「こすりつける」と「なすりつける」、「はっきり」と「くっきり」

言葉の微妙なニュアンス

6月28日(水)


ある留学生との会話で、「人に責任をこすりつける」という表現が出たので、私は「いやいや、それは『こすりつける』じゃなくて『なすりつける』でしょ」と突っ込みました。

脇で聞いていたらジョークのような会話ですよね(笑)

そのアジアからの留学生はよく日本語を勉強されていて漢字もちゃんと読め、「擦る」は「こする」とも「なする」とも読むことを知っていて、その2つはどう違うのかと尋ねてきました。
さて、皆さんならどう答えますか?


「擦る」…する、こする、なする

「擦る」は「する」「こする」「なする」と3通りに読めます。
問題はその使われ方・ニュアンスの違いです。

「する」は、猫が「すり寄る」に代表されるように、身体が触れるほどに近づくこと、ひいては意見を同じくして相手に寄り添う、という意味で使われます。必ずしも物理的に接触するかどうかはあまり問題ではないようです。

それに対して「こすりつける」「なすりつける」はどちらも物理的な接触を伴う言葉です。
そしてただ接触するだけでなく、こちらに付着していたものを向こう側に移す、そんな意味合いを含んでいます。

まず「なすりつける」は…
手についた汚いもの(割と簡単に取れるもの)をそこら辺の壁などにぺたっとやるイメージ。転じて、本来自分が責任をもってやるべきこと(=自分に帰属すること)を人に押し付ける…
「安易に」「軽い気持ちで」「無責任に」…そんなニュアンスが「なすりつける」ではないでしょうか?

それに対して「こすりつける」は…
もう少ししっかりついてしまった汚れをコンクリートの壁などにしっかりと、なんども念入りに、強い意思をもって…そんなニュアンスがあるようです。
犬が嫌な臭いを嗅いでしまったときに、布団やソファーの上を転げまわって身体中を「こすりつけ」てますね。まさにあのイメージではないでしょうか?

日本語は、ちょっとしたニュアンスの違いで言葉を使い分けていますから、なかなか難しい言語だと思います。
さて、自分の犯した重大な過ちを、きわめて悪質に計画的にしっかりと秘書のせいにする…これは「なすりつける」or「こすりつける」どちらでしょうね…?


◆「はっきり」と「くっきり」

以前、やはり日本に来て熱心に勉強している留学生から「はっきり」と「くっきり」はどう違うんですか、と尋ねられたことがあります。

「はっきり」も「くっきり」も英語では「clearly」です。

でも「あなたの話は『くっきり』と分かります」「この際『くっきり』言わせてもらいますけど」…などとは言いませんね。

「くっきり」が用いられるのは、「夕陽が西の空に沈んで、山の稜線が『くっきり』浮かび上がった」とか、「腕時計をはずしたら日焼けの後が『くっきり』ついていた」など、視覚的な場面で用いられる表現ですね。

日本語って、微妙なニュアンスの違いで表現を使い分けている、とても豊かな言語だと思います。だから外国からやってきて日本語を学ぶのは、われわれが英語を学ぶ以上に難しいのではないかと思います。

日本人はふだんそれらの違いを理論的に考えることなく、ごく自然に無意識のうちに使い分けている、とっても感性の豊かな民族なんだと思います。

言葉が乱れている、言葉を知らない若者が増えている…そんな声も聞かれる昨今ですが、日本語のもつ豊かな感性は大切にしたいですね。

「君の話、くっきりとよく分かるよ」とか「人に責任をこすりつけるなよ」などがジョークとして使えて、笑えれば大丈夫でしょう!

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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

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