調性 #・♭のつき方に法則あり!

2017.2月5日(月)


調性としての♯や♭が、どこに・いくつ付くか…これをすべて「覚える」のは大変ですね。

「ト長調にはファに#がひとつ付きます、ヘ長調にはシに♭が1つ付きます」…などと覚えさせられ、「〇調には#または♭がいくつ付きますか?」などと聞かれて点数をつけられるから音楽が嫌いになってしまった人も多いのではないでしょうか?

ところが、小学校の合唱部がよく発声練習をするときに、ピアノの伴奏をする子が、

 ♪ドレミファソファミレド~ → ド♯レ♯ミ♯ファ♯ソ♯ファ♯ミ♯レ♯ド♯~ 
   → レミファ♯ソラソファ♯ミレ~ → ミ♭ファソラ♭シ♭ラ♭ソファミ♭~ 

と、さりげなく半音ずつ上げて音階を間違えずに弾いていますね。
何の音から始めても、長音階に聞こえる階段の形(=モード)があって、それを感覚として把握しているのでしょう。

感覚として弾ける・歌える…それは大変素晴らしいことです。

しかし、試験では「この曲は何調ですか?」「#・♭はいくつ付きますか?」が聞かれます。


  ●シャープ系=主音は「ト→二→イ→ホ→ロ→嬰へ→嬰ハ」
            ♯のつく音は「ファ→ド→ソ→レ→ラ→ミ→シ」の順

  ●フラット系=主音は「へ→変ロ→変ホ→変イ→変二→変ト→変ハ」
            ♭のつく音は「シ→ミ→ラ→レ→ソ→ド→ファ」の順

日本音名で「トニイホロヘハ」「ヘロホイニトハ」、あるいはドイツ音名で「ゲー・デー・アー・エー…」「エフ・ベー・エス・アス…」と呪文のように何度も口に出して、さらに楽譜に何度も書き記していくうちに「覚える」…それが一般的でしょう。

まあ「公式」みたいなものですから、覚えてしまえばそれでよく、指折り数えて#・♭の数が判れば試験で正解できますし、「この曲ではどの音に#(または♭)が付く」と認識すれば楽器も演奏できますから。

しかし…

これまで「音」について色々見てきて、あらためて「なぜ?」と考えると、音階というのは数列のようなもので、5度という運命的な関係でできる「ある法則」に気づくはずです!

「覚え方」の話ではなく、そんな「音」のしくみ、「なぜ?」にご興味のある方は、この先をお読みください。


◆音の名前の確認

日本語には、さまざまな国の言語が混在しているから難しい…それは音楽にも言えそうですね。

イロハニホヘト、ABCDEFG、ドレミファソラシド…

音の名前を日本語の「イロハ…」で呼ぶのは、調性(=何調ですか?)を言う時と、「ト音記号」「へ音記号」「ハ音記号」の名称ぐらいではないでしょうか? 

一般に音名は「ドレミ…」で、コード名は「ABC…」で呼び、調性だけは「イロハ…」で呼ぶ…
調性の理解を難しくしている第一の関門がそこにあるのかもしれません。

まずは鍵盤上で、音の名前をしっかり一致させておきましょう。

ラ~ド文字入り

★日本の音名「イロハ…」は、ドイツ語の「A(アー)」、英語の「A(エー)」と同じく「ラ」の音が出発点です。
だから「ド=ハ=C」、「ファ=へ=F」、「ソ=ト=G」…なのです。ドレミファソラシ…というイタリア音名は、グレゴリー聖歌の頭文字から付けられたものです。→ ドレミの起源

★英語とドイツ語 「B」に要注意!

英語では「B=シ」ですが、ドイツ語では「B(ベー)=シ♭」です。 
ドイツ語では「A=ラ」のすぐ次に「シ♭=B」と名づけた。でも白鍵の「シ」にだけ名前がないのも困るな…と最後に「H」の文字を付け足したように見えますね。

「B」とだけ表記されているとき、ドイツ語の「B(ベー)」=英語の「B♭(ビーフラット)」なのか、英語の「B(ビー)」=シ♮ なのか、そこだけ要注意なんです。

★日本語では、「#=嬰(えい)」「♭=変(へん)」を「イロハ…」音名の前に付けます。
 「変ホ=ミ♭」、「嬰ハ=ド#」を意味します。



◆調性のシャープ系・フラット系とは?


さて、呪文のように覚えた「トニイホロヘハ」、「ヘロホイニトハ」って、そもそも何だったのでしょうか?
「ソレ、ナンデスカ?、ヨクワカリマセ~ン」じゃないでしょうか?
まだ調性について知らない人に、ちゃんと説明してあげられますか?


