「思い込み」と「印象操作」

6月21日(水)

あまりこの話題ばかりいつまでも書くのは本意ではないのですが…
参議院も通過されてしまった「テロ等準備罪=共謀罪あらため」。

私も35年も前とはいえ、いちおう法律(とくに刑法)を学んだ者として、まだ実行に着手もしていない行為、犯罪の構成要件を満たしていない行為を捜査対象とできてしまうような法案は、これまでの日本の法律体系とは大きく流れを異にするものです。

もし「予防」と言う意味で、これまでの法体系を大幅に変えてでもこうした法案が必要だとするなら、もっともっと国民をも巻き込んだ議論が十分になされ、野党も国民も理解できるまで議論を深める必要があると思います。

しかし国会では、そうした議論が十分になされたとは到底言える状況ではありません。なぜこんなに急いで、強引に通さなくてはならないのでしょうか?
また、そのような問題ある内容・決め方であるにも関わらず、法案成立に賛成できるのでしょうか?


◆目的と中味は?

一昨年の「集団的自衛権」を含む安保法制もそうでしたが、「国民の命と安全を守ることは重要」、はい、そこは誰も否定しません。

でもそれに対する「答え」が、なぜいきなり「集団的自衛権(=他国のために戦える国にすること)」だったのでしょうか?
自国の防衛を考えるなら、今の憲法でできる限りの自衛隊の活動範囲・発動や指揮系統といったことを先に議論したうえで、どうしてもそれでは足りない部分をどうするかを議論し…という審議もろくにせず、PKO活動の範囲を大きく拡大するような法案を、あのような混乱する国会で「数の力」で強引に押し切りました。

今回もまったく同じです。
「テロ等の凶悪犯罪を未然に防ぐため」という目的はごもっとも。世界の各地でも凶悪なテロは多発しており、日本も「国際基準で対策を考えるのは大切なこと」だと。

しかし、それに対する「答え」がこの法案なのでしょうか?
その中身は…?、「テロ等準備」の定義は…?、犯罪組織かどうかの見極めは…?

277もの行為を列挙し、捜査機関および政府が「怪しい」と睨めばそれこそ「山菜やタケノコを採ること」も「花見に双眼鏡や地図を持参していること」も「テロ等の準備」とみなされてしまう可能性も否定できない法律。

まだ実行に着手もしていない者をどうやって「立件」するのか? 憲法で保障されている基本的人権の著しい侵害となるのではないか?

またこれに類する「事前の準備」をもっと厳密に定めた法律をもつ諸外国でもテロは実際に起きています。こんな法案でテロの防止に有効に役立つとも思えません。

この法案成立に「賛成」している人は、この辺りをどうとらえているんでしょうか?

警察権限が無限に拡大しないよう運用規定をしっかり整備すればよいと言いますが、その具体的な方法や中味が国会で示されて議論されたのでしょうか?

賛成論者にそのあたりを何度となく問いかけてきましたが、いまだ誰からもきちんとした答えを頂けていません。


◆「知らないのに賛成」 or 「知らないから賛成」?

どんなことにも賛成・反対はあってよいと思います。ただし、なんらかの明確な理由があるならばです。

少くとも反対している人たちは、街頭でプラカードを持っている20代の女子大生でも主婦でも、この法案のもつ意味・問題点をちゃんと理解し、それをろくに議論もしないで、こんな強引に通されようとしていることに対して「とんでもない」と反対してるのです。明確な反対理由があるんです。

それに対して賛成している人たちの多くは「テロを防ぐことは大切だから」という表向きの理由だけで賛成されていて、反対の人たちが訴えるようなさまざまな問題についてきちんと説明できない方が多いようです。

北海道の調査結果ですが、こんなデータを見つけました。

「テロ等準備罪について知っていますか?」という質問への答えと、「この法案に賛成ですか、反対ですか?」を聞いた結果を年代別に集計(単純集計の列記)したものです。


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各年代、上段の水色の帯が「知らない」と答えた人の割合、下段の赤い帯が「賛成」の割合です。
みごとに連動してるように見えませんか?

ただ、これだけだと2つの質問への回答を単純集計したものを並べただけなので、より厳密に相関関係を見るには「知っている」と答えた人のうち「賛成」が何%・「反対」が何%、あるいは「賛成」と答えた人のうち「知っている」割合と「知らない」割合、といったクロス集計を取ってみないと厳密な相関は分かりません。

でもまあこの単純集計を並べただけでも「各年齢とも、知らないと答える割合が高いほど賛成の割合が高い」という傾向は明らかに読み取れますね。

え?、中味を知らないで「賛成」? 

