駅の安全(2)

駅ホームの形状とそれぞれの安全面


鉄道の駅(ホーム)には、大きく3つの形状があります。

櫛 (くし)型ホーム

a.櫛型ホーム

終着のターミナル駅にあるスタイルです。
入って来る列車・出て行く列車の向きは常に決まっています。入って来る列車は先端が停止線のため最徐行で入ってきますから、比較的安全なように思われます。

ただ、この櫛型ホームでは、到着した列車からの降車側のホームと乗車側のホームがあり、仮に3つの線が入っているとすると自分の乗りたい列車への乗車ホームがどこなのかが視覚障がい者には分かりづらいのです。

発車番線は…? 

行き先・発車時刻・急行か各駅停車か・乗り場ホームは何番線か…といった情報は電光掲示板には随時表示されますが、それらをリアルタイムで点字ブロックに表示して誘導することは今のところできません。

もし白い杖をついた人が改札を入って迷っていそうだったら、ひと声かけたいところですね。


島式ホーム

b.島式ホーム

1面のホームの両側に、上・下線の列車がそれぞれ違う方向からやって来るスタイルです。

改札からホームまでたどり着ければ、ホームは1面です。自分の乗る電車はどちら側に入って来るかが前もって分かっていれば、どちら側に電車が来たかは音で判別もつきやすいでしょう。

ただ、同じホームの両側に電車が入って来るので、ホームを歩いているうちにもし方向感覚がずれると、どちら側にも転落または電車との接触の危険があります。

この島式ホームのなかには幅がとても狭い駅もあります。もともと限られた鉄道用地の中で上下線を少し膨らませて通し、その中間に島式ホームをなんとか設置した駅も。
JRの目白駅も、先端に行くほどホーム幅は狭く、途中の駅事務所を避けて歩行するうちに真っ直ぐ歩いているつもりが…ということで事故が起こりました。
また線路がカーブしているところに設けられた駅では、ホーム全体がバナナ形にカーブしていますから、真っ直ぐに歩いたら転落する危険もあります。またカーブのある駅では、ところどころ電車とホームの間が広く開いてしまうのも要注意です。

白い杖をついた人がちゃんと安全に歩いているかちょっと見て、もし危険がありそうだったらひと声かけるのが望ましいでしょう。


片側ホーム

c.片側ホーム

上下線それぞれの外側にホームがあり、反対方向のホームへは陸橋か地下道を通って移動するスタイルです。

自分のいるホームには同じ方向からの列車しか入って来ないので、割と安全なように思います。
しかし、つい数年前にもこの片側ホームの駅で連続して転落事故が発生しました。それも、ホームのどちらか先端寄りではなく、むしろホームのほぼ中間あたりで事故は多く発生しています。どうしてなのか…?

ちょっとテツな目で、私なりに検証してみました。


列車の音の聴こえ方

視覚障がいのある方がもっとも頼りにするのは、入って来る列車の“音”です。
反対方向のホームに電車が入ってきたのに「乗りたい電車が来た」と勘違いしてベンチから立ち上がってホーム先端へと歩いていき、ホームから転落。そこへこちら側の電車が入ってきて…というケースが多いのです。

片側ホームでは列車の音がどのように聴こえるのかが問題です。



列車の音というのは、ほとんどが床下から出ているといってよいでしょう。
レールのつなぎ目を刻む車輪の音も、電車のモーターも、それをコントロールする制御機・インバーター・抵抗器なども、ディーゼル車であればエンジンも、ブレーキの音も…“音源”はすべて床下にあります。

では、自分の乗るべきホームに入って来る列車の音と、反対方向に入って来る列車の音はどちらが大きく聴こえるでしょうか?

われわれも、連絡橋からホームに階段を上がる(または下る)時に、列車の音に反応してつい足が速まることがあります。でもホームに出てみると「なんだ、反対方向の列車か~」…という経験はありませんか?

そうなんです。自分のいるホームに入って来る列車の床下から発生する音は、ホームの断面によってブロックされるため案外静かなんです。

入線する列車

対向ホームに入線する列車 

むしろ、反対側のホームに入って来る列車は床下の機器類も台車もすべて見えていますね。つまり音もすべて“丸聞こえ”なんです。
皆さんもよかったら目をつぶって確かめてみてください。


右から左? 左から右? 
 案外分かりづらい列車の移動音


自動車やバイク、あるいは飛行機などは音源がはっきりしていて、どちらからどちらに移動していくかがステレオ効果ではっきり分かります。

それに対して列車の音はどうでしょう?
もっとも代表的な「タタン、タタン タタン…」とレールのつなぎ目を通過する車輪の音は、常に同じ場所(=レールの継ぎ目のある位置)から聴こえていますから、音源は左右に移動しません。

まわりが静かな場所ならば、遠くからやってくる列車の音、警笛、遠くのレールの継ぎ目を刻みながら近づいてくる音、さらにレールのきしみ音、レールに伝わってくるヒューンという金属音…etc, 
必ずしもテツっちゃんでなくても、どっちの方向から列車が近づいて来てるかは分かるでしょう。

