属七の引力 なぜ? 

1月29日(日)

単なる楽典の書き写しではなく「人はその音・響きを聴いてなぜそう感じるのか?」。
本日は、私のこだわる「5度の引力」のスペシャリスト、「属七」さんにお越しいただきました。


◆属七とは?

ある調の主音から5度上の音(=属音)を根音とする長3和音に、根音から7度上の音を加えたもの。
はい、「属七」という名前の定義・説明としてはよろしいのではないでしょうか。

<図解 おさらい>

属七の説明

簡単なハ長調を例にこの説明を当てはめると、主音「ド」から5度上にある属音「ソ」をベースとする「ソシレ」という明るい長3和音に、ソから7度上の「ファ」を加えたもの、ですね。
とらえ方としては「ソシレ」+「ファ」=「属七」 。用語の説明としては良いでしょう。

でも、その「属七」がなぜ主音「Ⅰ」の響き(=5度下)へ戻りたくなる引力を持つのか…?

多くの楽典の本にはそこの説明がありません。実際に音楽を奏でる中で感じる感覚、コード進行を考える上でもっとも重要な「答え」がないのです。

もはや「楽典」の領域を超えた「和声心理学」とでも呼ぶべき未知の領域かもしれません。そこに足を踏み入れてみましょう。


属七はどんな響きか?

「ソシレ」+「ファ」
と考えるのではなく、「ソ」+「シレファ」と見たらどうでしょう?
コペルニクス的発想の転換です。

「ソ」をベース音に、その上に「シレファ」という和音が乗っかっている…と思って響きをよく聴いて味わってみてください。

「ソ」という音は、ト長調では主役の最も安定した音ですが、ハ長調の中では5番目の音。
「気をつけ→礼→なおれ」「礼」で頭を下げてる音のベース音ですね。ずっと鳴らされていると、頭に血が上ってきて早く「なおれ」になってくれないかな…という音ですね。

その「礼」のベース音の上に乗っかってる「シレファ」という和音はどんな響きでしょう?

7導音

ハ長調の音階の7番目の音「シ」は「導音」といって、半音上の主音を導く音です。
その「シ」を根音とし、ハ長調で用いる音を3度ずつ重ねた「シレファ」という和音は…

下の2音間・上の2音間いずれも短3度の、減3和音(dimディミニッシュ)の響き。
7つのコードの中でも異色の存在で、つま先立ちをして頭を押さえ込まれたような、縮められて苦しくて、早く半音上の「ドミソ」に上がって落ち着きたくなるような不安定な響き…ですよね。

「ソ」+「シレファ」が、いかに「ドミソ」に戻りたくなる響きか、お分かりでしょう?

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もう何年も前に描いた下手な絵を再び…


◆いろいろな7th

ところで、属七は「7th」コードの一種ですが、「7th」コードにも4種類あります。
分かりやすく表記された図をサイト上で見つけたので、これを借用して解説を加えさせていただきます。

4種類の7th

明るいドミソ=C、暗いドミ♭ソ=Cmにそれぞれ、ベースの音「ド」から短7度上の「シ♭」を重ねたもの。左の2つ、C7Cm7ですね。

★補足

このC7属七とするのは、ドより5度下のファを主音とするヘ長調、または同主調のへ短調(属七は同主調の長調・短調に共通)。どちらもシには♭がつく調性です。その調を構成している音を上に乗せたものですね。


同じく明るいドミソ=C、暗いドミ♭ソ=Cmにそれぞれ、ベース音「ド」から長7度上の「シ」を重ねたもの。右の2つ、Cメジャー7Cマイナー・メジャー7ですね。

ハ長調の5番目の「ソシレ」も明るい長3和音(=下の2音間が長3度、上の2音間が短3度)。その上に、「ソ」から短7度上の「ファ」を乗せた「ソシレファ」という和音。上図のいちばん左のタイプで、コード名は「G7」(←先進国首脳会議ではありませんよ)。

★補足

ハ長調
と同主調のハ短調でも、属七「ソシレファ=G7」は共通です。「ソシレファ」から明るい「ドミソ」にも、悲しい「ドミ♭ソ」にも行けます。ただ、ハ短調の調性では♭が3つ付き、シにも♭が付いてますから、そのままでは「ソシ♭レファ=Gm7」になってしまいます。そこで、ハ短調の第7音「シ♭」を半音上げる必要がある…それが「和声的短音階」(ハーモニックマイナー)です。

和声的短音階を音階の形で示されて第7音が半音上がる…と示されても「なんで?」ですが、こういう意味だったのです。
3種類の短音階については、こちら(私のオリジナル)をクリックしてご覧ください。

短音階 3種類20170128

7thは 5度下へのきっかけ

明るい長3和音の上に「7th」をのせた響き、つまりC7、D7、E7、F7、G7、A7、B7(それぞれに♯・♭のついたものも)はすべて、他の調(=5度下の調)の「属七」にあたります。

曲全体を他の調に移す「移調」、曲の途中で調性が変わる「転調」、そのほか曲の中のちょっとした場面で5度下の響きへと色変わりさせるきっかけになる、いわば5度下への強力な引力を持った響きなのです。

このように、3和音に7thを加えることで5度下の響きへ、そこで安定したかと思いきやまた「7th」の音が加わってさらに5度下へ…と連続技で色変わりを繰り返していくのを「ウルトラセブン」と言います!

もちろん嘘ですが(笑)、私はよくそう呼んでいる「5度進行」ですね。
安定したかと思うと、それが「5番目の響き」に色変わりして、5度下へ…この「不安定→安定」の引力を人はどうして感じるのでしょうか?


◆「ソシレ」はいつ聴いても「ソシレ」なんだけど…

最後にもういちど「和声心理学」のお話し。

明るい和音「ソシレ」という響きは、いつどこで聴いても同じ「ソシレ」です。
周波数も「ラ=440Hz」を基準に合わせれば世界共通の、人類の共有財産、普遍的で永遠の「ソシレ」です。その響きを聴いた人の耳が脳に伝達する神経のメカニズムそのものは変わらないはずです。

なのに…

「ソシレ」はト長調の音楽の中ではもっともベースの安定した和音(=トニック)ですが、ハ長調では5番目の音(=ドミナント)で、早く「ドミソ」に戻りたく感じるのです。不思議ですね!


音や和音(響き)には、音楽の中での立場や役割がある、ということです。

喩えるなら、一家の中では「お父さん」で世帯主。でも実家に帰れば「5男坊」で決定権はなく「あんたじゃなくて世帯主に会わせろ」と言われてしまう立場…そんなところでしょうか(笑)。

モーターの回転音や、風が鳴らす鈴の音、列車の警笛など…「音」はいたるところにありますが、「音楽」として用いられる「音」や「和音(響き)」は、決して単独では存在しません。

他の音や和音との関係で、結びついたり、溶け込んだり、引っ張り合ったり、途中の寄り道の音だったり、どこかへ向かう音だったり、帰結する音だったり…なんらかの「力」が働いているのです。

そうした目に見えない「力」に沿って、ある響きから他の響きへと色変わりさせていく法則…
それが「コード循環」ではないかと私は考えています。

プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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カウント開始 2011.1.14~
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