ベートーヴェン交響曲1番

このカテゴリで記事を書くのは本当に久しぶりな気がします。

大地震 & ザ・年度末 の大変な日々でしたが、明日、いやもう日付変わって今日4月3日(日)、ある“音楽研究”のためのリハーサルがあるのです。

というのも、われわれオケがこの曲で演奏会の本番をやるのではなく、チェコフィルで近々この曲を演奏されるわれらがコバケンこと小林研一郎先生のもとに仲間たちが集まって、「どうぞ煮ても焼いても、われわれを実験台に使って下さい」というもの。

本番なきリハーサル、ある意味われわれはボランティアですが、世界的なマエストロのもとでさまざまな試みがなされる貴重なオーケストラレッスンが受けられるのであります。
 
一昨年、ブルックナーの交響曲4番でも同じようなことをやったことがあります。


ベートーヴェン交響曲1番 ハ長調

ベートーヴェンは9つの交響曲を残していますが、この1番は30歳(29歳~)の時に書いた最初の交響曲。
まだ耳も聴こえていたベートーヴェンの、ハ長調のじつに明るく軽快な交響曲ですが、あれだけの大作曲家にしてはけっこうな歳になってから最初の交響曲を書いてるんですね。

というのも、ベートーヴェンは1792年にウィーンに落ち着いて、ハイドンのほかにも何人かの師匠について作曲の勉強を重ねます。

そしてあのピアノソナタ「月光」(=作曲当時は「幻想的なソナタ」と自身で名付けていた)を、一説によると自分の年齢の半分ぐらいの教え子に恋をして書きました。そしてそのすぐ後の1800年に、この最初の交響曲1番が生まれます。

1790年代後半から1800年までの作品はよく「ベートーヴェンの第一期の作品」と呼ばれ、モーツァルトの作風をまねたとも言われます。

たしかに音の響きや節回しもそうですし、とくにこの交響曲1番は明るいハ長調で軽快に書かれていますから、モーツァルト風にも聴こえますが、私はやはりベートーヴェンらしいこだわりと手法があるように感じます。


<1楽章の冒頭>

ベートーヴェンの作品には、冒頭から「オレは何調だ~!」と威圧的に始まるものが多いのですが、この交響曲1番の冒頭は…?

1楽章冒頭

いきなり「ソシ♭ドミ」(属7)の和音から「ファラド」(=ヘ長調)へ、度肝を抜くような和音展開から始まります。
つづいて4小節目で「ソシレ」のト長調に落ち着いてややモーツァルト風に進みますが、「ソシレファ」というまた何かの調の属7の和音のような匂いを放ち(←チェロの上昇音にはファに♯がついていて、まだト長調を装っているようにも見えますが)、アレグロの主題呈示では5度下のハ長調が登場します。そう、主役はド、ハ長調だったんです!

1楽章主題へ

最初に何やら語り始めた男が主人公かと思いきや、「じつは私は5番目の弟でして…」という顔をチラっと見せると、本当の主役が5度下から登場する…
ベートーヴェンは最後の交響曲9番の1楽章冒頭でもこれに似た手法を使っていますね。

ま、そんな和音進行の話はともかく…(笑)

年度末の忙殺の日々から頭を切りかえて、久しぶりにベートーヴェンのスコアを引っ張り出して眺めていたわけです。



3年前の大晦日~正月にかけて、コバケン先生が「オールベートーヴェン」を演奏された時、私は幸運にもそのリハーサルを見学させていただいたことがあります。

ミニスコアを持参して、マエストロがほとんど全曲通しながら要所要所で団員に指示していくことをメモしたりしましたが、音楽はやはりマニュアルではなく、感性なんだな…と思いました。
どうしても今の自分なりにその曲と向き合うことになるわけですから“生もの”ですし…

