ティンパニ・曲の途中での音変え<ヒント>

8月8日(月)

久々に大きなオーケストラの演奏会に参加して1週間、またしても「夢のお告げ」…?
私が青春時代から大好きな曲のひとつ、スメタナ作曲の「モルダウ」が夢に登場しました。

少し前にある方から「曲の途中でティンパニの音を変えなくてはならないとき、どうしたらいいんでしょう?」と尋ねられていたこともあって、たまたまこの曲が夢に出てきたのかもしれません。

ちょっと(かなり?)マニアックなお話ではありますが、音楽のお好きな方、オーケストラの裏事情に興味のある方にはなるべく分かりやすく伝われば…と、書いてみます。



スメタナが祖国チェコをテーマに6曲から成る連作交響詩「わが祖国」を書きましたが、その中の2曲目が有名な「モルダウ」です。

小さな滴(しずく)が集まって「流れ」となり、狩猟の森や農夫が踊る村を通り、月の光を川面に映し出し、やがて大きな流れとなってプラハ市内を流れ、1曲目の「高い城」が風景として再現し、エルベ川へと注ぐ…そんな情景が目に浮かぶ美しい曲です。

まずは、有名なメインテーマはこちら。
楽譜を書くソフト「ミュージックスコア」を初めて使ってメロディラインを書き、伴奏は略してコードのみ書いておきました。

メインテーマ修正済
2010071117121967c_201608082311037b1.jpg

この曲のティンパニは、途中で何回か音変えが必要になります。

まず冒頭の有名な主題ではE(ミ)B(シ)。
メインテーマを2回繰り返し、次の「狩猟の森」に入る場面では突然C(ド)G(ソ)の音が必要になります。

続く「農夫たちの踊り」の場面では、D(レ)A(ラ)です。
そして、月の光が川面に映る静かなシーンを経て、ふたたびメインテーマが再現するところでは冒頭と同じE(ミ)B(シ)、そのまま曲の最後まで突き進みます。

仮にぜいたくにも4台・5台のティンパニを揃えられる、お金に多少の余裕のあるアマチュアオケでも、この曲で使用する音域は、たいてい真ん中の2台を音を変えながら使って演奏することになります。



問題は、静かな「川面に月の光が映り、水の精が舞う」シーン(=とても静かで美しい場面)の間に、次の再現部に必要なE(ミ)B(シ)の音を準備しておかなくてはならないところです。とくに、はじめに出てくるB(シ)の音を正確に取っておきたいところです。

スコアで見る限り、しばらく出番がなく休んだ後に、「シ」の音で静かなppのトレモロからスタートする、たったそれだけのことなんですが…


<スコア>
モルダウ20160808


今流れている音楽の調(キイ)とはまったく違う調に変わる場面ですぐにティンパニが出る場合、前もってどうやってその音を取っておくか…?

美しく水の精が静かに舞っている、ppのとってもデリカシーが要求される場面で、ただでさえ動きの目立つティンパニ奏者が中腰になってティンパニの皮に耳を近づけて次の音の準備を念入りに…はできれば避け、なるべくスマートに次の音を正確に取っておきたいろころ。

響きの色変わりを予想できれば一番望ましいですが、曲によっては「ある楽器のこの音に合わせれば良い」というガイドとなる音がある場合もあります。
しかし、この「水の精」が舞っているシーンでは、オーケストラ内のどこにもB(シ)の音が見当たらないのです。


これまでこの曲を演奏したことは何度かあります。
会場でのリハーサル時に、本番で使う楽器の癖をある程度把握しておき、ゲージを頼りに音を取り、もし万一叩き始めてみたら微妙にピッチが違っていたらペダルで微調整…

まあ一般的にはそんなところなんでしょうが…

<ティンパニのゲージ>
ティンパニのゲージ

やはり大好きなこの曲への思い入れが増すほど、ここではなるべく正確にB(シ)の音をとっておきたい!…そんな執着が出てきます。

ではどうしたら良いのでしょうか?



やはり、今流れている音楽の響きの色変わりをコードでとらえてみることです。
その中で、自分が次に出すべき音をどこから拾うか、です。

問題の、「川面に月の光が映り、水の精が舞う」シーンを、ピアノ譜にコード名をふってみました。


<楽譜1>
月の光が川面に…1カット

<楽譜2>
月の光が川面に…220160808

<楽譜3>
月の光が川面に…320160808

<楽譜4>
月の光が川面に…420160808

ご覧のように、この流れの中に「もろ出しのB(シ)の音」はどこにもありません!
しかし、あらためてコードの流れで追ってみると、じつはこの中に何か所か、次に出すべきB(シ)の音を探るガイドとなる響きがあるんです!

上の<楽譜4> ★印をつけたところ~

ホルンとトロンボーンが静かに刻みを入れてくるところで音楽は躍動感を増してきます。
このあたりで速やかに次の音を準備すれば、音楽の流れを壊すこともないでしょう。

2回ほど出てくる「Cm」の響きに「メジャー7」の響きを思い浮かべることができれば、それがB「シ」の音です!
あと、ちょっと難しいかもしれませんが、直近の「A♭m」の真ん中の音が「ド♭」=「シ」ですね!


そして問題の場面。

<楽譜5>
月の光が川面に…520160808

ティンパニがトレモロで奏でるB(シ)は、B7のベース音です。
そしてそれは、美しいメインテーマが再現するEmから見ると属七(ドミナント7)のとっても重要な音であることが分かります。

このように、次に出てくる調とまったく異なる響きで音楽が流れている中であっても、次に移り変わる響きを予測できるとベストです。
そのための訓練として、 「ある響き(コード)」の中の「ある音」をガイドにすることができれば、より正確な音取りができるのではないでしょうか?


*「わが祖国」全体の曲目解説はこちら…
  → 連作交響詩「わが祖国」




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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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