「理由なき反抗」っていうタイトルの映画があったかどうか知りませんが(笑)、「理由なき賛成」ってなんなんでしょうね?

たしかにニュースの街頭インタビューでも、賛成の人の声のほとんどは「テロ等の重大な犯罪を未然に防ぐことは大切だから」という声が賛成理由のほとんどでした。

むしろ、中身も問題点もわかってないから、単純に表向きの目的だけで「賛成」できるのかもしれません(←私の勝手な推測ですが)。


◆支持政党別の「賛成」の割合

中味をよく知らないから、表向きの「目的」だけで「いいんじゃないか」と思ってしまう…
情けない話ではありますが、まあ分からなくもありません。

しかしこちらはどうでしょう?

支持政党別に見た「賛成」の割合の差です。

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これはある意味とても不思議だと思いませんか?

どの政党を支持している人でも、テレビや新聞の報道、国会中継(今回あまり放送されなかったが)の様子などから得ている情報量そのものはあまり変わらないはずです。

与党の支持者といえども、必ずしも政権の中枢にいる人と懇意にしていて、法案の中味をしっかり説明されて熟知しているとも思えません。

なのに、支持政党によって賛成の割合になぜこうも差が出るのでしょう?

これは脳科学・人工知能を研究している人も不思議に思う、人間の脳の「思い込み」の働きによるものではないでしょうか?

自分の好きな人だから信用できる、信用したい、同じことをやっても許せる、悪いのはこの人じゃない…いわゆる「あばたもえくぼ」の心理です。
好きな政党が出してきた法案だから間違いない…、さらに先ほどの(表向きの)目的がごもっとも→「賛成」と。

この法案が、個人の自由や権利を脅かす「治安維持法の再来か?」と心配する声にもまったく耳を貸さず、「そんな事はあり得ない」と信じてるんですね。反対する人たちは倒閣目的だ、なんでもごちゃまぜにする、言いがかりだ…etc. と。



この法案が採決される数日前に、若い自民党議員がある駅前に立っていて、演説が一区切りついて通行人と握手したりしていたので、私はちょっと足をとめて「テロ等準備罪はなぜ必要なんですか?」「野党が指摘するような問題・危険性は?」と尋ねたんですが、はっきりとした答えは返ってきませんでした。
私も先を急いでいたので、それ以上突っ込んだ話はできませんでしたが、自民党議員(おそらく都議会選)でさえこの法案についてしっかり説明できないんだということがよくわかりました。

まあ、自民党の国会議員は、政府案に賛成しないと「造反者」とされてしまうので、たとえ中味をよく判っていなくても、場合によっては疑問を感じていても「賛成」に回らざるを得ないのはある意味「しかたない」かもしれません(←本当は、どの党から立候補しようがどこに所属してようが、賛否の議決権は議員ひとりひとりの判断であるべきなんですが)。

しかし自民党を良しとする人たち(一般の有権者)は、なぜ内容もよくわからないまま簡単に「賛成」となるんでしょうか?
そして、反対したり質問で突っ込む野党は“くず”で、野党がくだらない質問をするから審議が妨害されてる、などとよく言えるものだな、と。

まあ、その程度の論理性しかないとすれば、ごく基本的な法律の骨格部分について問うても、反対の人が納得できるような「答え(説明)」ができるはずありません。
だいたい法案を出してる政府閣僚、法務大臣でさえきちんと明確に説明できない法案なんですから…



上の支持政党別の法案への賛成のグラフで、いずれの政党支持層とも、時間がたつと前よりも賛成が減っているんです! つまり国会で審議したことで、理解が深まって賛成が増えたのではなく、逆に与野党の支持層いずれも賛成が減っているんですね。これは何を意味するのでしょうか?
知れば知るほど理解・賛成できない法案だということではないでしょうか。


◆購読紙別の内閣支持率

さてこちらは感覚的にも想像できるところですが、購読している新聞ごとに、内閣支持率がこんなにも違うんだな、ということをあらためて。

購読紙別内閣支持率

★この6月17・18両日に東京都内で実施された調査結果をJX通信社がまとめたもので、母数など詳細は不明。

とくに産経新聞と東京新聞とは極端で、産経新聞の読者では「支持しない」が5%であるのに対し、東京新聞の読者では「支持する」が5%、真逆です! ここまで差があるということです。


見え方の違い

前から何度となく出してきた「ルビンの杯」という心理学でよく用いられる図です。

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中央の黒い部分を「柱・杯」などの造形と見れば左右の白い部分は「背景」ですが、両側の白い部分を「横顔」が向き合っていると見れば真ん中の黒い部分は「背景」に変わります。

描かれている面・輪郭線はまったく同じなのに、まったく違う見方ができて、どっちで認識するかによって見え方が違う…それは何事にもよくあることです。ですから、見解の違いはいろいろあって良いわけですが…


論理をすり替えないで!