とはいえ、今の私なりにこの曲の面白い点、最低限の注意点をざっくりと…


<1楽章>

フレージングに気をつけること!
偶数で2小節、4小節の単位でできているかと思いきや、2小節のフレーズのあとに3小節のフレーズ×3回、というようなパターンも出てきます。偶数の中に奇数を混ぜたり…ベートーヴェンらしいところです。

1楽章

まあ上の楽譜例などは分かりやすいですが、うっかり関係ないところで「ドン」と出てしまわないように!
…あまりにもレベルの低い注意事項ですね。はい、失礼しました(笑)。

ともかく、この1楽章にはフレージングの面白さがある、ということです。

色んな楽器のフレーズが重なってリレーされていく場面も非常に多いのです。ある楽器のフレーズの歌い終わりの音が、次の楽器のフレーズの始まりの音になるのです。

ですから最後の音をどう処理するかがとても大切になります。ぶつっと切らずに、少し余韻を持たせて「はい次の方どうぞ」というイメージを持つことが大切でしょうね。

ティンパニでいえば、小節の頭の1発が、あるフレーズの歌い終わりの音であると同時に、次のフレーズが始まる音でもあるのです。
だから次にはじまる音楽を前もってイメージしておいて、その音楽にふさわしい音色で次へと引き渡すような心配りが大切になるでしょう。


<2楽章>

静かで美しい2楽章の中で、ティンパニがとても重要な役目を演じる場面が何度も出てきます。
2楽章 

ヴァイオリンやフルートが3連符で刻んでいるところで、ティンパニだけは符点、つまり4つ刻みを続けるのです。
あるオーケストラでは、ティンパニも他の旋律と同じ3連符のタイミングで合わせてしまっている演奏例もあるようですが、やはり私としてはそれは違うと思います。

ただし「私は4つで刻んでますよ」といった違和感なく、4つ刻みと3つ刻みが融合できるように“さりげなく”…これ、実はけっこう難しいんです!


<3楽章>

トリオをはさんだ3部形式の3楽章は楽しいです。まあバチを絡ませないようにせいぜい注意して楽しく叩きましょう。


<4楽章>

ソラシ、ソラシド、ソラシドレ、ソラシドレミ、ソラシドレミファ…いったい何をつぶやき始めたんだろうと思うと、上のソまでのスケールになり、ここでも最後の「ソ」から5度下の「ド」を導き出す形で、ハ長調によるアレグロ・モルトに突入して、一気に最終楽章をかけ抜けます。

うっかり数え間違えて落ちても曲はむなしく進んでいくのみです(笑)
まあなんとか無事にちゃんと入れたとして…

やはりドコドコドーン と最後の音にアクセントがついてしまいがちですが、頭の入りにアクセントをおいて、あとは終わりまで均等に減衰させるように抜く!ツブ立ちは明確に!

4楽章

これをやらないとめちゃくちゃださいベートーヴェンになってしまいます。ださくするのはいとも簡単なのです(笑)。

あとベートーヴェンの楽譜には、アクセント記号があまり書かれていなくて、アクセントを意味するsf(スフォルザンド)と書かれていることが多いですね。
また f 、ff、といった曲としての強弱記号でありながら、場面によっては「その音をとくに強く強調して」という意味で用いられたりもします(5番「運命」の4楽章など)。

4楽章b

なんとなく「この音も強くしちゃえ」ではなく、曲全体のダイナミックスとしてはどのぐらいの大きさで、その中でどの音をちょっと強調しようか、ということをちょっと考えておきたいところですね。
これも演奏している最中(←「もなか」じゃありませんよ)に考えながら、思った通りの音を出すのは案外難しいんですけど…

あ、そろそろ寝ておかなくては…!

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ベートーベンは私も大好きです
ピアノを15年間やっていたので三大ソナタの「月光」「悲愴」「熱情」は弾けたのですが、今はもうすっかり指が動きません(:_;)
一日練習を怠るだけでも指が鈍るのに、四年もピアノから離れると楽譜もスラスラ読めない状態でした(笑)
特にソナタは綺麗な和音が多いのに、今の私が弾いたらジャイアンのリサイタルコンサートどころでは済まない気が…!

