駅の安全(1)

駅ホームの安全対策

視覚に障がいをもつ方がホームから転落する事故は後を絶ちません。その対策としてホームに安全柵(ホームドア)を設置しようという議論が首都圏を中心に活発になっています。

新幹線の品川駅、都営大江戸線や東京メトロ副都心線などの新しい地下鉄をはじめ、JR山手線でも目黒駅・恵比寿駅などではホームの端に安全柵が設けられ、列車が停車してドアを開けるのに合わせてホームの安全柵のドアも開くように整備が進んでいます。

ホームドア1

ただ、既にあるJR・私鉄などすべての路線の全ての駅に安全柵・ホームドアを設けることは決して容易ではありません。


莫大な予算がかかる

首都圏だけでも私鉄各線・メトロ・JRの全ての駅に安全柵を設けるには莫大な費用がかかります。でも「例えどんなにお金がかかっても人命には代えられない」という主張はあるでしょう。ただ問題は単にお金の問題だけではないのです(以下)。


様々な車両がやってくる駅ではドアの位置が一定ではない

新しくできる地下鉄、あるいはJRの新幹線や山手線のように、その路線を走る車両の種類が一定であればドアの位置も決まってますから、ホームドアの位置も必然的に決まります。

でも首都圏の私鉄各線は、東京メトロ・他の私鉄・JRなどと相互乗り入れをしている線も多くなり、同じ路線上を各社のさまざまな車両が走ることが多くなりました。

私がふだん利用している東急田園都市線も、渋谷からは東京メトロに乗り入れ、さらにその先では東武線へと直通運転しています。小田急もメトロ(千代田線)・JRと乗り入れています。ですから同じ駅に3つの鉄道会社の車両がやってくるのです。

通勤電車はたいてい1両の長さが22~3メートルで、片側に両開きドアが4箇所あるのが普通です。でもドアの位置やドアの幅は各鉄道会社の車両によって微妙に異なります。

ホームドア2

上の写真は東京メトロ・副都心線の渋谷駅ですが、ここは近い将来東急・東横線と直結することも想定してホームドアの幅がかなり広めにとってあるようです。

さらに鉄道会社によっては、1車両の片側に6か所もドアのある車両も
6ドア車両

両開きドアそれぞれに戸袋スペースが必要ですから、側面のほとんど全てがドアのためにあるようなもの。
ドア付近にどうしても人が固まってしまうため、こんな車両まで作らなくてはいけない世の中…!?

このようにさまざま車両がやってくる路線の駅では、ホームドアの設置はとても難しくなります。


ホームの幅の問題

今ある駅の中にはもともとホームの幅が非常に狭いところもあります。
鉄道用地の問題や線路の敷設の問題も絡むので、ホームの幅だけを短期間に広げられるものではありません。

またホーム全体ではとくに問題ない幅があっても、階段付近ではホームの幅が非常に狭くなっている駅も数多く見受けられます。

ホームの幅

もしそのような駅に安全柵・ホームドアを設けたらさらにホームが狭くなり、ラッシュ時や電車が遅れた時などはさらに人が溢れて身動きが取れなくなり、別の意味でかえって危険が増します。


点字ブロック

全ての駅に安全柵・ホームドアを設置することが難しいとすれば、せめて、黄色い点字ブロックだけでも全ての駅に完備する必要性を感じます。もしブロックの一部がはがれていたり点字(突起)部分が擦り減っているような所は早急に点検・補修することが求められるでしょう。

点字ブロックを目にするようになってからだいぶ年月が経ちます。当初はブツブツの突起のついたものがほとんどでしたが、最近はライン状のものとブツブツの突起のものとの2種類が使い分けられているのをご存じでしょうか?

