職務責任であるはずではないのか?

だったら、度重なる暴行を受けている生徒およびその親からの訴えがあれば、警察も学校と連携して、事実の解明と問題解決に向けて協力しあって最善を尽くす義務があるのではないのか? 
法律・場所・所轄といったタテ割りを理由に本気で取り合おうとしなかった警察にも、今回の自殺の責任の一端はあると私は考える。



大津市はようやく“いじめ”と“自殺”の間には相当な因果関係があったことを認める方向にあるようだ。
しかし、これだけ連日報道によって明らかにされる事実と、被害者の遺族による告訴を受けて、早々に責任を認めて示談で解決しようという意図も見え隠れする。

「自殺」という最悪の結末を迎えてしまった以上、1日も早く事実関係を解明し、責任関係を明確にし、被害者遺族への誠実な償い(=金銭だけでなく「誠意」ある対応がまず第一!)をして、二度とこのようなことが起こらないように全国的に教訓として生かすこと…それこそがまさに本質的なテーマではなかろうか?


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「学校だけが全てではない」
私が小学校高学年の頃、集団でいじめにあっていたとき、この言葉は自分に言い聞かせていた言葉でした。
章さんの、「義務教育の真っ只中の子ども達にとっては…」のくだり、もっともなのですが、そうでも考えないとやっていけないくらい傷ついていたように思い出します。
あれから四半世紀経った今でも、こうしてコメントしていますと少し涙ぐみます…
当時私は、学習塾とピアノのレッスンに通っていました。
学校の友人の全くいない世界に、ほんの少しの安らぎを感じていました。
クラスの全員が自分へのいじめを知っているという惨めさを我慢しなくていい世界。
そこでは明るく楽しく、自由に振る舞うことが出来たものでした。

ある場所で上手くいかなくなった時、子供には逃げ場が必要ですね。
しょこたんさんは、その逃げ場を心の中にもつヒントとして発言されたのかな…と、おもいます。
ブログを読んでいませんので、前後はんかりませんが。
ほんの少し、いじめの現実から逃避するために私も「学校だけが全てじゃない。人生は長くて楽しい事も待ってるんだよ」と声をかけられたかったです。

Re: タイトルなし

徳永さん、ありがとうございます。

そうですね。私も一晩あれこれ考え、やはり子供にとっても「逃げ場」として「学校だけがすべてではない」もありかな、と修正しようと思います。
ただ、もともとは大津の問題で、学校側のあまりにも無責任な対応に「あってはならないこと」というところが出発点であり、生徒にとって(たとえ学校以外の逃げ場があるにせよ)一番メインである学校であってはならないこと、という意味で書いた趣旨は変わりません。

それと、これは本文として書くのははばかられたのですが…
自殺した生徒およびその親は本当に被害者で気の毒です。ただあのお父様は、「息子が自殺した時はまったく心当たりがなかった。自殺した後の情報で初めて“いじめ”が続いていた事実を知った」とおっしゃってますね。

いま最も深い悲しみの中にあるお父様には酷な言い方であることは百も承知ですが、「もしいじめの事実にもう少し早く気づいていたら…」という気持ちはぬぐえません。家で一緒に食事をしながら、夜や休日に、学校の話題はまったくしていなかったのか? 学校の話を避ける、学校の話になると暗くなる、あるいは朝登校するときの後姿…etc. 少なくとも「いじめ」は何か月も続いていたはずで、その間になにも「あれ?」と感じることはなかったのか…?

仮にそれを父親が察知してあの学校の教師たちに相談したとして、どこまで解決できたかは分かりません。でも、せめて家族だけはその「いじめ」の事実を知って「味方」になってくれている、改善に向けて本気になってくれている、ということが生徒に少しでも伝わっていたら、もしかしたら自殺までには至らずに済んだのではないか…と。

やはり原点に戻る、というか一般論になりますが、子供の成長を一番ベースで支えるのは家庭・親であり、学校の問題についても決して先生任せではなく親や周りの大人たちが連携しあうことの大切さを感じますね。

章さん、本当にもっともです!
そもそもの、学校側の対応は怒りや呆れといった感情でどうにもやりきれません!

被害者のお父様のコメントには、胸が痛みました。
お父様を責めるわけではなく、自殺して初めて気づくいじめの実態の恐ろしさや虚しさに、怒っています。

Re: タイトルなし

今回の事件を受けて、教育委員会のあり方、ひいては国(文部科学省)の在り方そのものが問われているといってもいいでしょうね。

ただ、役人(公務員)だけをバカだとは申しません。今は民間(​たとえば電鉄会社など)を見ても、「上から言われたこと​は仕方なくやる」という人間が増えてます。タクシーの運転手さんからコンビニのバ​イトに至るまで、民間人が「役人化」してるんじゃないかと…

利用者の声・目の前にある危険・分かりやすさ…現場で仕事をしている人が一番それらを敏感に感じるはず。トップレベルから命令されなくてもできることはあるはず! 現場だけで判断できないことは上に提案して変えていけばいい。でも「どうせ私が言っても変わらないから」とはじめから一切やらない、やろうとしない、そしてついに​は何も感じない人に。どうしてこういう人間ばかりが増殖してしまったのかと思​いますね。
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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カウント開始 2011.1.14~
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