「テロ等準備罪」の矛盾・問題点

6月15日(木)

ついに今朝、「中間報告」などという異例の形で「テロ等準備罪=共謀罪あらため」が参議院を通過してしまいました。またしても与党の「数の力」によって、国民や野党の強い反発・疑問に答えることなく…

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今国会の会期中になんとしてもこの法案を通したい与党と、それを阻止したい野党との攻防が頂点に達し、採決まで秒読み段階となった6月14日(水)夕方、私はFacebook上で次のような「問いかけ」をしました。

これだけ問題・危険・矛盾に満ち、多くの国民や野党が反対する法案が、またしても「数の力」で強引に通されようとしているのに、現政権を「信じ」て疑わない人たち、および政治的な話題に触れようとしないで黙認される人たちは、私のこの素朴な疑問(=反対派の不安・憤り)についてどうお考えなのか…と。


私からの問いかけ(6月14日(水)FB投稿のコピーより)>

Q1.「テロ等準備罪」の中味をよくご存じでしょうか?

Q2.では、この法案が本当にテロの防止に有効だと思われますか?
その理由もお聞かせください。


Q3.277もの行為をひとまとめに「準備罪」とみなすようですが、では現行法における殺人・殺人予備罪・殺人未遂罪、凶器準備集合罪、その他「強盗」や「放火」などの重大な刑法犯罪に付加された「未遂罪」…それらとの整合性はどうなのでしょうか?

Q4.現行の刑法では、「実行の着手」があって初めて犯罪としての構成要件が成立します。ところが「準備罪」では、なにをもってどの段階で「準備」とみなされるのでしょうか?

Q5.今の法体系にはない、まだ実行に着手されていない「意思」「話すこと」だけで捜査対象となるとすれば、憲法で定める基本的人権の侵害にはならないのでしょうか?

そして…

Q6.上にあげたような基本的なことが、国会の審議できちんと説明され、議論は尽くされたと思いますか?

どうか、私にも理解・納得できるように、明確な説明をお願いします。



「国民の多くは今の政権を支持していて、反対しているのは少数」、「野党の質問がくだらないから無駄な時間を費やすことになる」といったご意見をお持ちの方は私も知る範囲でも何人かいらっしゃいます。

しかし皆さんどこまで「テロ等準備罪=共謀罪あらため」について中身をご存知なんでしょうか?

テロ等準備罪




一夜明けて、私の問いかけに何人かの方からコメントをいただきました。みなさんありがとうございます。

ある方からは「せっかく高木さんがこのように項目別に問いかけられているのだから、〇〇さんちゃんと答えてはいかがですか?」とあり、それに促されるように賛成論の方から回答がありました。

しかしその内容は「私は法律の専門家ではないのでそこは分からない」とのこと。

また「高木さんのこれらの質問は、法律の専門家でないと分からないものなのでしょうか?」との公開の問いかけもいただきました。

私も決して法律の専門家ではありません。ただ、今からもう35年以上前ですが、いちおう法学部で学んだことのある者として、ごくごく一般的な法律の基本認識として…

新しい法案を提示するのであれば、「テロ等の重大犯罪を未然に防ぐため」という大きな目的(立法趣旨)は良いとして、ではそのために、どういう人のどういう行為を対象にするのか、その適用範囲は、今ある法律(刑法など)とのバランスは、そしてこの法案がテロを防ぐのに有効といえるかどうか…といったことを国会の場で徹底的に議論すべきだと思うのです。

国民はもちろん、国民の代表として選ばれた国会議員といえども必ずしも法律の専門家ばかりではありません。しかし、国会は立法府(=新しい法律をつくるところ)です。

もし法律の専門的知識が必要なら、専門委員に諮問してもいい。考えうるさまざまなケースを想定して、あまり具体的に書きすぎることなく包括的・普遍的に、しかも政権や司法の判断いかんによっては無制限に拡大解釈されないように条文を練り、それをもとにしっかり議論し、精査し、与野党とも理解・納得できる法案を通す必要があるはずです。

「法律の専門家ではないので…」とおっしゃる方に、Q3~Q5の回答は求めません(→それに関する私の見解は次に述べます)。

しかしせめて最後のQ6、すなわち「上にあげたような基本的なことが、国会の審議できちんと説明され、議論は尽くされたと思いますか?」…はどうでしょうか。

「ちゃんと議論されたとは言えませんね」と、そこは素直に認めてくれました。
ただし「与党も、(くだらない質問をする)野党もグダグダですね」と一言添えて。

はたしてそうでしょうか…?