点字ブロック1
点字ブロック2

ライン状のものは「この上に沿って歩いて下さい」と導線を示すもの、ブツブツ突起状のものは「曲がり角ですよ、ここから先は進めませんよ」といった一旦停止を意味しているのです。

ホームのアナウンスもひと昔前は「白線の内側にお下がりください」だったのが、最近はほとんどの駅で「黄色い線の内側に…」となっていますね。
あの「黄色い線」はブツブツの突起状のタイプ。つまり「ここから先はホーム先端ですから危険ですよ」という停止線が横に長く設置されているわけです。決してこの黄色いラインに沿って歩いて下さい、という意味ではありません。
あの“黄色い線”の上を歩いていてもしよろけたら、ホームから転落または列車に接触する危険があります。

本来はあの“黄色い線”とは別に、ホームの内側に誘導のためのラインがなくてはいけませんが、まだそこまでの整備もない駅も多いのです。

点字ブロック3

エレベータを降りてから電車に乗る位置までを親切に誘導している駅もありますが、改札を入ってからホームの内側のすべてに誘導の黄色いラインが完備されていない駅もまだまだ多いのが現状です。


モノによる対策の限界

私がここでぜひ提案したいのは、モノだけに頼った安全対策には限界がある、ということです。

もし白い杖をついた人がホームを歩いていたら、周りにいる人が進路を開けてあげる、ホーム先端に近づきそうになっていたらひと声をかけて誘導してあげる…ということは今すぐにもでもできる身近で有効なことではないでしょうか?

まだ記憶に新しいJR目白駅における転落事故も、池袋寄りの改札からホームに入ってきて、途中で駅事務所を避けながらかなり長い距離を歩いてきて、まっすぐに歩いているつもりが感覚が狂ったのか左に曲がってしまい、そのままホームから転落…だったようです。

そのとき周りには誰もいなかったのでしょうか…??
「そちらは危険ですよ」あるいは「どちら方向の電車に乗るんですか?」などとひと声かけて誘導してくれる人がいてくれたら…?


“ひと声かける”大切さ

視覚障がい者に限らずお年寄りでも車椅子の方でも、声をかけられて「助けてもらう」ことを嫌がる人もいるかもしれません。なんの手助けもなしに“ごく普通に”歩ける環境づくり・安全対策が必要だというご意見もあるでしょう。

でも圧倒的多数の方たちは、皆さんのちょっとした気配り、優しいひと声(決して憐れみや差別ではない!)が嬉しい、ありがたいとおっしゃいます。

むしろ、変な意味での誤解やおせっかいとなることを恐れて何もしない、気づきもしないことの方が問題です。

せっかく先ほどのようにエレベータから乗車口まで黄色い点字ブロックで誘導された駅でも、周りにもスペースはいくらでもあるのに、わざわざその点字ブロックの上やエレベータやエスカレーターを降りたすぐ前で固まっておしゃべりをしていて、白い杖をついた人が近づいて来ていても全く気付こうともしない…そんな光景をよく見かけます。

モノによる整備が進むことで人任せ的にすべて解決したかのように錯覚してしまい、「自分には関係ない」と関心も薄れてしまうようでは全く意味がありません。「シルバーシート(優先席)」が既にそうなってしまっているように…


点字ブロック3
*点字ブロックのすぐ脇に 15センチ近い段差が…!

サインの矛盾
*点字サインの後から建物を改修して入口が移動した…??

駅などの公共施設内だけではなく、世の中のあらゆる段差をすべてなくすことはまだまだ困難でしょうし、点字ブロックだけで全てを表示することも困難でしょう。
でも、周りの人たちのちょっとした目と思いやりさえあれば、どんなにお金をかけた対策にも勝ると私は思っています。

たとえば視覚障がい者には、どう接したらいいでしょうか?

