アマチュアスポーツの祭典 アスリートたちの夢を!

8月10日(水)

暑い夏、リオでの五輪の熱い戦いに連日沸いています。日本の選手たちもさまざまな種目で大活躍しているようですね。

とくに、体操男子の団体金メダルは素晴らしかった。怪我やスランプ、プレッシャーもあったでしょう、よくあそこまで邪念を振り切って演技に集中し、ミスのない完璧な演技で見事世界一に輝いたな、と。
あの選手たちの笑顔に感動と勇気をいただいた方も多いことでしょう。

そこに水を差すつもりはないのですが…

連日のマスコミの報道は「メダルはいくつ取れるか」ばかり騒ぎすぎてないでしょうか?
こういうときだけ「ニッポン、ニッポン」と異様な盛り上がりをして騒ぎ、メダルを「期待」することが、本当に「応援」なんでしょうか?
選手たちの素晴らしい努力や夢とややずれたところで騒ぎすぎてないだろうか?

…と、私はふと思ってしまうのです。

そういうことを口にすると誤解を受けます。
みんながお祭りとしてオリンピックを楽しみ、日本の選手を応援しているのに…と。


◆最高の試合を「楽しめる」こと

私がふとそんなことを思ってしまう背景には、実はロス五輪(←だいぶ古い話で恐縮です。調べたら1984年でしたね!)の時の、あるコラムが頭にあるからなんです。

ロス五輪の時、なんの競技だったか忘れましたが、日本の選手にインタビューしたら「思いっきりいい試合を楽しめました」というコメントが返ってきた。それに対して国内でブーイングが起きたんです。

「日本を代表して送り出され、メダルを目指すべき立場にある選手が『楽しめた』とは何事だ!、けしからん!」…と。

それに対して、元体操選手の山崎浩子さんが、とてもいいコラムを書いていたのを覚えています。

当時私の実家では東京新聞を取っていて、そのコラムを切り抜いてファイルしたのを覚えてます。
さすがに今は手元に見当たりませんが、そのコラムの骨子はこうでした。

オリンピックを目標に4年間努力してきて、世界の最高レベルの選手たちが集う大舞台。緊張もするし、プレッシャーも当然あります。

でも、そこまで努力してたどり着いた人だけが立てる世界最高峰の舞台。そこで緊張のあまり力が出せないのではなく、世界各地から選りすぐりで難関を潜り抜けてきた最高の仲間たちと、思いっきり自分の力を出し切っていい試合ができたとき、そこには他では決して味わえない最高レベルの『楽しさ』があるのです。

決していい加減な遊びレベルの「楽しみ」ではなく、「楽しみ」にもいろんなレベルがあるということなんです。

そんな内容だったと記憶しています。

どうも「楽しい」という言葉は、安易でいい加減なもの、不真面目で不謹慎、というイメージでとらえられがちですが、そこを山崎さんは批判することなく、上手な表現で伝えてくれていたんですね。

これはスポーツの世界に限らず、舞踊でも音楽でも、どの世界でもいえることではないかと思いました。


4年に一度集う、世界の最高レベルの「仲間たち」

私はどうしてもショパンコンクールチャイコフスキーコンクールなど、音楽の世界と比較してしまうのです。

オリンピックと同様、ほぼ4年に1度のペースで開催され、世界各地から若い演奏家が最高水準の演奏を披露し、優勝者が決まるのです。先だって亡くなられたピアニストの中村紘子さんをはじめ、日本人の優秀な演奏家たちもこれらのコンクールに上位入賞を果たし、ソロ活動を展開されてきました。

コンクールですから、もちろん順位が決められる「戦い」なわけです。4年後にはさらに若い人たちもどんどん出てきますから、参加する人たちにとってチャンスはそう無限にあるわけではありません。

まさにオリンピックと同じだと思うのです。

最終的に1位・2位・3位…と順位がつけられるわけですが、世界のさまざまな国の若者が、同じ作曲家の作品に挑み、技を磨いてきたわけです。他国からエントリーしてきた人たちは、決して「敵」ではなく、見方によっては同じテーマを共有するかけがえのない「仲間」ではないでしょうか?

たしかに相手国からの参加者は「ライバル」でしょうが、決して「国」を代表して「戦果」を期待された「兵士」ではありません。

努力して積み重ねた結果を思う存分に発揮し、世界最高レベルのステージに立てることを心から「楽しめ」たら、きっと幸せだろうなと想像します。



音楽とスポーツとの違いは?