野党はしっかり質問している

国会議員の中にも、弁護士の資格を持つ方や検察での実務経験のある方もいらっしゃいます。

たとえば社民党の福島みずほ氏、民進党の山尾志桜里氏、日本共産党の小池晃氏…etc.
彼らは、これまでの国会でもNHKの朝の政治討論番組でも、法律の専門家の立場から、まさに私の挙げたQ3~Q5のような質問を繰り返し投げ続けてこられました。

しかし、それに対してきちんと答えてこなかった(=答えることができない)のは安倍総理および大臣ら与党側ですよ。

安倍総理は「この法案は犯罪組織を対象とするもので、一般人を対象とするものではない(→だから心配には及ばない)」と繰り返してきました。

これは喩えるなら、薬の副作用を心配する患者に対して「この薬は本来〇〇を治療するためのものですから」と言っているのと同じレベルです。心配・質問への答えになっていません。

では組織犯罪集団と一般の団体・個人とをどうやって見分けるのか?

捜査してみなければ分からないではないか?
誰(どこ)が「疑わしい」と決めて捜査対象とするのか?

もともと表向き「犯罪目的」で設立される組織なんてどこにも実在しません。本来の設立目的は宗教団体であったり市民活動を掲げる団体であったり会社であったり…しかしある時「犯罪目的」に豹変することがありうるとすれば、どの段階でそれを「危険な犯罪組織」と見極めることができるのか?

刑事局長は「すべての人・団体が対象となりうる」と答弁しました。安倍総理の言っていることとまったく矛盾してるじゃないですか!

一般人が捜査対象になることは当然あるのです。そこをなぜ安倍総理は正直に言わないのでしょうか?



また、277もの「行為」を列挙してますが、それらが「テロ等の準備」に当たるかどうかをどうやって見極めるんでしょうか?

この議論の中で、「山菜やタケノコを不法に採って売れば、テロの資金となる可能性がある」だの、「花見にはふつうお酒と弁当をもっていくもの。もし双眼鏡や地図を持っていたら『下見』である」などというバカげた議論が出てきました。答弁する側(法務大臣)の口から出てきたのです。決して野党の質問がくだらないからじゃありません。

何をもって「テロ等の準備」とみなすのか、その定義も判断基準もあいまいな中で、そこを問いただすのは、法案を議論する上でごく当然の質問です。

山尾議員からの「では海産物はどうなんですか?」という質問をバカげてるとおっしゃいますが、あえてそういう質問をぶつけることで、「山菜やタケノコだけでなく海産物だって売ればテロの資金に流れる可能性だってありうるわけですよね?」を確認し→「そんなバカげた法案があり得ますか?」ということを国会での質問を通じて国民に示してくれたわけです。

とにかくこうした矛盾が、質疑を重ねれば重ねるほど露呈してくるわけです。だからさっさと審議を打ち切って強引に通してしまいたいのでしょう。


◆Q3~Q5は 「答えられない」が答え

私からいろいろと「問いかけ」を列挙しましたが、Q3~Q5に関してはいずれも「答えられない、答えようがない」というのが私の結論です。思わせぶりに申し訳ありません。
しかし法案を出した与党側も、法務大臣もまともに答えられないんですから、私から代弁して答えられるはずがありません。