社会・政治的な話題をどういう立場でどっち寄りに見るかによって、見え方がまったく違うものになることは改めて驚くまでもありません。

ただ、見方・立場は違っても罵倒言葉や論理のすり替え はやめましょう!
言葉は、国語辞典に出ている、一般の人がごく一般に使う意味で使いましょう。

そして「数の力」にものを言わせないでいただきたい。今の政権の問題・おかしさは明らかに存在するのです。それに対してきちんと答えず、他者批判にすり替えないでいただきたい

それは議論の土台を崩すことになります。

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参議院も閉会して週を明けた19日(月)、夕方らか安倍総理の会見がありました。
国会終了後の会見としては異例の「謝罪」から入りましたが、いったい何に対する謝罪なのかと思いきや…

*印象操作ともいえる質問に感情的になってしまったことへの反省…?
*国会審議に関係ない話題に時間を費やしてしまったことへの反省…?

なんですか、それ?

政権のトップとしてあってはならない「忖度」に関するさまざまな疑惑を追及する野党からの質問が「印象操作」?

総理自らが、マスコミ関係者に寿司や天ぷらをご馳走し、政権よりの報道を流させることこそ「印象捜査」というのですよ! 
与党が野党からの追求で窮地に立たされることが予想される時期に、連日「国会中継」がなかった不思議。

ニュースで取り上げる際にも、同じ内容でも出す順序だけで印象は変わるのです。たとえば…

A.与党の見解を先に紹介した後で、「しかし一方では」と野党の疑問・追求の声を投げかけて終わる

逆に、

B.野党の反発の声を先に「こういう声もありますが…」と出しておいて、その後に総理の見解を長々と流す

AとBでは、真逆な印象を与える可能性が高いといえるでしょう。
こうしたちょっとしたことの積み重ねで、印象は造られていくのです。



一方、国のトップとしてあるまじき行為があったのか・なかったのか、国民が知りたい真実を、国民の目線で、国会の場で質問することがなんで「印象操作」なんでしょうか…?

言葉をすり替えないでいただきたい!

そもそも、国会の場でなぜそのような議論をせざるを得ないのか?
いつまでも何をやっているのか?
知りたい事実にちっとも答えないから、無駄な時間を費やすとも言えるのです。

そして、なにより「テロ等準備罪=共謀罪あらため」を強引に採決にもっていこうとする与党の姿勢に対して、必死の抵抗として「忖度」の問題追及に… それを追求する野党がすべて悪いんでしょうか?

もしやましいことがないなら、きちんと分かるように誠実に答え、再調査も証人喚問も必要ならすぐに応じるべきでしょう?そして本題の法案に関する審議にしっかり時間をつくり、中身の議論をすべきでしょう。

すべて野党が悪い、野党のせいで国民の印象を悪くした…それを「謝罪」というのでしょうか?
ある情報筋によると、あの会見によってさらに支持率を下げる結果になった、との情報も…


★最後にお断りしておきますが…

私はなにも自民党政権を打倒せよ、などとクーデターを望んでるわけではありません。
ただ、今の安倍政権の出してくる政策・法案の数々は、国民を切り捨て、大企業や政治家に都合良いものが多く、国会における審議・答弁のしかた、物事の決め方、答弁に見る人間性などには大いに問題ありと思ってきました。

そのような政権に「数の力」を与え、野党の声も無視してなんでも強引に決めていく暴挙は、民主主義の力で止めなくてはいけないと思っています。

「他に政権を任せられる政党がないから」「他よりましだから」…
という消去法的な理由で、今のような政権を容認して「数の力」を与え続けて良いのでしょうか?
強そうなものに寄り添い、何が正しいのか、何がおかしいのかを考えない人があまりにも多過ぎないでしょうか?

信念をもって今の政権を「支持」する人はいてもいい。でも、「数の力」のおごりや、自分たちこそが正しくて野党が邪魔してる、という態度はいただけません。

今の政権に問題ありと思うのであれば、たとえ自民党支持者でもきちんと認めて同じテーブルで議論すべきだし、「他よりマシだから」という選択ではなく、それぞれの選挙区から、誰をわれわれ国民の代弁者として国会に送るか、という視点で選挙に臨んでいただきたいのです。

国民目線で明らかにおかしなこと、問題点を指摘する野党にも真摯な態度できちんと向き合い「議論」すべきです。
理由ある「賛成」、理由ある「反対」、「何が本質か?」…それらをちゃんと見極められる力をわれわれ有権者ももっていたいと。

➡ 民意の「民」は、民主主義の「民」


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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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