それぞれ頭に「ハ」をつけて、馴染みのある「ドレミ…」に置き換えてみましょう。

 #系 …(ド→)ソ→レ→ラ→ミ→シ→ファ(#)→ド(#)

すべて完全5度ずつ上の音へと行ってます。
主音が5度上がるごとに、調性としての「#」の数がひとつずつ増えていきます。

 ♭系 …(ド→)ファ→シ♭→ミ♭→ラ♭→レ♭→ソ♭→ド♭

すべて完全5度ずつ下の音へと行っています。
主音が5度下がるごとに、調性としての「♭」の数がひとつずつ増えていきます。

これを1枚に丸~く収めたのが、以前にもご紹介した「5度時計」です!

日本名の「トニイホロヘハ」が右回り、「ヘロホイニトハ」が左回りに並んでいます。

5度時計(改右回り)


もともと完全5度で音を円形に並べていくと、時計のようにちょうど12回目で元の音に戻ってくる…ということを示した図ですが、それぞれの音を主音(=音階のスタート音)とする調(長調)として見ると、面白い法則が見えます。

右回り=シャープ系…12時から右回りに、主音が5度上がるごとに、調性記号としての#が一つずつ増えていきます。
左回り=フラット系…逆に左回りに、主音が5度下がるごとに、調性記号としての♭が一つずつ増えていきます。

真上の0時では#も♭も「0」、真下は#で表しても♭で表しても「6」つ。じつに面白いと思いませんか?

7時を#系で表すと7音すべてに#、5時を♭系で表すと7音すべてに♭。
真下の6時では、#で表すと「シ」以外の6音に#が、♭で表すと「ファ」以外の6音に♭が付きます。


#や♭の付いていく数は分かりました。
では、音階のどの音にどんな順に調性記号(#・♭)が付いていくのでしょうか…?


キイとなるのは「4」と「7」

シャープ系では、音階の4番目の音に#を付けた音が、5度上の調(=属調)で新たに調性として加わる#の音で、その音は属調では7番目の音になっています。

調性の法則♯系

★図表の右端が見切れていたら、クリックすると全画面が見られます(以下同じ)


フラット系では、音階の7番目の音(=導音)に♭を付けた音が、5度下(=4度上)の下属調で新たに調性として加わる♭の音。その音は下属調では4番目の音になります。

また、新たに♭のついた4番目の音が、次の5度下(=4度上)の下属調では主音となります。

調性の法則♭系

この「4」「7」という因縁の数字、なにかピンときませんか?

音の誕生を思い出してみましょう。


●完全5度

たとえば「ラ=440Hz」だとすると、そこから完全5度上の「ミ=660Hz」、2:3という整数倍率の音程です。人間の耳にもとても心地よく、はるか昔にピタゴラス先生が「音は比率でできている」という大発見をするきっかけとなった音程です。

ある音(=仮に「ド」とする)から完全5度の関係で音を取っていくと…
     
      ド → ソ → レ → ラ → ミ

ヴァイオリン・ビオラ・チェロの4本の弦も、この5度の関係で調弦されています。

この5音を低い順に並べ替えると、「ド・レ・ミ・ソ・ラ」という5音階(=ペンタトニック)になります。
日本の演歌でもよくある「ファ」「シ」が抜けた、いわゆる「4・7(ヨナ)抜き」の音階ですね。



7音の誕生 赤文字入


「ミ」から完全5度上には「シ」が、「ド」から完全5度下には「ファ」がいます。
これを加えて低い順に並べなおすと「ドレミファソラシ」、ピアノの白鍵の音が揃いました。

ところが、両端の「シ」~「ファ」の関係は、他の音同士のように完全5度にはなっていません。この7音では完全な循環にならないのです。
「シーファ」は今日でいう減5度の響きで、16世紀の人たちは「悪魔の音程」と言って避けました。

「ドレミファソラシド」という音階の中では4番目7番目にあたるこの「ファ」「シ」。
ちょっと厄介な音ですが、特性音(=そのモードの中で他にはない特色のある音)でもあります。