仮にもこの法案に賛成され、いまの政権を良しとする方たちは、このあたりをどう理解してどうお答えになるんだろう…と。
それが私からの問いかけだったのです。

街でプラカードを掲げて反対していた20代の女子大生、30代とおぼしき主婦とちょっと話したことがありますが、まさに私がQ3~Q5で書いたようなことがあいまいで、「政府や司法の判断いかんによってはいかようにも適用できてしまい、国民の自由な権利を著しく犯す憲法違反ともいえるこの法案を通すわけにはいかない」と、ちゃんと本質を分かって反対してらっしゃるんです。
感情論で、自民党案になんてもかんでも「反対」してるんじゃないんですね。

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一方、安倍政権をなんとなく信じて支持(容認)してきて、表向きかかげる目的・大義名分は「ごもっとも」だから…?
それだけでなんとなく「賛成(容認)」されてるんでしょうか?
まあ、それはいいとして、ではその中身について安倍総理がいつも口にするように「ていねいに説明」され「しっかり議論」していると言えるんでしょうか?

それができていないのに、どうして「賛成(容認)」できるんでしょうか?
もし私が「賛成論に回って記事を書け」と言われたら、もうちょっともっともらしい理由をこじつけますけどね…(笑)

★例えば、私の見解ですが…

重大な犯罪を未然に防ぐためのものとして、いまも警察官による職務質問がありますね。
夜自転車に乗っているだけで、警察官に呼び止められ、根掘り葉掘りいろいろ聞かれ、住所や免許証など個人情報を提示させられ、反抗したり振り切って逃げたりすれば公務執行妨害で逮捕される…ある意味人権侵害ですよね。
しかし、もしかしたら重大犯罪の疑いがある人物かもしれない。それを警察官は職権として質問するわけです。

つまり、社会の安全を守ること(=公共の福祉)とのバランスで、多少なりとも個人の自由・権利を制限せざるを得ない場面もある…テロ等準備罪もそういう視点で必要なものである、と。
そのうえで、防ぐべき危険とのバランスにおいて、何をどの程度まで捜査対象と認めるか、基本的人権が不当に侵害されないための対策は…といった議論をしても良いのではないでしょうか?


♪金田法務大臣もお気の毒…

不信任決議案や問責決議案を突き付けられたあの金田法務大臣、ネット上ではかなり皆さんから罵倒されているようですが、私は最近、あの方は気の毒だと思うようになりました。

問責決議案を出されでも怒ることなく、「私としては一生懸命答弁してきたつもり」と答え…
仮にも一橋大学の法学部の出身で、エリート官僚の道を進んできた人物。脳梗塞の後遺症もあってか活舌が悪かったりしますが、決して頭の悪い人ではない、少なくとも悪徳政治家ではないんじゃないかと。

むしろ法律に関する一般常識があるから、あんな法案について「説明のしようがない、答えようがない」。
具体的に突っ込まれて真面目に答弁しようとすればするほど(法案の)ボロが出る、そういう法案なんだと私は見ます。

安倍政権のもとでこの時期に法務大臣に任ぜられ、なんとかこの場をしのいで法案の可決成立にもっていくように…との絶対的使命を負って針の筵のような毎日をすごした気の毒な方…そんな風にさえ思えてきます。


目的→法案のすり替え

これまでの「特定秘密保護法案」しかり、「集団的自衛権」しかり、大義名分として掲げる目的と、そのために出してくる法案の中味がまったくかみ合ってないのです。そのすり替え・トリックをどう見るのでしょう?


*特定秘密保護法


公的機関が情報の流出を防がなくてはいけないこと(=特定秘密)がある。
そのために、「国民の知る権利」や「報道の自由・表現の自由」を多少犠牲にしてもやむを得ない場合もある。

たとえば人質を取られた事件が進行中に、必ずしも捜査情報をマスコミに流さずに伏せる、など、人質の命を守り、犯人側に捜査の手の内を明かさないために…

こうした趣旨をきちんと丁寧に説明し、もしそれに類することが他の省庁においてもあるとすれば、それはどういうものが考えられるのか?といったことを具体的に出して、それを精査して検討する。そういう議論がきちんと国会でなされたといえるでしょうか?

質疑を打ち切り、強引に採決して通してから、各省庁に「どんなことを特定秘密にしますか」的なアンケートを取っている…話の順序が逆でしょう!

