「5度の引力」をコード循環に

2017年 1月28日(土)

楽典の基礎からコード循環へ…

音楽用語の意味、和音の種類・音階・調性…これらは楽典の基礎としてある程度「覚える」しかない世界。
でも、そこで大切なことは、音に対する感覚をもつことだと私は思います。

どんな世界でもそうですが、ただ丸暗記して覚えればいい、テストで正解が書ければよい…ということではなく、「なぜ?」について考えることが大切です。音楽はまさに感性の大切な世界です。


人は音を聴いてなぜそう感じるのか?

たとえば、音程でも和音でも、5度という関係はとても重要です。
ドとソ、主音と属音の関係。ここには強い引力が働いていると感じるのです。

「ソ」という音は、いつどこで聴いても「ソ」であり、「ソシレ」という和音は世界共通の「ソシレ」なわけですが、ハ長調の音楽の中では「ド」に戻りたくさせる引力をもっている…不思議ですね。

単なるモーターのうなり音や電車の警笛のような「音」ではなく、音楽の中で聴いている音は、単独で存在しているのではなく、ある役割をもってほかの音や和音(響き)と結びついている、ということでしょうか。
→ 「属七の引力 なぜ?」

5度の引力が使われる場面には、およそ次のようなパターンがあると思います。

5度のマジックパターン

◆和音→コードへ

すべての音をベースとする全コード名を一覧にして覚えるのは大変です。
「C(ド)」をベースに、明るい「C」、マイナーコードの「Cm」、さらに「Cdim」「Caug」、7thにも4種類…ひとつのベース音だけでもこれだけ種類があります。それを12音すべてについて…

★もちろん、長3和音・短3和音はどういうものか、下の2音の音程と上の2音の音程がそれぞれ長3度か短3度か、dim(ディミニッシュ)・aug(オーギュメント)とはどういうものか、7thにはどんな種類があるか…といった基本的な知識は必要ですが、ここではコード循環を理解して使えるようになるには、ということです。


仮にすべての音をベースにすべてのコード名を一覧にして「覚え」ても、すぐに使えるようにはなりません(泣・笑)

そこで、私がお薦めするのは、ひとつの調の7音をベースとする7つの和音(コード)から覚えること。


調ごとに 7つのコードでとらえよう

まず、もっとも単純なハ長調とイ短調の7つの基本コードの組み合わせを1~7までの数字(度数)で覚えるのです。

基本、まず覚えるのはこの7つの和音(コード)です。
長調では1・4・5は明るい和音、2・3・6はマイナーコード。最後の7だけがdim(ディミニッシュ)。この順序は他の長調でも変わりません。

長調・短調7つのコード
下段の短調のコードでは、5番目と7番目の和音に臨時記号の#がついてますね。ここでちょっと楽典のおさらいです。


<和声的短音階について>


平行調の長調(イ短調にとってはハ長調)と同じ7音でできている短音階が「自然的短音階(ナチュラルマイナー)」。

その5番目の和音(=ドミナント)は、同主調の長調(イ長調)にも短調(イ短調)にも共通の明るい和音でなくてはいけません。
そのために自然的短音階の第7音を半音上げたのが「和声的短音階(ハーモニックマイナー)」。

楽典の本には、音階の形で第7音を半音上げたものを「和声的短音階」と示しているものがほとんどですが、それだとなぜ第7音を半音上げる必要があるのか理由が分かりません。それに和声的短音階を音階として奏でる必要はないのです。

なぜ和声的短音階では第7音が半音上がるのか?
それは属七・Ⅴの和音(=ドミナント)の響きは長調も短調も共通だから…
明るい「ミソ#シ(レ)」の響きから、明るい「ラド#ミ」にも、暗い「ラドミ」にも行けるためです。

楽典は単に「覚える」ものというより、こういう理由を理解するために用いたいですね。



このように、まずは単純な(原則♯も♭もつかない)ハ長調やイ短調を例に、曲の中のコード進行を「度数」で捕まえられるように。

あとは、他の高さ(調)でも、その調の音階を構成している7つの音の組み合わせでできる和音は7つ。
全コードを一覧で覚えるよりも、はるかに実用的ではないでしょうか?



5度の引力を有効に使ったコード進行(=5度進行)

では、これら7つのコードをどう循環させたらよいのか?
曲の中ではどう使われているか?

