京都地検、「危険運転致死傷罪」を見送り!

京都・亀岡で起きた、無免許運転による死傷事件(←私はあえて「事故」とは呼びたくありません!)から今日でちょうど3週間。

京都地検は、遺族への事前説明会を開催するという異例の形をとりつつ、少年の身柄を家庭裁判所に送致。
成人の犯罪に相当する「刑事処分相当」との意見書を添えたが、「やはり」というべきか、「危険運転致死傷罪」の適用は見送った!

「無免許ながら京都市内をこれまで何度も運転してきており、運転技能がなかったとは言えない」というのがその理由だ。

「運転技能が備わっていたら『危険運転』ではないのか!?」「これを『危険運転』と呼ばずして何というのか!?」 …遺族ならずとも、怒りはふつふつとおさまらない。

♪ 事件当日にアップした記事はこちら…
   http://resolutely.blog6.fc2.com/blog-entry-460.html



そもそも、「業務上過失致死罪」(刑法211条)は、十分な注意を払って運転しているはずの“まともなドライバー”がうっかり不注意で起こした事故で、最高刑は5年
(自動車の運転以外でも、相当の注意義務を払わなくてはならない状況での過失を「重過失」と呼ぶが、それもこれと同じく刑法211条をさす。)

それに対して、いかなる悪質なドライバーによる事故も「業務上過失」と同等ではあまりにも軽すぎる、との長年の世論から新らに設られたのが「自動車運転過失致死傷罪」。

しかし法律としては「自動車運転過失致死傷罪」という新しい法律ができたというよりも、「業務上過失(重過失)」と同じ刑法211条の「第2項」に加えられた形で、最高刑も7年にとどまっている。

それに対し「危険運転致死傷罪」は、「自動車の危険な運転によって人を死傷させたもの」として、刑法208条の第2項として設けられている。つまりこれは刑法上は暴行・傷害などと同じライン上にあり、うっかりによる「過失」の域を出ている。

ただし、ここで「危険な運転」と見なされるための条件がじつに細かいのだ。

危険運転致死傷

刑法第208条の2

1.アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。

2.人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。



「人を負傷させた者」に対しては「15年以下の懲役」と上限を定めているが、「人を死亡させた者」に対しては「1年以上の有期懲役」と下限だけを定めて上限は定めていない
つまり人を死傷させた事例においては、厳罰に処することも可能な、きわめて運用の幅の広い法律といえる。

しかし、後を絶たない「危険な運転」に対して、検察が起訴する段階でも裁判の段階でも、あまりにも厳密かつ限定的な解釈によって「危険運転とは言えない」と適用を除外してしまう傾向が強いのだ。

前にも書いたが、「アルコール又は薬物の影響により」という部分を「正常な運転」ができなくなる原因と解釈するのがふつうの解釈だと思うのだが、裁判所は「酒に酔って、なおかつ正常な運転ができない状態で」と2つの条件を同時に満たさなくてはいけないような妙な解釈をするのだ。
しかも無免許で運転する行為や、法定速度を大幅に上回るスピード違反など、それ自体が立派な違法行為であるにもかかわらず、そうした運転を行ってきた『実績』をもって「正常な運転が困難だったとは言えない」などと妙な解釈をする。

いったい誰のため・何のため法律なんだ! 適用できる範囲を狭き門とすることで、加害者ばかりを守ろうとしているようにさえ思えてしまう! せっかくの立法趣旨が司法の現場で生かされていないことになる!