★いま問題となっている文科省の内部文書の存在を勇気をもって(=森裕子議員の言葉を借りれば「命がけ」で)告発した職員。
彼らを「行政の内部事情を漏洩した」として処分しようなどという不穏な話しもあるようですが、公務員による秘密漏洩にこれまで以上に厳しい罰則を与えようというのがこの「特定秘密保護法」です。

メディアからの取材に「身の上を考えると、答えるわけにはいかない」となる。それは国民が真実を知る権利、メディアの報道の自由を脅かすものです。
女優の藤原紀香さんも、あの法案が出てきたときにまさにこれを心配して「とんでもない法案」と自身のblogで訴えられていたのです。なのに安倍総理は「報道の自由を脅かすものではない」と言い続けました。



*集団的自衛権

もし「日本人の命と安全を守るため」なのだとしたら、なぜいきなり集団的自衛権なんでしょうか?
万一の大災害や他国から攻撃を受けるといった非常事態に、今の憲法の下でできうる自衛隊の活動・範囲・指揮命令系統についてしっかり議論されたでしょうか?

そして個別的自衛権の範囲内でできうることを議論したうえで、こういうケースではどうしても対応できないから、集団的自衛権も必要になるのでは、という筋道を立てた議論が国会でなされたでしょうか?

そうした議論は、まったくと言ってよいほどされてませんよね!
そして自衛隊は南スーダンへ。情勢が悪化し、迫撃砲がすぐ近くに打ち込まれ、隊員の中には「死」を覚悟して家族に遺書を書いた人も…。それでも政府は「戦闘行為」は行われていない、と。
そして「日本の発展に寄与した」って、何を言ってるんでしょうか?


*テロ等準備罪=共謀罪あらため

今回の「テロ等準備罪」も同様、目的として掲げたこと(=凶悪なテロを未然に防ぐこと、および国際的な基準に標準をあわせること)は大切なこと。世界の各地でテロが多発している昨今、誰も否定できないことですね。
でも、本当にテロを未然に防ぐ目的で法案を出すのであれば、あの法案なんでしょうか?

今は人権侵害にあたるとして禁止されている「おとり捜査」「通信傍受」といったことが捜査機関によって行われるようになるなど、運用によっては国民の人権を侵害する危険があるだけで、その割には、現実的にテロの予防にこんな法案がどれほど役立つのでしょう?

現実に起こりうるテロに対応するのであれば、交通機関や多くの人が集まる施設・街の監視カメラのチェック体制の強化、インターネットのセキュリティ強化と危険な用語のチェック、過去に犯罪歴のある者の情報を全国の都道府県の警察で共有できているか、海外に渡航中の危険な人物の情報をどこまで把握できているか…etc.

「山菜やタケノコ採り」なんかを議論してる暇に、現実のテロ対策としてやるべきことが山ほどあるでしょう。


政府(時の政権)の判断次第でいかようにも…

野党からの質問にまともに答え(られ)ず、議論になっていない…
そんな法案をなぜ今国会の会期中に何が何でも可決成立させたいんでしょうか?

都議選も近づく中、いったん出した法案を撤回したら印象が悪くなる(=いわば「引っ込みがつかない」から)でしょうか?
むしろこんなに多くの国民が反対している法案をまたしても強引に通したら、ますますイメージが悪くなると思いますが…

これまで「数の力」で通してきた法案・政策すべてに言えることですが、「政府(時の政権)の判断」でいかようにでも適用範囲を広げることができ、「力を発動できる体制」を早く作りたいのでしょう。

さまざまな「忖度」に絡む疑惑追及の手も迫ってきている中で、早く「形」をつくってしまいたかったのではないでしょうか?

だとすれば、それは完全に民主主義への冒涜です。こんなにも議会運営をないがしろにした暴挙が、はたして民主主義国家で許されるのでしょうか?

どうか心ある国民・有権者たちは、そこをしっかり見て怒るべきところは怒ってほしいと思います。まさにそれが民主主義の力=「民意」だと私は思います。

→ 民意の「民」は、民主主義の「民」


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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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