大いなる中間マージン ~「代理店」の存在意義~

30年以上前のお話し…


旅行代理店、広告代理店…「代理店」と名の付く仕事は多いです。

海外に旅行するとき、すべて自分でホテル・鉄道・バス・観劇チケットなどを手配するのは大変です。それらをトータルに代行してくれるのが旅行会社、すなわち「代理店」です。

代理店は、豊富な情報ネットワークを使って、さまざまなことを一括してやってくれる、素人にはかなわない専門職といえるでしょう。

しかし反面、なんのための「代理店」なのかわからない場合もあります。
単に複数の業者を紹介するだけで、中身を説明しても何かを相談してもちっとも「答え」が得られず、紹介された業者にまた一から説明のしなおし。いったい何のための代理店?ということも。

私は若いころ民間の小さな研究所で「まちづくり」の仕事をし、そののち放送局関連でイベントなどの企画に携わり、間に「広告代理店」が入る仕事も多く経験しました。

団体・企業・自治体などお金を出してくれるところ(=スポンサー)からの情報を持ってきてくれて、話をまとめてくれる…というプラス面もありますが、間に「代理店」が入ることによって苦労させられた経験もあり、必ずしも代理店に良い印象をもってこなかったのも事実です。

もう30年以上前のお話しですから「時効」でしょう。仕事の話はめったに書かない私ですが、その頃思ったことをちょっと書かせていただきます。とくにどこの広告代理店という話ではなく、あくまで一般論です。


まず第一印象

「第〇営業部〇〇課」…名刺を見ても、大きな組織内の識別番号みたいで、どういう仕事を専門としているのかさっぱりわからない。微妙に識別番号(所属部署)の違う人が複数でやってくることが多く、だれがキイマンなのかがわからない。

イベントや制作したいイメージをいかにもテレビ屋さん風のノリのいい喋りでまくしたてます。
しかし…
「武田信玄が今川義元を破ったあの川中島の戦いを大型映像に映し出し…」…おいおい、武田信玄が川中島で戦った相手は上杉謙信だぞ! イメージで生きていて、基本的な歴史・社会の常識がどこか抜けていたり間違っているんです。大丈夫ですか?
とにかく軽い。悪い言い方をすると口先だけで商売してきた人たち…

こちらがあくまでイメージとして出したパース(イラスト)の中で、企業のロゴの太さや色がちょっと違うとそこを指摘してくる。企画の中身よりも企業のCI(=コーポレーション・アイデンティティ。企業のロゴ、イメージやCMのキャッチフレーズなど)が何よりも重要なようです。

派手な色のスーツをばりっと決め、業界人以上に業界人っぽい風貌。
小さなアトリエのような事務所でこつこつとデータを解析し、当時はまだパソコンも普及していないので手書きの原稿を書いていた私にとって、まったく異星人のような存在に見えたものです。


代理店が間に入ることで…

たとえば地方の自治体に月曜日に行くことになっていたとすると、企画の内容をまとめてプレゼンテーションの準備は週末いっぱいまでできるのです。
ところが、間に代理店が入ることで「金曜日の午前中(もしくは木曜日の夕方)に原稿をいただきたい」と言われます。締め切り時間が大幅に早まってしまうのです。
(ほかにも仕事はあるんです。あなたのためにこちらが過労死ですか?)

さて、月曜日の朝、新幹線の車内で「おはようございます」。代理店さんは缶ビールを手にしています。
これ長年疑問なんですが、どうして出張するビジネスマンたちって新幹線に乗ると朝から缶ビールなんでしょう? 出張の移動は「勤務時間内」でしょ?

こちらは移動も貴重な時間。車窓を眺め、幼いころの旅行のことを思い出したり、これから行く先の自治体(街)のことを思ったり、プレゼンでどんな話をしようか…etc.

ところが代理店さんは漫画週刊誌を広げています。
(先週のうちに渡した資料には目を通してくださったんですか?企画の内容に関する話題はないんですか?)

さて現地でプレゼンテーション
代理店さんがまずは口火を切って、今回の企画の趣旨などを説明します。そして企画の中身については私から。
聴いている人たちは、手元の資料を誰が書いたのかはすぐわかるようですね。中身に関する質問はこちらに来ます。

代理店さんは、事前に東京で打ち合わせした筋書き通りのことを私が言うと、「そうそう」といかにも自分が仕切っているかのような様子で、逆に事前に打ち合わせしてないこと(例えば現地の歴史や文化)について私が触れると、台本にないことを言っていると思うのでしょうか、ちょっと不安そう。話はあくまで相手あってのもの。多少のアドリブは入りますよ(笑)。


大いなる中間マージン

「ピンハネ」…言葉は悪いですが、大きな仕事になりそうなところに行って、制作者とスポンサーの間にたって「分け前」をとるのが彼らの仕事です。
制作者から見ると、同じ予算でできる中身が削られるのです。お金を出すスポンサーから見ると、同じ成果を得るのに予算が膨らむのです。

大手のDやHなどの広告代理店になると、所帯も大きくなるだけ「分け前」も大きくなります。

地方イベントなどで予算も限られている中、間に大きな代理店が入ることで、実態のない大きなお金が動くことになります。それでもうまく回ればよいのでしょうが…

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1988年、北海道で展開された「国際・食の祭典」で、90億円もの赤字を出し、地元北海道の中小・零細企業の人たちに自殺者が続出したことを忘れてはなりません。


できれば直接クライアントと

冒頭に書いた旅行代理店のように、こちらがひとりですべてを手配することが大変で、どうしても代理店に入ってもらわないと困る場合はともかく、音楽でもイベントでも、間にわけのわからない人が入るよりも、直接相手(クライアント)とやりとりできたほうが、予算もフルに使えます。

こちらが主催者(クライアント)に確認したいこと、お願いしたいことを箇条書きにしてFAXしておいても、それをちゃんと伝えてくれてしかるべきタイミングで返事が返ってくればいいですが、いつまでたってもなしのつぶてで、その後どうなったのか尋ねると「は?」みたいな反応をされたり、当日現地に行ってみると何も伝わってなかったり…

音楽行事でいうと、PAやマイクの位置など一般的なことは分かっても、ピアノとキイボードの区別もついてない。「88鍵ありますか?」と聞いても「なんですか、それ?」と意味も分からない。立って演奏できる楽器もあるがチェロのように座ってしか演奏できない楽器もあることが分からない。椅子を用意するように頼むとひじ掛け付きの椅子を用意させる…etc.

むしろ主催者側や会場の人と直接やりとりした方が話が早かったりして(笑)
具体的なことをわかってなくて、伝達すら不完全、単にお金の流れの上で「上」に立つだけでは、いていただく意味がないばかりか正直申し上げて迷惑です。



限られた予算で最大の成果を求めるのであれば、行事の主催者(スポンサー)もなんでも代理店に相談するのではなく、ある程度自らの企画イメージをしっかりもって、音楽など具体的な作り手(制作側)と直接やりとりする。そして音楽などを提供する側も、イメージを伝え提案する力・営業力・交渉力をもつ。中間に代理店を入れる仕事と、直接やりとりする仕事との棲み分けが必要かもしれません。

代理店そのものを全面的に否定するつもりはありませんが、求める人(=スポンサー)と応える人(=制作者)の間にたってコーディネイトするのであれば、もっと仕事の中身・社会の一般常識を謙虚に深め、音楽イベントなら多少なりとも音楽のことや楽器のことについても勉強して、スポンサーと制作者とをうまくつなぐだけの存在価値をもっていただきたいものです。


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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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