二段の滝 ドッペルドミナント

2月9日(木)

この「音についてアラカルト」のカテゴリーで「5度の引力」「属七」について書いてきましました。
今回はそのダブル技、「ドッペルドミナント」です。

ドイツ語のDoppel(ドッペル)は、英語のダブル、「二重の」という意味です。

ある調の主音から5番目の音(=属音)を根音とする3和音(=属和音)がドミナント
そこに7thを加えたものが「属七=ドミナント7」、主音への強い引力を持った響きですね。

主音から5度上の音を主音とする調(=属調)の中の属和音。「属」のまた「属」、二重のドミナント=ドッペルドミナントです。

ドッペルドミナントとは

この手法は、クラシックの名曲の中でも随所に使われています。

♪ヨハン・シュトラウスの「ラデツキー行進曲」のイントロ
♪チャイコフスキー「くるみ割り人形」終曲の「花のワルツ」冒頭、テーマが繰り返される場面…etc.

5度下へ降りて、またそこから5度下の主音へ…主役登場の二段構えの滝のようなイメージです。

なんですが…

即興でコード循環をとらえながら「ある音の5度上→そのまた5度上の音」をぱっと探せますか?

そのヒントを、上図の右下に囲みで書きました。主音のひとつ上の音(=上主音)を根音とするマイナーコードを明るく変えたもの、なんです。 

長調の1~7までのコードの中で見ると…

長調のドッペルドミナント

ある調、たとえばハ長調の2番目の和音はDmというマイナーコードですね。それを明るい和音に変えたものがドッペルドミナントなんです。

ドッペルドミナントという用語の説明として「2のマイナーコードを明るく変えたもの」ではいけません(法廷では通用しません…笑)。
でも、コード循環のとらえ方としては「2→5→1の変形」、「5度進行の一部」と考えた方が即興でも捕らえやすいでしょう。



泣かせる短音階でのドッペルドミナント

属和音・属七は、同じ主音の長調・短調(=同主調)に共通です。

自然的短音階(=平行調の長調と同じ7音でできる短音階。ナチュラルマイナー)の音のままでは、第5番目の和音はマイナーコードです。
そこで和声的短音階(=ハーモニックマイナー)では第7音を半音上げるんでしたね(←おさらい)。

つまり短調であっても属七は長調と同じ明るい響きです。
「ソシレファ」という属七から、明るい「ドミソ」にも暗い「ドミ♭ソ」にも行けます。

その5度上にあるドッペルドミナントも、当然ながら明るい和音です。

短調のドッペルドミナント

短調のコード進行として…
「Cm→Fm→B♭→E♭→A♭→Ddim→G7→Cm」(1→4→7→3→6→2→5→1)というのが一般的な5度進行ですね。
その最後に戻ってきた主和音「Cm」を、いったん明るい「ドミソ」に変えるんです。そこに7thを加えた「C7」という響きは、5度下の「Fm」へと引っ張られます。その3度下にある「D」を明るくしたコード「D7」が、このドッペルドミナントです。そこから「G7」(=属七)へ、そして「Cm」に戻ってくる、という循環です。

短調の中に出てくる明るい響きは、希望の光を感じさせるような、あるいは悲しみをさらにこみあげさせるような効果があります。
演歌(石原裕次郎など)や刑事ドラマのテーマにも多用されますが、クラシックの名曲の中にもじつはたくさん使われています。

ピアノの詩人・ショパン、ワルツ(作品64-2)の冒頭

ショパンワルツ


同じくショパン バラード1番(作品23)

2002年の映画「戦場のピアニスト」で使われて有名になり、2016年にはスケートの羽生結弦選手がフリーの演技で用いた曲ですね。その冒頭部分。

ショパンバラード1

A7がドッペルドミナント7th、D7がドミナント7thに当たります。

なお、属七の響きがなぜ「1」への引力を感じさせるのか? 
音のための音の原理(=楽典)というよりも、「人はなぜそういう響きを聴いてそう感じるのか?」に私は興味を持ってきました。ト長調ではもっとも安定した響きをもつ同じ「ソシレ」という響きなのに、ある場面で聴くと「ドミソ」に早く戻りたくなる…なぜ?

少し前に書いた記事です。→ 「属七の引力、なぜ?」



音楽の表現にはさまざまな要素があります。作曲の経緯や時代背景、曲から浮かぶ風景…想像力を研ぎ澄まし、楽譜と向き合い、演奏技術を磨き…本当に奥深い世界です。

一方、難しいと思われがちなクラシックの名曲にも気軽に親しみ、たとえ一字一句おたまじゃくし通りでなくてもコードでとらえればピアノを奏でて楽しむことができます。
あるいは、きちんと練習する上でも、単にそこに音符が書かれてるからその通り弾いて練習するだけでなく、響きの移り変わりをコードでとらえることができれば…

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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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