ある日の江ノ電

平日にふと時間ができた時、ふらりと出掛けるのにちょうどいい距離にあるのが鎌倉~江の島近辺。学生時代から小さな放浪癖を刺激するのが江ノ電だ。

この日は、小田急で片瀬江の島に出て、そこから江ノ電で鎌倉方面の電車に乗る。

江の島 駅
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駅を出ると急カーブで路上に出る。
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車の走る道路と同じ面にレールが埋め込まれた「併用軌道」をしばらく走る。この辺りの風景から江ノ電を“路面電車”と呼ぶ方がいるかもしれないが、その話は後ほど…


腰越 駅
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併用軌道区間を抜けると腰越駅。単線運転の列車待ち合わせのできない、片側ホームの駅(停車場)だ。

この腰越駅を出てすぐ、電車に乗っていると一瞬で見過ごしてしまうが、踏切のすぐ脇が石段になっていて、その上に山門のあるお寺がある。鎌倉時代のある有名なエピソードの残る、満福寺というお寺である。
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小道の先に石段と山門が見えてきた。「踏切あり」の看板があるが踏切はどこに…?

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住宅街の中の“生活道路”のようなところに電車がお邪魔してる、という感じ。線路わきの細いブロック通路は、保線区の鉄道員しか通ってはいけないように思うが、この先の住民が買い物かごをもって通るのだ。

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目の前に電車が迫る!


満福寺

源義経・弁慶の一行が兄・頼朝から鎌倉に入ることを許してもらえず、しばしここにとどまり有名な「腰越状」を書いたのがここ、満福寺である。
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★満福寺の中の様子は、2011年7月に娘と訪れた記事で紹介してます。


稲村ケ崎 駅

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構内への侵入は、ポイントが進行方向 に向かって開いている。このポイントはスプリング式で、常にこちら方向に開いている。
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こちらの出発信号は赤。対向列車がやってくるのを待つ。

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対向列車がやって来た。向こうからの侵入口にもスプリング式のポイントがあり、進行方向左側へと誘導されて駅に入って来る。
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このように単線運転では走行区間での「すれ違い」ができないため、駅で対向列車を待ち合わせてから出発する。

ところで、列車が待ち合わせすることを「列車交換」というが、車両を取り換えるわけでもないのになぜ「交換」って言うのか?

タブレット交換から

複線になっている駅から次にすれ違いのできる駅までの区間のことを、専門用語になるが「閉塞(へいそく)区間」という。閉ざされた区間。ひとつの列車しか入ってはいけない区間。言いかえるとひとつの列車が一定の時間独占していられる区間、である。

そこへ入るための“通行手形”の役目をするのが「タブレット」。
大きな輪っかを走ってくる列車から駅員へ、駅員から運転手へと手渡す風景が昔はあちこちで見られた。あの大きな輪っかの一か所にポケットのような所があって、金属製のキイが入っていて、それを駅の機械に差し込むと、次の駅までの信号などがかわり、閉塞区間を走って良い状態となる。

閉塞区間を走ってきた対向列車から駅員がタブレットを受け取り、これからその閉塞区間に入っていくこちらの列車にタブレットを渡す。またこちらが走ってきた区間のタブレットも同様に対向列車に渡す。その「タブレット交換」から、「列車交換」という言葉が生まれたのだ。

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(上)転鐡手(てんてつしゅ)によるポイントの切り替え
(下)タブレットを手渡す
「懐かしの国鉄現場」(鉄道ジャーナル社 1999年7月号別冊)より



さて出発!
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向こうから来る列車を進行方向左へ導くように開いているポイントに、こちら反対側の分岐線から侵入したら、模型の常識では「脱線」する!

しかしこれは先ほどから書いている通り「スプリング式」。列車の重みでポイントの可動部分(=ノーズという)を押し広げて通っていく。列車が通過した後、スプリング(油圧)の力で元の位置にガシャンと戻るのである。人がわざわざ切り替えなくても、常に侵入してくる列車を決まった方向に導く側(=定位という)に開いている。

ポイントの定位と反位

ポイントは、適当にどっちかに開いておいて、列車を“こっち”に誘導したい時に“こっち”に切り替える…というのは「ぷらレール」の世界では許される。

しかし実際のポイントは、設置する時に「常に開いておくのはどっち向きか」が決められている。常に開けておく方を「定位(ていい)」といい、臨時に一時的に開く方向を「反位(はんい)」という。一般に安全第一の考えに基づいてどちらを定位とするかが決められるが、ポイントの設置される場所・状況によって様々なのでここでは省略する。

いまそのポイントがどちらに開いているかを示すもの(信号・標識など)は色々あるが、ポイント専用の標識としてこんな矢羽根式のものがある。これは模型屋さんの入り口にあるものだが…
模型屋入口2
列車の運転席(=線路の延長側)からランプの色と矢羽根がどう見えるか?
上のランプが青で、青に白の横線の丸い面が見えている状態が「定位」を表す。
ポイントを切り替えるとこの標識が90度回転し、ランプが赤・オレンジの矢羽根が運転席から見える状態だと「反位」である。

