オクターブを刻む ~ズージャな音をめざして~

10月26日(日)

ズージャな(ジャズっぽい)音を求めて。
いま学んでいることをサブノート的にまとめるこのシリーズです。久々の「音」に関するちょっと突っ込んだ話題。ご興味のある方だけ熟読、その他の方はさらっとご覧くださいね。

1オクターブの中には白鍵と黒鍵あわせて12の音がありますが、これを「何秒で弾けるか!」なんてやっても音楽的な響きもなければ何の感情もわいてきません。

ところが、12音の中からいくつかの音を選び出して並べると、嬉しい・悲しい・明るい・暗いといった感情が湧いてきます。不思議ですよね。
12人の中から何人かの選手を選び出してチームを作る…「音階(スケール)」はそんなものだと思っていいでしょう。

音階にも色々ありますが、まずはじめに小中学校の音楽の基本をおさらいから…


長音階 と 短音階

まず、♯も♭もつかない7つの白鍵を使って音階をつくりますが、「ド」から始めれば明るい「ハ長調」に、「ラ」からはじめればちょっと悲しくて暗い「イ短調」になります。
同じ7つの音でも何の音からスタートさせるか、野球に喩えるなら「打順」が変わると音階の色彩(モード)が変わります。不思議ですね。

7つの音の配置を見てみると…
長調と単調(平行調)



青でスラーのような記号をつけたところが半音(12音の隣同士)、それ以外は全音(12音のひとつ飛ばし)です。

「ド」から始めると、「全・全・半・全・全・全・半」という並び(階段の形)。音で言うと3番目と4番目の間と、7番目と8番目の間が半音です。「3-4」「7-8」に半音が来ると全体に明るい長調の音階になります。

その3つ下の「ラ」から始めると、「全・半・全・全・半・全・全」という並びになります。半音の来る位置は「2-3」「5-6」、全体に暗い短調(自然的短音階)に聞こえます。

全音と半音の配置(=階段の形)がこの形になっていれば、何の音から始めても長調や短調ができます。

たとえば「ソ」から始めて最後の「ファ」に♯をつけて半音上げてやると明るい階段の形になります(=ト長調)。ファから始めて3番目の「シ」に♭をつけて半音下げてやるとやはり明るい階段の形になります(=ヘ長調)。
そして、上のハ長調とイ短調のように、ト長調の3度下にはホ短調が、ヘ長調の3度下にはニ短調ができます。このように同じ7音によってできる長調と短調の関係を「平行調」と言いますね。

なお、今日われわれの耳になじみのあるのはこの長調と短調だけですが、その昔、中世には6つの教会旋法がありました。
簡単に言ってしまうと、♯も♭もつけないで(白鍵だけを使って)ド~ラまでの6つの音(シを除く)のどこからスタートさせるかによって、半音のくる位置(階段の形)が変わり、全体の響き(モード)が異なって聞こえるのです。
この話を詳しく書くと長くなるので、まずは本記事を終わりまでお読みいただいてから、よほどご興味のある方で、よほどお暇な時にでも…
→ 「6つの教会旋法」


オクターブ内を等分割してみると

さて、ここからがきょうの本題です。
音階にも、7音でできる長調や短調のほかにも、5音階(ペンタトニック)などいろいろな音階があります。ただ、思いつきで適当な音を選ぶのではなく、なんらかのルールで1オクターブ内を刻む音階を見てみましょう。

12の約数は、2、3、4、6ですね。これを音に当てはめてみると…


<2等分>

2等分
1オクターブを真ん中で区切るとこうなります。オクターブの真ん中はファ♯(ソ♭)なんですね。完全4度(ファ)と完全5度(ソ)の中間、いわば4.5度。でもこれだけだとまだ「音階」という感じはしません。

ただ、オクターブを真ん中で区切ったこの増4度(=減5度)の響きは、曲の中でもしばしば耳にすることがあります。
バーンシュタインのミュージカル『ウエストサイド物語』の中に出てくる「マリア」や、有名なガレージでのダンスシーンで、盛んにこの増4度(減5度)の響き(ド→ファ♯→ソ~)が登場します。どこか不安をよぎらせるような響きですね。

また、上の譜例では「ファ♯ード」で示しましたが、「ファーシ」「ミ♭ーラ」も同じ間隔です。この響きを交互に鳴らしてみると…そう、ホルストの組曲『惑星』の中の「土星」の響き!
最後の方でこの響きに乗って鐘が鳴り響くシーン、あるいは昔見た映画「地球最後の日」のような、不気味で壮大な響きとでも言ったらよいでしょうか…?


