認知症は防げる!

◆ナン・スタディ

一昨年、認知症に関する特別講義を受講する機会があった。
その講義の中で、いくつか興味深い話題が出たが、とくに印象に残ったのが「ナン・スタディ」というものだった。

米ミネソタ大学が、フランスのノートルダム修道院で経年行ってきた調査である。

ノートルダム修道院
ノートルダムの修道院

この調査の中でとくに有名なのが、101歳のシスター・マリーの事例で、興味があったのであらためて調べていたら、こんな文献があった。

100歳の脳
David Snowdon(デヴィッド=スノウドン)著


101歳のシスター・マリーは、ノートルダムの修道院で日々の日課も完璧にこなし、他の修道女たちとのコミュニケーションも活発で、後輩たちの指導にも優れ、知能テストでも高得点だった。

しかし、マリーの死後の病理解剖で、脳は何年も前から萎縮し、老人斑や神経原線維変化が確認され、いわゆるアルツハイマー病であったことは明白であった。

ではなぜ、認知症の症状が出なかったのか…?


認知的予備力=認知症の症状が出にくくなること

脳そのものはアルツハイマーと診断される状態であったにもかかわらず、生前まったく認知症の症状が現れなかった…これは何を意味するのだろうか?

マリーは、人生の早い時期から、さまざまなことに興味をもち、敬虔なる信仰生活と規則正しい健全な生活を続けてきた。

修道院に来てからも、つつましく祈りと奉仕の活動を続け、勉学にいそしみ、毎日讃美歌を歌い、教育活動にも従事し、若い修道女たちからも尊敬され愛されていた。

歳をとっても好奇心を絶やさず、常に新しいことに興味をもち、新しい知識を積極的に吸収し、過去の経験や知識と有機的に結びつけながら思考を重ね、人とのコミュニケーション、とくに若い人たちとのコミュニケーションを活発に行うことで、脳内神経活動を活発に刺激し続けてきた結果ではないか、と。


◆認知症に「なってしまった患者への対処」よりも「予防」

いまアメリカには500万人もの認知症患者がいると言われている。

その認知症患者の多くは、家族とも社会とも隔離された施設に収容され、刺激も変化もない毎日を送っている。施設内を徘徊すれば強制的に部屋に連れ戻され、大きな声を出したり暴れたりしたら安定剤を投与され、夜眠れないと訴えれば睡眠導入剤を投与され…

こんな毎日を送っていると、みな一様にうつむいて無口になり、職員の問いかけにもまったく反応しなくなってしまうという。

日本も、アメリカを追うように認知症の患者は確実に増加する傾向にあり、2020年には400万人を超えるのではないかとも言われている。

安倍政権も施策として「認知症対策」を打ち出したが、その中味は「医療の充実」「施設の充実」「製薬会社との連携強化」…といったものである。

こうした政府の対応は、いわば「なってしまった認知症患者に対してどう対処するか」というもので、施設に収容して、薬漬けにする方向の施策のように思える。
それ以前にもっと大切なことがあるのではないだろうか?


◆パーソナル・ソング

一昨年の暮れに「パーソナル・ソング」というドキュメント映画を見て、このブログでも紹介した。

パーソナルソング

認知症になってしまって過去の記憶を失い、日常の生活にも支障をきたしているお年寄りたちに、その人が若いころに関わったある音楽、その人にとって特別な音楽=「パーソナル・ソング」をヘッドフォンで聴かせると…

突然目を輝かせ、昔のことをはっきりと思い出して突然饒舌に話しはじめたり、リズムに合わせて体を動かしたり、ふだんは身体機能として動かないはずのところが動いたり、ある人は涙を流し、ある人は笑い…さまざまな奇跡が起こるのである!

パーソナルソング2a
パーソナルソング2

1000ドルの薬よりも1曲の音楽を…!
パーソナル・ソング


自分らしいいい毎日を過ごす

高齢になるにつれて(=じつは20歳を過ぎるころから)脳細胞はどんどん死滅していくと言われている。
歳を重ねるごとに神経伝達物質の活動も鈍化する。さらにアルツハイマーによって脳が萎縮してしまうことで、さまざまな障がいが出る。

しかし、音楽を聴くだけで、脳のさまざまな部分を刺激し、脳全体が活性化させられる。
音楽に限らず、脳をいかに活性化した状態に保てるか?
シスター・マリーの事例もしかり、パーソナルソングで報告されている多くの事例もしかり。

脳細胞の数や年齢的に現れてくる障がいだけが問題なのではなく、生きている脳をいかに刺激し、脳細胞同士の結びつきを強め、活性化した状態を保てるかがとても重要なのである。



現代社会では、専門分化した仕事、ルーティン化された仕事が多く、ストレスもたまりやすい。
同じことの繰り返しだけの毎日、言われたこと・決められたことは完璧にこなすが余計なことは一切しない、仕事で疲れ切ってただ「休息」するだけの休日、一人でゲームに没頭…

「人となるべく関わらずにすむこと=便利で安全」と、あらゆるものが自動化され、不特定多数の他人との会話の機会が減っていく。内々の友達同士のお喋りでは異様に盛り上がるが、周りへの配慮に欠ける。友達以外の外の人との会話が下手、説明が分かりづらい。身近な他人の存在に気づき、思いやり、譲り合うといったことが希薄で、ワガママで無表情になっていく…etc.
想像力と表現力の鈍化…それは、脳にとって危ない状況を作り出しているのではないだろうか?



若いうちはある程度「仕事第一」で、責任ある立場もあり、会社のために多くの時間を費やすのもやむを得ないが、ある年齢に達したら「会社だけの人生」から「自分らしい人生」へとチェンジしよう。会社だけでなく「社会」に参加しよう。
できれば、歳をとって仕事も完全に引退して、なにもやることがなくなってから「さて、何をやろうかな…?」ではなく、少しでも若い現役の時からなにか「自分の世界」を持とう!

幼少のころから興味を持っていた世界、家族や友達との時間を大切にし、さまざまなことに興味をもって新しいことにチャレンジし、若い年代の人とも積極的に交流し、語り合い、よく笑い…

「認知症にならないためにいい生き方をしましょう」ではなく、「いい生き方をすることで結果的に認知症も防げる」ということではないだろうか。

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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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