「ベルリンフィル 3D音楽の旅」 試写会より

11月3日(文化の日)

「ベルリンフィル3D音楽の旅」選考プレミア上映にご招待いただき、拝見してまいりました。

♪ マーラーの交響曲1番「巨人」
 
樫本大進さんがまだ正式のコンサートマスターに就任する前の昨年11月の演奏。会場ではスタンディングオベーションが続き、本当に素晴らしい演奏でした。

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*クリックすると大きな画面でご覧いただけます 


試写会に先駆けて、作曲家の 池辺晋一郎さんのトーク もありました。
そこでのお話しから、見終わって改めて「なるほど」と思ったことをご紹介します。

ふつう生で演奏会を聴きに行っても絶対見られない角度からのソロ奏者のアップの画像。木管楽器のソロ奏者の息使い、ハープや弦楽器の弦の振動まで伝わってきます。

また人間って不思議なもので、ある楽器の画像をアップにされると、その音がクローズアップされて聴こえてくるんですね。 もちろん聴こえている音声はずっと会場全体の音のまま(音までソロを​アップにしたらおかしなことになりますから…笑)なんですが、あるソロ奏者の画像がいったんアップにされると、しばらくその楽器の音がとくに浮き出すように聴こえてくるんですね。人間の感覚って目と耳の両方から入ってるんだということがよく分かります。

また、ちょっと意義深いお話として…

ベルリンフィルという極めて伝統的なオーケストラが、このような最先端技術による斬新な試みを受け入れたということが素晴らしい!

音楽の世界に限らず伝統のある世界って、今までやってきた伝統の形をひたすら保守することに専念し、新しいことを容易には受け入れないような傾向がありますね。
でも、こういう試みをベルリンフィルがやってくれたことで、クラシック音楽の素晴らしさがよりリアルに広く伝わるようになり、音楽界そのもののこれからの可能性を引き出してくれるんじゃないかと思います。



3Dの映像も、一昔前のように3Dメガネをずっとかけて観ていると頭痛がしてくることもなく、ごく自然に鮮やかに見え、とても素晴らしいものでした。臨場感という点では、実際にオケの中で演奏していてもあのような角度であちこちのパートを見ることは絶対に不可能ですから、とても新鮮でした。

ただ、私もアマチュアながら演奏に加わる身として、映像を見ていて非常に残念だったこと!

自分に関係する楽器の話で申し訳ないんですが…打楽器が全くアップで捉えられてなかったんです!
打楽器関係の皆さん、信じられますか? マーラーですよ!「巨人」ですよ! 打楽器奏者は掛け持ちでも5人、ティンパニはダブルキャストで、最終楽章では2人のティンパニストが交互に大活躍するんですよ!

1楽章最後のティンパニソロも、2楽章のけっこう華々しいところも一切 “抜き” はなし!
ティンパニはもちろん、1楽章で「さすらう若人のテーマ」が出るところで美しく1発鳴るトライアングルも、節目で入るシンバルも、信じられないことにただの一回も “抜き” はありません!

後半3楽章に入って、中間部の舞踊風のリズムで、バスドラムに小さなシンバルをくっつけてちんどん屋みたいにやるあの場面も全く無視! 全体画像の中にすら入っていません!

3楽章が静まっていく中で、ドラとバスドラムが残って連打してるところも指揮者の顔アップのみ。 そして4楽章に突入する1発の激しいシンバル(←シンバル奏者はこの1発のためにいるようなものです!)も当然のごとく無視!

4楽章に入っても、打楽器全員が大活躍するシーンはオケ全体の“どん引き”の映像のみ。せめて金管群から後ろの打楽器群あたりまでズームインで寄ってくれたら、打楽器奏者の顔と全体の動きぐらい分かるのに…

いよいよ最後の最後、ホルン奏者が立ち上がる(巨人が歩いてくる​)シーンの直前で、何を思ったか2番ティンパニのサイドからの抜きが1カット。 
「ん?なんでここで…?」 こんなところにもカメラを設置してたのをずっと忘れていて、何かの間違いで切り替わってしまった、という感じ…(笑)? 



