「趣味」・「ボランティア」とは? ~本当の豊かさを考えるヒント~

2016年7月12日(火)


私が若いころから(←今でも気持ちは若いつもりですが…笑)こだわってきた言葉に「趣味」「ボランティア」があります。
どちらも「仕事以外のこと」(=余裕があったらやればよいこと)というニュアンスでとらえられることの多い言葉かと思います。

★「給料をもらってやる仕事」以外のこと=すべて「趣味」なんでしょうか?
★お金にならないけど大切な仕事=ボランティア=無料奉仕があたり前、なんでしょうか?


◆あらためて問題提起

演劇をやっている方やジャズシンガーなど、本当にやりたいことはそっちだけど、それだけでは食べていけないので他に「本業」としての「仕事」を持っている方は多いと思います。 そういう方にとって、「仕事ではないこと=趣味」なんでしょうか?

「仕事=当然ながら真剣にやるべきこと」VS「趣味=自分の楽しみ」という区分で片付けるにはどうしても抵抗があります。
あと「ボランティア」という言葉についても同様です。「ボランティア=無料奉仕があたりまえ」なんでしょうか?

ビジネスとしての仕事ではなく、誰からも命じられたことではないけど、真剣に取り組まなければできない世界、それを必要としている人たちに応える責任もともなう世界…
もしかすると、「お金をもらってるんだからやって当然の仕事」以上に真剣にならないと成り立たない世界かもしれません。

「ライフワーク」っていう言葉もありますが、なんとなく仕事の一線からはリタイアして、残る人生、お金になる・ならないに関係なく自分が本当にやりたかったことをやる…そんな最終的な大きなテーマのような言葉ではないでしょうか?
そこまで大げさな言葉ではなく、若いうちから「会社だけ人間」になることなく、好奇心と情熱をもって真剣に取り組む仕事以外の世界…、なにかいい呼び方はないものでしょうかね?



趣味とは?

言葉としては「趣(おもむき)を味わう」こと。あたかも平安貴族の「管弦の遊び」のような、とても優雅な世界を想像させますね。

一方、英語では「Hobby」という言葉があります。 こちらはミニカーや鉄道模型といったミニチュアをコレクションするイメージがわきます。

もうひとつ、ミニチュアならぬ「アマチュア」という言葉が浮かびます。それを生業(なりわい)として報酬を得ている「プロフェッショナル(プロ)」と対峙する言葉で、報酬はもらわずに、もっぱら個人の「楽しみ」としてやる世界。

私が「趣味」という言葉を用いる場合、3番目の「アマチュア」というニュアンスで使うことが多いように思います。ただ、その使われ方にちょっと違和感を感じることがあるのです。



たとえば音楽の世界で、仕事(プロ)としてオーケストラをやるのと、アマチュアとしてオーケストラをやるのとの違いはなんでしょう?

もちろん演奏の技術面・表現力には天と地ほどの差がありますから、比較すること自体おこがましいのですが…

プロの方は基礎も十分できていて、ふだんの練習量・レパートリー・場数経験・表現力…どれも充分ある方たちですから、たいていどんな曲でも2~3回合わせ練習をして、指揮者が求めている音楽を理解し、要所ごとに確認する程度で、本番では素晴らしいアンサンブルができます。

一方アマチュアは、さまざまな年齢・さまざまな職業の人たち、楽器経験も異なる人たちが集まって「1」から音づくりをしていかなくてはいけません。
たいていのアマチュアは年に2回ほどの定期演奏会を開くとして、ひとつの曲に半年ぐらいの練習を重ねることになります。長い道のりです。

編成の大きな曲を演奏しようと思ったら、プロでもアマチュアでも同じ楽器・奏者が必要になります。
数回のリハーサルだけで本番を迎えられるようなベテラン揃いの「一発オーケストラ」は別として、多くのアマチュア団体は半年ほど練習を重ねるので、大型楽器も毎回揃えて運ばなくてはなりません。

プロのオーケストラだったら専属の事務局があり、演奏面以外のことは事務局がやってくれるので、演奏する人は音楽面・演奏にだけ集中すればよいでしょう。もちろん演奏面に求められる質の高さ、厳しさ、責任は大きいですが。

一方アマチュアには、そこまで演奏面での責任はないとはいえ、やはりそれなりの演奏レベルにもっていくまでの長い道のりがあり、毎回の練習会場の確保、楽器の手配、運搬、練習計画、本番会場の手配、チケッ・チラシ・プログラムの作成、告知、次回の曲目選定、そのほか団の運営に関するもろもろのこと…etc.