世の中一般の常識や市民感情と、法律的な定義とはしばしば隔たりがあることは承知している。しかし、「いったいどれだけの条件を同時に満たせば“危険な運転”とみなされるのか? 」「これを危険運転と呼ばずしていったい何と呼ぶのか?」「こんな悪質なドライバーの罪を軽減させて誰が得するのか?」という事例ばかりである。

元福岡市職員I氏も、一審・2審(福岡)ではいずれも「危険運転致死傷罪」を適用しなかったが、上告審の最高裁判所は「酒に酔った状態で、時速100キロを超える速度で運転したら、前方の安全を確認することは困難な状況にあることは明らかである」として、「危険運転致死傷罪」を適用した。
この最高裁の示した判断によって、社会的・科学的常識で総合的に判断して「危険な運転」と見なせる道を開く前例ができたかと思ったのだが…

そもそも酒酔い運転・無免許運転・法定速度を大きく上回る暴走など、「危険な運転」を通常の「事故」よりも厳しく罰するためにできたはずの立法趣旨が、法の現場(司法)で「伝家の宝刀」のごとく“抜いてはならないお飾り”になりきっていることだけは確かだ。

そんなに“使えない法律”だったら即刻廃止したらいいのだ!
そのかわり、悪質なドライバーに対しては、「未必の故意」も前提に、「殺人罪」も視野に入れて厳しく処罰する姿勢を社会が持たなくてはいけないはずだ!

後を絶たない悪質なドライバーによる事故(事件)。みなさんもどうか「他人事(ひとごと)」と思わず、もし愛するわが子を暴走車によって失ったら…というわが身の問題として、また社会の一員としてぜひぜひ考えてみていただきたい!

そして忌憚のないご意見をコメント欄にぜひ残してください。そういうみなさんの声が「世論」になっていくことを願って…


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こんばんは

こんばんは。

被害に遭われた方々、そしてそのご家族のことを考えると
京都地検の結果は、許せないものを感じますね。

私は、いつも思うのですけど、
無免許の人間がなぜ、運転できてしまうようになるのか、を考えます。おそらく、教える人間がいるからでしょう。

でも、報道でそのことを今まで指摘していた事件はないように思えるのです。

自動車学校で、運転の仕方を学び、違反になることも学びますが、免許を持った人が免許を持っていない人に教えることに対して、教えられたのかどうか・・・常識で考えたらしてはいけないことでも、
今の人(私は昔の人???)は、意外と常識がわかっていないので、言われないとわからないのではないのか・・・と時々思います。

根本的に無免許の人間がなぜ、運転をしているのか、
そこも、考えていかないといけないのではないでしょうか・・・?
第一楽章さんは、どう思われますか?

Re: こんばんは

リーさん

さっそく私のふつふつに応えてくださってありがとうございます!

「無免許運転」をどうしたらなくせるか…これは永遠の課題ですね。根本は技術的な問題ではなくモラルの問題だと私は思っています。

かつてのマニュアル車に比べて今のオートマチック車はとくに、だれでも簡単に運転できるように設計されています(もともとオートマ車は障がい者にも運転できるために開発されてきた歴史があります)。
ですから、ちょっと機械・車に興味のある人間だったら、教習所に通わなくても車を動かすことぐらい簡単にできてしまうでしょう。
そして無免許運転にはもう一つ、なんらかの交通違反をやって免許停止・免許取り消しになった人間が運転するケースがあります。この場合、車を動かすテクニックだけは一人前にもっているのです。

こうしてみると、教習所に通わず、免許も持っていない人間が運転できる条件は、免許を持っている人間が裏講習で教えたケースばかりとは言えません。また車や機械に興味をもつ少年の芽を摘むこともできません。

前に記事にも書いたとおり、やはり「やってはいけないことは絶対やらない」というモラルの徹底、ひいては人の命の尊さなど、人間としての教育課程に問題あり、と見るべきだと私は思いますね。


<追伸>

P.S.
新たに作られる法律には概して、その行為を定義づけるための文面が長くなる傾向がある。色々具体的に書き過ぎることで、その中のどこか1つでも該当しないことがあると適用できない、といった矛盾を生む。

それにひきかえ、刑法199条「殺人」などは「人ヲ殺シタル者は」の8文字だけで、故意による殺人のすべて定義しつくしている。適用するうえで何の問題もなく、単純でよろしい!
いっそここでも「危険な運転をして人を死傷させた者は」だけを条文化し、何をもって「危険」と見なすかは社会通念や裁判所の判断にゆだねたら良いように私は思うのだが…。

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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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