でもラッシュで混み合う駅の雑踏の中では、遠くからやって来る列車の音はほとんど聴こえません。
突然駅に入ってきた列車の「タタン、タタンタタン…」という音だけでは、その列車がどっちからどっちに移動しているのかは案外分かりづらいのです。

列車の床下からブーンと唸る機械音がするのはモーター車で、3両に1両ぐらいの割合でしかありません。ほかに“移動する音源”としては、パンタグラフが架線をこするシャーっという音がありますが、最近は抵抗の少ない静かなパンタグラフも多いのです。
 
新しいパンタグラフ

まして人の雑踏の多いホーム中間あたりでは、それらの“移動する音源”は案外聴き取りづらいことがお分かりいただけるでしょう。

入線してくる列車の音は、ホームのどの辺りにいるかによっても変わります。

d.片側H拡大

日本はイギリス式に左側通行ですから、入線してくるホーム先端(=①の位置)では列車のスピードはまだ速く(時速60キロぐらい)、方向性もはっきりわかります。
逆にホームの反対側の先端(=②の位置)では、ほとんど止まりかけの先頭車両が最後にかけるブレーキ音ぐらいしか聴こえないはずです。

さて、問題のホームのほぼ中間付近(=③)ではどうでしょうか…?

私も試しに片側ホームの中ほどにあるベンチに座って、しばし目をつぶって上下線に入ってくる列車の音を聴いてみたことがあります。皆さんも電車を待っている間にぜひやってみてください。

ホームのほぼ中間付近では、自分のホームに入って来る列車も反対方向に入って来る列車も、減速途中にあってほぼ同じスピード、音としても非常によく似た音です。

しかも先ほど書いたように、「タタン、タタンタタン…」とレールの継ぎ目を車輪が通過する音やブレーキ音などは、自分のホームに入って来る列車の音以上に反対方向に入って来る列車の音の方が大きく聴こえるのです。

視覚障がい者が「あ、自分が乗りたい列車が来た!」と勘違いして思わずベンチから立ち上がって歩きだしてしまうのは、おそらくこのような状況の時だろうと思われます。

もしこのようなタイミングでホームの縁に向かって歩き出そうとしている方を見かけたら「どちら行きの電車に乗られますか?」「まだこちらには電車は来てませんよ」などとひと声かけてあげて下さい。


万一のために覚えておこう!

最後に、もし万一誰かがホームから転落してしまったら、慌てて線路に飛び降りて助けようなどと思わないで、まずは緊急停止スイッチを押してください。

通勤・通学でふだん使っている駅なら、どこに非常停止ボタンがあるかを確かめておくと良いでしょう。

そしてこのマークを覚えておいてください。これはJRですが、このマークのすぐ近くの柱に緊急停止ボタンはあります。


非常停止ボタン1

非常停止ボタン2 

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音だけでは分からない

私の利用する駅は、改札が地下にあって、そこから2つの島形ホームに上がっていきます。つまり4番線まであるのですが、あがっていく階段のところで電車が入ってくると、階段の壁に反響して、どちら側の電車が来たのか、分かりません(さすがに隣のホームの遠い側の電車は分かりますが・・・)。
でも、駅も少し工夫しているらしく、上りの電車は男性の声の、下りの電車は女性の声のアナウンスになっています。

視覚障がいで、駅を利用する人のホーム転落の率は、ものすごく高い、と聞いたことがあります。そこにたまたま電車が来なかった、という運に左右されることなく、安全に駅が利用できるように、と思います。

それに、電車に乗るときには、ドアの位置を白杖で確かめますが、電車と電車の間をドアと勘違いして、転落してしまうことも多いそうです。

私の利用駅は、早朝から遅くまで利用者が多いので、誰かが必ず見ていて、危なそうなときは、声をかけますが、人が少ない駅の場合は、怖いですよね。ホームドアは、全駅でつけて欲しいです。

Re: 音だけでは分からない

ト音記号先生

いつもながら早速のコメントありがとうございます。記事をアップしてすぐにコメントをいただけるととても心強く嬉しいですね。

たしかに全ての駅にホームドアが設置できれば安心ですが、ひとつ上の記事に揚げたように、ドア位置の異なる複数の車両がやってくる駅、ホームの幅が狭い駅などでは、設置が難しいケースも…

一方、点字ブロックをはじめあらゆる対策をしても、すべての案内・サインが完璧になるとは限りません。サインの矛盾がどうしても生じたり、表示しきれない情報も…

例えば地方などで人の少ない駅では、スペースもたっぷり設けて設備面で万全の対策をとることが望ましいでしょうが、都会では諸条件が複合しやすく限界もあります。その代わりに完全に“無人”になる時間帯は少ないはず。やはりその場に居合わせた人たちのほんのちょっとした配慮・ひと声がどんなに大切か、ということを私は痛感するのです。「モノだけの対策よりも人の心が勝る」と信じたいです。
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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