プロローグ(序章)

大変僭越ながら、新たに「★オペラの世界へ」なるカテゴリーをつくってしまいました。
アマチュアながらたまたま3回ほど劇版での演奏機会に恵まれたオペラ『カルメン』について、以前雑記しておいたものも交え、以下8つの記事につづります…



1枚の鉄片から

蹄鉄

これは馬の蹄鉄(ていてつ)です。蹄(ひづめ)を保護するために、一頭ずつそれぞれの足(蹄)の大きさ・形に合わせて作られ、鋲(びょう)で打ちつけて固定されます。

最近はアルミ製やゴム製のものもありますが、やはり蹄鉄という名のとおり、本来は“鉄”ですね。

すり減ってきたら交換され、回収されてふたたび溶かして新しい蹄鉄に生まれ変わります。ですから勝手に盗んできてはいけません!
これは以前、ある乗馬クラブで交換されたものを分けていただいたもの。
馬の種類はアラブ、前足についていたものですが、こうして屋内であらためて見ると大きいですね。

溝に土やワラがしっかり埋まって固まっていたのをほじり出し、表面をサンドペーパーでよく磨き、焼いて水に入れて表面を黒くし、けやきの木片に打ちつけてみました。

蹄鉄2

部屋のインテリアにしてもよし、ドア脇にぶら下げてメモを挟んで伝言版のように使ってもよし、鍋敷きとして使ってもいいでしょう。
(後ろのウィンチェスター銃は もちろん本物…ではありません、残念ながら…)



馬好きな人にとって蹄鉄の形はとても美しく魅力的で、見ているだけで心が和みます。
化粧品メーカーのロゴマークにも、あるいはバッグの金具などにも、この蹄鉄をモチーフにデザイン化されたものは多いように思います。
地域によっては縁起のいいもの・魔よけとして信仰され、ドアなどに打ちつけられています。また上が開いている状態は縁起がよく、逆に下に開いていると不運を呼び込むとも言われるようです。

ところでこの「馬蹄形」、馬がこの地球上に誕生してからずっと自然界にはあったわけですが、わざわざ馬の脚の裏をひっくり返して見ることもあまりなく、もともと人の目にそうそう触れるものではなかったはずです。

ヨーロッパでは4世紀ごろから、馬に乗ったり作業をさせたり、人間が家畜として馬と付き合うようになってから蹄鉄が作られるようになり、その造形を目にすることも日常化して「馬蹄形」という言葉も生まれたのでしょう。

ちなみに日本では…
日本の馬・広重
歌川広重「名所江戸百景」より

明治以前の日本には蹄鉄の知識がなく、馬は専用のわらじを履いていました。一部の地域では蹄鉄のようなものをつけていたかもしれませんが、少なくとも全国的に組織だって定着はしていなかったようです。ですから時代劇に蹄鉄をつけた馬が登場するのは本来おかしいのですが、お馬さんからいちいち蹄鉄をはずすのは大変なんで、撮影のときはあまりはっきり映らないように…。


とってもテツな 鉄のお話し

さて「鉄」といえば…?テツな話題にもちょっと触れておきたいですね(笑)。
模型ですが、こんな台車をご存じでしょうか?

客車台車

一見ごくふつうの客車用の台車ですが、軸受のあたりをよく見ていただくと…

馬蹄形の軸受

そう、軸受の部分が“馬蹄形”をしているんです!

これはかつて九州地方で「ある列車」と呼ばれた幻の客車の台車ですが、もともとこのタイプの台車はアメリカに多く見られたスタイルですね。


馬蹄形の建物といえば…

さて、これからご紹介する何点かの画像は地球の裏側から、芸術・オペラの都イタリアです。

ブログを通じて知り合った音楽家で、現在イタリアにご在住のチェンバロ奏者I.Yさんは、ご自身で撮られた素晴らしい画像をブログにたくさん掲載されています。その中からほんの何点かを、この記事を書くために使用許可いただいて…

テアトロ
・テアトロデッローペラ (Teatro dell'Opera )の客席

オペラハウスの多くは、このように2階から5階までの客席が馬蹄形にぐるりと舞台を取り囲むように作られています。

一方、時代も目的も全く異なりますが、かつてのローマ帝政期に造られた屋外の円形競技場の観客席ともなんとなく似てるように見えませんか…?