江ノ電のようなスプリング式ポイントの場合、「定位」を示す青い丸い板に「S」(=スプリングのS)の字が書いてある。
矢羽根ポイント 峰が原信号所にて



極楽寺 駅
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ここも列車交換(待合せ)のできない片側ホームの駅(停車場)。

駅を出発してすぐに入るトンネルには情緒がある。
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トンネルの先は急カーブ。×印の点滅は、「この先に踏切があって、警報機・遮断機が正しく作動してます」の意味。

さて、極楽寺駅でもちょっと下車。古いポストがよく似合う。
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極楽寺は、かつては広大な敷地に伽藍(がらん)が配置されていたという。今は茅葺(かやぶき)屋根の門を入ってまっすぐ伸びる小道の先に本堂がたたずむ静かな寺。
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見事なサルスベリの木。樹齢はどのぐらいだろう?「百日紅」と書くだけあって、夏の間はずっと赤い花を見事に咲かせていたことだろう。
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腰越駅へ戻る途中の海岸線
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これで「こゆるぎ」と読むのだ。「揺るぎなく」の「ゆるぎ」だろうか…

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この日は大型の低気圧が北日本を通過した影響で、1日中南からの風が冷たく吹き込んでいた。湘南の海岸というより、冬の日本海だった。

にもかかわらず、波の中にサーファーの姿が…
波拡大


◆江ノ電の待合わせポイント

沿線ガイド

といっても、恋人との待合わせポイントのお話しではなく、列車同士の待合わせのお話し。

江ノ電は藤沢を起点として終点鎌倉まで15の駅がある。
そのうち、列車交換(待合わせ)のできる駅は、鵠沼・江の島・稲村ケ崎・長谷の4か所。

そのほかに、駅ではないが上り・下りの列車が待合わせのために一時停止するところがある。
本記事にも1枚写真を載せたが、鎌倉高校前駅と七里ガ浜駅との中間にある「峰が原信号所」だ(藤沢~鎌倉 全線のほぼ中間に位置する)。このように駅ではないのに上・下線の列車交換(待合わせ)をする場所を「信号所」と呼ぶ。

江ノ電には4つの駅と1つの信号所を合わせて、中間に5つの待合わせポイントがあり、その間の区間がそれぞれ閉塞区間(=1列車がいる限り他の列車は入ってはいけない区間)となる。

終点の駅で単線で折り返す場合(鎌倉駅も朝夕のラッシュ時以外は1車線しか使用しない)、閉塞はその終点の駅よりひとつ手前の待合わせ可能な駅から終点駅までの往復路(=長谷駅から終点鎌倉に行った電車が折り返して再び長谷駅に戻ってくるまで)が1区間となる。



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タブレット交換

わっかを交換するのは見たことがあるのですが
あんなに大きいのはなぜ?と思っていました
今日、疑問が少し解消しました

「こゆるぎ」で、昔、友達と神奈川県の駅弁で
「こゆるぎ弁当」と「しゅうまい弁当」のどちらがおいしいか
で、論争したことを思い出しました
友達が「こゆるぎ」のご飯がおいしい
私が「しゅうまい」のたけのこの煮つけがおいしい
と言い合いました
おいしい駅弁は、すごい数ありますが、今でも、この2つは健在です

Re: タブレット交換

ト音記号先生

「こゆるぎ弁当」は知りませんでした。この写真を撮った日、ちょうどこの小動あたりで波の写真を撮っていたら急にお腹がすいて来て、満福寺から海岸通りに出たあたりにある蕎麦屋さんも臨時休業していて…
その「こゆるぎ弁当」はどこで売ってるんでしょうか?今度ぜひトライしてみます!

タブレットについて疑問が解けたのは「少し」だけですか…?古い「懐かしい国鉄現場」からスキャンした画像に映っている輪っかの、駅員さんが持っている手のあたりがポケットになっていて、そこにタブレット(金属板のキイ)が入っているんです。

必要なのはそのキイだけなんですが、あんな大きな輪っかになっているのは、駅を通過していく列車から駅員の腕にかけることもあるため。駅員ではなくホームからニュルニュルっと伸びた(蚊取り線香を伸ばしたような)針がね状のものがホーム先端に立っているのを見たことありませんか?
「タブレットキャッチャー」と呼ばれるものです。北海道など単線運転の多い線区では、機関車やディーゼルカーの運転席脇にもS字に曲がったタブレットキャッチャーがありました。昔の鉄道は、貨車の組み換え作業など、けっこう危険を伴う仕事がいっぱいあったんだな~と思いますね。

江ノ電♪

鎌倉に行ったことはあるもの江ノ電や江ノ島まで足を伸ばしたことはありませんでした。

住宅街の中を電車が走る光景、こんなにも生活に密着したものだったとは…!!でもどことなく風情がありますね♪

Re: 江ノ電♪

こんど鎌倉方面に足を延ばされる時には、どうか江ノ電にも乗ってあげて下さいね!横須賀線の鎌倉駅と隣接してますから乗り換えも楽です。
仙台では、仙石線や仙山線などもいいですよね。山寺の立石寺方面、もう秋の紅葉も見ごろを過ぎてしまったでしょうか??東京から日帰りでも行こうと思えば行けるんですけどね、どうしても100キロを超える切符を買うと日帰りがもったいない気がしてしまって…(笑)
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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