蒸気機関車の車輪配置

オネゲルという作曲家が作曲した「パシフィック231」という管弦楽曲がある。
機関車が動き出してから停止するまでをまとめた6分少々の曲だ。

曲に関して詳しくはカテゴリ「★♪音、♪楽曲」の中にある「パシフィック231」という記事をご参照いただきたい。→ http://resolutely.blog6.fc2.com/blog-entry-151.html

パシフィック231

でも「パシフィック」って何?「231」って何?、列車番号?…など、音楽に詳しい方でも機関車については必ずしも詳しくない方もいらっしゃるようだ。
「231」は「に・さん・いち」で、決して「にひゃくさんじゅういち」とは読まないでいただきたい。

それは、フランス式の呼び方で、先輪が・動輪が・従輪がという、機関車の車輪配置。
日本(国鉄)式には「2C1」と表示される。この動輪配置の機関車を「パシフィック」という。

動輪配置と名称
「蒸気機関車のメカニズム図鑑」(グランプリ出版)より



◆日本のパシフィック C54

C54.jpg

こちらはC54という形式。動輪配置はご覧のとおり2C1、「パシフィック」だ。

2軸の先台車は、カーブにさしかかる時に機関車のフレームをカーブの方向に誘導してくれる働きをもち、機関車の全重量をかけた大きな動輪がいきなりカーブレールの外側にぶつかっていく衝撃を和らげてくれる働きがある。電気機関車でもそうだが、先台車が1輪のものは主に貨物用、2輪のものは客車用である。

このC54という機関車、“悲運のパシフィック”とも呼ばれている。それは試作機のような位置づけで昭和6年末~翌昭和7年春までにわずか17両が製造されただけで終わり、山陰線・福知山線でひっそりと地味な人生を送った。

どうも日本の機関車には「54」という数字にジンクスがあるようで、電気機関車のED54はわずか2両で、ディーゼル機関車のDD54は40両製造されたものの点検・整備に苦労をきたし、わずか12年で廃車となった。

しかしこのC54は、その機能美と性能を次のC55という優れた機関車へ、さらに(C56とC58を飛ばして…)C57、C59へと引き継ぐ基礎となった。

ことにC57は“貴婦人”などとも呼ばれるほど美しいフォームで、今日もなお新潟~会津若松を走る「ばんえつ物語号」(C57180 新津小学校の校庭にずっと静態保存されていたものを復活させた)や、山口県の小郡~津和野を走る「やまぐち号」(C571 最初に製造された1号機で、所属は京都の梅小路)で活躍し、大人から子供まで人気がある。

IMG_20110411023342.jpg C57
「ばんえつ物語号」を牽引するC57 180 「蒸気機関車完全名鑑」(廣済堂出版)より



2・3・1(パシフィック)以外の動輪配置の機関車たち

◆日本の蒸気の代名詞 D51(デゴイチ)


D51.jpg

蒸気機関車の代名詞にもなっている“デゴイチ”。動輪はDだから4つ。
先台車1、従台車1で1D1。この配置は「ミカド」と呼ばれている。

D51は戦前から戦後にかけて合計1160両以上が製造され、日本全国で活躍した貨物用の機関車である。
この模型は“標準型”だが、煙突とドームが一体となった半流線型(通称“ナメクジ”)や、“戦時型”とよばれる一部木造の部品を多用したタイプ、さらに北海道などの寒冷地仕様になったものなど様々なタイプがある。

D51標準型D51標準型

戦時型の製造番号が一部で重複していたり、後期の何両かは客車用のC61に改造されたりして、製造番号と実際に最後まで存在した量数とは微妙に食い違うが、いずれにしても製造番号が4ケタにまで達した機関車はこのデゴイチだけ。日本の蒸気機関車のベストセラーとも言える。


◆デゴイチの弟分? C58

C58.jpg

さきほど、C54の流れを引いた機関車の中で「C56とC58を飛ばして」と書いたが、このC58という機関車の動輪配置は1C1、「プレーリー」と呼ばれるもの。

国鉄の中でもカーブの多い区間にも対応でき、客車にも貨車にも広く使用されるように設計された機関車だ。
後ろに写っているD51(デゴイチ)が1D1で、こちらは1C1。ヘッドライトと煙突の間に小さな筒(=給水温め器)を担いでいる風貌もD51とよく似ている。

