「ふるさと納税」は「お得」な制度…?

12月8日(火)

師走に入り、なんとなく気忙しい季節になりました。
先日テレビを観ていたら、12月に入って「ふるさと納税」のかけこみ申請が増えている、との話題が!

私もこの「★豊かさとは…?」のカテゴリーで、これまでにも何度か話題にしてますが、自分が今現在住んでいない地域、たとえば生まれ育った「ふるさと」に、あるいは旅行で訪ねたお気に入りの、頑張ってほしい市町村などに自分の意思で税を納める、という発想があってもよいのではないかと思ってました。

しかしこの「ふるさと納税」、特産品目当てのフィーバーぶりにちょっと違和感も感じます。そもそもこの制度の発想の原点は?…私なりに検証してみました。


◆「取られる税金」から「自分の意思で納める税金」へ

サラリーマンが給料から差し引かれるのは、所得の10%にあたる所得税(→国へ)、そして前年の所得に応じて決められる住民税(→住んでいる自治体へ)。 
この税金の他にも年金だの保険料だのなんだかんだ差し引かれるものが多く、給与明細を見ると腹立たしいから見ないようにしている…私もそうですが、実はそれがいけないんです!

知らないうちに「取られる税金」、その金額を見ないようにすることで、自分たちがどれぐらい税金を払っているのか、その税金がどう使われているのか、にも関心が薄くなってしまうのです。

そこで、一方的に引き去られる税金ではなく、働く納税者ひとりひとりの意思で納める税金、とりわけ自分がいま住んでいない「地方」へ納税できる仕組みができたらいいな、と思ってきました。

いまは所得の10%を所得税として国に徴収されますが、それを例えば10口に分け、ある程度はこれまで通り国へ、何口かは自分の好きな自治体(都道府県)へ、という発想です。

地方が、国からの地方交付税補助金をあてにして大型プロジェクトの公共事業を計画しても、多くの場合受注するのは東京や大阪に本社のある大手のゼネコン。地元に落ちるのは一時的な工事関係者の人件費と飲食店のお客が増える程度。国からの補助金のほとんどは地方をスルーして大都市の大企業に入るのです。
また、どの地方も観光産業を発展させ、願わくは企業や学校を増やして税収を増やそうとします。とかく全国どこにでもありそうな綺麗な施設はできますが、その地域の美しい自然や伝統的な文化が失われてしまうことも。

そうではなく、独自の発想で魅力的なふるさと創生をやれば都会に暮らす人からも納税してもらえる、という仕組みが出来たらいいのに…と。


◆「ふるさと納税」制度とは?


そういう意味では、いまの「ふるさと納税」はそれに近い発想の制度ともいえます。

しかし正確にはこれは「納税」ではなく「寄付」です。ある自治体(市町村)に「寄付」をすることで、その分が翌年の住民税から「控除」される、いわゆる「寄付金控除」のしくみを活かした制度なんですね。

私の発想と大きく違うのは、国に納める税金(所得税)の一部を直接地方へ、ではなく、私たちが住んでいる地域に納める住民税の一部を回す、という点です。

たしかに東京や大阪などの大都市は、人口も多いし法人も多いので税収は豊かでしょう。その一部を地方の市町村に回してもよいかもしれません。 でも、私の思ってきたのは、自分の住む自治体に納める住民税からではなく、「国」に納める税金(=所得税)の一部をひとりひとりの労働者(=納税者)の意思で地方に、つまり国が地方にばらまく地方交付税や補助金の代わりに一人一人の納税者から、という発想でした。

それはともかく、今は住んでいない故郷へ、あるいは自分の好きな自治体に、自分が働いて得た収入から納めるべき税金の一部を寄付という形で回すことで、必ずしも生活の場ではない地方にも関心が寄せられ、財源がどう活かされるかにも関心が高まり、地方は地方で都会に住む人にも覚えてもらえるような独自のふるさと創成をする励みになる等、お互いにいい意味で意識が変わるきっかけになれば、という期待はあります。


豪華な特産品目当て?