<3等分>

3等分
長3度(間に黒鍵が2つ。半音階でいうと5コマ)の関係でド・ミ・ソ♯・ドを選び出すと、1オクターブが3等分できます。
ド~ソ♯は、完全な5度(ド~ソ)よりも半音広い「増5度」。「ド・ミ・ソ♯」は長3度が二つ重なったもの(=増3和音。「ぞうさん」の和音じゃありませんよ)。

ほかの「ミ~ド」「ソ♯~ミ」も増5度ですから、この音階全体にaug(オーギュメント)の響きがします。


<4等分>

4等分

今度は短3度(間に黒鍵が1つ。半音階でいうと4コマ)の関係で、ド・ミ♭・ソ♭・ラ・ドを選び出すと、1オクターブが4等分できます。
ド~ソ♭は完全な5度より半音狭い「減5度」。「ド・ミ♭・ソ♭」は短3度が二つ重なった関係(=減3和音)で、それはどこをとっても同じ。全体に dim(ディミニッシュ)の響きがします。


<6等分 メシアンの旋法>

今度は、1オクターブ内に半音の箇所を作らないで、すべて全音で並べます。
全音階(メシアン第一旋法)
われわれが耳慣れた音階では、ミ~ファ、シ~ドに半音の箇所が入ります。階段に喩えると「踊り場」のような場所でしょうか。それがここには1箇所もないのです!

なんとなく落ち着かない、でも注目を引く、途中で新しい展開が開けるような…ちょっと不思議な音階です。

でもこれ、どこかで耳にしたことのある音階ではないでしょうか…?
そう、教育テレビや博物館のビデオなどで、「リトマス試験紙につけてみると…あ、色が変わりました」といった場面でよく効果音に使われてる音階ですね。

全音階(=ホールトーンスケール)といいます。メシアンという作曲家がこの音階を用いて曲を書いていて「メシアンの第一旋法」などとも言われます。
この「ド」から始めるものと、半音上の「ド♯」から始めるもの(すべて半音上にずれる)の2種類に集約されます。



ここまで、まるで数学のような「音の理論」と思われるかもしれませんが、私の興味は「人はなぜそういう音の並びを聞くとそう感じるのか?」という部分です。
逆にいえば、人になんらかの感情(明るい、楽しい、悲しい、不安…etc.)をわかせる音の響き・並びには、なんらかの法則があるということです。本当に不思議で面白い!

ところで、そろそろズージャな響きは?

アマチュアながらクラシック畑に長くいて、どうしたらあのズージャな(ジャズっぽい)響きが出せるのかと長年思ってきたこと、この2年ほどの間に学んで少し分かりかけたことをこのシリーズで何度か書いてきました。
そして、ようやくこのスケール(音階)にたどり着いたので、ケチらずにご紹介しちゃいます!


コンディミニッシュ・スケール

全音・半音・全音・半音…とひとつ飛ばしに並べると、1オクターブがこのように8つに刻まれます。


<Aパターン>


コンディミAパターン

  鍵盤Aパターン

赤い線で結んだところが「全音」、青い線ところが「半音」です。

こういう響きを聞いてみて、いかがでしょうか?

うちの娘に聴かせたところ「気持ち悪い」とひとこと(笑)!
そうですね、まだ長調と短調だけの純粋で汚れのない世界の住人(?)にすれば、なんだか不思議な、気持ち悪い響きなのかもしれません。でも、これぞまさにズージャな響き!

じつはこの配置、「半音+全音=短3度」。どこをとってもひとつ飛ばした音は短3度なんです。全体になんとなく暗い印象を受けるのはそのためでしょう。

しかしこの音の並びの中には、B7(シレ♯ファラ)、D7(レファ♯ラド)、F7(ファラドミ♭)、A♭7(ラ♭ドミ♭ソ♭)、といった明るい和音を構成する音がすべて含まれているのです!
さらにその根音(ベースの音)を半音上げたdimディミニッシュも!

なので、このスケールには、以下のコードがしっくりと合います。

Aコード★改定

これらのコードを左手で押さえながら、右手で先ほどの音階をスケールのように転がしてみると、明るい響きの上にちょっと暗い感じの響きが乗って、まさにズージャないい響き!


<Bパターン>

そしてもうひとつ、先ほど全音・半音…と配置したのを逆にして、半音・全音…と並べたのがこちら。

コンディミBパターン

  鍵盤Bパターン

これには、C7、E♭7、F♯(G♭)7、A7といった明るいコードと、その根音を半音上げたdimディミニッシュ、さらにCdimの音がすべて含まれています。ですから、以下のコードがしっくりと合います。

なお最後に書いたCdim7は、たしかに構成する音は入っていますが、このスケールに合うコードではなさそうです。

★コンディミBコード改定


C7はド・ミ・ソ・シ♭、A7はラ・ド♯・ミ・ソ…と、コードを押さえるだけでももちろん伴奏はできますが、ところどころ上にこんなスケール(一部切り取ったものでもよい)を入れてみると、ちょっとお洒落な大人の世界の香りづけができるかもしれませんね。

もともとジャズは、楽理やクラシックの曲を知らない、ともすれば楽譜も読めない人たちが経験から作り出していった音楽。そこにこんな数値で見える法則があったとは! しかも、クラシックの世界でもこういう響きを使った楽曲も多数あります。

本当に音楽って面白い、不思議なものだなとつくづく思います。



プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

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