ボイラー(=蒸気機関車のボディとも言える丸い筒)が一回り細身な分、長さも少し短く、全体のバランスも均等がとれていて、まさにD51の弟分のようなイメージだ。

ただよく見ていただくと3つの動輪が等間隔ではなく、第2・第3動輪の間隔と比べて第1動輪がほんの少し前に離れているのがお分かりだろうか? ロッド(連接棒)などの部品もこのC58だけは特殊なものとなる。


C11とC56

C56とC11

タンク式 C11
C11.jpg

C11は、運転席前のボイラー脇に大きな四角い箱をつけている。これは水を入れておくタンクである。蒸気機関車は石炭1に対して水が5以上必要なのだ。
大きな蒸気機関車では、後ろに炭水車(テンダー)という車両を従えている。石炭は上に見えているが、下の半分以上は水である。

炭水車炭水車
「蒸気機関車メカニズム図鑑」(グランプリ出版)より

しかしC11にはテンダーはなく、運転席の後ろにつけ足したような石炭入れがあり、その両脇と運転席の前に水タンクを抱えている、タンク式機関車である。
車輪配置は1C2、ちょっと長い名前で「6カップルド ダブルエンダー」という。「6」とは動輪が左右で合計6というアメリカ式の数え方である。

C11の後に生まれたのが、C12という機関車。私のコレクションにないので、実物写真にて…
真岡鉄道のC12
C12(真岡鉄道)


◆“高原のポニー”C56

C56.jpg
上のC12をテンダ―機関車に改造したのがこのC56という機関車である。

タンク式機関車の生まれ変わりだけあって、テンダ―式機関車としては小型で、後ろも見やすく使い勝手もよかったそうだ。車輪の配置は1Cで「モーガル」という。

映画「父ちゃんのポーが聞こえる」(1970年?小林桂樹、吉沢京子出演)の舞台ともなった小海線で活躍し、「高原のポニー」という愛称で親しまれた。
細かいことを言うと、小海線で活躍したC56は運転室の屋根がもっと後ろまで伸び、石炭の取り口付近が雨に濡れないように改造されている。

このC56は太平洋戦時中には南方にも出かけて行った。映画「戦場にかける橋」(♪「クワイ川マーチ」でも有名!)の舞台ともなったクワイ川鉄橋を走った機関車である。
その機関車が帰国して現在 靖国神社に展示されている。煙突脇のボイラー左右に立つ除煙板(=デフレクター…下の囲み参照)がなかったり、連結器がひっかけ式だったりと、日本型とは違う表情をしているが、よく見るとたしかにC56である。

除煙板=デフレクター

走る時にボイラー前面に受ける風をこの板ではね返すことで、煙突から出る煙を上に飛ばす役割をもつ。
小型の機関車ではあまり問題ないが、ボイラーが太くなりスピードも出るようになった大きな機関車では前面に当たる空気の流れは深刻で、いったんボイラー外に飛ばされた空気が、空気の薄くなったボイラー周りにまとわりつくような流れが起こる。
この空気の流れに乗って煙がボイラーにまとわりつき運転席を直撃することになる。
徐煙板1
「蒸気機関車メカニズム図鑑」(グランプリ出版)より

大型の蒸気機関車ではボイラー左右に、板の前から2/3の位置に煙突が来るように除煙板(デフレクター)が立っている。デフレクター、略して「デフ」などとも呼ぶ。




最後の客車用、最大の蒸気 C62

C62.jpg


これが国鉄で最後の特急用の蒸気機関車となったC62である。ボイラーがとても太くなり、煙突やドーム(砂箱と蒸気溜め)がとても薄い。「つばめ」などの特急列車をけん引し、東海道線・山陽線などの表舞台で活躍した花形の機関車だ。車輪配置は2C2、「ハドソン」と呼ばれる。

木曽川の鉄橋で試験運転中に、時速129キロという蒸気機関車としての最速記録を出したのもこのC62だった。
国鉄の蒸気機関車としてもっとも大きなボイラーを持つ機関車で、これを貨物用に流用して動輪4つに改造したのがD62という機関車である。

晩年は左右の除煙板にツバメのメタル飾りの残る2号機と3号機が、北海道・函館本線で急行「ニセコ」をけん引。また瀬戸内海に沿ってのどかに走る呉線(広島県)で余生を送った何両かもいた。

現代の子どもたちには「銀河鉄道999」の機関車として親しまれ、今日も国民的に愛されている機関車だ。

心のどこかに、いつまでも蒸気機関車は生きていて欲しいと願うところだ。

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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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