さらに、ラフマニノフの交響的舞曲(作品45)
ヨーロッパ、アジア、インド、イスラム…といった世界各国の街並み・活気ある人の動き、民族衣装をつけた人たち…といった映像が随所に挿入されていました。

でも、金管や打楽器が活躍する場面(オーケストラがビジュアル的​に高まる場面)になると決まって“街の画像”に切り替わるんです​!
タンバリン・鐘・シロフォン・鉄琴などが活躍するところはみな“街の画像”に切り替わってしまっています。

今回カメラ割り・編集を担当された方、打楽器になにか恨みでもおありだったんでしょうか?
かつて打楽器を志したけど、悪い先輩たちにいじめられたとか…(笑)


♪ 「続きを読む」へ ↓


今回の撮影・編集はドイツ側(ユーロアート)でなされたようですが、NHKグループも共同制作として入っています。どうも悪い意味でのNHK的な匂いをずっと感じながら観ていました。
“海外共同制作”となると、個々の権限や役割分担も複雑になり、最終的な権限は誰だったのか明確に言えないんですが…

私の子供の頃から今までずっ~と、NHKってなぜか打楽器をわざわざ外して撮ることが多いんですよね。音楽PDさんもカメラマン・スイッチャーさんたちも世代交代してるはずなんですが、ずっ~とそれこそ“伝統”を守るかのごとく…

たとえば海外オケのプロモーションビデオや、日本の地方TV局が撮影した音楽行事の収録などを見ていると、「ふつうこの曲だったらここでシンバルを撮るでしょ」「ここはティンパニでしょ」という常識的なポイントをちゃんとおさえてくれています。でもNHKはなぜかそういう場面をことごとく外すんです。

弦楽器群・木管群もそりゃ何かやってますし、指揮者の表情もたしかに素晴らしい。
でも、なにもここでそっちを狙わなくてもいくらでも撮れるシーンはあるでしょ? むしろここは打楽器でしょ? 打楽器はここを外したらほかに撮るシーンはもうないでしょ?、というところをことごとく外して、曲はどんどん進んでいくんです。
そして最後の方になって申しわけ程度に、別にどうってことないことをやっている打楽器奏者をアップで抜いたりするんですね(笑)。


もしコンサート会場に聴衆としていたら、曲がだんだん高まってきて、最後列の打楽器奏者が立ち上がったらそっちに目線がいくでしょ? 曲が激しくなり、打楽器が大活躍する数少ないシーン、「ここで打楽器を撮らなくてどうする?」というポイントってあるはずなんです。一般聴衆の目とは違う、“より専門的な視点”で狙って撮ってらっしゃるつもりなんでしょうか?

いいえ、もしそれを言うなら…

例えばここはコンサートマスターが次のテンポをどう合図するかな、というのが見たいシーンもあるはず。また、メロディ楽器の陰でとても重要な刻みをやっているパートもある。ちょっとその曲を知ってる人だったら「ここではこの楽器を見たい」という一瞬一瞬があるはずなんです。そういうところをマニアックにきちんとおさえて狙ってるわけでもなさそうなんですね(笑)。

どうも見ていると、表だって目立つ楽器、とくにメロディ楽器ばかりを追いかけている節があるんですね。 弦楽器をひたすら前から後ろまで舐めていたり、オーボエ、フルート、クラリネットの1番奏者は何十回となくアップで映ります。もちろん彼らの息づかいも表情も素晴らしいんですが…

今日の試写会に来ていた方たちの中でも、「ご自身でも何か楽器を演奏される方は?」と司会者から問いかけられて、3分の1から半数近くの手が上がりました。聴衆はみなさん音楽にそれなりに関心を持った方たちなんですね。さらにこの映画をお金を払って見に来られる方、またDVDを購入される方は、皆さんそれなりに熱烈なクラシックファンの方たちなんです。

