人生の贈りもの

◆朝日新聞の夕刊に「人生の贈りもの」というコラムがあり、6月20日(月)から4回シリーズでコバケン先生のことが紹介されました。
(クリックすると大きな画面でご覧いただけます)


人生の贈りもの(1)(1) 人生の贈りもの(2)(2)  人生の贈りもの(3)(3) 人生の贈りもの(4)(4)

記事をクリックして拡大してお読みいただければお分かりでしょうが、

●ラジオから流れてきた「第九」に打たれて「作曲家になろう!」と決心された子供時代

●お父様が、はじめは音楽の道に進むことに猛反対され、後に最大の理解者・応援者となられたこと

●芸大の作曲科に入学されたものの、当時の前衛的な作曲の世界はベートーヴェンやブラームスを愛するコバケン先生の目指す方向とは異なり、トイレでふと「指揮者になろう!」と決意され、もう一度芸大の指揮科に再入学されたこと

●コバケンの名を世界にとどろかせるきっかけとなったブダペストでの指揮者コンクールでのエピソード

コバケン先生のもとで6年ほどご一緒に活動させていただき、その間にテレビ番組や対談記事なども拝見していると、前にもお聞きしたことのあるお話です。

でも、あらためて4回シリーズのコラムとしてこうして拝見すると、「炎のコバケン」先生が今日ここにいらっしゃることは、決して偶然でもたまたまでもない、とても有難い“人生の贈りもの”なんだなと思わずにはいられません。


◆神通力

その中でもとくに私が感銘を受けたのは、4番目のコラムに書かれているブダペストでのコンクールでのエピソードです。

たいていの指揮者コンクールの応募資格は29歳までなのに、たまたま音楽雑誌で35歳まで応募できる要項を見つけられた。でも募集の締め切りはすでに数日過ぎていた!
ふつうなら、ここで落胆して諦めますよね。でも知人のつてを頼りにハンガリー駐在の大使から主催者にかけ合っていただき、それも1度ダメでもまだ諦めず…

そしていざ受けられる段になって送られてきた課題曲はなんと60曲。それをたった1か月で準備しなくてはいけない!
しかし子供のころから不可能を可能としてきたご自身の力を信じて、「1か月しかない」を「1か月もある」にすり替えてしまうパワー!

さていよいよコンクール。指揮者コンクールではくじ引きで60曲の中から選び出した2曲を振らなくてはいけない。
最初に引いたのがベートーヴェンの交響曲1番の2楽章。「なにもアピールできない。これでは落ちるだろうな」と思われたそうです。でも2本目のくじで引いたのはロッシーニの「セビリアの理髪師」。 変化に富んで指揮者冥利につきる曲で「来た!」と思われたそうです。

ふつうはくじを引いた曲順で演奏しなくてはいけないところを、オーケストラの前まで歩いていくわずか10メートルの間にとっさに「よし、逆にしてやれ」というとんでもない発想を!
オーケストラに向かってハンガリー語で「こんにちは」とあいさつし、気分をよくしてもらったところで「セヴィーリア!」と一声を発し、オーケストラや審査員から異議が出ないうちに振りおろし…

オーケストラもさぞ面食らったことでしょう(笑)。
でも「イタリアの海のような素晴らしい演奏」で、終わってから立ちあがって拍手してくれる団員もいたそうです。そしてその後のベートーヴェンではもう余計なことをする必要がなかったと。その流れと勢いで最終審査まで進み、みごと1位を獲得! 

「自分が自分でないような経験は後にも先にもあの時だけです。天の力がぼくの体を動かしてくれた」とマエストロはおっしゃいます。

マエストロはジルベスタコンサートのカウントダウンで最後の1音を切って1秒後に「パーン!」と年が改まるような、成功すれば見事だけど寿命の縮むような演奏を見事に成功させても「みなさんから光(おおら)をいただきました」と謙遜しておっしゃいます。
でも私には、マエストロには何か不思議な魔力ですべてを幸運に変えてしまうような力を感じるのです。



指揮者コンクールという特殊な舞台でここまでの劇的なエピソードはそうそうないでしょうが、誰の人生にもこれに似たような運命の分かれ道ってあると思いませんか?

よく「運がいい・悪い」とか「要領がいい・悪い」と言われますね。
「運がいい=たまたまラッキーだった」、「要領がいい=姑息な手段で…」という風にも思われがちだったりします。
でも私はコバケン先生のこれらのエピソードを何度となくお聞きしてきて、どんな状況でもそれを自分に有利な方向へ変えてしまう神通力のようなものを感じます。

戦国時代の戦(いくさ)でも、兵の数や地理的な条件など、どうみても不利であるにもかかわらず、それを逆手にとって勝利へと導いてしまった武将っていますよね。

どんな状況に追い込まれても最後まで決して「ダメだ」と諦めない。そしてどんな逆境も奇想天外な機転をきかせて自分の味方につけてしまう。

もちろんそこに至るまでには日ごろからの訓練や経験の積み重ねが欠かせません。機転と運だけではだめでしょう。でも、どんなに真面目に努力を積み重ねて実力はあっても、最後の最後で時の運や逆境に負けてしまう人と、すべてをプラスに転じて勝利を得る人とで運命が大きく分かれるような気がします。

よく理屈抜きに人を引きつけてしまう不思議な力を秘めている指導者などを「カリスマ性がある」などと言いますね。それに対して、逆境を転じて福となしてしまうパワーは、カリスマ性とはちょっと違う意味で、“偉大なる楽天家”という感じがします。
コバケン先生には失礼な表現かもしれませんが、細かいことをあまりくよくよせず、出たとこ勝負で常識の枠をくつがえし、時に冗談も本気にさせて突き進んでしまうような勢いというか……

言葉ではうまく言えませんが、やはりそういう強い意志力で時の運を自分の味方につけてしまえる人って、とっても魅力がありますね!  

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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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