ベートーベン、と聞いてついつい懐かしく思ったのでコメント残しです*゜
交響曲も迫力があって素晴らしいですよね
初めてホールで聞いた時は音が身体に響く感覚を今でも覚えています(*´∀`*)

Re: ピアノを良き友に

かすみさん

ご丁寧なコメントありがとうございます。わが家のネット接続も復旧しました!

ベートーヴェンの3大ソナタまでお弾きになられてたんですね。「熱情」の3楽章の最後、いいですね!
たしかにピアノは毎日弾いてないと指が固くなります。子供のころ夏休みに数日間旅行に行って帰ってくると、まるで自分の手じゃないみたいに…(笑) まして何年もブランクがあれば…

でも何事もそうでしょうが、10~15年やられてたことは身体が覚えているもの。ちょっとのリハビリですぐにもどりますよ!
でも、いきなりショパンの「革命」エチュードなんかを弾いたら左手が腱鞘炎になりますからご注意を!
まずはスローモーションで手首のポジション移動や指くぐりを丁寧に確かめるようにほぐしていけば、昔弾けていたレベルまではすぐに復活するでしょう。
私も今はピアノをソロできちんと人前で弾くのはご勘弁だけど、ソロ楽器の伴奏でそんなに難しくない曲なら、何ヶ月ぶりでもやっちゃいますね(笑)

あと、ベートーヴェンなどの交響曲をピアノで弾いてみるのも楽しいです。オーケストラの響きの全てをピアノでは再現できないけど、和声の進行や作曲のからくりがよく分かるし、曲を覚えるにも、スコアを見る・CDを聴くのに加えてピアノで音を追いかけてみるのはとても有効です。

またピアノはとかくピアノだけで自己完結してしまいがちな楽器だけど、いろんな楽器の音色を理解して再びピアノ曲に向かうと、たとえば簡単なソナチネあたりをリハビリを兼ねて弾いてみても、左手にメロディが移ったろこで「あ、もしオーケストラだったらここはチェロが朗々と弾くんだろうな…」といったイメージが浮かんできます。

またピアノ一人だと、独りよがりでテンポを揺らし、指の都合でRubertがかかってしまうこともあるけど、何かの楽器の伴奏をすると、相手のメロディーの流れにつけたり、音楽全体の流れとして流れるところ・よどむところ、といったメリハリがつくようになってきます。
ピアノだけを“勉強”していた時よりも音楽が好きになるし、音に対するイメージも広がってくるような気がします。バッハの面白さをあらためて発見したのもごく最近のことです(カテゴリ「♪音、楽曲」参照)。

必ずしも人前で完璧に弾くことだけのピアノじゃなく、音楽と触れ合うための身近な“便利な道具”として、ピアノとは長くいいお付合いをしていきたいですね。

現代のベートーヴェン

現代のベートーヴェン(米TIME誌)佐村河内守の交響曲第一番《HIROSHIMA》81分が、ついに来月発売ですね。
死ぬほどまってました(汗

Re: 現代のベートーヴェン

ベト好きさん

佐村河内守さん:広島で被爆者の両親のもとに生まれ、幼少からお母様の手ほどきでピアノをはじめ、5歳にしてマリンバの曲を作曲…。17歳のとき目の奥に突然の激痛に襲われ、聴覚を失い、激しい耳鳴り(雑音)と闘いながら…。壮絶な音楽人生だと思います。去年の夏、山本晋也さんがご本人と会われた様子をTVで紹介してましたね。

私も中学時代に父の転勤で広島に住んだことがあり、多感な時に原爆資料館や原爆ドームを何度となく訪れました。佐村河内守の交響曲第一番《HIROSHIMA》交響曲第一番、発売されたら是非! 
貴重な情報ありがとうございました!
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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