いまは書店に「ふるさと納税」のコーナーもあり、さまざまな書籍が出ています。
制度のしくみの説明とあわせて、全国の市町村ごとの特産品がカタログのように並んでいます。

ふるさと納税

ある自治体に「寄付」をすると、寄付したことの証明書が発行され、それを自分の住む自治体に提出すると、翌年の住民税(=前年の所得に応じて課税)から寄付額に応じた控除が受けられる、という仕組み。

もし3万円寄付すると、手数料の2千円を除いて2万8千円が翌年の住民税から控除される(=払うべき住民税から免除される)のです。

そこにもう一つ、豪華な「おまけ」が付きます。寄付した自治体からかなり豪華な特産品などの「返礼品」がもらえるのです。3万円寄付すると1万5千円相当の特産品が送られて来ます。
1万5千円相当の品を「買った」ことになるのか「貰った」ことになるのか…?

もともと払わなきゃいけない税金を「寄付」に回すわけだから差引ゼロ。しいて言えば手数料の2千円で豪華な特産品が手に入る…「わ、お得!」「やらなきゃ損!」という感覚ではないでしょうか。

ただし、寄付できる額は、その人の年収ごとに上限が設けられています。本来払うべき住民税も一定額は確保しなくてはならないという趣旨でしょう。

たとえば年収が300万円の人の場合、寄付できるのは3万1千円です。しかし年収1千万円の人は18万8000円、年収3千万円ではなんと106万2000円まで寄付が可能。
106万円の半返しといえば53万円! 冷蔵庫にはメロンやカニや牛肉がびっしり…!?

つまり、「ふるさと納税」による「お得感」は富裕層ほど大きいのです。
(しかも、比率は直線的ではなく、年収が多い人ほど限度額の比率が上がっています。)

理念としての新しい「地方」のあり方や納税者の意識変革といった視点からすると、豪華な景品につられての「節税」感覚、「損得」、しかも富裕層ほど得をする仕組み…、なんとも皮肉な結果にも映ってしまいます。


まずは試行段階から

「損得」の節税感覚や、「特産品目当て」というと聞こえは悪いですが、人にはなんらかの動機付けは必要です。

株式にしても、本来は会社に出資することで企業を支え、株主となって会社の経営にも関心をもち、もし業績が上がれば配当金をいただける、というものですが、多くの投資家はいわば「賭けごと」のような感覚で値上がりしそうな株を買い、値下がりしそうならさっさとその会社に見切りをつけて株を売ります。

人は多かれ少なかれ「損・得」の感覚で動くもの、それは仕方ないのかもしれませんね。

私の考えていたような納税を分配する理念で、地方からの会計報告やクーポン等の「おまけ」が付く程度では、手間をかけてわざわざやる人は出てこなかったでしょう。それがこの「ふるさと納税」によって多くの人たちが関心を寄せた効果は大きいでしょう。

3万円が寄付されれば、半返しで1万5千円の豪華な特産品を送ったとしても、地方には半分の1万5千円が残ります。もし1000人が寄付すれば1500万円。そんな寄付金が都会に生活する人から地方の市町村に寄せられたことはこれまでなかったでしょう。有効に活用していただきたいものです。

一方、都会の住民税の収入が減ってしまう心配もあります。その意味でも、年収の高い人への寄付金の制限枠をもう少し引き下げて、年収が高い人ほど「お得感」「節税メリット」が高くなる比率をもう少し押さえてもいいのかな、とは思います。

いずれにしても、都会の生活者にとっても地方にとってもメリットのあるこの制度、今後の展開を見守りたいと思います。

ちなみに、私が20代のころ関わった地方の「まちづくり」「ふるさと振興」の発想は、よかったらこちらの記事(ちょっと長いですが)の後半をご参照ください。

→ 
「ふるさと」…本当の「地方の時代」とは

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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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