それこそ演奏以外にも膨大な「仕事」があります。
それらすべてを、演奏する団員が自分たちでやるのです。それぞれ忙しい本業をほかに持ちながら…

ここであえて逆説的なことを書かせていただきます。
プロだから大変、アマチュアだから適当に「遊び」でいい…なんでしょうか?



もしプロの演奏家だったら、それが本業ですから、朝から晩まで音楽に集中していても誰からも文句は言われません。でも「アマチュア」が、仕事の休みの日に朝から晩まで楽器の練習ばかりやってたら、家族から見放されます(笑…ごとではありません!)

「やって当然」とされないことを、どうやって本気で時間を作り出して続けるか…?

また「仕事」だったら、万が一本番当日に怪我をしたり病気になったり家族に何かあった場合、急きょ休んでもたいてい代役がいるでしょう(乗り番・降り番のシフトがあって、降り番の人が急きょピンチヒッターで入る。万一に備えて代役で注目を集められるように、したたかに練習している人もいるかもしれません)。

音楽以外の世界で見ても、たとえば会社の仕事は「組織」で動いてますから、個人ひとり欠けても組織として誰かがフォローしてちゃんと機能しなくてはいけません。むしろ「その人でないと分からない」ような抱え込みがあったら組織としては良くないのです。

一方アマチュアは、何か月も前から練習を重ねてきて、各楽器の音色や微妙なタイミングも「その人が頼り」という要素も大きいです。
ずっと練習に参加してきて、本番当日に何か急な仕事が入ったから、家族が病気になったから「ごめん、俺ちょっと出られないわ」は簡単には許されません。楽器にもよりますが、代役はそうそう簡単には立てられません。

仮にお金を払ってプロに頼めば、その本番はなんとかクリアできるでしょう。でも、自分が出られる時・出たい時だけ参加して、本番当日「ごめんなさい」が簡単に許されるとしたら、アマチュアとして一緒にやる意味はなくなってしまいます。

つまり「仕事」だったらお金をもらってるんだから、やって当然、できて当然ですね。
一方アマチュアは、仕事ではないから「義務」ではありません。でも、「義務ではない=そのうち余裕があったらやればいい=遊び」という感覚では、いつまでたっても「そのうちできたらいいな」でしょう。

また、「好きな時だけ、出られる時はやればいい」では活動として成り立ちません。やる以上は「仕事以上」に真剣に覚悟を決めて取り組まなくては成り立たない世界。

この「真剣にやらなければ成り立たない世界=本気の遊びの哲学」を学んだのは私がまだ中学生のころ、今もご健在の鉄道模型屋さんのおやじさんからでした。

こちら、過去のブログ記事から…

→ 
「遊びから学ぶ 人生の恩人」 (2010年7月)



いまから10年以上前ですが、かみさんにそんな話をしたら、「あなたにとって家族とは、趣味より下にあるものなのね!」と言われてしまいました。いまだに言われます(泣)。
やる以上は決して生半可な「楽しみ」のレベルではなく、責任も伴い、それなりの覚悟がなければできないことなんだよ。釣りとかパチンコのように、好きな時・できる時だけやればいい気楽で無責任な遊びとは違うんだよ、ということが言いたかったのですが…

はい、本業の仕事、家族との時間も大切にきちんと向き合い、人並以上にやった上で、趣味にも真剣に取り組まなくてはいけない、と表現を修整させていただきます。


◆ボランティアとは?

「趣味」と並んでもうひとつ私の中で気になる言葉として「ボランティア」があります。

これも、「仕事=報酬を伴うもの=当然の義務としてやるべきこと」に対して、「ボランティア=任意で、報酬を受けないでやること」という風にとらえられることが多いように思います。

しかし、そもそも「ボランティア=無料奉仕があたりまえのこと」ではないのです。
本来は「自分の意志にもとづいて行う活動・仕事」という意味です。

給料をともなう「仕事」として、組織の上から命じられてやらなくてはいけない仕事、ビジネスとしての「仕事」ではなく、大切なこと、必要としている人のために、積極的な意志(=善意)によって行う仕事です。


一方、ビジネスとしての「仕事」は、会社が利益を上げなくてはいけませんから、世の中に対して会社が作り出す需要というものも存在します。

経済学の喩え話に「エスキモーにどうやって冷蔵庫を売り込むか?」という話があります。

氷原で暮らすエスキモーたちには冷蔵庫なんて必要ないように思いますよね。昔から冷蔵庫なして彼らは生きてきたんですから。
そこで、彼らに「ビールのおいしい飲み方」を教えるんだそうです。ビールももともとエスキモーにはなかったものでしょう。ひとつの「新しい文化を伝えること」と言ってもいいかもしれません。