まだピアノもなかった 昔の音に思いをはせて

「ある音=ド」とし、「ド→ソ→レ→ラ→ミ」という5音階に、さらにその両端から5度の関係にある「ファ」「シ」を加えて7音階になった、と書きました。

音の名前がないと説明できないので、「ある音(=仮に「ド」とする)」と書きましたが、昔は「ある音」でしかなかったのでしょう。

ただ、それだと音の誕生の説明が不可能なので、便宜的にここでは「ドレミファソラシ」で表現します。

「ファ」は「ド」より5度下にある音なので、上に「シ」、下に「ファ」と書きましたが、同じ「ド」を基準に「ド→ソ→レ→ラ→ミ」、そこからさらに上に「→シ→ファ#」と考えてもよいのです。
それでもやはり、両端にある「ド」と「ファ#」は増4度(=減5度)の「悪魔の音程」になり、途中に2か所「シ~ド」と「ファ#~ソ」の半音の箇所が生じます。何の音を基準にしても、5度ごとに音を7つ取れば同じことが起こる、原理は同じなんです。



そもそもまだピアノのような鍵盤楽器もなかった時代、「白鍵・黒鍵」とか「全音・半音」といった概念すらありません。また「ラ=440、あるいは442」と西洋音楽で統一された音もありません。

今でも、伴奏楽器のないキャンプなどで、誰かが「う~」と声を出したら、その音を基準にして皆で音を合わせて歌えますね。あの感覚で、「ある音」を基準に音階を作っていたのではないでしょうか。

弦を張って「ある音」をつくり、それを基準に5度の美しい響きになるように隣の弦を合わせていったのでしょう。今日の日本の楽器をはじめ、世界各地の民族音楽も「ある音」を基準に音を合わせ、調(しらべ)を奏でています。

竹をある長さで切って吹いて出た音と、その音と5度の関係の音をつくるには、竹の長さを3分の2の長さに切ればよい…という図解が正倉院にも残っているのを写真で見せてみらったことがあります。すでに天平時代に5度の音程の作り方が日本にも伝わっていた! ということです。

その偉大なる5度の関係で、まずは5つの音を作って5音階(=ペンタトニック)に。ここではとくに問題はありませんでしたが、さらに5度の関係の音を2つ加えて7音階にしたら、両端の音の関係が他とは違う音程になってしまった。そして次に説明するように、低い順の音を並べると、途中隣同士の音に狭いところが2か所できた、そのことに当時の人々も気づいていた、ということなんです。

…では、今日の音の呼び名「ドレミ…」で説明を続けましょう。


◆12音の誕生へ

「シ」から完全5度の関係にあるのは「ファ♯」です。さらに5度の関係で「ファ#→ド#→ソ#→レ#→ラ#」と今日のピアノの黒鍵で5つ進み、次の「ミ#」=「ファ」、その次は「ド」、元の音に戻ってきます。
こうして今日のピアノの7つの白鍵、そこに5つの黒鍵が加わって「12音の誕生」に!

「そうか~、ピアノの5つの黒鍵も5度の倍音率でできてたんだ!
5つの黒鍵は5音階(=ペンタトニック)になっている!、だからペダルを踏んだまま黒鍵をどう押しても調和した響きになるんだ…」ということに気づきます。
まさに12音をすべて並べて完成されたのがピアノだったんです。

しかし…

ピアノの白鍵と黒鍵をすべて上から下まで何秒で弾けるか、などとやっても音楽的な感情はわいてきません(笑)。

世界中のさまざま地域・時代ごとにさまざまな音楽が生まれてきましたが、人々が12音を発見してからも、12音をすべて並べて奏でるだけの音楽はあまりないはずです(←グリッサンドのような部分的な表現は別)。
12音の中から5つ・6つ・7つ…いくつかの音を選び出して奏でることで、さまざまな雰囲気を醸し出す「音楽」となります。不思議ですね。

竪琴から進化したハープという楽器を見ても、1オクターブに12音の弦は張られていません。1オクターブ内に7本、基本としてピアノの「ドレミファソラシ」の7音に調律し、#や♭の音は7本のペダルを操作して作ります。
7つのペダルはそれぞれ7つの音に対応していて、たとえば「ファ」に対応するペダルを踏むとすべての「ファ」の音が半音上がります。各ペダル、真中の状態がナチュラル、踏み込むと半音上がり(=#)、上げると半音下がる(=♭)ように作られています。「ファ」と「ド」に対応するペダルを踏んでロックしておけば、そのまま二長調の曲が弾けるのです。臨時記号が出てきたらそのペダルを一時的に踏む…こうして12音すべて出すことができますが、基本は7音でできた楽器と言えるでしょう。

バロック時代からおよそ300年、クラシックといわれる西洋音楽で基本となる長音階・短音階の音階は、7つの音でできています。そもそもこの記事は「調性」についてですから、7音階の話に戻しておきましょう。