しかしそうした音楽コンクールは、オリンピックのような「国民的な盛り上がり」はありません。日本人が上位入賞すれば、後日ニュースなどで紹介される程度です。
ある意味気の毒なようにも思いますが、逆に変な意味での「日本代表」的なプレッシャーはなくていいのかもしれません。

しかし、このスポーツと音楽との違いって何でしょうね?
スポーツ人口に比べて音楽人口はそんなに少ないのでしょうか?
それもあるかもしれませんが、ひとつにはスポーツの分かりやすさ があると思います。

楽器演奏、バレエ、フィギュアスケート…それぞれ、単純な技術点だけではなく、表現力、芸術性といったことが大きな評価要素になります。そこは一般の人にはわかりづらいのかもしれませんね。
(もっとも、少し見ていれば、本当に素晴らしい演技には吸い寄せられるものがあり、素晴らしいものは素晴らしいと分かると思うのですが…)

一方スポーツは一般に、ゴールにボールが入ったかどうか、持ち上がったかどうか、飛べたかどうか、得点が入ったかどうか…とにかく結果が誰の目にもはっきりと見えます。戦いぶり、精神力、集中力などもすぐに結果に表れます。

そして所属チーム「ニッポン」の結束意識を高める力も大きいのでしょう。


オリンピックには巨大なお金が動く

音楽などの芸術の世界とスポーツとを一般論で比較する以上に明らかなこと、それはオリンピックの長い歴史があること、そして開催地では巨大な経済効果をもたらす、ということがあります。

スタジアムや各競技場、選手村などの整備はもちろん、世界からアスリートを迎えることを前提に、鉄道や道路などのインフラ整備が進む…といった大きな波及効果があります。
選手たちの日頃の練習を支えたり用具や服を提供するスポンサー企業の力も大きいです。

そうしたことが、政治的な力、ひいては国の利権にまで絡んでしまうこともあります。
4年後の東京五輪に向けても、政治の世界では「東京五輪を何がなんでも成功させる!」が合言葉になってますし、そのためにすでに大きなお金が動き出しています。

新国立今日事業プラン

建築不可能ともいわれたあの奇抜なデザインによって、予算規模も当初の予算枠を大きく膨れ上がらせました。

福祉や、災害からの復興など、国内でやらなくてはならないことも山積している中で、弱いものを守るための予算はどんどん削られる一方で、4年後のわずか2週間のオリンピックに向けて使われるお金はどこまで膨らみ続けるのか?、バランス感覚、優先順位としてどうなのか?

すでにそういう声は多くの方の間で広まり、あらたに就任した都知事もそうした期待に応えてきちんと見極めていくと公言しています。


…まあ、こういうことを書くから、私はオリンピックに対して否定的だ、スポーツに理解がない、国民レベルでみんな盛り上がってるのに…と「非国民」のように言われるんでしょうね(笑)。


アスリートたちの夢の懸け橋に栄光あれ!

冒頭にも書いたように、4年間たゆまぬ努力をしてきて、世界の舞台で競い合うアスリートたちのことを、私は決して否定するつもりはありません!

芸術でもスポーツでも、世界最高レベルの舞台に立つ人たちに、大いに楽しんで実力を出し切ってほしいと願う気持ちに変わりはありません。

それだけに、あまりにもメダルの数を競うだけの熱狂になったり、妙に評論家のような分析をして勝敗を予想したり、かつてのロス五輪の時のように選手たちの「最高の試合を楽しめた」という言葉に「けしからん」などという声が飛び出したり…

アスリートたちの純粋な気持ちを逸脱して騒ぎすぎないでほしいと思うのです。


選手の家族・友人、支えてくれてきた郷里の人たち、出身校のひとたちが「メダルを期待してますよ」と言って激励・応援するのは当然です。「メダルを期待してますよ」という表現そのものを否定するつもりはありません。

ただ、画一的なメディアの扇動で、とにかくニッポンの選手たちに1つでも多くメダルを、と騒ぎすぎるのはちょっと違うのではないか、というところなんです。その微妙なニュアンスを感じていただけたら…

また、アマチュアスポーツの祭典であるオリンピックを、あまり政治・カネ・国の利権などにまみれさせてほしくない、言い換えれば素晴らしいアスリートたちの夢を「利用」しないでほしいと願うところです。

今は五輪の真っただ中、どうかこれまでの努力を最大限発揮して、自分らしく、大いに楽しんできてください、と私はエールを送ります。

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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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