せっかくこれだけの技術で撮るんなら、もう少しスコアをちゃんと​ご覧になって、多少なりとも音楽を知っている人たちの視点・意見も聞き入れてカメラ割りを考えていただきたいですね。

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No title

ティンパニーさん、こんばんは。
矢張り記事をUpされていましたね^^ 充実した文化の日だったようですが、ちょっとイラッとされた事もあったようで・・(笑)でも何はともあれ、素敵な休日をお過ごしになられて良かったですね。

私も打楽器は一番オイシイ楽器だと思いますけれど、それを敢えて撮ろうとしないNHK,教養が足りませんねっ!!きっと音楽を理解していないのでしょう。なんて可哀想そうな、残念な方々・・ 私の大好きな大好きな友人、実はティンパニーの腕前も素晴らしいのですが、それを知ってからは私はオケを見ると打楽器奏者のポジションにかなり目がいってしまいます。そして「おぉ~、カッコイイな~☆」と、一人で唸っています。
そんな人も必ず居ますので、「誰かが見てくれてる♡」とお思いになられて、演奏して下さいね♪

No title

記事を拝見しながら何度そうだそうだ!と膝を打ったことか。
はっきり言いましょう。NHKは、もちろん表立っては言いませんが、打楽器は音楽的教養のない者がするものだと思っている節がありますよ、きっと。
アイリッシュ音楽で使う伝統的打楽器にバウロンというフレームドラムがあります。当地ではこれは、ヴァイオリンも弾けない、ギターも弾けない、歌とて・・・といった言わば‘あぶれ者’がやる楽器だ、と言われているそうです。しかもちゃんと練習もせずに賑やかしに参加したいだけだから、リズムは合わない上に馬鹿でかい音だけは出す、という困ったチャンが選ぶ楽器なんだそうです。
でも名誉のために言いますが、プロはまったくその限りではありません。
NHKに話しを戻しますと、僕も過去にBSでトルコの若きベリーダンサーを追っかけた番組を見たことがありました。最後にパーカッション奏者を後ろに従えてダンスを披露する映像が流れるのですが、パーカッション奏者が、もの凄い技を繰り出している場面に限ってダンサーにスイッチされてしまうのです。そのスーパーテクニックを研究しようと、ビデオに録って何十回となく演奏の場面を見るのですが、肝心なところになると逃げられてしまうのでした。悔しくて臍をかむとはこの事かと思いました。しかも、酷いことに、一連の音なのに別テイクで撮られていた映像を当ててあったり。だって、ふたりいるパーカッション奏者の並びが次の瞬間変わっているんですから!当然音とは全然合っていない。 これには「おいおいふざけるなよ!」でした。ま、彼らにしてみれば‘タイコ’なんてどうでもいいんでしょう。

打楽器が駄楽器にならにように復権運動を起こしましょう。

以前、NHKのこころコンサートを見た時私もそう思いました。この番組は第一楽章さん本人から教えて頂いたのでティンパニのアップがもっと見たかったなと…。演奏されている側からだともっとそう思うのだと思います。
素人ながらここはというところが何度かありました。

Re: タイトルなし

皆さん、暖かいコメントありがとうございます。

私も音楽や蒸気機関車が子どもの頃から大好きで、同局の番組をよく見てきたしたが、カメラ割り・インタビューのしかた・番組構成等については色々と思うところがあります。
実際にそういう番組をチェックして観たい方たちの大半は、その世界の基本的なことはちゃんと分かっている方たちなんですよね。

ただ、番組づくりに関するあれこれをあまり綴るとコンプライアンスに引っかかりますので、本文に書いたような「1視聴者としての意見」にとどめさせていただき、具体的なコメント返信は控えさせていただきます。いずれ個別に飲みながらでも…(笑)
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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