そして、氷の中にビールを突っ込んでおいたらガチガチに凍ってしまいますよね。
そこで、ビールを凍らせることなく、適温で冷やしておくために、冷蔵庫というものが必要なんですよ。これがあると便利ですよね、と営業するわけです。

ちょっと悪い言い方かもしれませんが、もともと需要(=ニーズ)のなかったところに、新たな需要(=欲求)を作り出し、そこに「仕事」を作り出す、ということです。
ビジネスとしての「仕事」の中には少なからずそういう側面もあるでしょう。



一方「ボランティア」はどうでしょうか?

被災地の瓦礫を撤去する、お年寄りの施設で介護のお手伝いをする…どれも本当にそれを必要としている人が現実にいます。
しかしそれを企業の論理(=採算性)で考えたら、「仕事」としては成り立たない世界。
でもそれを必要としている人にとっては「待ったなし」の仕事が現にそこにあるのです!

そこに、お金目的ではなくあくまで「善意」で駆けつけて、親身になって働くのが「ボランティア」ではないでしょうか?

ならば、最低限の交通費・必要経費、そしてなにより彼らの「善意」による「かけがえのない働き」に見合ったなんらかの報酬はあっても良いのではないでしょうか?

決して「もうけ主義」に走るような高すぎる報酬は必要ありませんが、考え方によっては、「会社が儲かるための仕事」以上に、報酬面でも社会的にもきちんと認められてよいのではないかと。

このあたりも、以前のブログ記事に書いていることと重複します。

→ 
「本当に必要なことにお金が回る仕組みを」 (2013年9月)



もう一歩踏み込んで言わせていただくなら、政治家・議員たちこそ、「社会のため・世のため・人のために行う有償のボランティアで」という発想があっても良いのではないでしょうか?

もちろんただ(無料奉仕)で働けとは言いませんが、一般の労働者の賃金とはおよそかけ離れた異常に高い報酬や特権を与える必要はありません。アメリカのように「労働者の平均的賃金」とすべきです。

そうすれば、カネ儲けのために政治家になる人や、政治家になったとたんに金銭感覚がマヒしておかしな不正を働くような人は現れなくなるのではないでしょうか!?

政治倫理の問題と合わせて、税金の使われ方も大きく変わり、その分を福祉などの社会保障の充実に回せば、財源問題も大いに解決でき、何よりの政治改革・行政改革になるのではないでしょうか?


仕事だからしょうがない…?

最後に、ここまで「趣味」や「ボランティア」と対極にあった言葉は、いうまでもなく「仕事」ですね。
報酬をいただき、義務も責任もともなう「仕事」が大切なことは言うまでもありません。

しかし、いつも「仕事が忙しいから」を言い訳にして、「会社がすべて」になってませんか?
飲み会やゴルフなど、会社の人がちょっとでも関係するとすべて「仕事」なんでしょうか?
大切な人や家族との約束をドタキャンしたりすっぽかしたときに「仕事だからしょうがない」を言い訳にしすぎてませんか?

入社面接で、あるいは新しい部署のトップとの面接で、「仕事以外に休日にこんな活動をしています」と言うと、みなさん「それは素晴らしいことだ。ぜひ続けてください」と言われます。

ところが実際の職場では、せっかく計画的に仕事もこなしてきて、週末近くになって、急な休日出勤をしなければならないかもしれない事態になることも。ふだんの休日なら出勤もいといませんが、前々から予定していた行事のある休日だったら…?

そんな時かならず言われるのが、「仕事とプライベートとどっちが大切なんだ?」

「仕事かプライベートか」と究極の二者択一を問う前に、仕事の中身、仕事の段取り・進め方、トータルなワークバランスを考えてみることが大切ではないでしょうか?

これも過去のブログ記事から…

→ 「仕事だからしょうがない」が多すぎませんか? (2013年6月)



「趣味」、「ボランティア」、そして「仕事」…ふだん当たり前のように耳にする言葉ですが、その中身について、「常識」とはちょっと違う切り口でつづってみました。

これは私自身が30年以上サラリーマンを経験してきた中で感じてきた、今の日本社会の価値観への問題提起でもあり、その中には「本当の豊かさとは何か…?」を考えるヒントも隠されているのではないでしょうか?


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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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