バリアフリーに関するパンフレットも色々ありますから、事前に見て勉強しておくのももちろんいいでしょうが、「ハンディ」も「個性」も人それぞれ。

やはりまずは「大丈夫ですか?」とひと声かけ、相手に直接「どうしたらいいですか?」と尋ねることがいちばんの早道でしょう。

いきなり相手の手や白い杖をギュっと握るのではなく、まずひと声かけてこちらの居場所を声で示し、こちらの腕に捕まってもらうのがいいでしょう。
一般的には、相手が白い杖を持っているのとは反対側について、相手がこちらの腕を捕まりやすいように半歩ぐらい先を歩くのがいいようです。そして「まもなく上り(下り)階段ですよ」とか「10センチぐらいの段差がありますよ」などと声で伝えてあげるのもいいでしょう。

でも人によっては白い杖の感覚に神経を集中している時に余計な情報は厭がる人もいらっしゃいますし、階段の位置をしっかり把握されていたり小さな段差も杖の先でちゃんと認識されていることにむしろ驚くことも多いです。そういうことも理解しながら相手と接することができたら、より安全で快適な社会になっていくのではなでしょうか?


↓ 駅の安全(2)へつづく


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当事者の立場から…

こんばんは。 いつも私のブログへのご訪問ありがとうございます。
駅の現状や、音の聞こえ方について、とても詳しく書かれていて、当事者の私も、なるほどと新発見です。

転落事故の原因としては、駅の構造、音が聞こえにくい、聞き間違いというのもありますが、「急いでいる」「慣れた駅での気のゆるみや思い込み」というような、当事者の心情にも大きく関係しているように思います。
慣れた場所の方が、意外に危険は多いんですよね。

盲導犬ユーザーの立場としては、ホームを歩く時は、盲導犬が線路側を歩くよう訓練されているので、線路に落ちる危険性は低いです。 電車に乗る時も、盲導犬がドアを見つけてそこへ誘導し、ユーザーは足と手でしっかりドアを確認してから乗り込みます。
もし電車が来ていなかったら、ユーザーがいくら進めと命令しても、盲導犬は足をふんばって先へ進みません。
ここで、ユーザーの思い込みやあせりで、盲導犬より前に出てしまったり、無理やり引っ張ってしまったりすると線路に落ちてしまう可能性もあります。

私もホームでは細心の注意を払って行動するようにしています。
点字ブロックの内側を人が歩いている場合は大丈夫ですが、もし点字ブロックよりも外側に出てしまっているようでしたら声をかけていただけるとありがたいです。
電車に乗りこむ時は、一番神経を使う場面なので、そこで突然手やハーネスを引っ張るなどされるとバランスを崩してしまうこともありますので、あたたかく見守っていただければと思います。

あくまでも盲導犬ユーザーの立場として書かせていただきましたが、皆様のあたたかい声かけにはいつも助けられています。
長々と失礼いたしました。

♪鈴木 加奈子♪

Re: 当事者の立場から…

鈴木加奈子さん

ご丁寧なコメントありがとうございます。やはり鈴木さんのような当事者のお声をおきかせ頂けるととても参考になります。盲導犬についてはうっかりしたことは書けないと思ったので触れませんでしたが、電車が来てないときは「行け」と言っても足を踏ん張って動かない…本当にお利口さんですね!

乗りこむ瞬間は神経を集中されてるでしょうから、やみくもに手を引いたりせず「暖かく見守る=危険がありそうなら声をかける」ということが大切ですね。盲導犬に話しかけるなどは絶対にいけないんだということ、この記事をお読みになる方にもぜひ心得ておいていただけたらと思います。

★そう、このブログへのコメント投稿には「画像認証」(モヤモヤと曖昧に手書で書いたような4ケタの数字を半角で入力しないといけない)が必要なんですね!!そこは音声変換できないんですか??…気づかずに大変失礼しました。

せっかく素晴らしいコメントを書いてくださって、最後の最後で投稿できず、メールに同文を貼りつけてわざわざ送ってくださった鈴木加奈子さん、本当にありがとうございました。

モダンアートのようにゆがんだ4ケタの数字が出てきて、それをわざわざ入力させるのって、そもそも何のためなんでしょうね。怪しいイタズラ投稿を防ぐ目的には全くなっていなくて、善意の音声変換にも対応していないとは…!FC2に限らず、ブログのサービス元にもしっかり申し上げておいた方が良さそうですね!

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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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