7音階で生じた問題が幸いして 「モード」が生まれた

、すなわち「ファ」「シ」が加わったことで、両端のファとシはきれいな5度にならない「悪魔の音程」となりました。

それだけではありません。7つの音を低い方から並べると、その途中に2か所、他よりちょっと短いところが生じました。「ミ~ファ」、「シ~ド」の2か所に半音の関係が生まれました。

繰り返しますが、その昔ピアノもない時代ですから、白鍵・黒鍵とか全音・半音という概念もなかったはずですが、この2か所はどうも他とは違うな、ちょっと短い、隣同士を同時に鳴らすと濁った響き…という感覚はあったはずです。

その感覚があったからこそ、何の音から音階を作るかによって、半音の2箇所が音階のどこに入って来るかが変わり、それによって音階全体の響き(=モード)が異なり、違った味わいになることに気づいたのでしょう。

そこで生まれたのが6つの教会旋法です。


6つの教会旋法20170206

→詳しくは 6つの教会旋法 をお読みください。

その6つの教会旋法のうち、イオニア旋法と呼ばれるものが今日の長音階に、エオリア旋法と呼ばれるものが今日の短音階になったのです。

この「ド」から7音を並べたハ長調と、「ラ」から7音を並べたイ短調、構成している7つの音は同じで、いわば打順を変えることでチーム全体の色彩(=モード)が変わる関係。楽典では「平行調」と呼びます(←おさらい)。

長音階と短音階(=自然的短音階)の階段の形(=半音の来る位置)はこのような形です。

階段の形=モード


5つの黒鍵も含めた12音を使って、何の音から始めても同じ階段の形になるように並べたもの、それが調性です。


★つまり…

5音階(ペンタトニック)では濁りがなかったが、その両端に「4.ファ」「7.シ」が加わって7音階になったことで、どこかに半音の関係が生まれた。

その半音の狭い箇所が階段のどの位置にくるかによって、その調(しらべ)全体の雰囲気(=モード)が変わることを発見した。

そして、そのモード(=6つの教会旋法)のうち長調短調がその後の音楽の中で主流となっていった(=「調性」)。何の音からはじめても、長調や短調の階段の形になるように、調性記号としての♯や♭がつく。

…そう考えると、調性としての#や♭のつく位置が、「4」「7」と深くかかわっていることも納得できるでしょう。


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おことわり

5音階から7音階への成立を非常に単純化して書きましたが、文中にも書いた通り、まだその時代にピアノのような鍵盤楽器もなく、「ラ=440」などという基準も絶対的な音名もなかったはずです。文中にも「ある音=仮に現在のドとして」と書いてます。

さらに、歴史の中で、ある時誰かが5音階から7音階を生み出して築き上げたわけではなく、当時の文献に印されてるわけでもありません。

世界各地には様々な音楽があり、それぞれ独特の音階を持っています。昨年の秋にアフガニスタンの音楽に触れる機会がありましたが、地中海を中心とするトラディッショナルな音楽に、500年~300年前に入ってきたペルシャ音楽の影響を受け、さらに150年ほど前にはインドの音楽の影響を受け…様々な旋法(=モード)ができていったようです。
アラブには半音の半分、クオーターという音程も存在しますね。

http://resolutely.blog6.fc2.com/blog-entry-1088.html

音楽の歴史は世界人類の歴史とともに、様々な時代・地域・文化とともに出来てきたもの。そう簡単に「何から何が生まれてどうなった」なんて言えるものではありません。

そこをあえて、15~16世紀のルネッサンス~バロック時代、バッハが生まれて今日のクラシックと括られるここ300年ほどの音楽が誕生する以前の音楽に思いをはせ、5音階(ペンタトニック)から7音階が次第に主流となり、6つの教会旋法が出来た…そこを便宜的に分かりやすく捕らえたのです。

「ある音=ド」として、完全5度の関係で「ドソレラミ」と5つの音で5音階、ミから上に完全5度の「シ」、ドより完全5度下に「ファ」と考えましたが、シから上に完全5度の「ファ#」でもいいんです。

それでもやはり、ド~ファ#は完全5度ではない減5度(=増4度)、他とは違う「悪魔の音程」。またファ#~ソ、シ~ドの2ヶ所は半音になります。今日のト長調です。
だから分かりやすくすべて白鍵の音で示したまでです。

とにかく、5音階から7音階になったことで、半音の関係が生じた、その半音が音階のどこに来るかによってモードが変わる、ということです。
プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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