ドヴォルザーク「新世界より」

10月12日(祝・月)


私が子どものころ、はじめてドヴォルザークの「新世界より」を聴いて、かなり長い交響曲なのに、本当はもっと長~い「新世界」という曲があって、その一部だから「より」なのかと思いました(笑)。

スメタナと並んでチェコを代表する作曲家ドヴォルザークが、アメリカの音楽大学(ニューヨーク・ナショナル音楽院)の院長として迎えられ、新天地アメリカから遠く離れた故郷チェコを想いながら作った最後の交響曲9番。だから「新世界より」なんですね。

あまりにも有名な曲ですから、全曲にわたっての細かい解説はしません。
もしこの記事を読まれて聴きたくなったらYouTubeでお聴き下さい。

私も若いころからアマチュアのオーケストラで何度となく演奏もしたことのある曲ですが、近々あるオーケストラで演奏するにあたり、ノイマン指揮・チェコフィルの演奏と、2008年に小林研一郎先生がドヴォルザークホール(モルダウのほとりに建つ伝統的なホール)でチェコフィルを振ってライブ録音された演奏とを聴き比べながらイメージトレーニングしています。

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この交響曲の特徴のひとつは、1楽章~4楽章のそれぞれ代表的なテーマが、楽章を超えて至るところで登場すること。交響曲の中で、楽章を超えて同じモチーフが用いられることを「循環形式」と言いますが、それをとても効果的に使っている曲だと思います。

そして、コード進行の面白さ。いわゆる古典派と言われるクラシックではなかったような(現代のジャズにも通じるような)コード進行が用いられています。

打楽器(ティンパニ)には、とくにメロディやコード進行は関係ないように思われるかもしれませんが、ただ休みの小節を数えて出るだけでなく、コード(響き)の移り変わりで曲全体の流れをつかむことはとても大切だと私は思っています。

自宅にティンパニなんか置けないので、もっぱらスコアパート譜、そしてCDを聴きながらイメージトレーニングするのが常ですが、できればピアノ譜も使ってコード進行で曲の流れをつかんでおくと、休みを数えなくても曲全体が頭に入ってきます。

似たようなモチーフであっても、コード(響き)がどう変わって何回目で出るのか、というとらえ方。
また、この曲ではティンパニはE(ミ)とH(シ)の音が基本(途中で音変えもある)ですが、自分の出している音が全体ではどういう響き(コード)の中でどういう役割の音なのか…、そんなことをちょっと考えてみたいのです。

ほんの一部ながら…

第3楽章の最後(コーダ)の部分

<楽譜1> 
「新世界より」3楽章コーダ 2b
★クリックすると大きな画面でご覧になれます(以下同じ)

中間にトリオを挟んでの3部形式。Em(ホ短調)の響きでいったん終結してから、コーダに入ると突然C7の響きが弦楽器に鳴り響きます(C7の7番目の音B♭がベース)。
そこに1楽章のテーマと3楽章のテーマがコラボになって現れます。

そしてベース音が一つ下がってA♭、その上にD♭(変ニ長調)の響き。
続いてF♯m(嬰へ短調)へ、そしてF7・-5の響き(=ティンパニのH音は、F7の「ー5」の音)を経て、E(ホ長調)に落ち着きます。

ここで1楽章の第2テーマがトランペットに現れます(合いの手は3楽章のテーマ)。

そしてE(ホ長調)の明るい響きからEm(ホ短調)の響きに変わって終結。
そのまま第4楽章へと突入します(楽譜2)。

<楽譜2>
4楽章冒頭

●第4楽章の最後の部分

<楽譜3>
4楽章ラスト1文字

とっても有名な第4楽章、いくつかのモチーフによって展開されていって、最後の終結を告げるかのようにティンパニがE(ミ)とB(シ)とを連打するあたりから。

全体の響きの色変わり(オレンジ色の囲み)は2楽章の冒頭部分を再現しています。

そしてEm(ホ短調)の響きで頂点を迎え、いったん静まったところで、第2楽章のテーマと第3楽章のテーマが掛け合います(楽譜2-最下段)。


<楽譜4>
4楽章ラスト2文字

そしてティンパニの静かな刻みに乗って、第4楽章のテーマがホルンに現れます。
ふたたび湧き上がって頂点に達したところで、木管と弦楽器によって第4楽章のテーマがユニゾンで再現されます(楽譜3-3段目)。

次に、第一楽章のテーマと第4楽章のテーマが少し変形した形ではありますがコラボになって現れます。
トロンボーンとホルンによって第一楽章のテーマが下から支えるように、それに乗ってトランペットが第4楽章のテーマを明るいホ長調の響きで高らかに2回歌いあげ(楽譜3の3段目~4段目)、テンポアップして壮大な終結を迎えます。


<補 足>

このように、楽章を超えて同じ主題(モチーフ)が現れるのを「循環形式」と冒頭で紹介しました。
チャイコフスキーの交響曲4番などでも循環形式が用いられていますが、ドヴォルザークの「新世界より」を聴いていてまず思い浮かぶのは、同じくチェコを代表する作曲家・スメタナの連作交響詩「わが祖国」でしょう。

6曲から成る連作交響詩の中で、2曲目の「モルダウ」の最後に1曲目の「高い城」のテーマが登場します(小さな流れが大きくなってモルダウ川がプラハの街を流れてエルベ河へと注ぐとき、目の前にプラハ城が風景としての「高い城」として現れます)。

また6曲目(終曲)の「ブラニーク」は、5曲目の「ターボル」のモチーフをそのまま受け継いで展開し、最後の終結部分では1曲目の「高い城」のテーマと「ターボル」のテーマが重なり合って壮大なフィナーレへと進んでいきます。

ちなみに、ドヴォルザークはスメタナより10年ほど後に活躍したチェコを代表する作曲家で、スメタナとともに「国民楽派」と呼ばれています。

→ スメタナ連作交響詩「わが祖国」 参照


   
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プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

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