コロッセオ
・コロッセオ(ローマ)

見たいものを丸くとり囲む発想、あるいは上からの重量を支え力を分散させるアーチ型の構造…それらすべてが馬蹄形をヒントに造られた訳ではないでしょうが、自然界にある造形というのは、ときに機能的で理にかなった美しい姿をしているものだな…と思うことがよくあります。

さて、ふたたびオペラハウスに目を戻しましょう。

テアトロロッシーニ
・テアトロロッシーニ(Teatro Rossini)の舞台

この画像では幕が下りていますが、オペラの舞台には日本のコンサートホールには決してない、ある大胆な“仕掛け”がしてあるのをご存じでしょうか?


傾斜した舞台!

傾斜した舞台面(プラトー)

イタリアのI.Yさんのブログに掲載されていたこの画像を拝見して「おぉ、これだ!」と思わず膝を叩いてしまいました。ピアノの手前の足にご注目ください!

ピアノを水平に設置するために手前の足を底上げし、ペダルを踏む両足もちゃんと両足のかかとが水平につくように専用のくさび型の台が用意され、椅子の手前の足にもかさ上げが施されています。

舞台はこれだけ傾斜している、ということです!
いったい何のため? 水はけをよくするため?…ではありません(笑)。

1階席から少しでも舞台を見やすくするために、オペラハウスの舞台面(プラトー)には5~8%の傾斜が設けられているのです。
2階席以上の高い位置から見ても、舞台が少し前に傾斜していることで、舞台上空に観客がせり出したような臨場感が増すはずです。

オペラの舞台にはこのような傾斜があるという話は前にも聞いたことがあります。
でも、舞台写真や平面図を見ても、あるいは舞台中継などを見ても、舞台の傾斜がはっきりと手に取るように分かるような決定的な画像には今までなかなかお目にかかるチャンスがなかったんです。
この画像はとっても分かりやすい“動かぬ証拠”!…I.Yさん、貴重な画像を本当にありがとうございました!


8%の傾斜といえば…

先ほどの画像から、テアトルロッシーニの舞台には相当きつい傾斜があるように見受けられます。
ピアノの両足の間隔はおよそ150センチ。手前に底上げされている木片は見た感じ10センチ以上ありそうです。仮に12センチだとすると…傾斜は8%!

またしてもテツな話に無理やりもっていきますが…(笑)

急勾配(ケーブルカーを除く)といえば“登山電車”ですね。
こちらの画像は、東京から日帰り圏内にある箱根登山鉄道です。

80パーミルの勾配
80パーミル

箱根湯本の駅を出てすぐにさしかかる急勾配がまさに80パーミル。
鉄道では千分率(‰=パーミル)を用いて表しますので「80.00」と表示されていますが、これがまさに8%の勾配です。

画面左に僅かながら写っている地面がほぼ水平だとして、かなりの急勾配であることが写真からもお分かりいただけるでしょうか?



オペラハウスの舞台面にはこの登山電車なみの傾斜があるわけです!

くり返しますが、決して水はけをよくするためでも、舞台上にばらまいた花弁などを掃き掃除しやすくするためでもありません。
客席から舞台面が少しでも見えることで、役者の動きにも舞台演出にも奥行き感が増します。

いかにお客様に少しでも臨場感のある舞台を楽しんでいただけるかを第一に考え、こんなに傾斜した床の上で踊ったり歌ったり演技をしている…それがオペラの世界なんですね。     

ではこの先、オペラの世界へ…

 ↓ オペラの世界へ…「カルメン」を中心に

プロフィール

高木 章

Author:高木 章
アマチュアの打楽器奏者です。

某放送局関連に勤務しながら長年趣味で続けてきた音楽活動。あるご縁から、障がいのある方たちとも音楽を通じてのバリアフリーを、また東日本大震災以降は「がんばろう日本」…そんな活動を続けています。

単に自分が音楽が好きだから演奏したいだけでなく、「音楽の力」で「せめて自分にできることを」!

50代半ばにして勤め帰りに学校に通い「音楽療法」を学びました。

音楽寄りの話題、社会・時事に関する日常的なあれこれを徒然なるままに…
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