「5度の引力」を使ったコード進行があります。

5度進行
この5度進行をフルに使って8回目で元の音に戻ってくるコード循環は、短調の曲でとくに多く使われます。

♪「枯葉」、「白い恋人たち」、竹内まりあ「駅」、来生たかお「グッバイデイ」…etc.


厳密に完全5度で進行させたら12回かかってしまいますが、途中1か所、F→Bのところで減5度の「ごまかし」が入ってます。
その「ごまかし」の減5度が、短調では終わり近くに出てきますが、長調だと「4→7」は割としょっぱなに出てきてしまいますね。長調ではここを避けて1→(3→)6→2→5→1というコード進行がよく使われます。


1→(3→)6→2→5→1

C(=1)から3度下のAm(=6)に降りる。平行調だからすんなり動けます。
♪「上を向いて歩こう」「ムーンリバー」の出だしのように、光と影を行き来するような響きの移ろいです。そしてあとは5度進行で「6→2→5→1」。

あるいは、Cから3度上がってEm(=3)へ。そこから5度進行で「3→6→2→5→1」
♪尾崎豊「I love you」、長渕剛「Close your eyes」、あとテレサテン「時の流れに身を任せ」の骨格部分などがその典型ですね。

★5度進行では、とくに7thの音を加えることで、属七のように5度下への引力をより一層強めるものが多く、7th進行などと呼ばれることもあるようですが、私のブログ内では「5度進行」に統一しています。


5度進行の変形

どこかに臨時記号の♯をつけて、マイナーコードを明るくしたり、逆に明るいコードをマイナーに変えたり、dimやaugを作ったり…と応用。
たとえば、 4を「F♯dim」に変え、7を明るい「B」に変え、3へ…そう、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」に出てくる「結婚行進曲」「4→7→3」の変形だったんだ…!

最後に、この5度進行の最後、「2→5→1」の部分に注目。
2-5-1とドッペルドミナント


2のマイナーコードを明るい和音に変えたもの、それがドッペルドミナント(二重の属音)です。

★ドッペルドミナントについては、後日あらためて記事を書きますが…

♪ラデツキー行進曲、花のワルツ(チャイコフスキー「くるみ割り人形」終曲)、ショパンのバラード1番やワルツなど、クラシックの名曲でも多く用いられています。
とくに冒頭、「これが主役かな?」と思わせておいて、実はその5度下、さらにその5度下から主役が登場…といった演出に用いられます。

→ 二段の滝 ドッペルドミナント




こんな風に、クラシックの名曲を、あるいは流行の歌謡曲や映画音楽をコードの流れでとらえる試み。

「そこにおたまじゃくしがあるからその通り弾く」のではなく、響きの移り変わりを分かって弾けるようになります。「楽譜がないと弾けません」からの脱却への近道です。

「むかしピアノを習ってました」と過去形でおっしゃる方も、楽譜を見て、毎日ピアノに向かって練習して、覚えていれば弾けたんですよね。あらためてこうしてコードで音をとらえることができたら、いかがでしょうか?

また、楽譜は読めないけど、コードで音を捕まえてピアノを弾けたら…はい、ギターなどと同じくコードを覚えればそれも決して夢ではないのです!

ギターは、比較的大人になってから始められる方も多いですね。私が高校生のころ、それまで楽器などやったこともない友人が、ギターをはじめてわずか数か月で、フォークソングなど(年代が知れますね…笑)をさらっと弾いているのを見て驚いたものです。コードで覚えると弾けるようになるのも早いのでしょう。

ただギターの場合、6本の弦をおさえる「手の形」でコードを、耳で聞こえる「響き」と一致させて覚えることが多いのではないでしょうか?
だからコード名だけで演奏できるようになっても、個々の音の上下や広がり(音程=音と音の間隔)が見えづらいのではないでしょうか?

その点、ピアノなどの鍵盤楽器は、音が並んでいて見えてますから、短3度、長3度、5度の広がり、そこに7thや9thを上に重ねる感覚、ある音を半音下げるとマイナーな響きに変化する…といったことが、すべて目に見えるのです。

どの楽器もそれぞれ魅力がありますが、いちど鍵盤で音の関係を見てみるのも悪くないと思います。



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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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